門前の小僧

能狂言・茶道・俳句・武士道・日本庭園・禅・仏教などのブログ

千鳥の香炉を転がす利休。

2013-09-20 20:59:50 | 茶道
月がきれいな夜です。
名月にちなむこんな逸話をご紹介しましょう。

先日、銀座カルチャー講座で、『茶話指月集』を読みました。
段落骨子は以下。


さる名月の頃、利休邸にて、細川幽斎・蒲生氏郷を招き茶会が催された。



茶事は滞りなく進行し、主客満足の体にてはや刻限も過ぎる。

客が立とうとする時分、氏郷がふと、
「お師匠様。近頃入手された〔千鳥の香炉〕をぜひ拝見したいものですが」
と申し出る。

利休の面色はたちまち険しくなり、勝手に下がったかと思うと、
千鳥の香炉を手に持ち帰り、灰をざっと捨て、香炉をごろごろ転がして客に見せた。
声もなく、彫像のごとく固まる氏郷。

しかし、正客の幽斎はにこりとほほえみ、
「清見潟の心ですな」
というと、利休の機嫌も直り、
「いかにも。仰せのごとく」
と答え、打って変わったご機嫌の体であったという。


千鳥の香炉は当時、利休の念願がかなって入手した東山御物の大名物です(連歌師宗祇より値千貫にて譲られたとか)。
さて、この茶会では、千鳥の香炉はもともと予定になく、通常の仕立てにて万事進行し、主客なごやかに茶会を終ろうとした。
そこへ予定外の氏郷の所望。
「今日の茶事も無事終ろうとするのに、今に及んでなにゆえ無粋な横槍を入れるのか。憎きは千鳥なり」
この時利休の脳裏に浮かんだのが、順徳院の名歌でした。

清見潟 雲も迷わぬ 浪の上に 月の隈なる 群千鳥かな (順徳院御百首)

(名所清見潟には一片の雲もなし。その冴え冴えとした波の上にあたかも月の影(雲)のように千鳥の群れが飛び交っていく景色の面白さよ)

幽斎は当代一の歌人です。瞬時に利休の心を読み取った眼力にはまさに驚くほかありません。


この逸話と歌については、千鳥を「邪魔者」としたのか、はたまた「風流」として褒め称えたのか、という二種の解釈がある。
(一点の曇りもない完璧な名品を、侘び数奇はむしろ嫌ったという見地から)(利休の見地はむろん「邪魔者」でしょうが…)

講座でも、受講者の間でこもごも意見が交わされ、歌の解釈は人それぞれ…とひときわ面白く感じたものでした。

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数奇者秋の陣。三井・五島・根津美術館

2013-09-17 10:05:04 | 茶道
9月より年末にかけて、三井記念美術館・五島美術館・根津美術館にて、順次茶道具名品を堪能する、特別企画展示が開催されます。

1. 特別展 国宝「卯花墻」と桃山の名陶 ―志野・黄瀬戸・瀬戸黒・織部―
 三井記念美術館 2013/9/10~11/24
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

2.光悦 ―桃山の古典(クラシック)―
 五島美術館 2013/10/26~12/1
http://www.gotoh-museum.or.jp/exhibition/next.html

3. 特別展 井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ
根津美術館 2013/11/2/~12/15
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/next.html


志野茶碗の国宝「卯花墻」をはじめ、織部菊文茶碗、瀬戸黒茶碗小原女、織部亀甲縞文水指などの名品が一堂に会する三井美術館の特別展。
茶陶・書・漆器など、本阿弥光悦の美の全貌に迫る五島美術館。
さらに今回、大徳寺孤篷庵から出品される井戸茶碗の最高峰、国宝大井戸茶碗 喜左衛門を筆頭に井戸の名作を揃える、根津美術館の特別展。

茶道具ファンのみならず、すべての美術愛好家にとって「日本の美」「真の品格」を身近に体感する、めったにない好企画展となりました。
なお今回、上の各展は「三館合同キャンペーン 茶陶三昧三館めぐり」として互いに連携。
チケットの半券を呈示すれば、他の2館が割引にて鑑賞できます。
また3館の企画展すべてを鑑賞した方には、次回展示の無料チケットが提供されるスペシャルな特典も。

信長・秀吉・家康の心を躍らせ、利休・織部・遠州が手にして唸った極めつけの名品を一度に拝観できるとてもよい企画展示となりました。
秋の美しい一日、日本橋、表参道、二子玉川近辺を散策しながら、ゆったりと楽しんでみてはいかがでしょうか。
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9/5(木)中日文化センター「禅と日本建築・庭」

2013-08-30 11:05:50 | 茶道
来週9/5(木)は、栄中日文化センターにて「禅と日本文化」、「千利休日本の美の原点」の2講座開講!禅と日本文化は、禅と日本建築・庭がテーマ。寝殿造・書院造、浄土式庭園、枯山水など、神仙思想や仏教、禅とのかかわりをふんだんに画像を使用してご案内します。

「千利休日本の美の原点」では、利休茶の継承者、古田織部と織田有楽に焦点をあて、今日に続く茶道の美の系譜を解説します。国宝茶室如庵と織部茶碗の画像も鑑賞します!



■名古屋栄中日文化センター 2013年4月期定期講座
http://nobunsha.jp/img/kozalist.pdf

1.禅と日本文化 〔第六回 禅と日本建築・庭〕 毎月第一木曜日 13:00-
2.千利休日本の美の原点 〔第六回 美の継承 織部・有楽〕 毎月第一木曜日 15:30-

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禅と茶道

2013-07-12 20:34:02 | 茶道
メルマガ最新号、禅と茶道【言の葉庵】No.54発刊しました。
http://archive.mag2.com/0000281486/index.html

室町時代、村田珠光と一休宗純の運命の出会が、この日本に茶道という奇跡の文化をもたらしました。
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4/18(木)銀座おとな塾「千利休と侘び茶の世界」

2013-04-16 20:22:29 | 茶道
4/18(木) 10:30~
銀座おとな塾産経学園にて
「千利休と侘び茶の世界」講座があります。
http://p.tl/t0hu

千利休の秘伝書『山上宗二記』を読解。
今回は、同書〔茶の湯者の伝〕〔師に問い置いた秘伝と拙子の注〕、
さらに〔別本 山上宗二記奥書〕を読みすすめます。

とくに〔別本 山上宗二記奥書〕には、利休当時の茶道具の匠一覧リスト(秀吉の天下一称号を得た者たち)と、利休茶最奥の秘伝十か条を収載。
その内容はまさに一驚せざるを得ない、秘伝中の秘伝といえます。
利休七哲にすら伝えず、もっとも信頼した一番弟子宗二にのみ
相伝したのも肯かれる内容です。

曰く、
「媚びた、たけた、侘びた、愁えた、道化た、花やかに、物知り、創意、華奢に、強く。右十ヶ条の内、よくその意を心得た人を上手という」
「利を捨て、目を開くこと。秘伝なり」
「源氏物語〔箒木〕の巻を紹鷗は、逍遥院殿から聴聞した。〔蘭省花時錦帳下、蘆山雨夜草庵中、山家〕のところである」
…などなど。

岩波文庫版にはこの〔別本 山上宗二記奥書〕は収録されていません。
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