黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

育児とゲノムの話

2017-07-11 15:49:23 | 予防接種、育児法
私の読書の抄録です。少しは判りやすく書いたのですが、まだまだ難しく、大変ですが、興味のある方はお読みください。

 最初は、「遺伝子ゲノムの話」、次は「育児とゲノムの話」です。


  遺伝子ゲノムと病気の話

 最近、ヒトのゲノム(遺伝子)の解明ができたようです。しかし、まだまだ、機能までは判っていず、言わばコンピューターのハードは判ったけれども、ソフトがまだ判らないことが多い状態なのです。でも今後、次第に解明されて行くでしょう。
 よくDNA検査という言葉を使いますが、実際に調べているのは、そのごく一部ですべてではありません。確率的に99%程度になる範囲での検査です。すべてを検査したら、膨大で高額な費用と時間がかかります。ですから、DNA検査をして、違う鑑定が出てもおかしくないのです。
 現実に、あなたのDNA、ゲノムを調べることはできますが、がんの遺伝子を持っていても、環境やストレス対策をすれば発病する訳ではないし、定期的に検査してもよいのですから、まずそれよりも、遺伝的関係のある親族の病気を調べれば、どんな病気にかかるか大体のことが判ります。
 ほとんどの医師は、すべての人が、すべての病気にかかる可能性があると考えていますが、そうではありません。遺伝的素質プラス環境要因で発病しますから、同じ遺伝子を持っていても、発病するとは限りません。それは、あなたしだいです。その遺伝的素質の話をします。

ヒトの体は約60兆個の細胞をもっています。1個の精子と1個の卵子が結合して1個の細胞を作り、それが倍々と分裂して増え、60兆の細胞になってヒトとなります。そしてそれぞれに同じDNAをもちます。生殖細胞(精子と卵子)のDNAは遺伝し、突然変異も遺伝します。体細胞の突然変異は遺伝しません。
 ヒトの卵母細胞は出生時200万、45歳では3万4千個で、毎月成熟して卵子となり排卵します。精子は1回の射精で5億個あり、その約半数は欠陥をもっていますが、何らかの監視機構が働いて欠陥のない1個の精子が受精します。だから普通は正常の精子が受精しますが、監視機構がうまく働かず、欠陥がある精子が受精すると流死産することが多いのです。卵子にも監視機構が働いている可能性があります。そして間違って生まれても乳児期に死亡します。
これが歴史の中で繰り返され、先天性の病気を持った子が生存できるようになってから100年たっても、先天性異常の子の生まれる率は殆んど変わっていません。精子と卵子の欠陥のある細胞をはじき出す監視機構はまだ判っていませんが、その存在が推定され、その働きがうまくいかないのは環境因子によると考えられています。

 ねずみの実験では、密集して飼育されているメスは妊娠しにくく、適度に個体が離れて飼育されていると妊娠します。ヒトの女性の10%が不妊に悩んでいるといいますが、そこには何らかの環境因子(自然環境、社会環境、感情または情緒的環境、ストレス)が作用していることが考えられます。そこを変えようとせずに、人工授精や体外受精やさらには他人の子宮で成育させることをするのは、おかしいと思います。子どもが欲しければ、まず第一に、環境を変えることですし、それが難しければ、養子を貰えばよいと思います。徳川15代の将軍家では養子が少なくありません。

DNAは、体細胞では60億塩基対、生殖細胞では30億塩基対あります。(AとT、GとCが対。詳細略)
細胞分裂のたびに、10億塩基対に1回くらいの間違い、つまり体細胞では6箇所くらいの間違い(突然変異)が生じます。紫外線、放射線、化学物質などの影響を受けて突然変異を生じ蓄積していきます。またフリーラジカルによっても損傷を受けます。体細胞に対しても監視機構が働いていて、欠陥細胞を破壊します。このシステムが免疫系にあります。この監視機構が働かないか、突破された時に病気になります。その原因に環境因子が働いていると考えられています。前述のように体細胞の突然変異は遺伝しません。一代限りです。
生殖細胞1個におきる塩基の置換(複製の際の間違いなどによる)は600万箇所にのぼり、代々子孫に伝えられます。だから代々変化して伝えられています。

遺伝子は環境条件に左右されます。ある種の環境でなら、ある形で発現します。遺伝子は、特定性(発達や環境に左右されない)と可塑性(環境の変化に適切に対応する能力)をもっています。遺伝子と環境は相互に影響しあうのです。
遺伝子は、1世代で100の変異を蓄積しています。
遺伝子発現に、強力な調節システムが存在しています。

