徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

脇差し拵の作り替え

2016-01-24 00:24:24 | 拵工作
昨年末から取り組んでいる脇差しの修復です。



いよいよ納得のゆく仕上がりになってきました。



当初の状態は、他の職方?によって修復が施されたばかりの状態でしたが、ご依頼者様が作り替えをご希望される気持ちがよくわかる完成度でした。
既に大幅に手が加えられており、元の状態に復古することは難しいのも事実ですが、一度分解してみたところ下地はとてもよい材料を用いていました。



そのため、今回はどうしても再生させてあげたいという気持ちで、在りし日の形状に迫りたいと思います。



この度のご依頼は、以前当工房でお作りしたお刀の外装(先日鞘のみ変更しました:アメーバブログ「鞘の修復」)の対になる脇差し拵えとして作り直して欲しいという内容です。そのため、大小のバランスを考えて柄糸の色や刀装具を選択しました。柄前の詳細は、2016年1月13日の投稿「柄前の作り替え(脇差し編)」をご覧下さい!



鞘も黒蝋色に塗り直しました。とはいえ遊び心を加えて、強い日光の下では若干螺鈿の反射が現れるように、所々下地に螺鈿を残してみました。蛍光灯下では一切見えないため、落ち着いた趣が宿りました。



あともう少し手をかけたいと思っていますが、トータルバランスとしては完成です!完成といっても、工房に置いてあるとチョコチョコ弄ってしまうため、私の手元にある限り終りが無いというのも事実なのですが・・・(笑)。

室町時代の刀

2016-01-22 17:00:16 | 刀身研摩
錆びた日本刀の修復が完了しました。



特に錆が酷かった指裏です。

日本刀の刀身の修復は、研磨意外に方法がありません。
そのため修理をすればするほど(研げば研ぐほど)刀身は痩せてしまいます。
今日残っている日本刀は、何世代にもわたって所有者が入れ替わっていますが、その都度所有者全員が錆びさせないように、日頃から手入れを欠かしませんでした。手入れをさぼれば錆を呼び、錆びれば研磨が必要になる、そしてその度刀身が消耗してしまうことを知っていたからです。
戦後日本刀は武器としての性質を否定され、美術品としての美しさが重要視されています。この時期、刀身を美しく見せる研磨法は飛躍的に向上しましたが、昭和から平成にかけてもっとも日本刀が痩せた時代ではないか?と思います。



今回のお刀は、刀身研磨と外装製作のご依頼ですが、長年放置されて所々朽ち込みをみる水錆状態(上図参考)でしたので、極力痩せないように研磨を施し、更に荒れ気味の肌を押さえて研いでみました。



切っ先が若干延びごころですが、室町時代の典型的な体配です。
先がもう少し伏せっていたら、もっと古く見えるでしょう。研ぎ味は、鎌倉時代の刀を研ぐようでした。表裏で、表情がガラッと変わるところも実に味わい深いお刀です。



どうしても修復が出来ない箇所は、刃中の鍛え割れです。

ここで一端、ご依頼者様にお戻しして、拵えの設計に関して、再度綿密な打合せをしたいと思います。

刀剣文化の世界発信プロジェクトご支援のお礼

2016-01-17 22:23:49 | ブレイク
1月8日に告知させていただきました、インドでも武家文化の紹介活動への緊急のご支援のお願い!につきまして、本日当初の設定金額を越えるご支援を頂きましたことをご報告します!

クラウドファンディングの実施期間としては短く、限られた日数にも関わらず異例のはやさで目標を達成し、しかも現在もなお温かいご支援が絶えない状態です。



まずは、当方の活動を応援し、ご支援くださいました皆様に、心からのお礼を申し上げます。皆様のお蔭をもちまして、インドでの武家文化紹介活動を実施することが叶います。


写真は、2015年3月28日に大田区の長久山安詳寺にて開催した伝統文化イベントの様子。

継続してご支援をお願い致しますので、引き続きインドへの正しい文化発信のために、皆様のお力添えをお願いいたします。
詳細は、こちらのクラウドファンディングのページにて公開中です!

