徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

南北朝長船派

2013-03-29 02:35:39 | 刀身研摩
投売りされていたサビ身を購入しました。

初めて出会った時、完全なサビ身状態だったものの、体配だけを見て南北朝を感じたため、若干の冒険心で購入に踏み切りました。

そして、本日研ぎあがりました!



研ぎあがって一言、「わ~お」!

ご覧いただけますでしょうか?
目が回るほどの牡丹映りと、左近将監を見るような小積んだ丁子、長船派を代表するような典型的な備前伝です。

ナカゴも典型的な古名刀のサビ色です。
定寸より若干長めですが、ウブの状態で2尺5~6寸といったところでしょうか?
刷り上げ底銘にて、何やら大銘がありますが、真贋の程はいかに・・・?

最高に贅沢な居合刀の出来上がり!って、勿体無い(笑)。

脇差拵

2013-03-19 10:55:25 | 拵工作
新たな脇差拵が完成しました。



当該お刀は、ご依頼当初素人さんの手による自作鞘が付属しており、身鞘のみの状態でした。
身鞘のみのお刀の拵えを制作する場合には、どうしても現状の鞘に依存して拵えのバランスが定まってしまいます。
そのため不恰好な拵えになってしまうことを案じ、鞘も1から作らせていただくことになりました。



柄前制作時の投稿は、下記のリンクより:
最高級の柄前(2013年2月13日)

全体を黒を基調に仕上げました。
献上拵などに見られる最も一般的かつシンプルな外装ですが、シンプルな中にも格式を具える事といつまでも飽きのこない実用の美をカタチにすることが要求される、大変難しい工作です。



今回は、想像以上にお時間をいただいてしまい、直ちに納品に伺わなければなりませんが、本心ではしばらく手元に置いておきたい脇差拵に仕上がりました。

古刀研摩

2013-03-18 01:21:54 | 刀身研摩
日本刀を研ぐというと、一般的なイメージでは、包丁を研ぐということと同義語であることを強く感じます。

しかしながら、鑑賞研摩などと申します通り、刀剣の研ぎはただ刃をつける事ではありません。
刀身の刃を立てることばかりでなく、峰も地も美しく研ぎ上げなければなりません。



このお刀は、非常に古い短刀身です。

マニアックな話ですが、研いでいる最中の感触はやけに硬かったのですが、仕上げの工程だけは全く違ったので、非常に驚かされました。

仕上げをやり直すべきか、真剣に悩み中。

洋鉄と和鉄(その4)

2013-03-09 00:00:21 | 洋鉄と和鉄
不定期にて連載投稿しています、「洋鉄と和鉄」の続編です。

以前の投稿は以下のリンクより、ご覧いただけます。
「洋鉄と和鉄(その3)」(2012年06月19日):SK材について
「洋鉄と和鉄(その2)」(2012年04月28日):S-C材について
「洋鉄と和鉄」(2012年03月18日):現代の鉄とは何か?

前回では、工具類に用いられる洋鉄(現代の鉄)についてご紹介しました。
しばらく連載をお休みしておりましたが、今回は「合金工具鋼」についてご紹介したいと思います。

前回、工具類に用いられている鋼は、3種類に分類できるとご紹介しました。
それは、「炭素工具鋼」、「合金工具鋼」、「高速度工具鋼」です。

炭素工具鋼はSK材と紹介しましたが、今回の合金工具鋼は「SKS」、「SKD」、「SKT」などと呼ばれる分類に該当します。

今回は、SKSの中から特に耐摩擦性・耐衝撃性に絞って、一部のSKS材をご紹介したいと思います。

SKS材は、切削工具の素材として開発されました。
これは、炭素工具鋼にクロム(Cr)・タングステン(W)・バナジウム(V)を添加し、硬いカーバイト(炭化物)を形成させることで硬さを得ており、耐摩擦性も向上させることができます。
ここで登場したクロム(Cr)についてですが、クロムは耐衝撃性に優れた性能があり、焼き入れ性も向上することが知られています。

このSKS材の基本的な性能を調節することにより、様々な用途に対応できる合金工具鋼が作られています。
用途の例えとして、耐衝撃性に重きを置いて硬さより靭性を重視したものに、耐衝撃工具鋼があります。
この場合、炭素を少なくし、クロム(Cr)・タングステン(W)を加えて浸炭焼き入れを行なって製造されます。鏨やポンチに使われている素材がこれです。

逆に炭素を多めに調整し、クロム(Cr)・タングステン(W)を除いて、バナジウム(V)を添加することにより、バナジウム(V)で形成されるカーバイトを活用した素材も開発されています。
このバナジウムのカーバイトは非常に硬いのですが、鋼の結晶を細かくしてしまうという弊害も発生します。こうなると、今度は焼き入れ性が悪くなってしまいます。
このような場合には、日本刀と同じように水焼き入れを行なって表面を硬くすることで、外側は硬く内側は軟らかい構造を作り出すことができます。
この構造は、耐衝撃性に非常に優れており、削岩機のピストンなどに用いられています。

同じ鉄でも、添加する微量元素によって全く違った性質になるという、合金鋼の奥深さを感じます。
そして、熱処理という数千年前から行なわれている加工技術の神秘を感じずにはいられません。

小柄の白鞘制作・ハバキ制作・研摩 その3

2013-03-07 21:08:02 | 刀身研摩
かねてより工作を続けてきた三振りの小柄が完成しました。
この小柄が最後の一つになります。



前の二振りは、合口拵型の白鞘を制作しました(お持ちになる方が女性ということで、懐剣代わりにお使いいただければ・・・という思いから考案しました)が、今回は本来の用途である「休め鞘」の形状をした白鞘です。



刀身の研摩では、特に焼刃を強調するため、差込研ぎの上から後刃を軽く拾って仕上げました。
ハバキは銅一重で制作し、特に意匠を施しませんでした。

これにて、小柄工作は終了です。

これは感想ですが、小柄の研摩は刀剣に比べて難しいと感じました。
短さもさることながら、重ねが薄いために力を入れて研ぐと、湾曲してしまいます。
微妙な力加減が要求されます。

ミニハバキ代:6000円
白鞘代:8000円
刀身研摩代:9000円