アレルギーは10人に一人がもっています。しかし、喘息は生活そのものなのです。喘息の遺伝子候補は15個みつかっていますが、第5染色体上に8、第6染色体に2、第12染色体に2、第11、13、14染色体に各1あります。IgEを構成する二つの部分が、第1染色体の2個の遺伝子によって作られています。最近の研究では喘息遺伝子候補は3個にしぼられ、特に1個が有力だといいます。しかし、遺伝子をもっているだけでは病気になりません。病気の候補生に過ぎないのです。

 遺伝子には、調節領域があり、ここに入力されて遺伝子にオン・オフの情報が入り、出力蛋白質の領域で蛋白質が作られ、蛋白質が出力されて出て行きます。
だから遺伝子は、あるだけでは働かないのです。遺伝子にスイッチが入ると機能するのです。遺伝子にスイッチを入れるのは、外部の環境や自由意志による行動にあります。
ストレスが遺伝子のスイッチをオンにします。その働きをしているのが、ジャンク(がらくた)遺伝子と呼ばれていた、働きの判らない多数の遺伝子と考えられるようになりました。その遺伝子を動かすのが、環境要因(外部の自然環境、社会環境、内部の心理的、情緒的環境、さらに自分の意志)です。

一卵性双生児は全く同じDNAを持つのに、ほとんどの場合、統合失調症、躁うつ病、若年性糖尿病などの遺伝的要因が強い病気に、1人がかかっても、もう1人はかからないのです。
気管支喘息の研究では、一卵性双生児の一人がなった時に、もう一人がなる確率は25%と言われています。他のアレルギー疾患も同じと考えられています。現在先進国の喘息は、人口の10~20%と言われています。現代で増えているというアトピー性皮膚炎も、最大で30%~10%という数字が出されています。調査集団によって違うので、やはり環境要因によって異なるのではないかと考えられます。しかし、最大でも30%で、それ以上はならないですから、誰でもなるわけではありません。
別の双子の研究では、成人病または生活習慣病もそうで、これらはもっと環境因子に左右されています。糖尿病は、遺伝的要因がある人が、体重を増やし過ぎた時に発病します。

遺伝子をもっているとそのまま病気になる場合もあれば、遺伝子をもっていてもスイッチがオンにならないと病気にならないものもあります。また精子と卵子から、遺伝子をもらい、同じものが2個になると発現し病気となり、1個だと発現しないが、ある種の病気に抵抗力を生じるものもあります。(アフリカ黒人の鎌形赤血球症で、マラリアに抵抗力を生じます。アメリカの黒人にも受け継がれています。)
また、ある遺伝子が壊れているために引き起こされる病気があります。
それから、遺伝子のスイッチが切れると病気になる場合もあります。とにかく遺伝子単独で病気を起こしている訳ではないのです。

遺伝子は、発達と環境の要因によって、病気を発現しまる。(これで病原環境説ないし適応説が有力な味方を得ました。)
ゲノムと脳と身体は、お互いにコントロールしています。ヒトの遺伝子のスイッチのオン・オフは外からの作用(ストレスなど)に影響される場合もあります。また、自然にその指令が遺伝子そのものに組み込まれている場合もあります。その場合は、その条件になると自然に遺伝子が切れたり、発現したりします。
ストレスへの感受性の個人差もあります。ストレスが遺伝子のスイッチをオンにします。遺伝子のスイッチを入れる何かが、外部の環境やストレス、自由意志による行動にあるのです。意図的に笑うと幸福中枢が亢進します。だから、笑いは大切です。笑うことによって、幸福感が得られるのです。
行動や社会的地位が、遺伝子の発現に影響を与えるし、遺伝子の形質発現を変化させます。よく、相撲の世界で、地位が人を作ると言います。つまり、横綱になると、自然に横綱らしくなって行くのです。
知能の遺伝子は、環境による刺激が必要です。IQは教育によって変化しうるのです。それには、教育心理学者の実験がありますが、ここでは省略します。ただし、教育する時期が大切なようです。

子宮内の事象の影響は、その後の影響の3倍だといいます。胎教といいますが、実際は母親の精神的、心理的、情緒的、身体的な要素が大きいのです。母親の環境への反応の倍以上に、胎児は反応します。子どもは母親のラウドスピーカーで、母親の心理を拡大して影響を受けます。だから、妊娠後半から乳児期にかけて、母親が恐怖や強い不安の感情をもつと、子どもは臆病になるといいます。私の観察でも、臆病な子は母親がそういう体験をしていることを確認しています。

