子 ど も が は い た 時
ど う す れ ば 良 い か
☆こどもがはく原因は
1)よくあるのは、かぜなどで咳こんだ為にはく時で、たんがのどにからんで、舌の奥の押すとゲーッとなる場所に、たんがへばりついてうまく出せないのではく
のです。この場合は、はいた物を見れば、中にぬるぬるした、鼻汁のようなたんがまじっています。この場合は咳がおさまれば、はくのもおさまります。
2)次は「おなかのかぜ」と言いますが、ウィルスによる胃腸炎です。この場合は、下痢や熱を伴うことが多いのですが、はくだけで終ることもあります。5才以下では、普通のかぜのウィルスでもなりますが、ロタウイルス、アストロウイルス、腸管アデノウイルスが多く、乳幼児ではロタウィルスなどではしばしばひどい嘔吐下痢症になり、水分補給を間違うと重症の脱水になり、死に到ることもあります。8才を過ぎると、大人でも嘔吐下痢を起こすような胃腸専門のウィルス(腸管ウィルス-例えばノロ・ウィルスなど)しか起こさなくなります。一年中ありますが、主に冬に多い。
☆嘔吐の合併症
繰り返し、はくことによって、体力を消耗し、乳幼児では脱水になりやすいのです。はいた物を誤飲して、気管支に入り窒息する危険があります。はき気がある時は、顔を下か、横に向かせて、口の中からはいた物を、はき出すようにして下さい。4才すぎたら、めったにひどい脱水にはならなくなります。
☆はくのを止めるには
胃腸炎ではく時には、胃腸に飲食物が入っていると、はきますので、飲んだり食べたりさせずに、お腹を休めてやることが第一です。(→食事療法、飢餓療法)この場合、はくことや下痢をするのは、身体の中にある悪い物を体外へ出してしまう為の、身体の自然の反応なのです。これを薬で止めることはできないのです。「はいても良いから飲ませなさい」というのは、間違いです。
残念ながら吐き気を効果的に止める飲み薬はありません。吐き気止めの薬は、坐薬や飲み薬がありますが、余り効きません。あとは注射か点滴になります。
●胃の粘膜は変化がなく、胃の働きがおちて、胃の中に食べ物が残り小腸へ出て行くことがわかっています。だから飲食させずに、胃を休めることが大切です。
☆食事療法のやり方
1)繰り返しはく時は、飲んだり食べたりするのを、すべてやめさせます。
○夕方はく時は、一晩寝てくれれば翌朝にはおさまることが多いのですが、朝起きてからはく時は、最低3~4時間、通常5~6時間(ひどい時は8時間)、飲んだり食べたりさせなければ、はき気は99%おさまります。
○はいた時に、脱水が始っていれば、のどが乾いて水を飲みたがりますが、飲ませてはいけません。どうしてもがまんができなければ、最低3時間以上たっていたら、氷の小さいかけらをなめさせて、がまんさせます。乳児は無理です。
○普通おなかはすかないことが多いのですが、すく時は硬いなめるあめをなめさせてがまんさせます。
2)回復が始まると吐き気がおさまり、のどがかわきます。
はき気がおさまったら、まず飲み物から始めます。砂糖湯、お茶類、水などから始めますが、砂糖が5%くらい入っている方が、何故か吐きにくいようです。
少しずつ時間をおいて、少量回数多く、ちびちび飲ませるのが吐かないで済むこつです。大人でも同じです。5~7歳くらいまでは、厳格にして下さい。その年齢を過ぎると、適当にしても吐かないことが多くなります。
吐き気が止まったら、
○コップに一口分だけ入れて飲ませ、20分位待ってはかないのを確かめて、まだ欲しがったら、次は二口分飲ませます。コップには必ず二口分だけにします。また20分位待って、はかなければ、次に欲しがったら三口分飲ませてもよいです。欲しがらない時はあげません。
○こうして少しずつ飲ませながら、はかないのを確かめて進めて行きます。
○もし又はいたら、また3時間飲ませずにいて、始めの一口からやり直します。
3)少しずつ飲む量をふやして、コップ1/4杯までふやします。それ以上はふやさずに、欲しがれば20分位おいては繰り返しチョコチョコ飲ませます。
