ほろ酔い気味の部長から、こういうことなんだよ!と勧められた一冊。部長は社長から勧められたらしい(苦笑)。サブタイトルに「世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーション技法」とあるように、IDEO社がいかに新しい何か―と言っても「使いやすい」「わかりやすい」「便利」といったそもそものものだけれど―をどのように産み出しているのか、そのための企業風土や考え方、仕事のやり方がどうであるかを、数多くの事例を写真を交えて紹介されている。
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発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
第1章 イノベーションの頂点
IDEOの方法論には5つの基本的なステップがある。
1) 理解
市場、クライアント、テクノロジー、問題点について認識されている制約事項を理解すること。
2) 観察
現実の状況の中で現実の人々を観察し、何故そうするのかを見付出すこと。
3) 視覚化
全く新しいコンセプトとそれを使う顧客の姿を目に見えるかたちで描き出すこと。
4) 評価とブラッシュアップ短時間にいくつもプロトタイプを作り、繰り返し評価し、練り上げていく。
5) 実現
新しいコンセプトを市場に出すために、現実のものにする。
第2章 草創期の翼で飛びつづける
第3章 イノベーションは見ることから始まる
企業は顧客にたずねるべきではない。私たちは顧客の身になる以上のことが必要だと思っている。
人がつねに「正しい」行動をとるわけではなく、慣れ親しんだものと全く新しいアイデアの間の溝を飛び越えてくれるとは限らない。
製品を名詞ではなく動詞で考えてみよう。「携帯電話」ではなく「携帯電話をかける」というふうに。
改良を続けていかねばならない。最良の方法は、製品を使用している人を観察することだ。
第4章 究極のブレインストーミング
よりよいブレインストーミングのためには7つの秘訣がある。
1) 焦点を明確にする
2) 遊び心のあるルール
3) アイデアを数える
4) 力を蓄積し、ジャンプする
5) 場所は記憶を呼び覚ます
6) 精神の筋肉をストレッチする
7) 身体を使う
反対にブレインストーミングを台無しにする6つの落とし穴は以下のとおり。
1)上司が最初に発言する
2)全員に必ず発言が回ってくる
3)エキスパート以外立入禁止
4)社外で行う
5)ばかげたものを否定する
6)すべてを書き写す
第5章 クールな企業にはホットなグループが必要だ
第6章 プロトタイプ製作はイノベーションへの近道
プロトタイプの製作は問題を解決するための方法だ。そして、文化であり言語である。重要なのはボールを前に投げれば、目標の一部が達成されるということだ。時間の無駄ではない。
とにかくアイデアを絵にし、モノをつくることだ。そうすれば偶然の発見に遭遇しやすい。要するに基本は遊ぶこと、そして境界を探索すること。
1枚の写真は1000の言葉と同じ価値がある。そしてIDEOでは、質のよいプロトタイプは1000の写真に匹敵する。
プロトタイプをつくることはうまくいかない理由も見つけられるし、新しい何かを見出すこともできる。
第7章 温室をつくろう
イノベーションは温室で豊かに花開く。オフィス・スペースはチームが1つにまとまる場所である。
序列はクリエイティブの敵。
第8章 予想外のことを予想する
予想外のことを予想し、組織の内外で発生する不意の出来事を進んで受け入れる。そのためには「斜めからものを見て」「他家受粉する」ことが必要だ。
他家受粉するための7つのヒントは以下の通り。
1)雑誌の講読とネットサーフィン
アイデアの浅瀬を歩き回るのだ
2)映画監督になる
観察の達人になろう
3)一般公開する
コメントやアイデアを聞かせてもらえば多くのことを学べるはずだ
4)さまざまな主張に耳を傾ける
5)アウトサイダーを雇う
6)ちがう人間になってみる
7)2種類以上の仕事ができるように訓練する
第9章 バリアを飛び越える
観察し、ブレインストーミングをし、プロトタイプを作ったとしても、必ずしもうまくいくわけではない。そこには「バリア」が存在する。そのバリアは外部的なもの-新しい製品やテクノロジーに対する「文化的な抵抗」かもしれない。あるいはしっかり根付いた「習慣」かもしれない。まずはこの障害を予期し、理解しておくこと。
第10章 楽しい経験をつくりだす
イノベーションのステップを踏んでいく時は名詞ではなく、動詞で考えるようにしよう。目標は店舗をより素敵にすることではない、買い物という経験をより素晴らしいものにすることだ。