 ダーウィンの提唱したパラダイム(概念)の3番目の概念は、適応です。進化論学者たちも「進化論も進化する」といいます。しかし、元々ダーウィンは、適応した形態についても述べています。
 遺伝子間では、競争進化があります。性に関しても、拮抗遺伝子があります。ヒトでは(哺乳類や蝿も、他はまた別)男は染色体がXYで、女は染色体がXXです。Y染色体上にある男性になる遺伝子(spy)により男性になるのですが、X染色体上にあるDAXという遺伝子が二つあるとspyに勝ち女性化してしまいます。また性染色体(spy)が駆動して(スイッチが入って動き出すと)男性になるのですが、それが妨げられると女性になります(これらが性同一性障害の一つであるのです)。
 胎盤は胎児にある父親の遺伝子による寄生体と考えられています。もちろん陣痛も、胎児によって起きると考えられています。

 遺伝子は利己的で、全体を考えてはいません。遺伝子同士の競争があります。身体は遺伝子にとっての使い捨ての乗り物なのです。利己的DNAによる、遺伝子の働きの妨害や、先祖返りの変異が起きるのです。
 ヒトでは変異の700回に1回が転移遺伝子によるものといいます。
血液型は、いずれとも相関がないようです。
しかし、遺伝子とも適応とも無関係の揺らぎ(その内に明らかになるでしょう)があるようです。
 血液型と下痢との関係
  A型 ある菌で小児期の下痢
  B型 別の菌で小児期の下痢
  O型 コレラに感染しやすい。また別の研究では、梅毒にかかりにくいようです。
  AB型 コレラに免疫がある程度。
コレラへの耐性は、AB、A、Bの順。
 O型は、僅かだがマラリアに対する耐性があるようです。また癌にかかりにくいように見えます。
マラリアへの耐性は、鎌状赤血球貧血(前述)、サラセミア(地中海貧血)にもあるし、最大で12個の遺伝子の変化で得られます。血友病は「LINE-1」と「Alu」という遺伝性の寄生体が血液凝固遺伝子に侵入した時になるのです。前述のように、鎌状赤血球貧血は変異二つだと致命的で、一つだとマラリアへの耐性をもつのです。

結核への耐性は、2つの遺伝子の変化で得られます。その一つはビタミンD受容体の遺伝子で、これは、骨粗しょう症の罹患性に影響します。
人間の5人に1人は、ABO血液型蛋白質を唾液などの体液に放出できません。この非分泌型個体は、髄膜炎、酵母菌感染、再発性尿路感染(膀胱炎など)にかかりやすいのです。しかし、インフルエンザやRSウイルス(普通のかぜのウイルスで約200種類くらいある)には感染しにくいのです。
ゲノムはわれわれの病理学的な過去が収められた記録です。ゲノムは過去の疫病の歴史が綴られた聖書で、遺伝子にプログラムされています。遺伝的耐性は、あくまでも最後の切り札です。病気に打ち勝つ手段にはいろいろありますが、・・・戦場はゲノムだけではありません。
このことは、人が病気と戦うのにはいろいろな方法があり、それには環境を変えたり、薬やワクチンを使ったり、人の栄養状態やストレスをなくすなどがあり、最後の方法が遺伝的に耐性を作ることであるということです。(これが病原環境論または適応説なのです)
過去に大流行した病気は、その痕跡を後世の人間の遺伝子に残しました。ペスト、麻疹、天然痘、発疹チフス、インフルエンザ、梅毒、腸チフス、水痘などがあります。ゲノムは人類の病理学的な過去が収められた記録というのです。それでかからなくなるか、かかっても軽く済むようになるのです。(私は、現代の若い日本人には、日本脳炎もこの中に入ると考えています)
過去に流行した病気によって、人間に耐性を与える変異ができた反面、犠牲も多く払われました。

 関係が示唆される病気とウイルスなどの関係は
  胃潰瘍        ヘリコバクター・ピロリ  大抵子どもの頃に感染している
  心臓病        クラミジア、ヘルペスウイルス
  各種関節炎      様々なウイルスと
  うつ病、統合失調症  ボルナ病ウイルス(普通は馬や猫の病気)
心臓病などへの遺伝的耐性に個人差があることは証明されています。
ゲノムが感染への耐性にかかわっている可能性があります。

