夏野剛さんが高速ETCで高速1000円について書いていた。GWに高速渋滞のニュースを見ながら、このETCを利用した高速1000円乗り放題という企画について感じていたことと重なる部分もあったので、改めて書いておきたい。
高額ETCで高速1000円 日本の政策はあいかわらずユーザー不在?ビジネス-最新ニュース:IT-PLUS
このETC1000円乗り放題という施策は、
・ETC搭載の「軽自動車等」もしくは「普通車」
・休日にNEXCO東日本/中日本/西日本が管理する割引対象道路を走行すれば割引が適用
・料金をいただく区間ごとに、対象区間部分の割引後料金を上限1,000円として計算します。
(平成21年4月29日からは、一部の特定区間に乗り継ぎ特例を適用)
というもの。つまり実質的にはETC搭載している普通車であれば、休日、高速が1000円で乗り放題になるというもの。
この政策、結局、ETCの手配が間に合わなかった僕が言うのもなんだけれど、やはりどこか「おかしい」と思う。夏野さんが指摘するように、「そもそも高速道路は一種の装置産業である。装置産業を効率よく運営するためにもっとも重要なことは「稼働率」を上げること」であるはずなのに、今回の政策は、渋滞を生むための仕掛けだったのでは?と思えてしまうことだ。
例えば携帯キャリアとその様子を比べてみよう。これまでの高速の料金体系というのは、通信キャリアで言うところの「従量制」の料金体系だ。利用した「距離」によって料金が上がっていく。これはある意味、当たり前の料金体系だろう。利用した人が利用した「距離」に応じて金額を支払うのだから。
しかしこれではどうしても需要が一定限度でとまってしまう。
そこで通信キャリアが選択したのが「ダブル定額制」の料金体系だ。このサービスの場合、一定量の通信量(l)までを下限の定額料金(ex.490円)としつつ、lを越えるといったんその利用量に応じた従量課金に戻す。ただしそれが無制限に課金されるのではなく上限金額(ex.4410円)を決めておく。つまりある一定量(m)を越えると完全定額制になるというモデルだ。
この料金体型の場合、いつも通信量がmを越えるとヘビーユーザーはもちろんこの「ダブル定額」を利用するだろう(この場合は通信キャリアが損をする)が、平均するとmを下回っているくらいの情報量のお客さんを取り込むことでARPUを上げることができる。従量課金の場合、「パケ死」という言葉があったように、どれだけ料金がかかるかわからない不安がつきまとうため、一種の安心料として、このサービスに入ることが多い。その結果、より多くの利用者を掘り起こし、全体としての収入を大きくすることが可能となるのだ。
今回のETC1000円乗り放題という企画にはこうした全体として収入を上げようという視点が薄いように思う。
いや、利用者が増えたんだから儲かったんだよ、という人がいるかもしれないが、もちろんそういう戦略もあるのだけれど、こと鉄道や通信事業、今回の高速道路といった設備産業・インフラ産業からすると大きな問題を抱えている。それが夏野さんもしてきしているような「稼働率」の問題だ。
こうした設備産業の場合、まず先行して巨額の投資が必要になる。それをユーザーに利用してもらうことで投資を回収していくことになるのだけれど、そのためには設備を「効率的」に利用してもらうことが必要になる。
ここでいう「効率的」とはどういう状態か。
例えば「電話」の場合、利用者がよく使う時間帯というのが決まってくる。しかしそのピークにあわせて設備を打つとなると、それ以外の時間帯には空き(余剰設備)ができてしまい、無駄な投資になりかねない。こうした投資は結局はユーザーの利用料金に跳ね返るわけで、料金が高ければ利用者が伸びないという悪循環にはまることになる。
反対に平均的な通話量にあわせて設備を打った場合、みんなが使いたいと思ったタイミングでは多くの人が「繋がらない」という状態になりかねない。そんな状態が続くようだと今度は電話会社を他社に切り替えたり、そもそも「電話」を使わないといった状態になるだろう。つまりここでいう「効率的」とは、常に満遍なく使われている状態を理想とする。
今回の「ETC1000円乗り放題」という戦略は果たして「効率的」だったか?
