先日、以前よりご依頼を受けていた拵えの納品を行いました。
とても気持ちよく納品ができましたので、思わずブログに記録を綴ろうと思い立った次第です。
ご依頼内容は、約定寸の現代刀に新しく柄前を製作するというものでした。
工作のご依頼を受ける場合、当工房では特別な事情を除いてはお客様と直接お会いすることにしています。
これは、仕事を請ける請けないに関わらず、まずどのような人物がその刀剣を所有しているのか、またどのようなお考えで拵えのご依頼をされるのか、十分に見極めたいと考えているからです。
また、お客様もどのような人間が拵えを工作するのか気になると思いますので、お互いの相互理解のためにも必要な時間であろうと考えています。
今回のお客様は、一目見て刀を持つに相応しい人物であると感じることができました(私も書家の仲間も、お会いした時の第一印象が同じでした)。
早速、御刀を拝見し拵えを鑑賞させていただいたところ、黒を基調にした渋い造り込みで、一見したところでは良くできた外装と感じます。
ところが、まず目についたのが、指し表に来るはずの柄紐の結び目が指し裏に来ていること、鮫皮に親鮫が無いこと、柄糸の上に塗られた漆が鮫皮にも目貫にも塗られており一体化していること、柄全体に塗られた塗装がラッカー系であることでした。
推測するに、演舞用等の実用に用いていた拵えが消耗し、柄巻の応急処置として柄前全体を漆で固めてしまったのではないかと感じます。
さらに、柄の下地は柄巻や目貫よりも時代が古く、ほうの木の枯れ具合から、昭和初期(~20年)の戦時中の物と拝見しました。刀身の作刀時期が昭和末期の現代刀であることからも「あわせ」の柄下地であろうと判断できます。
元々は「あわせ」の柄下地に、関?の柄巻師さんが巻き直しを行ったのでしょうか。昭和末期に関で量産され始めた目貫が用いられていることも、そんな想像を掻き立てます。
次に刀身を拝見、こちらは素晴らしい出来です。
まさに現代刀匠の力作といった、スキッとした御刀です。
匂いできの丁子刃が備前伝を彷彿とさせ、パッと見た感じでは新刀特伝を焼いた反りの浅い寛文新刀体配から、肥前刀に見紛う程の現代の名刀です。
鉄味がやや若く(堅く?)、日刀保たたら鉄と感じますので上の出来だけで現代刀かな?と鑑定できるところは実におしいです。
更に肌と刃中の働きから見て月山系の刀匠作と感じました。月山系であれば師に迫る気迫を感じさせる傑作です。
この刀身に合わせた柄前を作るとなると、かなり頭を悩ましそうですが、お客様のご要望は、肥後拵。柄成は立鼓型。
反りの浅い刀身なので、柄成で刀の美しい反りを最大限に表現しなければなりません。刀装具は、銅製の肥後金具を、目貫も同じく銅製の物を選択しました。
次に、ほうの木の選定です。今回用いるほうの木は10年乾燥させて暴れ(ゆがみ)の少ない素材を選びました。夏場はどうしても湿度の調整が難しいので、加湿器にて工房内を一定の条件下に設定し、雨の日を選んで、ほうの木の加工を行います。
柄前工作の工程は、美術刀剣拵工作工房公開情報(ヤフーブログ)でご覧いただけます。
完成した拵をお客様に納品!とても喜んでいただき、職人冥利に尽きるの一言でした。
今回のご依頼は、納期の指定をしていただかなかったこともあり、自分自身納得の作品に仕上がりました。全てのご依頼に同じ様に時間をかけられれば、やはり納得の拵え工作が可能なのでしょうが、急ぎの仕事など注文によっては、時間的制約があります。
どのような条件でも、常に納得の作品が作れる様に心がけることこそ、職人に課せられた責任である以上、より一層の精進が必要です。
これからも職人としての自覚を持って、拵え工作を行っていきたいと感じました。