第6染色体が、免疫系の自己を明確に認識し、寄生体の侵入を検知する役割をもち、とてつもなく多様であるといいます。
ヒトゲノムプロジェクトは誤解の上に成り立っています。ゲノムは変化します。ゲノムが変化しないことが前提の現在のゲノム理論は、今後変わらざるを得ず、ゲノムの学問も進化していくでしよう。
生物の身体には繁殖年齢以後は、「老化」という計画的衰退が始まるように設計されています。身体は、遺伝子にとっては使い捨ての乗り物なのです。もちろん、生物に寿命があるのは、雌雄に分かれた生物だけです。
ダーウィンの仮説の一つ「適応の概念」(進化を指す)は、現在は裏付けられたと考えられています。
人間のもつ複雑な適応形態は、いまや自然選択が現実に機能している証拠とみなされています。言語本能もその一つです。
第六染色体上のMHC遺伝子群は、免疫系が自己を明確に認識し、寄生体の侵入を検知する役割をもっています。この遺伝子群はとてつもなく多様なのです。
脳(こころ)と身体とゲノムの三位一体であり、「ゲノム」と「脳(こころ)と身体」とはお互いにコントロールしています。
そしてヒト遺伝子のスイッチのオン・オフは外からの作用に影響される場合があります。

ストレスへの感受性に個人差があります。ストレスが遺伝子のスイッチをオンにします。
遺伝子のスイッチを入れるのが、外部や自由意志による行動です。行動や社会的地位が、遺伝子の発現に影響を与えますし、遺伝子の形質発現を変化させます。行動が生命現象を操るのです。
心臓病などへの遺伝的耐性に個人差があることも証明されました。これは感染への耐性にかかわっている可能性があります。また心臓病は支配力の喪失に起因する症状とも言えます。行動が生命現象を操るのです。

精神が肉体に先立つといいます。心が身体を動かし、体がゲノムを駆動させているのです。脳は遺伝子によって作られ、経験によって修正できるように設計されていることが、遺伝子に記されています。
ヒトの脳は、塩基数は数十億、シナプスは何兆個で、アナログで三次元で、デジタルで一次元になっています。
生まれたばかりの脳は、細胞同士の結合が余分に有り過ぎる状態にあり、生長するうちに多くの結合が失われていきます。脳細胞同士に新しい結合を生み出すプロセスも、古い結合を失うプロセスも「学習」と言えます。不要な結合が弱まる時に、シナプスの結合が失われる時に、関係する脳細胞が死んでいきます。ヒトは一日に100万個の脳細胞を失っています。そうしないと思考できるようにならないのです。
 TP53というゲノムはガン化を止めるスイッチです。DNAにダメージを与えるとガン化します。
 腫瘍ウイルスには腫瘍遺伝子src.があります。これはヒトにも存在します。腫瘍遺伝子の働きは、細胞の成長を促進することで、これがあるから子宮内で成長し、傷も治るのです。その遺伝子のスイッチが一生のほとんどの期間オフになっています。誤ってオンになると「ガン化」するのです。
第一染色体にラクターゼの遺伝子があり、ラクトースの消化をしています。大部分の哺乳類では、幼少期にこのスイッチはオフになります。人間もなります。しかし、変異でオフにせず、ラクターゼの生成がしなくなることがあります。西ヨーロッパ人は70%以上も牛乳を消化できます。大人はラクターゼの少ないチーズは消化できます。牛乳の消化能力を持つ人間の割合が高い民族は牧畜の歴史をもっています。羊や牛やヤギを飼う歴史があります。だから牛乳を飲めない人がいるのは当然であり、すべての人に牛乳を強制するのは間違いです。

遺伝子による疾患(位置的候補遺伝子―遺伝子がある場所がわかっているもの)
 アルツハイマー病        家族性黒色腫        多発性内分泌腺腫症
 マルファン症候群        悪性低体温症
 網膜色素変性症         シャルコー・マリー・トゥース病
 遺伝性非腺腫性大腸がん     ワールデンブルグ症候群
第22染色体長腕にあるもの
 猫の目症候群、 ディジョージ症候群、 統合失調症にかかりやすい形質
 脊髄小脳変性症10
既に同定された遺伝性病因遺伝子
 筋ジストロフィー(デュシェンヌ型)  網膜芽細胞腫     嚢(のう)胞性繊維症
 神経線維腫症   ウィルムス腫瘍   無虹彩症     家族性大腸ポリポーシス
 脆弱X症候群   筋緊張性ジストロフィー        ハンチントン病
 結節硬化症    フォン・ヒッペル・リンドウ病     軟骨無形成症
 若年性乳がん/卵巣がん        多発性のう胞腎  脊髄性筋萎縮症
        
