徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

明治~大東亜戦終結までの日本刀

2008-10-25 02:43:22 | 刀身研摩
軍刀身の鑑賞研磨で、思わぬ名刀が現れた趣旨の記事を投稿したところ、非常に多くの方から、レスやメールをいただきました。ご連絡を下さった皆様、この場をお借りしてお礼申し上げます。

さてさて、それではもう少し明治~大東亜戦終結までに作刀された刀剣類について、書いていきたいと思いますので、しばらくお付き合いください。

何通かいただいたメールの中に、近代に作刀された刀剣は不当な評価を受けており、その評価の基準となっているのは某協会の姿勢に起因するのではないか?といったお便りをいただきました。
確かに、古刀・新刀・新々刀といった、時代を経て今日健全な形で保存されている日本刀は、美術品鑑定や考古学上の概念からいっても重要な文化財的価値を秘めていると思います。
それらに比べ、近代に作刀された刀剣類の評価が低いことは、公知の事実です。
しかしながら、某協会はけして近代に作刀された刀剣を、鑑賞対象の日本刀と見ていないとは断言できないと思います。

あくまで噂ですが、刑務所長光などと呼ばれ、戦時中も非常に人気のあった刀匠が作った刀(軍刀身として戦地で使用することが前提であったため、二尺一寸~二尺二寸の刃渡りの刀が多い)に鑑定書がついたという話を聞きました。
典型的な長光の刀は、ハバキ元の重ねが厚く独特な体配をしてはいますが、代表的な丁子刃は備前伝をよく表現しており、よく練れた地肌なども鍛錬技術の高さを感じさせます。私自身、鑑賞的価値があると思います。
ある刀匠見習いは、刑務所長光を目指して作刀していると言っていましたし、ある著名な試斬道家兼鑑定家は道具としての性能にも惚れ込み長光を愛用していると言っていました。

何が言いたいかというと、近代の刀であろうと古刀であろうと、日本刀であることに変わりはないということ。
むしろ日本の歴史の中でもっとも日本刀が量産された時代は、明治~大東亜戦終結までです。当時作られた大量の日本刀の中には、鑑賞に堪えうる美しい刀剣類も生まれていたと考えて、何ら不思議はないでしょう。
それだけ日本刀が身近に感じられた時代ですから、まだまだ埋もれた名刀が近代実用刀の中にはあるのではないでしょうか?

近年、現代刀匠が作刀する刀剣は新々刀に迫ったと言われていますが、近代刀匠の中には、現代刀匠以上の実力を持った職人が多く存在した様に感じます。