ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

東日本大震災被災地旅行2016(閖上、女川、大谷海岸、気仙沼等)

2016年05月05日 | 地方政治・経済
思うところがあって、震災から5年たった被災地を巡ってみる。

5年という月日は長いのか短いのかわからないけど、震災直後のような風景は残っていないし、かといって全てが復興したわけでもない。これは5年後の被災地を巡った備忘録だ。

<訪問先>

■2016/05/02 閖上(ゆりあげ・名取市)
※語り部タクシーに乗車
・日和山
・閖上の記憶

■2016/05/02 荒浜(通過)
※語り部タクシーに乗車

■2016/05/03 松島
・瑞巌寺
・三聖堂

■2016/05/03 万石浦(通過)

■2016/05/03 女川
・女川駅
・シーパルピア女川
※語り部体験

■2016/05/03 大谷海岸

■2016/05/03 気仙沼
・海の市
・リアス・アーク美術館

■2016/05/03 南三陸(通過)
・南三陸町防災対策庁舎

■2016/05/04 七ノ浜
・多聞山展望広場公園・毘沙門堂
・七のや

<雑感>

【2016/05/02 閖上(ゆりあげ)】

閖上では、語り部タクシーを利用して当時の話を聞いたり、「日和山」「閖上の記憶」へ案内してもらう。

この土地では海岸沿いに平野が続いているため、津波は住宅地等を一気に襲い、2~3km離れた高速道路の土手まで達したという。もし高速道路が高架タイプだったら、橋梁の間を抜けて更に被害は大きかったのだろう。

日和山に到着。

「閖上の記憶」では当時の映像が見れる。
また震災当日、卒業式を迎えていた閖上中学校の遺族の方々が語り部として、いろいろな話を聞かせてくれた。
その中で、子供たちの心のケアのために、3段階にわけて「閖上」の街を粘土で作ったという話があった。

1)震災前の街を再現する
2)震災当日の様子を再現する
3)未来の街の様子を創り出す

1段階目の震災前の街の様子を再現する行為、それはそこに街があったという記憶を心に残すということだ。そして3段階目の未来の街を想像するというのは、これからの未来を想像すること。この2つはわかる。しかし2段階目の「震災当日」の記憶を呼び起こし、再現するというのは、これはなかなかハードな作業だと思う。

これは、嫌な記憶を心の奥に閉じ込めたままではトラウマ等として残ってしまうため、あえて表に出させることが必要なのだ、とのこと。心療内科医の方が子供たちの様子を見ながら、その時期を判断し実施したのだという。実際に参加した子供たちは意外と楽しみながら作成に当たったとのこと。。

とはいえ、実際に2段階目の作品は、見る側にとっても必要以上にセンシティヴになってしまう。その作品は当然ながら明るくはない。理屈ではわかっても、これを子供たちにさせるというのは、非常に難しい判断だなぁと思う。

そしてここには「慰霊碑」が設置されている。
こちらの慰霊碑は会いに来た人たちが「触れ」られるようにと作られたものだ。

「閖上の記憶」のスタッフの人たちの、記憶を風化させたくないという想いが、より悲しみを深くする。

 閖上の記憶
 http://tsunami-memorial.org/




【2016/05/03 女川】

JR石巻線の終点でもある女川駅。震災後、バスでの代行運転となり2015年3月にようやく復旧。駅の場所も当時とは別は場所に移された。

駅舎は真新しく、温泉施設「女川温泉ゆぽっぼ」が併設されてい。
駅前には港に向かってプロムナードがあり、両脇を真新しい商店街「シーバルピア女川」が設置されている。
今日は地元の祭りとも重なり、多くの観光客が訪れていた。

シーバルピア女川の一角にある観光案内所にて、「語り部」に参加する。

女川は山間に囲まれていて、津波はその山間を駆け上がるように押し寄せて来たという。
そして他のエリアとは決定的に違うこととして、勢いを増して上ってきた津波は、家屋を破壊尽くした後、瓦礫を含めて全てを引き波が持ち去ってしまったとのこと。

気仙沼等で瓦礫が問題になったのとは対照的だ。

山間で逃げ場のなくなった津波の高さは18mにも達したとのこと。港付近にあったマリンパル女川は水没し、海抜16mの高台にある病院の1Fにも津波が押し寄せた。

正直、18mもの津波なんて想像もできない。

この女川は人口あたりの死者数では、東日本大震災で最も被害の受けた街だ。

しかし/それだけに今日、訪れた女川の町は、町全体で復興への強いパワーに満ちていた。

そしてもう一つ。彼らは海とともに生きることをいち早く選択したという。
他のエリアが海の前に高い防潮堤を築き、ある意味、海を排除しようとするかのような対策をとる中、住宅地を山側の高台エリアに移しつつ、海そのものを見えるようにした。

