2月11日 (日曜日) 晴れ 夕刻 冷たい風が出た。
「高漂浪き」と書いて「たかされき」と読む。
熊本県水俣のことばだそうだ。
何かの声や魂にいざなわれ、さまよい歩く。
そんな意味らしい。
~~~~~~~~~~~~~
▼その作家はその地元の言葉についてこんな説明をしている。
「村をいつ抜け出したか、月夜の晩に舟を漕(こ)ぎ出したかどうかして
、浦の岩の陰や樹のかげに出没したり、舟霊さんとあそんでいてもどらぬことをいう」
(『苦海浄土』第三部・「天の魚」)
▼水俣病患者の苦しみを描いた『苦海浄土』などで知られる作家の石牟礼道子さんが亡くなった。
九十歳。その作品は水俣病への世間の注目を集めるきっかけとなった。
▼「高漂浪き」の人だったのだろう。
米本浩二さんによる評伝の中に、こんな話があった。
一九五八年、水俣病に関する熊本大学の報告書を読んで、
まるでその苦しさが自分に伝わったかのように、
しばらく寝込んでしまったそうだ。
▼人間の痛み、悲しみ、怒り。そういうしゃがれた声や叫びのする
場所へと自然とさまよい歩きだし、
声に触れ、痛みをわがもののように感じる。
ときに死者の声さえ聞こえる。
その心こそ作品にあふれる迫力と、
不思議な透明感の秘密なのか?
▼「義によって助太刀いたす」。
『苦海浄土』は弱い立場の人を助けたい一心で書いた。
「高漂浪き」の義の人は今、どこをさまよっているんだろう。
たぶん、人のすすり泣く声がするところである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
恐ろしい病。
水俣病のことクリック。
「高漂浪き」と書いて「たかされき」と読む。
熊本県水俣のことばだそうだ。
何かの声や魂にいざなわれ、さまよい歩く。
そんな意味らしい。
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▼その作家はその地元の言葉についてこんな説明をしている。
「村をいつ抜け出したか、月夜の晩に舟を漕(こ)ぎ出したかどうかして
、浦の岩の陰や樹のかげに出没したり、舟霊さんとあそんでいてもどらぬことをいう」
(『苦海浄土』第三部・「天の魚」)
▼水俣病患者の苦しみを描いた『苦海浄土』などで知られる作家の石牟礼道子さんが亡くなった。
九十歳。その作品は水俣病への世間の注目を集めるきっかけとなった。
▼「高漂浪き」の人だったのだろう。
米本浩二さんによる評伝の中に、こんな話があった。
一九五八年、水俣病に関する熊本大学の報告書を読んで、
まるでその苦しさが自分に伝わったかのように、
しばらく寝込んでしまったそうだ。
▼人間の痛み、悲しみ、怒り。そういうしゃがれた声や叫びのする
場所へと自然とさまよい歩きだし、
声に触れ、痛みをわがもののように感じる。
ときに死者の声さえ聞こえる。
その心こそ作品にあふれる迫力と、
不思議な透明感の秘密なのか?
▼「義によって助太刀いたす」。
『苦海浄土』は弱い立場の人を助けたい一心で書いた。
「高漂浪き」の義の人は今、どこをさまよっているんだろう。
たぶん、人のすすり泣く声がするところである。
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恐ろしい病。
水俣病のことクリック。