最良の製品とサービスをつくり出す上でどうしても必要なのは、「シンプルなことはシンプルにし、複雑なことは実現可能にする」というデザインの古くからの原則に従うことだ。
第11章 時速100キロのイノベーション
第12章 枠をはみ出して色を塗る
イノベーションに関して決定を下すのは、危険をおかすことだ。「失敗は成功への近道」であり、リスクをおかさなければ成功しない。失敗は、リスクを冒す人々に、破ることができるルールと厳しい教訓となるルールについて教えてくれる。
サウスウエストの例。従業員を管理するのではなく、彼らと共鳴できる会社にすること。よい雰囲気は従業員の職制の間に存在した壁を取り除き、その結果、安全性・運賃・手荷物の扱い・顧客サービスの面でトップに位置する。
IBM、マイクロソフト、アップルさえもソフトウェアを開発し保護する方法を求めていた。リナックスはこうしたこうしたルールを打ち破って成功を収めている。
イグルーは大学生のために冷凍庫を取り除き、6本パックのビールをより多く詰め込めるようにした。
スウォッチは必要な部品を半分に減らし、どんな時計よりも安いクォーツ時計を作り、時計をファッションアクセサリーにした。
第13章 「ウェットナップ」インターフェースを探して
機能の詰め込みは製品やサービスの開発や洗練の過程で起こりうる「イノベーション」の敵である。
デザインをシンプルにするのは、明確な指示を与えるようなものだ。製品やサービスを洗練していく最初のステップは、多くの機能が必要だという先入観を捨てることだ。
デザインをする時に最も注意を払う必要があるのは、その製品のなかでもっとも人の手が触れる場所だ。
新しい仕事に着手する時は以下のことを心がけよう。
1)入りやすい入り口をつくる
すぐれたものはそれを利用する人がたやすくそこに至る道を見つけられるように考える
2)発想を促す具体例を探す
発想を促す具体例や言葉を考え出し、デザインや製品の目標にすることは有効だ
3)ブリーフケースを考える
仕事と家庭の枠を超える機器は何であれ、純粋にオフィスで使われる機器より愛着を感じさせる
4)色のインスピレーション
5)舞台裏をみせる
カーテンの裏で何が起こっているかを顧客に知らせてあげよう。PCの画面に表示させる砂時計は、コンピュータがあなたを忘れていないことを教えるものだ。
6)クリックは2回よりも1回のほうがいい
製品には標準設定モードが必要だ。基本的な処理は最小限の指示だけですませられるようにすべきである。
7)ミスを許容する
すぐれた製品にはかならず過ちを回避するための機能があるが、本当の勝者は誤ってしまった後でそれを回復する機能をもつものだ。
8)傷つけないことが第一
些細なことで顧客に不快感を与えたり、ちょっとした不安を感じさせていないだろうか。
9)チェックリスト
10)すばらしいおまけ
すばらしいアクセサリーや小さい部品が製品自体を支えることがある。
第14章 未来を生きる
10年先のことを自由に考えることによって、私たちは新しくて素晴らしいアイデアのパレットを手に入れることができる。
第15章 完璧なスイングを身につける
・顧客を観察する。特に熱中している人がいい
・前向きなボディランゲージを従業員と訪問者に送れるように仕事場を工夫する
・「名詞」ではなく「動詞」で考える
・ルールを破り「失敗して前進する」
・人間らしさを失わず、組織の環境を調整し、ホットチームが生まれ育つ余裕を持つ
・1つの部門から別の部門へ、会社から将来の顧客へ、現在から未来への橋をかける
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非常に多岐にわたって盛りだくさんの内容となっているんだけれど、量のわりに読みやすい。具体例が多く参考になることは間違いがないだろう。
イノベーションを起こすということは、結局は「頭の柔軟性」と「実行力(試行錯誤)」なんだろう。しかしそれらを支えるためには「職場の環境」や「企業風土」などは欠くことはできない。「自由」な職場、官僚的でないこと、多様性、チームが全てをリードできること(責任感ややりがい)、挑戦することを許容する風土、それらを楽しめること…これらがなければ柔軟な発想も生まれてこない。
そしてブレインストーミングの方法論があり、それが共有化されていること。人の話を聞き、観察し、思考をめぐらし、体験し、1つの目標にむかって様々な知見を結集させる。こうしてイノベーションは起こるのだ。
うちの会社で不足しているのが何かと考えてみると、殆どが足りなくてどうしたらいいものか(苦笑)。「こういうことなんだよ」とバトンを渡されてはみたものの、この組織で実行することは並大抵ではないんですが…
発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