最後になりますが、大塚寛信が続けている国際交流は、小さな小さな一歩に過ぎません。しかしながら、日本の伝統文化を少しでも多くの方々に知っていただき、世界と日本の良好な関係作りに寄与できればという想いで活動を続けています。
また、一人でも多くの日本の方々に、一伝統工芸職人が個人レベルで国際交流を行なっている事実を知って頂きたく、クラウドファンディングを活用させて頂いております。合わせて応援の程、よろしくお願いいたします。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

柄前の作り替え(脇差し編)

2016-01-13 00:49:28 | 拵工作
調整中の脇差しです。柄前が完成しました!



元々は江戸時代の拵えですが、近年に修復が施されて、本来の設計が滅茶苦茶になっています。現状では使い難く不細工で、実用の美意識が一切感じられません。何とか本来の輝きを取り戻したいと思います。



この状態から、納得のいく外装に仕上げ直すには、全て分解し柄下地の整形から始めなければなりません。
0から作った方が早いのですが、柄下地だけは江戸時代の最高級のほうの木が用いられており捨てるのは忍びなく、時間をかけてでも修復に挑みます。



刀装具を拵え全体のバランスと合うものに変更しました。現代製の目貫から、長年保管してきた小振りのセミの図へ。偽名のある水戸の縁頭から、銀着せの腰の低い作品へ。

次は、鞘の塗り直しと鍔の責め金加工です。

緊急のご支援のお願い!

2016-01-08 00:19:10 | ブレイク
来る2016年2月1日~15日、インドのハリヤナ州(デリーから23kmの地点)で同国最大規模の伝統工芸の祭典『メラ』がおこなわれます。

この祭典で、『日本の伝統文化』を紹介するイベントの開催を、インド大使館よりご提案いただいております。しかしながら、渡航費の一部や機材の搬入費用が当初の計画より予算オーバーしており、このままでは実現が難しい状況です。

インドは、先の東日本大震災の折、毛布や飲料水などの緊急物資の提供、救助隊の派遣を真っ先に決めてくれた国の一つです。
この度のインド政府からのご依頼をお受けすることは、先の震災での同国の善意へのお礼ばかりか、両国の民間レベルでの文化交流を促進する大変貴重な機会であると考えております。

また、近年サブカルチャーなどで人気のある『日本の伝統文化』を、正しくインドへ伝える手助けになれば・・・とも考えております。


写真は、2014年にインドネシアのバンドンにあるアジア・アフリカ会議場で開催されたアジア初の刀剣展覧イベントの様子です。

インドへは、刀剣類の持込が厳しく規制されていることから、ギリギリまで両国間で最善の交渉をお願いしている段階ですが、日本の正しい文化を発信するためにも、合わせて皆様にお力添えをお願いする次第です。

詳細は、こちらのクラウドファンディングのページにて公開中です!
なお、今回クラウドファンディングを活用させて頂きましたのは、一伝統工芸職人として、このような国際活動を続けていることを、一人でも多くの方々に知って頂きたいと思うからです。アリの一歩ですが、私の活動が世界と日本の良好な関係作りに寄与することを願ってやみません。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

隕鉄鍛えの研ぎ味

2016-01-04 22:38:33 | 刀身研摩
年末年始と年を跨いで作業するのが日課となっている近年、今年も例外なく年越し工作をおこないました!(厳密に言うと、年越しの瞬間は、お茶を取りに居間へ行ってしまい、笑ってはいけない番組を見てしまいました・・・「オオツカ、アウト~」。)



何度も何度も、砥石を変えたり研ぎ方を変えたりして、様子を見ています。



粗い砥石を使った時の印象は、柔らかいイメージでしたが、研ぎが進むに従ってカサカサ感が気になり始めました。内曇の頃には乗りが悪くなり、何度やり直しても眠~い感じになります。



隕鉄が練り込まれているということですが、炭素の移行により刃中で低炭素化が起きているのか、ニッケル成分による影響なのか・・・定かではありませんが、現代刀とはちょっと違った研ぎ味です。

研究は、まだまだ続きそうです。







というわけで、連日徹夜作業の末に刀身の研磨作業が完了しました!



いつもながら薄化粧です。



若干相州伝を狙いました!



当工房への研磨のご依頼は、外装修復のついでに・・・というのが圧倒的多数のため、今回のように研磨のみのご依頼は稀なケースです。



この度の刀身研磨は、大変勉強になりました!

ゆっくりしている暇はありません。次の修復作業に、取り掛かりたいと思います。