土地の形状やそこで生きる人々の生活スタイルによって、津波への対策も差が出るのだろう。
無責任な言い方をさせてもらうなら、海とともに生きるというのは、海辺の町にとっては大切な選択ではないかと思う。

女川は決して大きな町ではないけれど、また訪れてみたい、そんなエネルギーに満ちた街だった。

 シーバルピア女川
 https://goo.gl/0MZnbR




【2016/05/03 大谷海岸】

気仙沼に向かう途中。休憩のつもりで立ち寄った海岸沿いのお店。ふと見ると、赤い看板に「JR大谷海岸駅」の文字。そうか、BRTで復旧させている駅なんだ。

献花台があり、花を添える。

献花台が置かれている場所は、かって駅だったところ。「OYA STATION」の文字が残り、反対には線路も残っている。海との間には震災後に積み上げられた防潮堤が。

おそらく気仙沼線は鉄道での復旧ではなく、BRTでの存続になるのだろう。



【2016/05/03 気仙沼】

さすがに瓦礫などは一切なく、代わりにひたすら土地を高くする作業が行われている。これは南三陸もそう。南三陸町防災対策庁舎の骨組みは残っていたものの、既に周囲は2~3m高く整備されている状況。

震災の記録を残しているリアス・アーク美術館へ向かう。
ここには学芸員が独自に撮影した写真とその時に感じたレポートが添えられている。

圧巻。

200点以上の写真があり、150点以上の被災物が展示されている。そこに残されているメモ…

その破壊尽くされた町の様子は、ある種、シュールリアリズムの造形物のようでもあり、物体が論理的にはありえない位置に存在し、見る者の現実感覚を奪っていく。

書かれていたレポートの中で、震災後の記録を見ると視覚的に記録されたものが非常に少ない。これは視覚が思考と不可分のものであり、想像を絶する状況に思考停止に陥ったからだろう、との指摘があった。

閉館時間との兼ね合いで、半分ほどしか見ることができなかったのだけれど、それでも、1つ1つの写真がもたらす凄惨さと非現実感で頭の中は整理できず。

またタイミングを見て、見にきたいと思う。


 リアス・アーク美術館
 http://rias-ark.sakura.ne.jp/2/

 

【2016/05/04 七ノ浜】

休憩がてら「うみの道 七のや」へ。近隣の人々も多いのだろう、家族連れで食事に来ている人が多い。座席は満席だ。

目の前の防波堤まで歩いてみる。

店や住宅があるエリアとヨットハーバーまでの間に、突如、2~3mの壁が立ちはだかる。
それはあまりにも唐突に存在する。海との分断。

もちろんここに住む人たちにとっては、自分たちの命が守られることが一番だ。
しかしこの程度の壁で何が守られるのだろうか。

それとも何か別な意図が?理解に苦しむ。

防波堤の先端まで行ってみる。意外と波は粗い。

 うみの道 七のや
 http://www.shichinoya.com/




<旅行を通して>

一口に被災地と言っても、その土地その土地の地形や生活スタイル等で被害状況も変われば、今後の対策に対する考え方も変わる。特に閖上の風化させないための想いは、女川のそれとは大きく違う。

女川は町の半数が死者・行方不明者になるという状況もあり、町が一丸となり震災を受け止め復興に向かうというパワーがある。それに比べて、仙台やその周辺の名取市は海岸沿いは津波の被害は甚大だが、内陸部はそうではない。もちろん産業や観光面での影響はあっただろうし、そのための「復興」には力が入っている。ただそれだけに被災者の風化されていくのではないかという想い、取り残されていく感は強い。
「閖上の記憶」に託された想いと都市の復興との間には断絶があるのだ。

この2つの都市の違いは極端だとしても、実際、震災の記憶と復興・再生への想いとは必ずしも同じベクトルではない。実際、閖上の慰霊碑に亡くなった生徒の名前を刻む際も、必ずしも遺族の皆が賛成したわけではなかったという。
忘れたいという想いと遺したいという想い、元の日常に戻したいという想いと亡くなった人を悼む思い、それは相反することもあるのだろう。どちらが正しいわけではない。共に活かす道があれば、と思う。

と、湾岸沿いの41号線を走っていると、意外と山を上ったりと高低差があるのだけど、その都度、「過去に浸水があった/解除」との表示が出てくる。どれだけのエリアが被害にあったのか、それは想像を絶するものだ。またFMをかけていても当たり前のように震災の慰霊祭の情報が流れてくる。仙台市内や内陸部の街並みを見れば、僕が暮らしている街と違いがないのに、こうしたところを見ても、やはりここは特別な街なのだ。




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