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シンプリシティの法則/ジョン・マエダ - ビールを飲みながら考えてみた…
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発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
第1章 イノベーションの頂点
IDEOの方法論には5つの基本的なステップがある。
1) 理解
市場、クライアント、テクノロジー、問題点について認識されている制約事項を理解すること。
2) 観察
現実の状況の中で現実の人々を観察し、何故そうするのかを見付出すこと。
3) 視覚化
全く新しいコンセプトとそれを使う顧客の姿を目に見えるかたちで描き出すこと。
4) 評価とブラッシュアップ短時間にいくつもプロトタイプを作り、繰り返し評価し、練り上げていく。
5) 実現
新しいコンセプトを市場に出すために、現実のものにする。
第2章 草創期の翼で飛びつづける
第3章 イノベーションは見ることから始まる
企業は顧客にたずねるべきではない。私たちは顧客の身になる以上のことが必要だと思っている。
人がつねに「正しい」行動をとるわけではなく、慣れ親しんだものと全く新しいアイデアの間の溝を飛び越えてくれるとは限らない。
製品を名詞ではなく動詞で考えてみよう。「携帯電話」ではなく「携帯電話をかける」というふうに。
改良を続けていかねばならない。最良の方法は、製品を使用している人を観察することだ。
第4章 究極のブレインストーミング
よりよいブレインストーミングのためには7つの秘訣がある。
1) 焦点を明確にする
2) 遊び心のあるルール
3) アイデアを数える
4) 力を蓄積し、ジャンプする
5) 場所は記憶を呼び覚ます
6) 精神の筋肉をストレッチする
7) 身体を使う
反対にブレインストーミングを台無しにする6つの落とし穴は以下のとおり。
1)上司が最初に発言する
2)全員に必ず発言が回ってくる
3)エキスパート以外立入禁止
4)社外で行う
5)ばかげたものを否定する
6)すべてを書き写す
第5章 クールな企業にはホットなグループが必要だ
第6章 プロトタイプ製作はイノベーションへの近道
プロトタイプの製作は問題を解決するための方法だ。そして、文化であり言語である。重要なのはボールを前に投げれば、目標の一部が達成されるということだ。時間の無駄ではない。
とにかくアイデアを絵にし、モノをつくることだ。そうすれば偶然の発見に遭遇しやすい。要するに基本は遊ぶこと、そして境界を探索すること。
1枚の写真は1000の言葉と同じ価値がある。そしてIDEOでは、質のよいプロトタイプは1000の写真に匹敵する。
プロトタイプをつくることはうまくいかない理由も見つけられるし、新しい何かを見出すこともできる。
第7章 温室をつくろう
イノベーションは温室で豊かに花開く。オフィス・スペースはチームが1つにまとまる場所である。
序列はクリエイティブの敵。
第8章 予想外のことを予想する
予想外のことを予想し、組織の内外で発生する不意の出来事を進んで受け入れる。そのためには「斜めからものを見て」「他家受粉する」ことが必要だ。
他家受粉するための7つのヒントは以下の通り。
1)雑誌の講読とネットサーフィン
アイデアの浅瀬を歩き回るのだ
2)映画監督になる
観察の達人になろう
3)一般公開する
コメントやアイデアを聞かせてもらえば多くのことを学べるはずだ
4)さまざまな主張に耳を傾ける
5)アウトサイダーを雇う
6)ちがう人間になってみる
7)2種類以上の仕事ができるように訓練する
第9章 バリアを飛び越える
観察し、ブレインストーミングをし、プロトタイプを作ったとしても、必ずしもうまくいくわけではない。そこには「バリア」が存在する。そのバリアは外部的なもの-新しい製品やテクノロジーに対する「文化的な抵抗」かもしれない。あるいはしっかり根付いた「習慣」かもしれない。まずはこの障害を予期し、理解しておくこと。
第10章 楽しい経験をつくりだす
イノベーションのステップを踏んでいく時は名詞ではなく、動詞で考えるようにしよう。目標は店舗をより素敵にすることではない、買い物という経験をより素晴らしいものにすることだ。
最良の製品とサービスをつくり出す上でどうしても必要なのは、「シンプルなことはシンプルにし、複雑なことは実現可能にする」というデザインの古くからの原則に従うことだ。
第11章 時速100キロのイノベーション
第12章 枠をはみ出して色を塗る
