徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

第40回よこはま技能まつり

2019-10-29 17:24:14 | ブレイク
令和元年10月27日、横浜最大の技能職イベント『よこはま技能まつり』が、横浜スタジアムのある横浜公園から~みなとみらい線日本大通り駅までの、日本大通りにして開催されました!



よこはま技能まつりは、今年で40回目を数えるイベントで、この手の技能職イベントとしては、屈指の伝統と格式を誇ります。
主催は、横浜市技能職団体連絡協議会さんで、横浜市内で活動する様々な職方の組合が参画する唯一の団体です。
イベントを40年間続けているということは、昭和・平成・令和と年号を跨いで欠かさず開催されてきたことになりますので、あらためて歴史の重みを感じずにはいられません。



毎年同じ時期に、変わらず流されず確固たる活動を続けることの難しさは、主催者でなければわからない労力と根気が求められることでしょう。



その中にあって、マンネリ化しないように絶えず活動を推進することが、最大の課題になると思います。



当工房は、そんな歴史あるイベントに初出店をさせて頂きましたが、この度出店のご依頼を頂いたことで伝統工芸と言えども地域活動に貢献できる可能性を見出すことができました。
古くて新しい、時代に左右されない活動を目指している当方としては、大変居心地の良い展開となりました。毎度ながら、当方の活動を陰ながら応援して下さる市役所の関係部署の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。



さてさて、当ブースではいったい何をしたのか?といいますと、刀剣研磨の実演をしながらニッチな伝統工芸分野が細々とではあっても、地域に根付いていることをご紹介しました。



さらには、技術を少しでも身近に感じて頂きたいという思いから、包丁の研ぎ教室を開催し、研ぎの理論から実技のコツまでを指導させて頂きました。一生ものの生きた技術を体験された方々は、体験しないと分からない絶妙な研ぎの面白さに夢中なご様子でした。



他にも柄巻体験をご用意しておりましたが、時間の都合などもあったため、実施の有無を含めて応援に駆けつけてくれた柄巻師の三幣さんのご判断に委ねました。



今回特に面白い!と感じたことは、職方通しの垣根を超えた交流があったことです。
これだけ異業種の職方さんが一堂に集合すると、当然多種多様な工具もまた集結します。
それら見たこともない刃物の修復を手伝わせて頂きました。



例えば、氷彫刻に用いる巨大な彫刻刀?のような工具類は、見るのも初めてな不思議な形状をしていましたが、研いでみると勘所はやはり日本の刃物で、正しい工作に務めれば素直に反応してくれることがうれしくもあり、確かな手ごたえを感じました。

一つ不思議に思ったことは、道を挟んで隣で開催されていた神奈川県主催の伝統芸能、文化・芸術の祭典(流鏑馬などを披露)との接点がないという謎の距離感があったことです。

当工房の立ち位置は、神奈川県のイベントの伝統やら文化やらの方向性と、横浜市のイベントの技術・技能職の活動紹介のちょうど中間に位置することから、大げさに言うと場所的にも間を取り持つようなブースであったかもしれません。
実際に、そのように声をかけてくれた来場者さんもいらっしゃいました。

今後とも、近隣社会への情報の発信と持続可能な文化の紹介を続けていきたいと改めて思いました。
当ブースへご来訪くださいました多くの来場者の皆様、この場をお借りしましてお礼申し上げます。
また、アンケートにご連絡先をご記入くださった方々には、改めてお礼のメールと今後のイベントのご案内などをお送りさせて頂きます。
なお、今回創作工芸品を購入いただいた方々には、改めて特典を検討しておりますので楽しみにしていてくださいね!

短刀修復

2019-10-26 04:03:37 | 拵工作
短刀の修復が終わりました!



