徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

天正拵

2014-09-10 01:10:26 | 拵工作
前回に引き続き、天正拵を作成しました。



今回は、より天正拵の掟に忠実に製作した写し拵えです。



当初、試斬用の研摩にてお預りしていたお刀でしたが、柄下地の破損により大変危険な状態であったため、柄前一式を新規作成いたしました。



斬馬刀のようなゴリッとしたお刀であったため、サイズの合う刀装具が手に入らず、当工房にて縁金具を新たに作りました。本歌の天正拵は、柄縁の腰が比較的低い傾向がありますが、強靭性を考えると若干腰高に作った方が実用的だと思います。
(柄縁製作時の記事はこちら!→・「柄縁の製作」(2014/05/09)



柄頭は水牛の角から削り出して漆で仕上げ、同様に一枚巻きの鮫皮も漆で塗り固めました。



鍔は、室町時代の甲冑師です。
室町末期の実戦的な拵えとは、このような武骨で強靭な拵えが主流であったと思います。

納期に間に合わせるために、連日徹夜をして仕上げました。
今晩は、ぐっすり眠れそうです。

形居合用柄前調整

2014-09-09 23:24:16 | 拵工作
柄巻きが完了しました!



牛革の柄巻きを黒色の鹿革に変更しました。



柄巻きと同時に、使用感に大きな影響を与える柄下地の調整を行ないました。



少々極端な下地の修正箇所の解説になりますが、劇的に使用感が改善します。



革紐の柄巻きでは、安価な材料を用いると繋ぎ目が表に見えることがありますが、当方では掟に従って短い革紐を縫い合わせて使用しています。



銀製の現代金具を色揚げして、再度組み上げました。



武道に用いると、どうしても指との接触面が削れて錆が落ちてしまうため、鍔の色揚げも施しました。



後は納品を待つばかり!

天正風拵え

2014-09-03 02:51:50 | 拵工作
時間をかけてゆっくりと作り上げてきた拵えが完成しました!



手間も材料も鑑賞用の拵えと同等の仕上がりにこだわっていますが、武道用途の外装です。
この度は、天正拵えの掟に乗っ取って製作しました。



刀身は幕末以降近代に作られたお刀で、身幅が広く大切っ先の体配で、先反りが付いた一見変った形状をしています。龍の刀身彫りが見事で、白鞘の状態から工作を開始します。
コストを抑えるため、鞘は白鞘を加工して製作し、漆塗りは当方にて実施しました。(漆塗りは、本業ではないので材料費と実費程度・・・)



鍔と目貫は、オーナー様の持込みです。目貫は柄前に組み込む前に当工房にて加工を施しました。
(目貫加工時の記事はこちら!→・「鍍金加工」(2014/08/17)



柄成りは、試斬などに多用するため強度を意識し立鼓を浅くとりました。長さは、8寸5分強とし、刀身の重さをカバーするため若干肉厚に仕上げています。



鮫皮は、一枚巻きに漆で塗り固めて、鞘とのコントラストを調整し、柄糸は、鹿革を何枚もつなぎ合わせてつなぎ目を隠すために片摘みで巻きあげました。



鞘は溜塗りですが、いまいち締まらないのでアクセントを鯉口部とコジリ部に施しました。鞘形状は、差し裏の腰に接する部分の肉を落とし、長時間の帯刀にも疲れが来ない様に仕上げました。

外装は、刀身のスペックを最大限に生かし、かつ使用者に合わせた調整や使用方法に則した加工をすることができる唯一の装置です。
そのため、当工房では、長期間にわたる対話を繰り返しながら外装製作に取り組んでいることが最大の特徴です。

試斬用刀剣の外装修復

2014-09-03 01:54:51 | 拵工作
鞘の修復を期に、鯉口周辺の補強と塗り直しを施しました。



元々の鞘は、安価な石目塗りの規格鞘でしたが、鯉口を補修するために銅で鯉口金具を作製し、周囲を鮫皮で補強しました。



その際、鯉口周辺を鮫皮で一枚巻きにして、差し裏中央部で合わせるのがポピュラーな工作法ですが、せっかくなので鮫皮を均等サイズに切りだして、グルグルと巻き付けてみました。
これで、つなぎ目から剥がれるなどの綻びは発生しないでしょう。

また、石目塗りのウレタン塗装を削り落して、漆で呂色に塗り直しました。

(鞘修復時の記事はこちら!→・「鞘の修理・加工・補強」(2014/08/27)

後は納品を待つのみ!