イノベーションに関して決定を下すのは、危険をおかすことだ。「失敗は成功への近道」であり、リスクをおかさなければ成功しない。失敗は、リスクを冒す人々に、破ることができるルールと厳しい教訓となるルールについて教えてくれる。
サウスウエストの例。従業員を管理するのではなく、彼らと共鳴できる会社にすること。よい雰囲気は従業員の職制の間に存在した壁を取り除き、その結果、安全性・運賃・手荷物の扱い・顧客サービスの面でトップに位置する。
IBM、マイクロソフト、アップルさえもソフトウェアを開発し保護する方法を求めていた。リナックスはこうしたこうしたルールを打ち破って成功を収めている。
イグルーは大学生のために冷凍庫を取り除き、6本パックのビールをより多く詰め込めるようにした。
スウォッチは必要な部品を半分に減らし、どんな時計よりも安いクォーツ時計を作り、時計をファッションアクセサリーにした。
第13章 「ウェットナップ」インターフェースを探して
機能の詰め込みは製品やサービスの開発や洗練の過程で起こりうる「イノベーション」の敵である。
デザインをシンプルにするのは、明確な指示を与えるようなものだ。製品やサービスを洗練していく最初のステップは、多くの機能が必要だという先入観を捨てることだ。
デザインをする時に最も注意を払う必要があるのは、その製品のなかでもっとも人の手が触れる場所だ。
新しい仕事に着手する時は以下のことを心がけよう。
1)入りやすい入り口をつくる
すぐれたものはそれを利用する人がたやすくそこに至る道を見つけられるように考える
2)発想を促す具体例を探す
発想を促す具体例や言葉を考え出し、デザインや製品の目標にすることは有効だ
3)ブリーフケースを考える
仕事と家庭の枠を超える機器は何であれ、純粋にオフィスで使われる機器より愛着を感じさせる
4)色のインスピレーション
5)舞台裏をみせる
カーテンの裏で何が起こっているかを顧客に知らせてあげよう。PCの画面に表示させる砂時計は、コンピュータがあなたを忘れていないことを教えるものだ。
6)クリックは2回よりも1回のほうがいい
製品には標準設定モードが必要だ。基本的な処理は最小限の指示だけですませられるようにすべきである。
7)ミスを許容する
すぐれた製品にはかならず過ちを回避するための機能があるが、本当の勝者は誤ってしまった後でそれを回復する機能をもつものだ。
8)傷つけないことが第一
些細なことで顧客に不快感を与えたり、ちょっとした不安を感じさせていないだろうか。
9)チェックリスト
10)すばらしいおまけ
すばらしいアクセサリーや小さい部品が製品自体を支えることがある。
第14章 未来を生きる
10年先のことを自由に考えることによって、私たちは新しくて素晴らしいアイデアのパレットを手に入れることができる。
第15章 完璧なスイングを身につける
・顧客を観察する。特に熱中している人がいい
・前向きなボディランゲージを従業員と訪問者に送れるように仕事場を工夫する
・「名詞」ではなく「動詞」で考える
・ルールを破り「失敗して前進する」
・人間らしさを失わず、組織の環境を調整し、ホットチームが生まれ育つ余裕を持つ
・1つの部門から別の部門へ、会社から将来の顧客へ、現在から未来への橋をかける
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非常に多岐にわたって盛りだくさんの内容となっているんだけれど、量のわりに読みやすい。具体例が多く参考になることは間違いがないだろう。
イノベーションを起こすということは、結局は「頭の柔軟性」と「実行力(試行錯誤)」なんだろう。しかしそれらを支えるためには「職場の環境」や「企業風土」などは欠くことはできない。「自由」な職場、官僚的でないこと、多様性、チームが全てをリードできること(責任感ややりがい)、挑戦することを許容する風土、それらを楽しめること…これらがなければ柔軟な発想も生まれてこない。
そしてブレインストーミングの方法論があり、それが共有化されていること。人の話を聞き、観察し、思考をめぐらし、体験し、1つの目標にむかって様々な知見を結集させる。こうしてイノベーションは起こるのだ。
うちの会社で不足しているのが何かと考えてみると、殆どが足りなくてどうしたらいいものか(苦笑)。「こういうことなんだよ」とバトンを渡されてはみたものの、この組織で実行することは並大抵ではないんですが…
発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
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シンプリシティの法則/ジョン・マエダ - ビールを飲みながら考えてみた…
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