伴性劣性遺伝
 男性は遺伝子を1個もつだけで発病、女性は遺伝子を一対もつ(ホモ接合体)と発病するのでまれ。1万人から10万人に一人
 血友病 (70%は遺伝、30%は突然変異、保因者の女性の息子が発病)
 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(女性の保因者によって遺伝、突然変異率も高い)
染色体異常
 受精時に50%はあり、ほとんどは妊娠と気づかれる前に失われる
 全受胎例の約7.5%にあり、自然流産の50%にある。出産児の0.7%に見られる。
 ダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーが生存可能、その他。
多因子疾患(複数の遺伝子と環境因子によって発病)
 口唇口蓋裂、先天性心疾患、無脳症、脊椎分離症、幽門狭窄症、多指症、
 糖尿病(25%は突然変異)、高血圧、慢性関節リウマチ、通風、高脂血症、動脈硬化、統合失調症、がん
新奇性追求遺伝子をもつ人は、新奇性追求の意欲が強い。白人3割、日本人不明。

不安神経質傾向が強くなる遺伝子―s型遺伝子をもつ人は、白人67.7%、日本人98.3%。このことは、別の本では、単独の遺伝子ではなく、遺伝子の回路が、同じ組み合わせを繰り返す回数で決まるとも言います。





ゲノムから見た育児と子ども
                リドレ―「ゲノムが語る23の物語」より
 ゲノム学者の定義は「性格」は個人的、「性質」は普遍的としています。(精神科医は、「気質」は先天的、「性格」は後天的としています。)
適切な育児によって、子どもの先天的な性格を変えることができるといいます。内気な性格、「引っ込み思案」は4ヶ月で見分けられます。(だがそれを少しでも変えたければ、それを言葉に出して子どもに伝えてはなりません。「自分は引っ込み思案だ」と思うとますますそうなってしまいます。)
脳内のいくつか決まった部位の細胞でスイッチが入り、ドーパミンやセロトニンなどの化学物質を出し、それが性格に影響します。例えば、ドーパミンが不足するとパーキンソン病になり、ドーパミンが過剰だと統合失調症になります。セロトニンが多いと強迫観念や神経質になり、セロトニンが少ないと、衝動的傾向を示します。

脳内では刻印つきの遺伝子が活性化しています。まだヒトでは判っていないのですが、マウスでは前脳のかなりの部分(思考を制御する役目)が母親の遺伝子によって形成され、脳の基底にある部分(感情を制御する役目)の大部分は、父親の遺伝子によって形成されるといいます。父親に由来する細胞は、脳内に少なく、筋肉に多いのです。
ヒトとマウスが同じなら、母親の思考と父親の感情に基づいて行動していることになります。ただし、思考や感情が、どのていど遺伝性に由来するかによるのですが。
雌のマウスの母性的行動を決定する遺伝子は、父親から受け継がれます。母親からのものは発現しないのです。
父親が性別を決定します(Y染色体が雄です)。だから父親由来のX染色体が、雌の特性として求められる行動を生み出すのです。
母性的行動は父親の刻印で植え付けられます。

X染色体のどこかに、父親由来のものだけがスイッチオンになる遺伝子があり、他人の感情を理解する能力など社会的適応性の向上を促します。そのため、
① 社会的障害(自閉症、失語症、言語障害)が男子に多い。
② 性差は生まれつき
遺伝子の影響は、人生における学習経験にも影響しあいます。
ゲノムは、自然選択を通じて外界から有用な情報を抽出し、その情報を自らの設計に組み込みます。しかし、一つの変化には何世代もかかります。
ボールドウィンによると、意識の主な働きは、遺伝を通して自然には伝えられないことを「子どもに」学習させることにあるといいます。
生まれたばかりの脳は、細胞同士の結合が余分にありすぎる状態にあり、生長するうちに多くの結合が失われていきます。脳細胞同士の新しい結合を生み出す過程も、古い結合を失う過程も、「学習」と言えます。不要な結合が失われる時に関係する脳細胞が死んでいきます。ヒトは一日に100万個の脳細胞を失っています。そうしないと思考できるようにならないのです。不要な細胞は、ある遺伝子の刺激によって集団自殺するのです。
 以上、断片的に書きましたが、いろいろな本から、病気に関係する部分を抜書きしたためです。
                             文責 黒部信一