とても気持ちよく納品ができましたので、思わずブログに記録を綴ろうと思い立った次第です。
ご依頼内容は、約定寸の現代刀に新しく柄前を製作するというものでした。
工作のご依頼を受ける場合、当工房では特別な事情を除いてはお客様と直接お会いすることにしています。
これは、仕事を請ける請けないに関わらず、まずどのような人物がその刀剣を所有しているのか、またどのようなお考えで拵えのご依頼をされるのか、十分に見極めたいと考えているからです。
また、お客様もどのような人間が拵えを工作するのか気になると思いますので、お互いの相互理解のためにも必要な時間であろうと考えています。
今回のお客様は、一目見て刀を持つに相応しい人物であると感じることができました(私も書家の仲間も、お会いした時の第一印象が同じでした)。
早速、御刀を拝見し拵えを鑑賞させていただいたところ、黒を基調にした渋い造り込みで、一見したところでは良くできた外装と感じます。
ところが、まず目についたのが、指し表に来るはずの柄紐の結び目が指し裏に来ていること、鮫皮に親鮫が無いこと、柄糸の上に塗られた漆が鮫皮にも目貫にも塗られており一体化していること、柄全体に塗られた塗装がラッカー系であることでした。
推測するに、演舞用等の実用に用いていた拵えが消耗し、柄巻の応急処置として柄前全体を漆で固めてしまったのではないかと感じます。
さらに、柄の下地は柄巻や目貫よりも時代が古く、ほうの木の枯れ具合から、昭和初期(~20年)の戦時中の物と拝見しました。刀身の作刀時期が昭和末期の現代刀であることからも「あわせ」の柄下地であろうと判断できます。
元々は「あわせ」の柄下地に、関?の柄巻師さんが巻き直しを行ったのでしょうか。昭和末期に関で量産され始めた目貫が用いられていることも、そんな想像を掻き立てます。
次に刀身を拝見、こちらは素晴らしい出来です。
まさに現代刀匠の力作といった、スキッとした御刀です。
匂いできの丁子刃が備前伝を彷彿とさせ、パッと見た感じでは新刀特伝を焼いた反りの浅い寛文新刀体配から、肥前刀に見紛う程の現代の名刀です。
鉄味がやや若く(堅く?)、日刀保たたら鉄と感じますので上の出来だけで現代刀かな?と鑑定できるところは実におしいです。
更に肌と刃中の働きから見て月山系の刀匠作と感じました。月山系であれば師に迫る気迫を感じさせる傑作です。
この刀身に合わせた柄前を作るとなると、かなり頭を悩ましそうですが、お客様のご要望は、肥後拵。柄成は立鼓型。
反りの浅い刀身なので、柄成で刀の美しい反りを最大限に表現しなければなりません。刀装具は、銅製の肥後金具を、目貫も同じく銅製の物を選択しました。
次に、ほうの木の選定です。今回用いるほうの木は10年乾燥させて暴れ(ゆがみ)の少ない素材を選びました。夏場はどうしても湿度の調整が難しいので、加湿器にて工房内を一定の条件下に設定し、雨の日を選んで、ほうの木の加工を行います。
柄前工作の工程は、美術刀剣拵工作工房公開情報(ヤフーブログ)でご覧いただけます。
完成した拵をお客様に納品!とても喜んでいただき、職人冥利に尽きるの一言でした。
今回のご依頼は、納期の指定をしていただかなかったこともあり、自分自身納得の作品に仕上がりました。全てのご依頼に同じ様に時間をかけられれば、やはり納得の拵え工作が可能なのでしょうが、急ぎの仕事など注文によっては、時間的制約があります。
どのような条件でも、常に納得の作品が作れる様に心がけることこそ、職人に課せられた責任である以上、より一層の精進が必要です。
これからも職人としての自覚を持って、拵え工作を行っていきたいと感じました。