刀剣の工作では、刀身の長さに関わらず一振りに掛かる工作内容はほぼ同程度の労力・時間が必要です。単純に考えると、短い短刀類よりも長い刀の工作の方が大変なイメージがありますが、必ずしも長さに比例して難易度が上がるわけではありません。確かに材料費は大きな作品になればなるほど嵩みますし、材料を厳選する都合上時間も要します。
ところが、実際の工作となると極端な長さや形状の違いでもない限り、結局工程が同じである以上工作に大差ないというのが実際のところなのです。

今回のご依頼は、ネットオークション?で購入された短刀のご相談です。「現状の完成度が低いので何とかしたい」というものなのですが、最近多いご依頼の特徴の一つでもあります。
写真写りのみを向上させるために取り合えずそれらしく修復?加工?された刀剣をお持ちになる方があまりにも多いです。
ご購入されたまでは良いものの、実際に手に取ってみるとその完成度の低さに辟易するらしく、当工房へご相談をお寄せになります。

この度の工作内容は、刀身の再研磨、柄前の新規作成、鍔の交換、鞘の修復、つまりほぼ全てに手を付けました。



この手の御刀の特徴は、鞘をラッカー塗料で青貝散しの笛塗りに仕立てているケースが多く、柄前も流用下地に雑な諸捻の柄巻を施していることが共通しています。
おそらく器用な素人さんが、趣味が高じて錆身を光らせて外装をそれらしく補修し、インターネットで転売して利益を得ているのでしょう。
我々刀職ならずとも、実物を見れば購入を躊躇するような出来ですが、そこはインターネットの魔力でしょうか?刀剣にしては安いという感覚で、ついつい手を出してしまうようです。

ところが、そうしたオークション出品者は刀身の本来の価値を理解しないままガリガリと削ってしまうのか刀身が痩せてかなり消耗しています。また、刀身に合わせた研磨なども施すはずがなく、直刃調の刃取りで化粧を施すため、本来の刀身の美しさが失われています。



まずは刀身を研ぎ直してみると、働きに富んだ出入りの激しい焼刃が顔を出してくれました。



柄前については、使用感やバランス・刀身に合った形状など考えられているわけもなく、これ以上手を付けられないので新たに作りました。



ご要望により、グッと引き締まった立鼓型に仕立てて、戦国時の雰囲気を復古しました。



鞘のコジリがあらぬ方向を向いていたので、新たにコジリを作り直して、蝋色に漆を塗って仕上げました。



ここまで修復を加えると、グンと見違えるように刀剣らしい形状に生まれ変わります。
但し、ここまで手をかけるには、時間も労力もかかります。
できることなら実物をご覧になって購入されることが、納得の一振りと出会う最短ルートであろうと存じます。

イベント中止のおしらせ

2019-10-11 21:55:48 | ブレイク
残念なお知らせです。



いよいよ明日10月12日から二日間の開催を予定していた、横浜市初の試み「HAMA-TORY ハマの職人工房」が、台風の影響で急遽中止になりました。
「ヨコハマ ものつくりの技 秋の陣」と銘打って、横浜を代表する職人さんたちがものづくりの技を伝授する特別なイベントでしたが、過去に比類なき台風の上陸を目前に開催が危ぶまれていました。

まさかの台風直撃には逆らえるわけもなく、この日のために着々と用意してきた作品や体験用の材料を前に、なんともやりきれない気持ちになります。
そうです。今回のイベントには当工房も横浜市の担当部署の皆さんから出展要請を頂き、二つ返事で承諾すると共に体験会を開催できることを楽しみにしていたのです。



三流職人たる当方が、横浜を代表する職方であるかどうかについてはこの際目をつぶるとして、末席に加えて頂いた横浜市の心意気にただただ感謝し、期待を裏切らない働きで恩返しする他にはなかろうと意気込んでいただけに肩すかしをくらった形になりました。



物事は、そうそううまく運ばないものですね。
最も気の毒に感じたことは、我々出展者よりも市役所の皆さんです。
この日のために、長い時間をかけて各方面との調整や折衝を重ね温めてきた企画が、まさかの天候によって中止になるとは、なんとも言葉にならない残念さが残ります。



とはいえ、今月は10月27日に横浜市技能職団体連絡協議会が主催する「第40回よこはま技能まつり」を控えています。
こちらのイベントは、山下公園から続く日本大通りを封鎖して歩行者天国にする壮大なものづくりの祭典です。27日のよこはま技能まつりには、当工房も初参加をさせて頂くことになりましたので、頭を切り替えてHAMA-TORYのリベンジに務めたいと思います。

最後に、この度の体験イベントにて、柄巻体験と包丁研ぎ体験、各々にご予約をお寄せ下さっていた方がいらっしゃいましたら大変申し訳ございませんが、中止の旨ご了承の程お願いいたします。なお、同様の体験会をよこはま技能まつりにて開催できるよう調整中です。

第40回よこはま技能まつりの詳細につきましては、追って告知させて頂きます!