出張先での食事や接待の際の店選びで利用しているのが「ぐるなび」と「食べログ」。特に接待なんかの店探しには、「ぐるなび」で店の雰囲気や価格帯、コースの有無や個室かどうかといった情報でお店をピックアップした上で、「食べログ」の評点で「美味しさ」をチェックして最終的にお店を決める。あるいは「食べログ」でピックアップした上で「ぐるなび」で店を決定するといった感じで、両方のサイトを使っている。「接待」する上で必要な情報は「ぐるなび」だけで済むけれど、どうせ行くなら「美味しい」店がいいに決まっているのたから。
今、この新旧2つのグルメサイトのメディアパワーが逆転したとのこと。
グルメサイト戦争! 口コミパワーで食べログが首位奪取、王座陥落のぐるなび
■1日当たりサイト訪問者数の推移
![](http://lib.toyokeizai.net/public/image/2010082000838517-2.gif)
この両サイト、同じ「グルメサイト」というカテゴリーになるのかもしれないが、その内容は大きく異なっている。ちょっと古い言い方をするならWeb1.0 vs Web2.0といえるかもしれない。
「ぐるなび」は所謂旧来からのメディア事業に近いだろう。飲食店から「掲載料(月額5万円)」をもらい、その店舗情報や割引情報を無料で利用者に提供していく。全国に営業網を張り巡らせ、営業員が地道に飲食店を回り受注する。WEB事業のように見えながら、地道な営業体制によって支えられている。その姿は「電話帳」というメディアに対して地元の小口の商店の広告を掲載していた「タウンページ」のようでもあり、グルメ情報誌のネット版といった感じでもある。
当然ながら、その情報は「店舗」側が不利になるような情報はない。これはジャーナリズムでも批評サイトでもない。あくまで情報サイトなのだ。だからこそ信用できるところがあり、もの足りないところもある。
これに対して「食べログ」は「口コミ」サイトだ。メニューのような基本情報はもちろん「味」に対する評価もユーザーが投稿したもの。そうした投稿結果から、評価分布を割り出し、総合的な点数を割り出している。
「食べログ」はあくまでネット上の「集合知」を利用したサイト。もちろん店舗側が情報を投稿することも出来るのだろうが、それらも含めて多数者の声の一部になってしまう。極端な意見が投稿されることも在るだろうが、多数者の意見を満遍なく集めればそうした意見も中和されてしまう。みんなの平均的な意見が評価として掲載される。
また「食べログ」の強みは常に更新されていることだ。
掲載される情報が飲食関係ということで、当然、店側の「味」が変化することもあれば、季節によって好まれる/好まれない場合もある。利用者側の味覚が変化することもある。そうした「変化」に対しても、投稿サイトということで常に最新の「意見」が反映されやすい。
しかもこれらの情報を収集するためのコストがほぼ0円だ。本来であれば、「情報サイト」としてのコンピテンシーとなる要素、「メディア」としての差別化するための要素に対しては、それ相当の資本を投下する必要がある。「ぐるナビ」ではそれが営業体制を維持するためのコストとも結びついている。
「食べログ」のようなWEB2.0系のメディアではこうしたコストを、利用者(投稿者)が負担することになる。情報収集のためのコスト(貨幣)を、利用者の「ボランタリー」によって支払っているといってもいいのかもしれない。
【ぐるナビ】
利用者:無料
店 舗:有料(掲載料:月額5万円)
【食べログ】
利用者:有料(投稿者のボランタリー)
店 舗:一部有料(掲載料:月額5千円)
【グルメ情報誌(参考)】
利用者:有料(購読料)
店 舗:一部有料(広告掲載料)
その結果、「食べログ」ではサイトを維持するためのコストも大幅に少なくてすむ。「ぐるナビ」では必要となる営業体制が不要となる。
こうなると「ぐるナビ」は厳しいだろう。月額5万の掲載料ということは、粗利率を60%~65%とすると、ぐるナビのサイト経由で8万以上の売上が伸びないと出稿する意味がない。客単価が1,000円のような業種なら80人、客単価5,000円なら16人。まぁ、宴会が1件取れればPAYできるというところか。これが「食べログ」なら1/10。しかも利用者数では上回っているなら、こちらを利用しようかという気にもなる。
これがWEB2.0系企業の強みというやつか。
ただし弱みもある。結局は、情報ソースが口コミである以上、そこにオリジナルな情報はない。投稿者が他のサイトに移ればサイトそのものの魅力もなくなる。「グルメ情報」という切り口では一日の長のある「食べログ」だけれど、mixiやGreeのようなSNS上のコミュニティでも情報交換は行われているし、Googleのような検索サイトが検索情報の一部としてより広範なネット上の口コミを効果的に表示するかもしれない。
また「集合知」として一般的な「解」は見つかるかもしれないが、「食事」には好みがでる。嗜好性を追及した「口コミ」検索や「専門性」検索といった可能性もあるだろうし、だからこそプロによる「編集」が求められることもある。
あるいはどのように儲けるかという問題。掲載料が1/10ということは、換言すれば、ユーザーに影響を与えられる力もそれなりだということだ。利用者は「口コミ」情報が欲しいのであって、「店舗」側が発信したい情報を求めていないのかもしれない。となると、店舗側も手軽だからといって出稿してくれるとは限らない。
どこでビジネスとして成立させていくのか。単に「集合知」でWEB1.0より安価になりました、だけでは業界全体を縮小させるでけだ。
「集合知」を集める段階から、それをどう利用させどうビジネスにつなげていくか――「食べログ」にしてもこれからなのだろう。
