ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

通信と郵便の違いは? 郵政民営化問題

2004年08月05日 | ビジネス
木村さんの視点は、「NTT分割」から今度は「郵政民営化ネタ」へと移ったわけですが、、折角引用していただいたので、感想を。まぁ、単純に言えば、郵政民営化を「今」「何故」やるのか、といった点を明確にする必要があると思います。

週刊!木村剛:IP電話とNTT分割と郵政民営化

郵政公社には大きく分けて3っの事業区分があるわけですが、それは民間と対比するといかのような感じになると思います。

郵便事業:宅配事業
郵便貯金:銀行事業
簡易保険:保険事業

一連の金融ビックバンもあり、金融系の2事業(銀行事業、保険事業)については、規模の問題があるとはいえ、まだ親和性が高く、同一の事業体で行うことにもメリットがあるかもしれないが、宅配事業については、まぁ、「代引」で預かったお金の振込口座です。といった強引なやり方くらいしか、関連性はないだろう。

にもかかわらず、「ニュース検索」をしてみると、相変わらず一体化の話が、、、

郵政改革「民営の公社」も選択肢に…自民特命委

まぁ、それはそれとして、「週刊!木村剛」の中で、おそらく「広義のデリバリー」という意味もあって、NTT分割とこの宅配業務との比較を持ち出されていたのだと思います。とはいえ、この両者のモデルには大きな相違点がある。

「通信」は「リアルタイム」に音声を届けるものだが、「宅配」は「遅延」を前提に荷物を届けるシステムである。

また「通信」は距離による「従量課金」だが、「宅配」は距離ではなく重量による課金である(全国均一料金)。

このことがどういう意味を持つかというと、「通信」はリアルタイム性の確保という点からいうと、間に中継点等入らず直接P2Pで結ぶことが望ましいものである。実際には経済効率を考え、地域や県域などで集約箇所を設けて、多段階層的にとりまとめて全国網を統括している。つまり「リアルタイム性」の確保という点からすると、中継箇所は少ない方がよく、新電電という他社との中継を行うことが、そもそも阻害要因である。

これに対して、「宅配」(=物流)はどうかというと、P2Pを求められることはない。例えば国際線を思い出して欲しいが、お客さん1人1人が行きたいところに専用飛行機を用意し飛ばす、ということはありえない。物流の場合、そもそもP2Pではコストがかかりすぎており、はじめから中継路線、地域路線、お客様までの宅配網を分けてある程度のまとった規模で配送しない限り成り立たないものなのだ。

だからこそ、近隣市町村、府県内だけ宅配会社など多くの事業者が存在しており、「『地域』による分割」という特性からいうと、「通信」などよりもよっぽど合っている。

しかしここに「ユニバーサルサービス」=「全国均一の料金体系でサービスを提供する」ために「郵政公社は一体」という不思議な論理が生まれている。

この「全国均一」というのが不思議なところで、配送のコストを考えると通常、「重量」と「距離」が基準になるはずだ。例えば東京から横浜まで荷物を運ぶ場合、一定のスピードで運転しているとすると、ガソリンの使用量は車両の重さと距離で決まる。一般的に宅配業者の料金体系が配送先の「地域」(=距離)と「重さ」で決まるのもそのためだ。

まだ個人向けの物流網が整備されていなかった時代は、そうした相互補助的な料金体系、近距離利用者には割高だけど、長距離利用者の負担を軽くして、物流全体の発展を促す、というのは意味があったのだろうが、現代のように多様な物流システム、サービス体系がそろっている時代には、「全国均一の料金体系の維持」は必然性は薄い。

大体、「電話」の「ユニバーサルサービス」は、「誰もが電話にアクセスできる環境を提供する」ことであり、料金体系については受益者負担(=利用時間×距離)で決定しており、その考えを踏襲すれば、アクセス権を確保できれば、「全国均一」でなくてもいいのではないか。

ただ「郵便事業の民営化」が必要なのか、どうかというのは一度、ちゃんと議論した方がいいと思う。

郵便物の中心は「請求書」などの「金銭関係」、DM、年賀ハガキだ。しかしIT化、ECの進展、決済手段の多様化といった流れを考えると、「金銭関係」の需要は決して大きくならないだろう。またメルマガ、インターネットでのキーワード検索、フリーマガジンといった「コストパフォーマンスのいい」広告手段の発達はDMに打撃を与えるだろうし、年賀ハガキについても企業の需要は確実に落ちている。

ECの発達により小口の宅配の需要は伸びるかもしれないが、郵便需要全体は減少方向にある。また「通信」と異なり、ロボットが配送するとか、新しい運輸手段が登場するといったことでもない限り、大きな技術革新が期待できない分野でもある。

となると宅配需要全体を郵政・民間で食い合うしかない。そこに巨大な「郵政会社」が乗り込んできては、中小の宅配事業者はひとたまりもない。

単純に「郵政公社」は非効率だから「民営化」するというのではなく、もちろん、小泉さんが言っているからする、というのでもなく、業界全体をどうするかという視点が必要ではないか。それは業界の保護ではなく、あくまで「健全な発展」のために。

そのためには、NTTが全てNTTでやってしうというのと同じように、郵政会社が全てをやってしまうのではなく、例えば、お客様への宅配網は他社にアウトソーシングする、もしくは(各地域に閉じた)中小事業者に対して中継路線を提供するといった他社との「協業」を考えて欲しいと思う。






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