GWという通常よりも交通量の多い時期であったとしても、あの混みようは異常だろう。通常、高速道路は週末から月曜にかけて交通量が多くなる。その交通量が多い曜日を狙って「1000円乗り放題」ということをすれば、もちろん「混雑」にならざろうえない。
「効率化」という観点で考えるならば、本来は交通量の少ない「火曜から木曜」までの交通量を増やすための「割引」や深夜から早朝にかけての走行車に対しての「割引」などが求められるのだろう。そうすることで「満遍なく」利用者を増やせるのだ。
今回の「ETC1000円乗り放題」という企画は、ある意味、経済対策的な意味合いが大きかったためであったり、実際、高速道路事業会社が打ち出している割引制度には、今言ったような、「平日割り」や「早朝夜間割引」といったものも用意されているわけだけれど、今回の施策があまりにも「やり過ぎ」た感があったのではないだろうか。
こうしたある意味不健全な経済行為は、他の競業者(JRやフェリー、航空など)や需給バランスそのものに「ひずみ」を生じさせかねない。もう少しバランスのいいやり方が求められたのだろう。
高額ETCで高速1000円 日本の政策はあいかわらずユーザー不在?ビジネス-最新ニュース:IT-PLUS
このETC1000円乗り放題という施策は、
・ETC搭載の「軽自動車等」もしくは「普通車」
・休日にNEXCO東日本/中日本/西日本が管理する割引対象道路を走行すれば割引が適用
・料金をいただく区間ごとに、対象区間部分の割引後料金を上限1,000円として計算します。
(平成21年4月29日からは、一部の特定区間に乗り継ぎ特例を適用)
というもの。つまり実質的にはETC搭載している普通車であれば、休日、高速が1000円で乗り放題になるというもの。
この政策、結局、ETCの手配が間に合わなかった僕が言うのもなんだけれど、やはりどこか「おかしい」と思う。夏野さんが指摘するように、「そもそも高速道路は一種の装置産業である。装置産業を効率よく運営するためにもっとも重要なことは「稼働率」を上げること」であるはずなのに、今回の政策は、渋滞を生むための仕掛けだったのでは?と思えてしまうことだ。
例えば携帯キャリアとその様子を比べてみよう。これまでの高速の料金体系というのは、通信キャリアで言うところの「従量制」の料金体系だ。利用した「距離」によって料金が上がっていく。これはある意味、当たり前の料金体系だろう。利用した人が利用した「距離」に応じて金額を支払うのだから。
しかしこれではどうしても需要が一定限度でとまってしまう。
そこで通信キャリアが選択したのが「ダブル定額制」の料金体系だ。このサービスの場合、一定量の通信量(l)までを下限の定額料金(ex.490円)としつつ、lを越えるといったんその利用量に応じた従量課金に戻す。ただしそれが無制限に課金されるのではなく上限金額(ex.4410円)を決めておく。つまりある一定量(m)を越えると完全定額制になるというモデルだ。
この料金体型の場合、いつも通信量がmを越えるとヘビーユーザーはもちろんこの「ダブル定額」を利用するだろう(この場合は通信キャリアが損をする)が、平均するとmを下回っているくらいの情報量のお客さんを取り込むことでARPUを上げることができる。従量課金の場合、「パケ死」という言葉があったように、どれだけ料金がかかるかわからない不安がつきまとうため、一種の安心料として、このサービスに入ることが多い。その結果、より多くの利用者を掘り起こし、全体としての収入を大きくすることが可能となるのだ。
今回のETC1000円乗り放題という企画にはこうした全体として収入を上げようという視点が薄いように思う。
いや、利用者が増えたんだから儲かったんだよ、という人がいるかもしれないが、もちろんそういう戦略もあるのだけれど、こと鉄道や通信事業、今回の高速道路といった設備産業・インフラ産業からすると大きな問題を抱えている。それが夏野さんもしてきしているような「稼働率」の問題だ。
こうした設備産業の場合、まず先行して巨額の投資が必要になる。それをユーザーに利用してもらうことで投資を回収していくことになるのだけれど、そのためには設備を「効率的」に利用してもらうことが必要になる。
ここでいう「効率的」とはどういう状態か。
例えば「電話」の場合、利用者がよく使う時間帯というのが決まってくる。しかしそのピークにあわせて設備を打つとなると、それ以外の時間帯には空き(余剰設備)ができてしまい、無駄な投資になりかねない。こうした投資は結局はユーザーの利用料金に跳ね返るわけで、料金が高ければ利用者が伸びないという悪循環にはまることになる。
反対に平均的な通話量にあわせて設備を打った場合、みんなが使いたいと思ったタイミングでは多くの人が「繋がらない」という状態になりかねない。そんな状態が続くようだと今度は電話会社を他社に切り替えたり、そもそも「電話」を使わないといった状態になるだろう。つまりここでいう「効率的」とは、常に満遍なく使われている状態を理想とする。
今回の「ETC1000円乗り放題」という戦略は果たして「効率的」だったか?
GWという通常よりも交通量の多い時期であったとしても、あの混みようは異常だろう。通常、高速道路は週末から月曜にかけて交通量が多くなる。その交通量が多い曜日を狙って「1000円乗り放題」ということをすれば、もちろん「混雑」にならざろうえない。
「効率化」という観点で考えるならば、本来は交通量の少ない「火曜から木曜」までの交通量を増やすための「割引」や深夜から早朝にかけての走行車に対しての「割引」などが求められるのだろう。そうすることで「満遍なく」利用者を増やせるのだ。
今回の「ETC1000円乗り放題」という企画は、ある意味、経済対策的な意味合いが大きかったためであったり、実際、高速道路事業会社が打ち出している割引制度には、今言ったような、「平日割り」や「早朝夜間割引」といったものも用意されているわけだけれど、今回の施策があまりにも「やり過ぎ」た感があったのではないだろうか。
こうしたある意味不健全な経済行為は、他の競業者(JRやフェリー、航空など)や需給バランスそのものに「ひずみ」を生じさせかねない。もう少しバランスのいいやり方が求められたのだろう。
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