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第十夜 怪談 この家のヌシ

2009-08-15 06:20:27 | 不思議夜話
 おはようございます。


 いよいよ「不思議夜話」も10話目になります。
今日の話は、厳密にいうと怪談ではないのですが、ちょっと気味が悪いので載せることにしました。


 第9話でも書いたように幼い時、親戚のオッチャンの家に、夏休みになるとよく遊びにいったものだ。


 オッチャンの家は、かなり山奥に在ったのだが――
ある日、深夜に台所の居間の横にある和室で寝ていると台所で物音がする。



ゴト、ゴトゴト……
目が覚めた。
「はて?何の音?」
と思っていると



チュー、チュー
ネズミだった。


 しかし、そのうちしだいに物音が大きくなって騒がしくなってきた。



ゴトゴト……、チュー、ゴト! チューーーーーーーーー!!
まるで断末魔のようなネズミの鳴き声がしだした。


 尋常じゃない鳴き声に、僕は怖くなって(幼い頃は、かなりのヘタレだった)布団をかぶって震えていると――



ドッ! ドターーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
 もの凄い音を立てて、台所の床の上に何かが落ちのだった。
ネズミが棚の上の物を落としたのかと思ったが、どうやら違うらしい。


 布団の中から耳を澄ましていると
ジューーーーーーー!ジュ・ジュ・ジューーーーーーーー!!


 生まれてこの方、あんなネズミの鳴き声を聞いたことのない声で鳴いている。
「ただ事じゃない!」
子供ながらにも、そのように感じて息を殺していると、やがて鳴き声が止まった。


 そのまま、まんじりともせずに朝まで布団をかぶっていた。
夜が明けて、辺りが明るくなった頃に布団から抜け出して、台所へ行って見ました。


 すると、もの凄い音がした床の辺りに血飛沫がいたる所に付いていた。
ただ1箇所、全く血が付いていない箇所があって、その跡が蛇の形になっていた。
それも1メートルは有にある跡だった。


 婆ちゃん(オッチャンは親父の兄さんで、婆ちゃんはオッチャンの家に同居していた)曰く。
「そりゃ~、家の主だろうよ。狩りをしてネズミを獲ったんじゃ~」
とのことだった。


 また、ある日には、夏の炎天下で遊んでいたのでノドが渇き、水を飲みに台所にある裏口から流し台に向かった時、蛇口を捻ろうと手を伸ばすと、そこに居るモノと目と目が合った――



「ぎょ! ぎょぇぇぇぇ~~~~~~!!」
なんと、蛇口に絡むように真っ黒な大きな蛇がとぐろ巻いて、赤い目でこっちを見ていた。


 1メートルくらいはありそうで、二又に分かれている赤い舌をチョロチョロ出していた。
あまりのことに、とっさに2~3メートルくらい後ずさって、蛇を刺激しないようにその場を離れたのだった。


 そして仏間に居た婆ちゃんのところへ一目散に駆けつけて、いま見たことを話した。
すると婆ちゃん曰く。
「きっと、あまりに暑いんで、主さんは涼んでおるのだろうて。何もせんから、ほっときな」
といわれた。


 しかし、僕がとても怖がる(やっぱりヘタレだったのだ)ので、婆ちゃんは
「しょうがないのう~。蛇は線香の煙を嫌うから、これをもって近くにおいておいで」
といって、2、3本の線香に火をつけて渡してくれた。


 それをもって蛇の近くに置いたのだ(ひとりでは行く勇気がなかったので、婆ちゃんと一緒に行ったことは云うまでもないことである)。


 そうして、そのまま放置していたら、何処かに消えてしまった。


 その時以来、家の主は実在するものだと実感した不思議な話でした。


 あなたの家にも居るかもしれない……