徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

創作拵(パート2)

2011-08-24 15:04:16 | 拵工作
前回「創作拵」(2011年8月4日)にてご紹介した拵えの鞘塗りが完了しました!

柄前完成時の様子↓
http://blog.goo.ne.jp/kosiraeshi/e/9ca2746eb2d9cf6836925b73b9e6d2ea



鞘の特徴は、鞘尻周辺を鮫皮の研ぎ出し加工で作成したことです。これにより、武道の稽古などにも耐えうる強度を加味しました。
また、鞘を掃った状態で、手元にバランスが来る様にお刀を仕上げたため、お刀を身に佩びた時のバランスを調整する必要がありました。
そこで、若干コジリ側を重くすることにより、長時間帯刀しても疲れない拵えに仕上げました。
帯刀時のバランスを考えることも鞘作成時の醍醐味です。



鞘塗りは、斜めに塗り方を変えて、鯉口方向から石目、蝋色、鮫研ぎ出しになっています。


目釘

2011-08-19 13:47:25 | ブレイク
この写真は孟宗竹製自在鉤の支柱部分です。



古民家のご当主からお分けいただきました。
既に築100年以上経つ歴史ある古民家ですが、ご当主が幼少期から自在鉤の支柱はこの竹であったといいます。
実に一世紀近い年月を経ていることになります。
そんな貴重な孟宗竹を加工してしまうのは勿体無い!とも思いますが、これ以上の目釘材はありません。



これだけあれば、一生目釘に困らないほど制作可能ですが、大切に使っていきたいと思います。

ちなみに、古民家は、年々その姿を消しています。
この自在鉤をお分けくださった古民家も、すでに取り壊しが決まっているとか…。
薄れゆく日本の原風景を思うと、悲しい気持ちになります。

三鈷柄

2011-08-18 22:15:59 | 拵工作
暑い日々が続きますね。
こう暑いと、工房に閉じこもって工作をしようにも、集中力が続きません。
そんな時、自然と図書館や古本屋へと足が向きます。
刀剣工作のための知識とヒントを得るために、本や論文から情報を吸収する必要があるからです。
まさか!と思うようなところで、長年悩んできた問題解決の糸口を掴むこともあります。

さてさて、本日はチェーン店展開をおこなう古書店へ出かけました。
そこで手にした修験道関連の書籍の中に、興味深い写真を見つけました。



現近代作の三鈷柄剣を拝見すると、そのほとんどは銀製の一体型です。
入子状になっており、刀身に直接触れる部分はホウの木で作られている物や、全て銀無垢の柄前など、様々な工作を見ることができます。
何れにしても、上記の写真の様に、縁頭が爪状になっている拵えは稀です。

写真を拝見する限り、かなり古い柄前であることが判ります。
柄巻きは、茶色系の柄糸が諸摘み状に巻かれています。
この工作なら、飾りの三鈷柄と比べ、使用感が格段に良いでしょう。

実用を考えて作ることが、本来の拵工作です。
この拵えは、非常に特殊な形状をしていますが、実用性を再認識できる典型的な外装だといえます。

創作拵

2011-08-04 18:09:09 | 拵工作
創作的な柄前が完成しました。



当該拵は、掟や伝統にこだわらず、自由な発想で拵えました(鞘は、工作途中)。
刀装具は、ご依頼者様の持ち込みですが中国製…、まったく日本刀を理解していない作り込みに憤りを感じます。

当工房では、時代金具又はしっかりした現代金具の持ち込みのみ、ご対応させていただいております(基本的に中国製鋳物など、破損の可能性のある金具はお断りします!)。

今回のご依頼は、よっぽどの事情がおありとのことで、例外的に工作をお受けいたしました。



全ての工作をお任せいただきましたので、創作的な拵工作に挑戦しました。
理由の一つは、掟も何も踏襲していない金具ですので常識が通用せず、私自身が固定概念を捨てる必要があったためです。
鮫皮には、根付の色合いを表現すべく、漆塗りで色彩を調整しました。深みのある色を出すために何度も色の違う塗料を調合して薄く塗り重ねました。



柄巻きは、鶯色の正絹にて諸捻り巻きを施しました。目貫部分のみ諸摘み巻きです。



居合を抜きやすいように、鞘をはらった状態でのバランス・柄成・厚み・鞘に収めた時のバランスを考慮して工作しました。

ちなみに、当工房のこだわりとしまして、使用者様と刀身を可能な限り理解した上で、拵え工作に取り掛かることを信条としています。
納得の拵え工作のためには、使用者様との握手に始まり、お稽古の見学や思考の解釈に勤めています。
また、刀身との対話のために、刀匠の作刀姿勢や材料、時代背景の調査も欠かせません。



本来、中国製の刀装具を用いた工作をお受けすることはありませんが、番外編ということでご紹介しました。