4)コップ 1/4杯飲ませても、はかないようなら、リンゴジュース、みそ汁の汁だけ、乳酸菌飲料など、サラサラッとした飲み物を飲ませてもよいですが、量はふやさずにコップ1/4杯までとします。(丸一日はかなければ、飲む量の制限は解除してよいです。) ただしコーラや合成飲料や炭酸飲料、つぶつぶジュースなどはさけて下さい。高濃度の糖分と脂肪がよくないようです。
それで、はかなければ、オレンジジュースや牛乳を飲んでも良いですが、量はコップ 1/4杯を守り、牛乳はふっとうさせたものを、膜を取って飲ませて下さい。ふっとうさせたあと、冷たく冷やしてもよいです。生ぬるい牛乳の方がはきやすいものです。また脂肪が吐き気をもよおします。砂糖を入れてもよい。
5)おなかが回復してくると、食欲が出て、おなかがすきます。始めはあめでもなめさせて、がまんをさせるのですが、本格的におなかが回復してくると、あめをなめた位ではがまんが出来なくなりますから、固形食に進めます。
◇固形食の中では、消化の良い順は、欧米式の離乳食の順で考えて行きます。
①果物、特にバナナ、リンゴが良く、その他ジャムになるような果物や、メロンや西瓜のようにやわらかくつぶれるものがよく、みかん類、柿やパイナップルなどは、さけて下さい。みかん類の汁だけ飲むのは構いません。
②次が野菜類で、やわらかく煮えて、煮つぶしができる野菜、例えば人参、大根、ほうれん草、いも類などがよく、ごぼう、れんこん、きのこやたけのこなど、煮ても硬さがとれないものは避けて下さい。乳幼児ではねぎ類も避けて下さい。
果物や野菜は、お腹がすいてがまんできなくなってから与えます。
③第三が米、麦などの穀類です。おかゆ、おじや、パン、うどん、カステラなどがここに入ります。おも湯を作ることはありません。焼き立てのふかふかしたパンならそのまま食べてもかまいません。バターやジャムを使ってよいです。
はき気がおさまったばかりですぐ穀類を食べると、またはいてしまうことがしばしばあります。消化に時間がかかる為、回復が長引くことが多いので、果物で満足できなくなってから与えます。でも本当にお腹が回復すると、穀類を食べないと、おなかがもたないです。
④もうここまで来たら適当にして大丈夫です。でも、うまくいかない時は、様子を見ずに、電話または来院して下さい。
☆脱水症状の見分け方
子どもは、まず尿量が減り、それから尿回数が減ります。一番の目安は体重で、はき始めたらすぐ体重を量り、体重で判断するのが正確です。脱水で体重が減りますが、5%以下なら軽症、7~8%は中等症、10%で重症で、10%を超えると死亡する危険があります。中等症以上で点滴が必要です。
症状としては、意識がうとうとして刺激があると目をあけますが、すぐうとうとし(眠いのではありません)、涙や唾液がでなくなり、唇や舌がかわいて、尿も出ず、手足も冷たくなります。うとうとするのを眠いのと間違えないこと。
どうしても、はき続ける時は、小児科医がいる病院へ行くことです。
私のやり方を守ってくだされば、99%大丈夫ですが、まれに、うまく行かなければ脱水が進行します。若い時に、点滴が間に合わなくて、死んだ子どもを沢山見ていますが、皆、はいてもはいても、飲み物を飲ましていたのです。吐くと、飲んだ分以上に、自分の唾液や胃液、逆流した十二指腸液(黄色や緑の液)をはき、飲まないよりも脱水の進行がはやいのです。吐き気が止まらず、様子がおかしければ、必ず受診して下さい。繰り返して言いますが、うとうとしているのは、脱水の中等度の症状で、眠いわけではないので、ぐったりしてうとうとしていたら、あわてて下さい。起きるのを待ってはいけません。 私の経験で、朝、吐き出してから、夕方にひどい脱水になった子どもは、皆3歳以下で、数え切れないくらいの嘔吐と、水様の下痢と、38.5℃以上の発熱がありました。4歳過ぎたら、すぐにはひどい脱水にはなりません。 吐き始めたら、胃を休めること。これをすることが、ポイントです。 小児科黒部信一