鴨川食堂は京都の東本願寺の近くにある。
が、看板はない。
店の体をなしていない二階建てのしもた屋には、かつて看板とショーウィンドウがあったようだ。外壁に二箇所、白いペンキが四角く乱雑に塗られている。とは言え、空き家のような寂寞感はなく、人の温もりを鵜、現役の店らしき空気に包まれている。
不愛想な構えで遠来の客を拒んでいる一方、辺りに漂う飲食店特有の匂いが客を誘うようでもあり、中からは談笑の気配が漏れて来る。
というような外観の店である。
この店葉、店主の「鴨川流」が料理をつくり、娘の「こいし」が料理を運ぶ。
とても美味しい店なのである。
ということだけの物語ではない。
実は、この鴨川食堂には、鴨川探偵事務所が併設されているのである。
この探偵事務所が探偵をするのは「食」なのである。
あの思い出の食べ物をもう一度食べたい、と思う人がその食べ物を捜してもらうのである。
では、お客がいっぱい来るのではないか?
と思うのであるが、探偵事務所の広告は料理雑誌の「料理春秋」の一行広告
「鴨川食堂・鴨川探偵事務所――。食捜します」
を見てやってくる客だけなのである。
住所も電話番号もなく、しかも店には看板も出ていない。
そういう条件でたどり着いた客(流は『縁のある客』と呼ぶ)だけが、食を捜してもらうのである。
本書には6話収録されている。
①鍋焼きうどん
②ビーフシチュー
③鯖寿司
④とんかつ
⑤ナポリタン
⑥肉じゃが
である。
客はようやくたどり着いた食堂で、先ずおまかせのランチを食べる。
続いて、探偵事務所所長の「こいし」から事情を尋ねられる。
こいしがまとめた資料を基に流がその食を捜すのである。
流は、元刑事である。刑事時代に培った捜査能力で食を捜す。
そして、依頼されたものを再現するのである。
で、支払の額は客が決めるのである。
その額が知りたいのであるが、いくら支払ったかは分からない。
それにしても、紹介される食べ物は美味しそうであるが、想像できないのが残念である。
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店の体をなしていない二階建てのしもた屋には、かつて看板とショーウィンドウがあったようだ。外壁に二箇所、白いペンキが四角く乱雑に塗られている。とは言え、空き家のような寂寞感はなく、人の温もりを鵜、現役の店らしき空気に包まれている。
不愛想な構えで遠来の客を拒んでいる一方、辺りに漂う飲食店特有の匂いが客を誘うようでもあり、中からは談笑の気配が漏れて来る。
というような外観の店である。
この店葉、店主の「鴨川流」が料理をつくり、娘の「こいし」が料理を運ぶ。
とても美味しい店なのである。
ということだけの物語ではない。
実は、この鴨川食堂には、鴨川探偵事務所が併設されているのである。
この探偵事務所が探偵をするのは「食」なのである。
あの思い出の食べ物をもう一度食べたい、と思う人がその食べ物を捜してもらうのである。
では、お客がいっぱい来るのではないか?
と思うのであるが、探偵事務所の広告は料理雑誌の「料理春秋」の一行広告
「鴨川食堂・鴨川探偵事務所――。食捜します」
を見てやってくる客だけなのである。
住所も電話番号もなく、しかも店には看板も出ていない。
そういう条件でたどり着いた客(流は『縁のある客』と呼ぶ)だけが、食を捜してもらうのである。
本書には6話収録されている。
①鍋焼きうどん
②ビーフシチュー
③鯖寿司
④とんかつ
⑤ナポリタン
⑥肉じゃが
である。
客はようやくたどり着いた食堂で、先ずおまかせのランチを食べる。
続いて、探偵事務所所長の「こいし」から事情を尋ねられる。
こいしがまとめた資料を基に流がその食を捜すのである。
流は、元刑事である。刑事時代に培った捜査能力で食を捜す。
そして、依頼されたものを再現するのである。
で、支払の額は客が決めるのである。
その額が知りたいのであるが、いくら支払ったかは分からない。
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