木村剛氏をバッシングすること、擁護することの意味とは？

週刊誌や切込隊長を中心とした反・木村剛派のバッシングが激しくなっている。週刊誌をはじめとしたマスコミと木村剛が仲の悪いのは周知のことであり、だからこそ「木村剛の金融経済大捜査線」(既に終了)や「週刊！木村剛」といったネット番組や「フィナンシャルジャパン」誌といった既成のマスコミとは違うメディアを自らの手で生み出そうとしている。では何故、マスコミと反りがあわないかというと、マスコミの持つ編集権、言い換えれば情報の取捨選択(情報操作)が(木村剛)本人の意図を正しく伝えない、取材時の横柄さ・無礼さといった背景があり、細かな衝突の繰り返しの結果だろうが、結局のところすでにマスコミに対して過剰に嫌悪感を持ってしまっていることだろう。そのことは中越地震報道に関するキムタケブログやナベツネ批判などによく表れていると思う。まぁ、嫌いなものは嫌いといってしまえばそれまでだけれど。

今回のバッシングのきっかけは「日本振興銀行」の中間決算の発表とそれにまつわる元「日本振興銀行社長候補」落合氏と木村剛氏の確執が露になったことだ。

ZAKZAK:竹中の盟友木村剛指南の日本振興銀早くも黄信号

切込隊長BLOG（ブログ）:木村剛１　～薮蛇呼ばわりされるのは大変光栄なわけだが

切込隊長BLOG（ブログ）:木村剛２　～クイズ17人に聞きました

木村剛銀行が黄色信号、金融維新の行方は？


そこに切込隊長が噛み付いたわけだが(笑)、正直、木村剛を基本的に応援している僕でも、東洋経済の記事がそのまま正しいとすれば、木村剛氏を胡散臭い人物と捉えてしまうだろう。切込隊長BLOGの記事の場合、完全に悪人だ。「事実は一個だけなのに、人それぞれに真実がある状況と言うのは微笑ましいですなあ。」とはあるけれど、まぁ、事実が客観的な意味合いが多いのに対し、真実は感情的な意味合いが多分に含まれていることを考えれば、それぞれの立場によって言い分(真実)が違うなんて当たり前なわけで、今回の件も誰のどの意見をどこまで信じるかでとるスタンスはかなり違ってくる。

とはいえ、木村剛氏側にとっても今回の件はかなり痛手だろう。感情論に発展した個々のやり取りの追及は切込隊長に任せるとして、これだけ書かれると以下のような印象は免れない。

・日本新興銀行の失敗によって木村事務所(KFi)のコンサルティング能力に対する疑問符
・木村剛―竹中平蔵ラインによる癒着構造、そこまでいかなくても人的パイプを利用した何らかの優遇措置が行われているのではないか、という不信感
・それに関わることでもあるが結局、個人の金儲けに利用しているだけではないかという不信感
・感情的になりすぎたやり取りのために、木村剛の器に対する疑問
・マスコミに対する取材拒否やブログ内で「裁判」という言葉を持ち出して警告(恫喝)する姿が実はナベツネと変わらない、という印象

事実はともかくこうした印象を与えてしまったことだけで木村剛氏にとってはかなりの痛手の筈だ。もともと庶民の味方という立場をとり、既存の銀行や甘えきった企業相手に辛らつな批判を行うことでこの立場を気付いた以上、「清貧」な立場であることが求めなれるのに、今回の件はかなりそれを崩すことになるのだろう。

しかしそれにしても今回の騒動で明らかになっているのは、結局、木村剛の"あやしげな"個々の関係を洗い出すことに終始するマスコミという印象があるのもまた事実である。つまり日本振興銀行というビジネスモデルは社会的に意義のあることなのか、意義のあることならそれが成り立つためには何が課題なのか、といった点から書かれた記事はなく、読者が反応しやすいスキャンダラスな部分だけを書きたてているのだ。

これは日本のマスコミと消費者のくせなのかもしれないが、日本プロ野球問題に際しても結局「ナベツネ」「堤」「巨人」が悪く「古田」が正義だ、として消費者の反応しやすい部分のみをあおりあおられ、結果、NPBが今直面する問題を先送りにしてしまった。結果、オーナー会議で問題を理解し、リーダーシップとビジョンを持って行動できる人間が残っただろうか？政治的色彩を含んだ問題解決のためには、時に清濁を共に飲み込むことが求められ場合もあるのだ。

個人的には、短期的な利益追求と変化への拒否反応、分かりやすさ、感情論がベースとした「多数者の専制」が横行する民主主義が適切な判断を下せるとは思っていない。「ソフトバンク」が躍進したのは何も民主的な社員がそろっているからではなく、孫正義という非民主主義的な企業行動の決定要因があったからであり、結果として、日本のブロードバンド環境が世界でもトップクラスになったのである。

木村剛氏が何も正しいことだけをしているとも思わないし、全体の利益が大きければ、ある種の胡散臭さも許容されるべきだと思うのだが、マスコミはこの個々の胡散臭い部分をつつくことに明け暮れ、木村氏側もそれに付き合ってしまっている。そもそも「日本振興銀行」が目指したもの、日本の金融業界の中でそれが求められていた理由は何だったのか、まだその理由が存在するのならここで潰れてもらうわけにはいかないのだ。