フリー <無料>からお金を生みだす新戦略 / クリス・アンダーソン - ビールを飲みながら考えてみた…
今、この新旧2つのグルメサイトのメディアパワーが逆転したとのこと。
グルメサイト戦争! 口コミパワーで食べログが首位奪取、王座陥落のぐるなび
■1日当たりサイト訪問者数の推移
![](http://lib.toyokeizai.net/public/image/2010082000838517-2.gif)
この両サイト、同じ「グルメサイト」というカテゴリーになるのかもしれないが、その内容は大きく異なっている。ちょっと古い言い方をするならWeb1.0 vs Web2.0といえるかもしれない。
「ぐるなび」は所謂旧来からのメディア事業に近いだろう。飲食店から「掲載料(月額5万円)」をもらい、その店舗情報や割引情報を無料で利用者に提供していく。全国に営業網を張り巡らせ、営業員が地道に飲食店を回り受注する。WEB事業のように見えながら、地道な営業体制によって支えられている。その姿は「電話帳」というメディアに対して地元の小口の商店の広告を掲載していた「タウンページ」のようでもあり、グルメ情報誌のネット版といった感じでもある。
当然ながら、その情報は「店舗」側が不利になるような情報はない。これはジャーナリズムでも批評サイトでもない。あくまで情報サイトなのだ。だからこそ信用できるところがあり、もの足りないところもある。
これに対して「食べログ」は「口コミ」サイトだ。メニューのような基本情報はもちろん「味」に対する評価もユーザーが投稿したもの。そうした投稿結果から、評価分布を割り出し、総合的な点数を割り出している。
「食べログ」はあくまでネット上の「集合知」を利用したサイト。もちろん店舗側が情報を投稿することも出来るのだろうが、それらも含めて多数者の声の一部になってしまう。極端な意見が投稿されることも在るだろうが、多数者の意見を満遍なく集めればそうした意見も中和されてしまう。みんなの平均的な意見が評価として掲載される。
また「食べログ」の強みは常に更新されていることだ。
掲載される情報が飲食関係ということで、当然、店側の「味」が変化することもあれば、季節によって好まれる/好まれない場合もある。利用者側の味覚が変化することもある。そうした「変化」に対しても、投稿サイトということで常に最新の「意見」が反映されやすい。
しかもこれらの情報を収集するためのコストがほぼ0円だ。本来であれば、「情報サイト」としてのコンピテンシーとなる要素、「メディア」としての差別化するための要素に対しては、それ相当の資本を投下する必要がある。「ぐるナビ」ではそれが営業体制を維持するためのコストとも結びついている。
「食べログ」のようなWEB2.0系のメディアではこうしたコストを、利用者(投稿者)が負担することになる。情報収集のためのコスト(貨幣)を、利用者の「ボランタリー」によって支払っているといってもいいのかもしれない。
【ぐるナビ】
利用者:無料
店 舗:有料(掲載料:月額5万円)
【食べログ】
利用者:有料(投稿者のボランタリー)
店 舗:一部有料(掲載料:月額5千円)
【グルメ情報誌(参考)】
利用者:有料(購読料)
店 舗:一部有料(広告掲載料)
その結果、「食べログ」ではサイトを維持するためのコストも大幅に少なくてすむ。「ぐるナビ」では必要となる営業体制が不要となる。
こうなると「ぐるナビ」は厳しいだろう。月額5万の掲載料ということは、粗利率を60%~65%とすると、ぐるナビのサイト経由で8万以上の売上が伸びないと出稿する意味がない。客単価が1,000円のような業種なら80人、客単価5,000円なら16人。まぁ、宴会が1件取れればPAYできるというところか。これが「食べログ」なら1/10。しかも利用者数では上回っているなら、こちらを利用しようかという気にもなる。
これがWEB2.0系企業の強みというやつか。
ただし弱みもある。結局は、情報ソースが口コミである以上、そこにオリジナルな情報はない。投稿者が他のサイトに移ればサイトそのものの魅力もなくなる。「グルメ情報」という切り口では一日の長のある「食べログ」だけれど、mixiやGreeのようなSNS上のコミュニティでも情報交換は行われているし、Googleのような検索サイトが検索情報の一部としてより広範なネット上の口コミを効果的に表示するかもしれない。
また「集合知」として一般的な「解」は見つかるかもしれないが、「食事」には好みがでる。嗜好性を追及した「口コミ」検索や「専門性」検索といった可能性もあるだろうし、だからこそプロによる「編集」が求められることもある。
あるいはどのように儲けるかという問題。掲載料が1/10ということは、換言すれば、ユーザーに影響を与えられる力もそれなりだということだ。利用者は「口コミ」情報が欲しいのであって、「店舗」側が発信したい情報を求めていないのかもしれない。となると、店舗側も手軽だからといって出稿してくれるとは限らない。
どこでビジネスとして成立させていくのか。単に「集合知」でWEB1.0より安価になりました、だけでは業界全体を縮小させるでけだ。
「集合知」を集める段階から、それをどう利用させどうビジネスにつなげていくか――「食べログ」にしてもこれからなのだろう。
フリー <無料>からお金を生みだす新戦略 / クリス・アンダーソン - ビールを飲みながら考えてみた…
![](https://www.nhk-book.co.jp/image/book/153/0081404.jpg)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます