美容室ではなく床屋に散髪に行くのは何といっても「髭」を剃ってもらったり「洗髪」してもらう時の「気持ちよさ」があるからなので、QBハウスのような格安店というのは全く興味がないのだけれど、この千葉県の条例は全く賛同できない。
asahi.com(朝日新聞社):シャンプー台ないと床屋の新規出店ダメ? 千葉県で条例案 - 社会
このニュースによれば、「美容店にシャンプー台などの洗髪設備の設置を義務づけ」る条約を施行し、「設備を持たず「10分千円」などと短時間と低料金を売りにするカット専門店」の新規進出を規制するとのこと。
大前研一さんが30年以上前に書かれた「企業参謀」の中で理容院の提供しているサービスを分解して提供すればもっと安価にできるはずだと書いた。通常の理容院というのは、
1)散髪(15分)
2)洗髪×1~2回(10分)
3)髭剃り(10分)
4)マッサージ・耳掻きなど(5分)
5)整髪(5分)
といったサービスをパッケージ化して提供しており、45分で3,000円~4,000円程度。大前研一氏は、整髪や髭剃りは自宅でできるし、マッサージなども特に不要だという利用者からすると、これらは過剰なサービスであり、本来必要な「散髪」だけに特化すればもっと安価に提供できると解説したのだ。(30年前以上にだ!)
これを実践に移したのが10分1,000円で散髪を可能にするQBハウスなどの格安カット専門店。ここでは当然時間がかかる髭剃りはないし、洗髪もしない。切った髪の毛は掃除機のようなノズルに吸い込まれていく。
僕のように目的が「洗髪」や「髭剃り」でもあったりする人からすれば、高いお金を払ってでもこれまでの床屋を利用するだろうが、コストパフォーマンスを優先する人や、こまめに伸びた髪を整えたかったが料金の関係で月に1度しか通えなかったような人からすれば、こうした格安店というのは選択肢の1つとしてありえる話だ。当然、既存の店からすると顧客が奪われるという形になる。
しかしこれは資本主義社会・自由主義社会である以上避けては通れない話しだ。新しいラーメン店が増えれば、美味しくない店は潰れるし、近所にうどん屋やイタリアンができればそちらにお客が流れることだってある。製造工程が変わることで同じようなスーツが10年前より半値以下となり、コンビニの登場で町の小さな本屋は立ち行かなくなる。そんな中で生き残っていくためには、良くも悪くも、常に「進化」や「適応」が求められる。新しいサービスや商品を考え、コストの削減や顧客の囲い込みを実施し、あるいは付加価値をつけることで生き残っていかねばならないのだ。
しかし今回のこの条例は、そうした「自由競争」のルールを無視したものといえるだろう。「県理容生活衛生同業組合(矢野登司弘理事長)などが請願者となり、18人の自民党県議が紹介者として名を連ねた。自民は議会で過半数を占めるため、今議会での条例案成立は確実だ」。ここにあるのは、業界団体が既得権を守ろうとし、それを擁護することで集票基盤を確保したいとする旧態依然とした政治の姿だ。
もし仮に「髪を洗わないのは不衛生」ということを消費者保護のうたい文句とするならば、既存店舗へも適用させねばならないが、そうはしない。あくまでこれ以上増えるのを避けたいというところなのだろう。
これがアメリカだったらどうだろう。利用者や格安カット専門店の側から、過剰な規制であるとして逆の訴えがあるのではないか。このあたりにやはり良くも悪くも自由主義経済になりきれない日本の姿があるのだろう。
企業参謀 (講談社文庫) / 大前研一
![](http://shop.kodansha.jp/bc/png/30/183630-1.png)
asahi.com(朝日新聞社):シャンプー台ないと床屋の新規出店ダメ? 千葉県で条例案 - 社会
このニュースによれば、「美容店にシャンプー台などの洗髪設備の設置を義務づけ」る条約を施行し、「設備を持たず「10分千円」などと短時間と低料金を売りにするカット専門店」の新規進出を規制するとのこと。
大前研一さんが30年以上前に書かれた「企業参謀」の中で理容院の提供しているサービスを分解して提供すればもっと安価にできるはずだと書いた。通常の理容院というのは、
1)散髪(15分)
2)洗髪×1~2回(10分)
3)髭剃り(10分)
4)マッサージ・耳掻きなど(5分)
5)整髪(5分)
といったサービスをパッケージ化して提供しており、45分で3,000円~4,000円程度。大前研一氏は、整髪や髭剃りは自宅でできるし、マッサージなども特に不要だという利用者からすると、これらは過剰なサービスであり、本来必要な「散髪」だけに特化すればもっと安価に提供できると解説したのだ。(30年前以上にだ!)
これを実践に移したのが10分1,000円で散髪を可能にするQBハウスなどの格安カット専門店。ここでは当然時間がかかる髭剃りはないし、洗髪もしない。切った髪の毛は掃除機のようなノズルに吸い込まれていく。
僕のように目的が「洗髪」や「髭剃り」でもあったりする人からすれば、高いお金を払ってでもこれまでの床屋を利用するだろうが、コストパフォーマンスを優先する人や、こまめに伸びた髪を整えたかったが料金の関係で月に1度しか通えなかったような人からすれば、こうした格安店というのは選択肢の1つとしてありえる話だ。当然、既存の店からすると顧客が奪われるという形になる。
しかしこれは資本主義社会・自由主義社会である以上避けては通れない話しだ。新しいラーメン店が増えれば、美味しくない店は潰れるし、近所にうどん屋やイタリアンができればそちらにお客が流れることだってある。製造工程が変わることで同じようなスーツが10年前より半値以下となり、コンビニの登場で町の小さな本屋は立ち行かなくなる。そんな中で生き残っていくためには、良くも悪くも、常に「進化」や「適応」が求められる。新しいサービスや商品を考え、コストの削減や顧客の囲い込みを実施し、あるいは付加価値をつけることで生き残っていかねばならないのだ。
しかし今回のこの条例は、そうした「自由競争」のルールを無視したものといえるだろう。「県理容生活衛生同業組合(矢野登司弘理事長)などが請願者となり、18人の自民党県議が紹介者として名を連ねた。自民は議会で過半数を占めるため、今議会での条例案成立は確実だ」。ここにあるのは、業界団体が既得権を守ろうとし、それを擁護することで集票基盤を確保したいとする旧態依然とした政治の姿だ。
もし仮に「髪を洗わないのは不衛生」ということを消費者保護のうたい文句とするならば、既存店舗へも適用させねばならないが、そうはしない。あくまでこれ以上増えるのを避けたいというところなのだろう。
これがアメリカだったらどうだろう。利用者や格安カット専門店の側から、過剰な規制であるとして逆の訴えがあるのではないか。このあたりにやはり良くも悪くも自由主義経済になりきれない日本の姿があるのだろう。
企業参謀 (講談社文庫) / 大前研一
![](http://shop.kodansha.jp/bc/png/30/183630-1.png)
店舗数に圧倒的な差があるのに、カット専門店が脅威になっているならば、理容店・美容院の営業努力が足りないんだと思います。
低価格化では歯が立たないかもしれないけど、逆に高級店化することで活路が見出せるのではないだろうか?
仮に、条例が成立しても、
「新参者を排除すれば、客が戻ってくる」とはならないでしょうね...