ヒトには、抗体産生の能力がある、 免疫遺伝学の話

2017-07-11 15:41:19 | 免疫の仕組み
 私の知る知識の中で、免疫に関する遺伝学の情報をお知らせします。

その第一は、利根川進さんの理論です。

 「利根川理論」と病原環境論または適応説

  クォーク1987.12「利根川理論のすべて」(平松啓一監修)より

 ワトソンとクリック以来の原理は、「体の細胞にあるDNAの遺伝情報はすべての生命現象の基本、一定不変のものである。肝臓や筋肉など、分化した細胞に機能や構造の違いがあるのは、そのどの遺伝子が発現し、どの遺伝子が発現しないかの違いによる。」
利根川理論は
免疫に携わる細胞がどうやって外敵である病原体をやっつける抗体を作り出すかというメカニズムを明らかにした。
 DNAは生物の体の中で、不変なものではなく、つねに変化し動きまわるダイナミックな存在である。
抗体はあらゆる抗原とそれぞれに対応する。自然界に存在する抗原の数は数億にのぼる。哺乳類ではDNAに含まれる遺伝子はせいぜい数万である。数万の遺伝子から数億の抗体の蛋白質ができる。それは遺伝子が免疫細胞の中で縦横無尽に変化するからである。
抗体の構造
抗体は免疫グロブリンで、他の蛋白質と同じように、20種類のアミノ酸が鎖状に連なったポリペプチドから構成されている。最も基本的なタイプである免疫グロブリンGでは、4本のポリペプチド鎖からなり、このうちの2本の短い鎖をL鎖、長い鎖をH鎖という。それぞれの鎖は可変部と不変部からなっていて、このうちの抗原と結びつくのは、Y字形の先端部分、すなわち可変部(V)である。不変部(C)は、どの抗体でもアミノ酸の配列は一定である。
利根川博士は、抗体のL鎖の可変領域の遺伝子はVとJの二つからなり、H鎖はV・D・Jの3種類からなることをつきとめた。そして、未成熟な細胞のDNAではV・D・J・Cの各遺伝子の断片が、遠く離れて存在しているが、リンパ球が成熟していく過程で、それぞれから一つずつ選ばれて、組み合わさって抗体が作られる事を証明した。これが遺伝子の再構成である。
マウスのDNAの場合、遺伝子のH鎖のV領域の遺伝子は数百個、J遺伝子は4個、D遺伝子は12個ぐらいある。この3種類の組み合わせで1万種類以上になり、さらにH鎖とL鎖の組み合わせがあるから、1億以上の抗体の産生が可能になる。
以上が利根川理論である。
また、最近の研究では、V領域では非常に頻繁に突然変異が起きていることも判った。そのため、人間の体は、限られたDNA情報を使って、無限の種類の抗体を作る事ができる仕組みになっている。こうしてできたDNAの持つ遺伝子情報は、子孫に伝えられ、歴史的に人間は、いろいろな病気が登場しても何代か経つうちに、克服してきたのである。しかし、単純でないのは、病気を起こす細菌、ウイルス、リケッチヤ―などの微生物や寄生虫も、変化していく。
それぞれの生存がかかっているからで、最終的にはお互いに適応しあって、共存の道を選ぶ事によって生き延びていくのである。しかし、うまく適応できない種は、絶滅していく。変化した環境に適応できなければ、種は絶える。
適応できた種は生き残り、できなかった種は滅びていく。人間の歴史はそれを物語っている。そしてそれは、人間と疫病との関係の歴史でもある。
微生物や寄生虫は、生きていくための餌を求めている。



「免疫生物学」より
利根川進
「Ig可変部の遺伝子が、遺伝子断片の組として遺伝され、それぞれの断片はIg分子を構成するポリペプチドの一部をコードしていること」を発見。
 遺伝子断片はDNA組み換えにより、不可逆的に結合され、1本のDNAになり、それが可変部全体をコードする。
 数百の遺伝子断片から、何千ものレセプター鎖ができる。
 二つの可変部をもつ鎖の組み合わせ、結合する際の追加、除去  により、100万レベルの特異性抗原レセプターができる
 各個体には少なくとも1億レベルの異なる特異性をもつリンパ球が存在する。

 免疫生物学と上記の本をお読み下さい。以上は、それらからの私の抄録です。


ワクチンの同時接種の安全性について

2017-07-11 15:29:24 | 免疫の仕組み
     ワクチンの同時接種の安全性の根拠が薄弱です

 私の知る限りでの、ワクチンの同時接種の根拠について、お話しします。せいぜい二種類の生ワクチンの接種か、経口生ワクチンと不活化ワクチンやトキソイドとの同時接種に関して、安全だとは言われていましたが、それ以上にはありません。
 根拠なくしているに過ぎません。二種類の接種を多数の同時接種に拡大して理解しているのではないでしょうか。

   予防接種の同時接種の理論

 日本では、DPT三種混合とDT二種混合しか、いくつかのワクチンの同時接種をして来ませんでした。その後アメリカのMMRワクチンに啓発されて、日本製のMMRワクチンを製造しましたが、失敗しています。
 故木村三生夫氏も麻疹風疹混合ワクチンならよいが、麻疹ワクチンと風疹ワクチンを別々の腕に同時に接種することはお勧めしないと言っていました。(予防接種の手引き10版)
 その後、新型インフルエンザの流行で世界のグローバル企業にワクチン業界も巻き込まれてしまい、研究者たちも業界と官僚たちに支配されています。

 同時接種が安全であると言う根拠は、

1. 人間の体内、いや血液中で二つのウイルスが同時に繁殖できないこと。
それは、以前に報告されたことですが(どこに載っていたか失念しました)、ある子ども
が麻疹にかかり隔離されていましたが、発疹が消えて治ったと思い退院する間際に、今度は
おたふくかぜを発病したのです。潜伏期間を考えると、入院中に感染したとは考えにくく、
入院する前に感染して、麻疹が治ったら続いておたふく風邪ウイルスが繁殖を始めたと考えられたのです。
 ウイルス性疾患の発疹は、ウイルス(抗原)とそれに対して体内で産生された抗体との、抗原抗体反応の結果生じると、「Infectious of the children」に書かれています。
 発疹が消えることは、ウイルスも消えることを意味していると私は考えます。ウイルスが血液中になくなるから(抗体があれば抗原抗体反応の結果としての発疹が出ますから)、発疹が消えたと考えます。
 それでその後次のウイルスが繁殖したと考えるのです。

2. 同時に接種するとなぜよいのか。
それは、同時に感染すると強いウイルスから繁殖し、次に別のウイルスが繁殖して行くと
考えられます。
確か、アメリカでは当初、いろいろな感染症が流行していたので、ワクチン接種後のすぐあとに別の感染症にかかるよりは、同時に接種する方がよいとのことだったように記憶しています。
アメリカのMMRワクチンは、私の記憶では、麻疹ウイルスの量を減らしていたと思いますが、日本は減らしていません。それで麻疹ワクチン(ウイルス)の影響で免疫力が低下し、続いて増殖したムンプスウイルスの副作用が強く出たことと、もう一つの要因として接種を受けた子どもの免疫状態が低下していたという二つの理由があったと思います。
 つまり、三種のウイルスを同時に接種しても、強いウイルスから次々と繁殖し、時間差をもって抗体が産生されると考えられます。つまり、その間繁殖中のウイルスがいると、他のウイルスはじっとしていて、繁殖が終わると次のウイルスが繁殖します。
 麻疹ウイルスに感染し、治っても免疫状態が低下している時に、次のウイルスを接種すると、そのウイルスの合併症が出やすいが、同時に接種すれば、最初に繁殖したウイルスが繁殖を終えなければつぎのウイルスが繁殖できないからというものです。
 昔の論文か本に書かれていたことです。
 しかし、これは生ワクチンにしか言えません。次々といくつかのワクチンを短い間隔で接種するよりは、同時に接種する方が、そういう理由で、体内では同時に繁殖せず、次々と順番に繁殖し、次々と免疫つまり血液中の抗体が産生されるから、その方が安全であると言う理論なのです。
 しかし、感染局所の細胞免疫に関しては、成立することは証明されていませんし、できないと考えられます。現代では、細胞免疫はツベルクリン反応でしか、証明できません。
 それで液性免疫である抗体産生で代用しているに過ぎません。しかし、ワクチンの専門家と称する小児科医たちは、抗体産生で免疫ができていると称していますが、正確には細胞免疫でないと発病を完全には止められないのです。
 ポリオ生ワクチンは、腸管の細胞免疫を作るので有効であり、ポリオ不活化ワクチンは細胞免疫を作らないので、有効性に疑問が残るのです。
 弱毒化したウイルスの先祖帰りという理論には、私は間違いであると考えます。その証明をして下さい。私の理論の原点のルネ・デュボスは、結核菌を調べて、重症化した患者さんの結核菌と軽く済んだ患者さんの結核菌に違いがないと言う結論を出し、そこから人間の側の抵抗力、免疫に違いがあると言う結論に達して、適応説を唱え、それを私が病原環境論と唱えたのです。
 そこから考えると、明確な証明のない先祖帰りは、仮設でしかありません。
 それと同時に、生ワクチンを接種してもつかないことを、ワクチンの失敗(ファースト・フェイラー)と言っていますが、私の理論では人間の持つ自然免疫が生きたウイルスを接種しても、跳ね返してしまうと考えます。
 注射をしたり、採血した時に、一過性の菌血症が生じ、すぐ消えてしまうことが報告されていますが、それと同じではないかと考えます。それは低年齢で健康な子どもほど、免疫ができない率が高く、最近の報告では水痘ワクチンを定期の1歳から2歳の間に接種すると、抗体産生率は50%前後のため、2回接種するのです。
 水痘ワクチンが健康児に接種を認められてからは、一回接種で5~8%が免疫ができないと言う報告もあり、実際に私の所でも同じ結果でした。
 また、おたふくかぜの研究では、過去に追跡調査をし、四歳までは不顕性感染があり、五歳以上はすべて発症したといいます。確か60数例の追跡調査でした。ワクチンせずに毎年抗体の検査をしたのです。もうそういう研究はできないでしょう。
水痘も四歳頃までは軽く済みます。

