オール読物の5月号は「創刊80周年記念特大号」である。
その企画として「名作再録」として「赤ひげ診療譚」(山本周五郎)と「火垂の墓」(野坂昭如)と並んで「春が来た」(向田邦子)が掲載されている。
で、この「春が来た」である。
昭和56年10月号に掲載されたものである。
古い話のようであるが、主人公の心境は今だって同じだと思う。
主人公は直子。
「10人並の姿かたちであるが、化粧映え着映えしないたち」で「華のない影のうすい存在だった」そして「片思いが二つ三つあっただけで27になってしまった」
その直子が風見隆一という男と知り合った。二人だけでお茶を飲むようになって5回かそこいらだが、もう恋人という呼んでもいい、と感じている。
直子は隆一に家族のことで見栄をはる。
父はPR関係の仕事をしていて、大学時代の親友と共同経営をしている。
母はお茶とお花の心得があり、行儀作法にやかましい。
妹は誌を書くのが好きで、ミニコミ誌へ投書をして1等になり5万円の賞金をもらった。
家は、庭付きの一戸建て、松、楓、八つ手、そして南天がある。
と言った夜、直子は怪我をしてしまい、風見に家に送られることになる。
そこで、今までの嘘がばれる。
家は、根太がおかしく何年も畳替えをしていない、雨戸も最後の一枚はどうしても戸袋から出てこない。
母は浴衣地のアッパッパを着ている。
父はダランと伸びたアンダーシャツ姿。
妹の賞金は1万円。
手洗いの傍に南天はあるが、隣の家のもの。
しかし、風見はこの家が気に入り、毎週金曜日に訪れることになる。
風見が家に来るようになり、それまで澱んだ空気に覆われていた直子の家(家族)が明るくなった。
父も母も妹も、風見を直子の夫としてというか自慢の家族として扱うようになったのだ。
複雑な心境の直子であるが、結婚に向けて気持ちが傾いていく。
で、結末は・・・・ハッピーエンドではないが、さわやかな後味である。
昔、向田邦子の書くものを読んでもあまり心が動かなかった。
多分、難しかったんだろうと思う。
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その企画として「名作再録」として「赤ひげ診療譚」(山本周五郎)と「火垂の墓」(野坂昭如)と並んで「春が来た」(向田邦子)が掲載されている。
で、この「春が来た」である。
昭和56年10月号に掲載されたものである。
古い話のようであるが、主人公の心境は今だって同じだと思う。
主人公は直子。
「10人並の姿かたちであるが、化粧映え着映えしないたち」で「華のない影のうすい存在だった」そして「片思いが二つ三つあっただけで27になってしまった」
その直子が風見隆一という男と知り合った。二人だけでお茶を飲むようになって5回かそこいらだが、もう恋人という呼んでもいい、と感じている。
直子は隆一に家族のことで見栄をはる。
父はPR関係の仕事をしていて、大学時代の親友と共同経営をしている。
母はお茶とお花の心得があり、行儀作法にやかましい。
妹は誌を書くのが好きで、ミニコミ誌へ投書をして1等になり5万円の賞金をもらった。
家は、庭付きの一戸建て、松、楓、八つ手、そして南天がある。
と言った夜、直子は怪我をしてしまい、風見に家に送られることになる。
そこで、今までの嘘がばれる。
家は、根太がおかしく何年も畳替えをしていない、雨戸も最後の一枚はどうしても戸袋から出てこない。
母は浴衣地のアッパッパを着ている。
父はダランと伸びたアンダーシャツ姿。
妹の賞金は1万円。
手洗いの傍に南天はあるが、隣の家のもの。
しかし、風見はこの家が気に入り、毎週金曜日に訪れることになる。
風見が家に来るようになり、それまで澱んだ空気に覆われていた直子の家(家族)が明るくなった。
父も母も妹も、風見を直子の夫としてというか自慢の家族として扱うようになったのだ。
複雑な心境の直子であるが、結婚に向けて気持ちが傾いていく。
で、結末は・・・・ハッピーエンドではないが、さわやかな後味である。
昔、向田邦子の書くものを読んでもあまり心が動かなかった。
多分、難しかったんだろうと思う。
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