ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

地頭力を鍛える-問題解決に活かす「フェルミ推定」- / 細谷功

2008年02月19日 | 読書
さて、問題です。「日本全国に電柱は何本あるでしょうか?」いきなりこう問われたら、あなたはどう答える(考える)だろうか。

もちろん正確な数字を求めているわけではない。役所の人間に聞かれているならともかく、本当に必要ならインターネットで調べればいい。そうではなくこういう知識では回答できないような問題に対して、どのように考え、推論を立てるかが問われているのだ。



この「地頭力を鍛える」ではこうした一見とらえどころのない問題を、フェミノ推論を使いながら解答を求めることで、考える力の基礎となる知的能力(=「地頭力」)を鍛えられるという。

まず地頭力とは何か。一般に「頭がいい」といった場合、大きく3つに分類される。1つ目が知識が豊富であるという意味の「物知り」である。2つ目が対人感性が高くて人の気持を瞬時に察知し行動できる「機転が利く」というタイプ。そして3つ目が考える力・思考能力が高い「地頭力」となる。

この地頭力は3層構造からなり、特に3っの思考力からなる。イメージとしてはこんな感じ。


抽象化思考力(単純化)/フレームワーク思考力(全体指向)/仮説思考力(結論から考える)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
論理思考力(守り)/直観力(攻め)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
知的好奇心(原動力)



まず原動力としての「知的好奇心」があり、その上に「論理思考力」と「直観力」がある。これらをベースとして、具体的にものごとを思考していく上での方向性とも言うべき3っの思考力、

・抽象化思考力(単純に考える)
・フレームワーク思考力(全体から考える)
・仮説思考力(結論から考える)

が存在する。


では、今何故、こうした「地頭力」が求められているのか。

インターネットの発達は膨大な情報量に誰もがアクセス可能となった。その結果、「コピペ族」ではないけれど、考えることを止めて(忘れて)情報におぼれてしまう人たちと、そうした情報をもとに自ら考え、「新しい考え方・知識」を生み出せる人間とに二極化することとなった。

これまでであれば、「知識・記憶力」と「対人感性」がビジネスマンにとっては必要だった。社内人脈や根回しといった「対人感性」とこれまでのビジネスモデルを踏襲し、業界ルールなど経験や業界内の「知識」といったもので仕事は成立した。しかし現代はそんな時代ではない。知識の陳腐化が激しく誰もが低コストで情報を仕入れられる現代においては、「知識」があるというのは武器ではなく、そうした知識や情報から増幅させ、付加価値を創出することこそが求められこととなった。

3っつの思考力のもう少し詳しく書いておこう。

まず「仮説思考力」というのは、1)いまある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、2)常にそれを最終目的地として強く意識し、3)情報の精度を上げながら検証を繰り返し、最終結論へといたる思考パターンである。
仮説思考力におけるポイントは、1)どんなに少ない情報からでも仮説を構築する姿勢、2)前提条件を設定して先に進む力、3)時間を決めてとにかく結論を出す力である。

「フレームワーク思考」の目的は、思考の癖を取り払って、1)コミュニケーションを効率的に進めるとともに、2)ゼロベースで斬新な発想を生み出すためのものである。
フレームワーク思考とは、全体を俯瞰し(全体俯瞰力)、「切り口」の選択・分類・因数分解を行い(分解力)、全体再俯瞰とボトルネックの発見のことである。

「抽象化思考力」によって応用力を飛躍的に向上する。そのためのプロセスとしては、1)抽象化、2)解法の適用、3)最具体化の3ステップだ。また抽象思考力に必要なポイントは、1)モデル化、2)そのための枝葉の切捨て、3)アナロジーである。

以前、「こいつはセンスのある奴だぁ」「センスのある思考法」でも書いたとおり、個人的にはこの中でも「抽象化思考力」と「仮説構築力」というのは重要だと思う。ある意味、「全体俯瞰」というのは視点の問題であり、心構えの問題でもある。これに対して、「抽象化」と「具体化」を自由に駆け巡る能力、あるいはそのための「仮説構築力」というのは、「柔軟さ」というか、「軽さ」というか、「発想」の豊富さにつながるものと思う。

会社などみていても、意外とこの3っつの思考力を駆使できる人間は多くない。

何らか問題に対応しなければならない場合、あるいは何らかの戦略を立てなければならない場合に、どうしてもその事象への対応だけで終わってしまう人がいる(この本で言うところの「改善」でしかない人)。そういう人たちの多くは、この3っの力が不足しているのだろう。

こういう人と話をしていると、結局、彼らは何がやりたいのか、何を目指しているのか、全くわからない(というか、事象に対応しているだけだからそもそもそんな先のことを考えていないのだけれど…)。対症療法的な意見は多いけれど、結局、本質的なところには届いていないのだ。

で、そういう人からすると、逆にこうした3っつの思考力の上で提示された戦略や考え方が理解できない(頭では理解できても感情的に落ちていない)ことが多い。全く「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」とはうまく言ったものだ。

ところで冒頭の質問

「日本全国に電柱は何本あるでしょうか?」

に答えは出ただろうか?

僕自身はこの問いに対して、2つの解法を考えた。
1つは、日本と同じ総面積の長方形を想定し、その上で1つの電柱のがサポートできる面積で割るという方法。もう1つは、電柱間をには一定の距離でケーブルをサポートする必要があるだろうという前提で、日本の総外周と中継区間の距離、面をサポートするための係数をかけた上で、電柱間の一定距離で割るというもの。

ただし解法を想定した時点で、何となく満足してしまって、最後まで計算せず。というわけで、仮説思考力の「やり遂げる」というところが不足しているということでしょうか。ま、このあたりの「貪欲さ」不足が欠点ですね。はい。

兎にも角にも、戦略が苦手な営業マンタイプや新入社員にはお勧めの一冊。



地頭力を鍛える-問題解決に活かす「フェルミ推定」- / 細谷功


こいつはセンスのある奴だぁ

センスのある思考法

質問する力 / 大前研一





コメントを投稿