映画が終わった瞬間の重苦しい空気。救いのない様に誰も口を開かず席を立つ……。久しぶりに映画館で味わうこの雰囲気に、何となく嬉しくなる。クリストファー・ノーランなら、同じ様な重苦しさの中にも、映画的なダイナミズムやアクションで観客たちを驚嘆させたのだろう。でもここに描かれた「ジョーカー」は、社会の底辺の精神疾患を抱えた者が社会から疎外され、怨嗟の念を募らせていく映画だ。そこにはダイナミズムではなく . . . 本文を読む
さよなら渓谷。あぁ、原作を読んでみたいな、と思う。映画としてうまくまとめられているが、きっと、原作はまた違う深みがあるのだろうな、と。日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得した真木よう子はもちろん、大西信満、大森南朋、鶴田真由、鈴木杏らがそれぞれいい味を出している佳作。
【予告編】
【あらすじ】
都会の喧騒から離れた緑が覆う渓谷で、幼児が殺害され実母が犯人として逮捕されるショッキングな . . . 本文を読む
普段はあまり超能力者ものの作品を見たりはしないのだけれど、TSUTAYAの人気ランキングの上位に入っていたので、借りてみることに。日本の漫画だと面白いものも多いんだけど、アメリカの超能力ものというと、スティーヴン・キングなんかもあるけれど、全体的に大味な作品が多い気がする。と、あまり期待しなかったのだけど、予想以上に面白い。現代的な感覚に満ちた良作。
【予告編】
映画「クロニクル」予告編
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ジャックニコルソンのくしゃくしゃに笑う表情に改めて人間臭い演技もピカイチだなぁと感心する。余命6ヶ月を宣告された立場の異なる男が死ぬ前に( before we kick the bucket )やり残したことを楽しむための旅に出る。ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの名優2人が温かみのある演技を人生の最期を描いてくれる良作。
最高の人生とは「自分を認めてくれる人がいるかで決まる」のだ。
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まさにドンピシャ世代。この出演アーティストの名前を見れば、どうしても疼いてしまう。第1回FUJI ROCKが1997年、それを遡ること10年前に行われた日本初のオールナイトロックフェス。大雨の中、スタッフも観客も不慣れなまま繰り広げられるライブは、今では到底考えられないものだろう。安全にフェスを行うために規制も厳しくなり、また雨天でも実施するためのノウハウも蓄積さているのだから。しかし、だからこそ . . . 本文を読む
「息苦しくなりましたねぇ」コンプライアンス強化やら、セキュリティ対策やらで最近の職場で出た会話。しかしこれは何もうちの職場だけではない。社会全体を覆うある種の空気感を象徴していると言っていい。映画版「鈴木先生」ではこの「息苦しさ」がテーマ。しかし僕が感じたのは「鈴木先生」の持つ息苦しさだ。
【予告編】
OP映像
【あらすじ】
緋桜山中学の国語教師・鈴木先生(長谷川博己)は、一見問題がな . . . 本文を読む
総論としては一度は見た方がいい「良質な作品」。ただどうだろう、引退宣言をした宮崎駿監督の最期の長編作品だと思うと「ものたりない」というのが正直な感想。予告編が非常によかっただけに、宮崎駿氏の想いやメッセージ、あるいは作家性というものがもう少し出ているのかと思っていたのだけど、そうではない。
「創造的人生の持ち時間は10年だ」
映画の中でカプローニが二郎に語ったセリフ。その言葉が重なり合う。宮崎 . . . 本文を読む
「何故、彼は人類のいない地球に残されたのか―」。
結論を紐解けば、意外とSFの王道的な展開。スタイリッシュな映像、近未来的なメカニックの数々。世紀末的風貌のスラヴ、2001年宇宙の旅のモノリスを彷彿させるようなテットの存在…しかも単にSFものというだけでなく、クローンにまつわる問題――クローンはオリジナルの記憶や感情をどこまで引き継ぐのか、あるいはオリジナルに忠実なクローンを我々はオリジナルと同 . . . 本文を読む
「ガダカ」を彷彿させる空気感、設定の面白さ!そう思ったら、監督は「ガタカ」を撮ったアンドリュー・ニコルということで納得。この監督、「ガタカ」をはじめ「トゥルーマン・ショー 」(脚本)や「シモーヌ」など、設定の「妙」を活かした独特の作品を作っている。この「TIME」もそれら作品に負けない設定で、僕らを作品に引き込んでいく。
【予告編】
映画『TIME/タイム』予告編
【あらすじ】
現代にど . . . 本文を読む
「十三人の刺客」で武士道の欺瞞性を描いた三池崇史が、より直接的に武士道の空虚さを暴いた作品。何よりも市川海老蔵と役所広司の存在感が凄い1作。
【予告編】
【公式】映画「一命」予告-HD高画質-
【あらすじ】
戦国の世は終わり、平和が訪れたかのようにみえた江戸時代初頭、徳川の治世。その下では大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家もなくし生活に困った浪人たちの間で“狂言切腹”が流行していた。それ . . . 本文を読む
「この男を殺して下さい。お礼として10億円お支払いします。」という衝撃的な広告。対象は少女を陵辱し殺害する人間のクズのような男。そんな状況が目の前に現れたら果たして人はどのような行動をするのか――。東日本大震災の際の行動を見るまでもなく、日本にはコミュニタリズムと強い倫理意識があると感じている僕からすると、すでにこの時点で物語は破綻しているように見えるのだけれど、そうはいっても、そういう人間もいる . . . 本文を読む
電車の中でちょっとしたことでイライラしたり、店員のちょっとした態度に腹が立ったり、大して怒る理由もないのにちょっとした弾みで怒りが収まらなかったり…いつからだろう、こんなにストレスを溜め込むようになったのは。普段はなんともないのに、ちょっとした拍子に姿を現すこのイライラは、僕個人の問題ではあるのだけれど、同時に、今の社会全体が抱え込んでいるものではないか。息苦しさ、漠然とした不安、閉塞感、何かにせ . . . 本文を読む
これまでミュージカル映画というと「世界中がアイ・ラヴ・ユー」とかくらいしか見たことがなく、まぁ、そもそも日本人の感覚からいって、セリフを唄にのせて言うということの違和感があって、食わず嫌いも含めてあまり好きではなかったのだけど、話題の「レ・ミゼラブル」を鑑賞。確かにこれは多くの人を感動させるだろう。
【あらすじ】
19年の服役後、仮釈放となったジャン・バルジャン。彼は宿を借りた司教の家の銀器 . . . 本文を読む
スタンリー・キューブリックが創り上げたSF映画の金字塔。あまりにも有名なオープニング。あまりにも有名な「ツァラトゥストラはかく語りき」。そしてあまりにも難解な作品。そういうこともあって、大学生の頃に観たときはよくわからず、次に見るときは気合入れないとと思って、長く見逃していた作品。石ノ森章太郎の009を見たこともあって、改めて見直してみた。
【あらすじ】
月面で不思議な黒石板(モノリス)が発見 . . . 本文を読む
そうか攻殻機動隊S.A.C.シリーズは現代版サイボーグ009、あるいは攻殻機動隊S.A.C.シリーズの続編こそが神山健治版009なのかと感じさせる1作。故・石ノ森章太郎が描き残したテーマをもとに、最新の3D映像を交えて押井守監督の弟子ともいえる神山健治監督が導いた解答とは。
【あらすじ】
2013年。ロンドン、モスクワ、ベルリン、ニューヨーク……。世界の大都市で、超高層ビルが次々と崩壊するとい . . . 本文を読む