3. ウイルスと細菌とは同時に繁殖します。また二種の細菌も同時に繁殖します。
それで、細菌性ワクチンであるヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの同時接種に問題が起き
やすいと考えています。特にこれらのワクチンは外国製で日本国内の治験を経ていないまま許可されて海外のデータだけで論議されています。だから添加されたアジュバンドや他の物質の量が多いのではないかと思います。ですから、ヒブと肺炎球菌の二つの細菌性ワクチンは、生菌ワクチンでなくても、同時接種の安全性は保証されていません。
 もしその安全性を保障する理論や根拠になる論文や野外実験のデータを持っていたら教えて下さい。
 前から、ポリオ生ワクチンとDPT三種混合とは同時接種がアメリカでされていましたし、日本でもしてよいと言われていました。それは、ポリオ生ワクチンの生きたウイルスは、当面腸管の粘膜で交替を作ることになり、三種混合は血液中で作用するので、少なくともかなりの時間差を生じますから問題にならなかったのだと思います。

4. DPT三種混合の理論は、百日咳ワクチンのアジュバンドとして破傷風トキソイド
が働いているという訳です。それで単独よりも混合した方が、免疫効果が高いということで、三種混合製剤になったのです。
 もちろん、ジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドは、単独でも十分効果があります。百日咳ワクチンの効果を高める為に、トキソイドを混合しています。
 同じ理由で、初期のヒブワクチンには、ジフテリアトキソイドが使われました。その後破傷風トキソイドに変わりました。ですから今のアクトヒブには、破傷風トキソイドが入っています。

5.ワクチンの同時接種の安全性の証明はありません。
  ということで理解して下さい。ただ便宜的に同時接種して、副作用が出なかったと言う個々の少数の報告だけです。しかし、多数のワクチン接種がされて行き、結果的に同時接種の方に死亡例や後遺症の出る例が多いことも明らかになりました。
 
 これを原因が判らないなどとして救済しなかったり、反省して同時接種をやめるようにはなぜならないのでしょうか。

 最後になりましたが、科学史の世界では、麻疹の一度しかすすらないと言うのは間違いと言うことになっています。それは、太平洋の島で航海での交通の時代に、二つの島でそれぞれ40年後と50年後に麻疹が流行し、片方の島では過去にかかった人が再度感染していたと言います。
 また、インフルエンザウイルスに関しては、昔パナマに来て、陸上で流行しているので沖合に停泊して待っていたが、2km以上離れていたのに船上で感染者が出たと言います、曇りの日には、そのくらいは飛んでいくようです。日光下では、2m離れれば感染しません。

 水痘に関しては、私の上司の某小児科医が高齢になり、非常勤で国立埼玉病院に来ていた時に、水痘に感染していたのに、数個の水疱だけだったのに私に言ってくれず、入院していた白血病の子どもの部屋に入ってしまい、その子は水痘になり、亡くなりました。確かにみたら水痘で、帯状疱疹ではなかったのです。全身に僅かに散在していました。
 二度無し病は、間違いで、再感染してブースター効果で、かからなかったということが今では通説になってきましたが、それが正しいと思います。
 また、どこから感染したか判らないように、いろいろな病気の流行が始まります。
 昔から人口が30万人いたら、麻疹は常在していると言われていました。その理由は、もしかして麻疹にも健康なキャリアーがいるのではないかと思います。他のウイルスも同じです。水痘ウイルスが脊髄の神経節に生き残ったり、単純性ヘルペスウイルスが口唇の皮膚粘膜移行部の細胞に潜伏していることなども、それを示唆しているのではないでしょうか。

 科学史の世界に入り、いろいろなことを学びました。皆さんも興味がある方にはお教えします。