ここ最近の偽造キャッシュカード問題を受けてか、地銀の8割強がICカード化を検討を始めたものの、実情は95%の銀行がメドが立っていないようだ。とはいえ、この銀行キャッシュカードのIC化の流れは止めることはできないだろう。そしてこのキャッシュカードのICカード化は、現在、Suicaやお財布携帯への導入で圧倒的にシェアを誇るFeliCaを崩す可能性と、電子マネー普及の可能性を秘めている。
Sankei Web 経済 ICカード、8割強が検討 全国の地域銀行調査(01/29 18:36)
偽造困難ICカード化、95%の銀行メド立たず
Sankei Web 経済 IC内蔵キャッシュカード発行へ 三井住友、偽造対策で(01/28 17:06)
銀行のICカード化については、まだ具体的な検討が始まった段階ということもあって、どのような導入形態になるのかはまだ見えていない。設備投資に余力のあるところや他行を出し抜きたいといったいった、みずほ銀行や三井住友などの一部都銀は先行して独自でICカード化を図るようだが、コンビニなどにこれだけATMが普及している現状を考えると、全銀連など銀行業界団体が統一的な仕様をまとめ、それに基づいて導入をすすめるというのが大半だろう。
そうすれば調達コストも抑えることができるというものだ。
そこで俄然注目されるのがどこの技術をベースとするかということ。その最有力は「NTT(NTTデータ)」だろう。
NTTデータは、これまでも各行を結んだ「全銀システム」や「統合ATM」を構築した実績がある。銀行の勘定系システムは各行が選定したホストコンピュータによって運用されているが、それら異なるメーカーのコンピューターを結びつけるのに、特定のメーカーが実施するのは利害関係上難しい。そこで、ある種中立な「NTTデータ」がそれらを結びつけるシステムの開発・調整役を行っている。
今回のようなICカードについても、特定のメーカーがその技術を提供した場合、ATM端末のICカード対応化という巨大市場を独占する可能性がある。となると、当初は安いコストで導入できたとしても結果的に高くつくということもあるだろう。共通の仕様のもと、様々なメーカーがこの市場に参入できてこそ、全体のコストは効率化できるのだ。
意外なことに、ICカードの分野へのNTTの取り組みは古い。日銀金融研究所と共同で、電子マネーの研究や開発を行なっており、99年には第一勧銀(当時)ら国内25行と新宿で10万人規模の「スーバーキャッシュ実証実験」を行っている。またFeliCaなどが「共通鍵方式」による暗号化を採用しているのに対して、「公開鍵暗号方式」を採用し高いセキュリティを確保している。最近ではFeliCaも認められたようだが、NTTの方式は当時から国際標準規格に準拠したものとなっており、実力はある。
体験レポート:新宿の電子マネー実験「スーパーキャッシュ」がいよいよスタート
では、何故、FeliCaがこれほど普及したのか。
これはもちろんJR東日本の非接触型ICカード「Suica」の方式として「FeliCa」が採用されたことが大きい。改札で、ピッ!と触れて通り抜ける快感は、地下鉄など磁気カードでは味わえない快感だ。
しかしこれだけ「Suica」が普及したにも関わらず、乗り越し清算以外で「電子マネー」はどれほど使われているだろう。「おサイフ携帯」でもFelica方式が採用され、電子マネー「Edy」を利用することができるがこれも実際に利用してる人間はとんと見ない。(おサイフ携帯を含め)Felica技術を採用したICカードは広まったものの、実際にそこで流通している電子マネーはそれほど大きくないのではないか。「Suica」の場合も、もともと現金で払っていた乗り越し料金が電子マネー化されただけで、実際に増えた流通量としては、不正な乗り越しを防いだ部分というのが実情で、ショッピングなどでは殆ど利用されていないのではないか。
これは定期券や携帯電話を「お財布」と感覚的に結びつけることができいからだろう。
財布は何も現金だけを入れておくものではない。例え「おサイフ携帯」を持っていようと、免許書やクレジットカード、キャッシュカードが入っている以上、財布は普段から持ち歩かねばならない。とすると、買い物をしレジで支払う場合に「携帯電話」ではなく「財布」に手がいくのは当たり前だ。
これが銀行のキャッシュカードに電子マネーをチャージできるとしたらどうだろう。
店内で支払う場合には、財布をそのままレジに当てるか、キュッシュカードを取り出してレジに当てればいい。大きい買い物は現金かクレジットカードで、でも小さい買い物には電子マネーを利用すれば、小銭で財布がパンパンに膨れ上がるなんてことを避けられる。。
チャージをする場合には、ATMでの現金の出し入れと同時に、全額を現金で受け取るか一部を電子マネーで受け取るかを選択できれば抵抗も少ないし、できれば現金で支払った場合に、お釣りをレジでチャージできるようになるといい。
またレシートを紙でもらうというのもいいだろうが、現金決済/電子マネー決済に関わらず、そのカードにレシートを記憶させることができれば、それをそのまま銀行入出金の記録とあわせて「家計簿」がわりに利用できるし、銀行側の顧客囲い込みのためのサービスとしてネット上で提供してみるのも面白いだろう。
円→電子マネーの片方向だけではなく、できれば円→電子マネー、電子マネー→円の両方向の交換が可能であれば本来は理想的だ。
キャッシュカードのIC化は電子マネーを一気に広げる可能性を秘めている。それだけに「電子マネー」の持つプラットフォーム的な意味合いを再考してもいいのかもしれない。「「円」は電子マネーになるか-情報としての貨幣流通がもたらすもの」で書いたが、民間企業が電子マネー事業を行っている限り、ICカードのプラットフォームにどこの「電子マネー」を使うのか、1つなのか複数なのか、レジにはどの電子マネーに対応させるのか、異なる電子マネー間の交換を行うのか、といった問題が横たわる。そして自然淘汰か、人為的な統一を行わない限り、電子マネー普及に弾みはつかず、また社会システムとして必要となるコストは不必要に大きくなるだろう。
願わくば、複数のICカードと電子マネーを持ち歩かねばならないといったことは避けたいところだ。もともとICカードは1枚のカードに複数のAPを搭載し、現状バラバラなカードを物理的に統合しようというものだったのだから。
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銀行のICカード化については、まだ具体的な検討が始まった段階ということもあって、どのような導入形態になるのかはまだ見えていない。設備投資に余力のあるところや他行を出し抜きたいといったいった、みずほ銀行や三井住友などの一部都銀は先行して独自でICカード化を図るようだが、コンビニなどにこれだけATMが普及している現状を考えると、全銀連など銀行業界団体が統一的な仕様をまとめ、それに基づいて導入をすすめるというのが大半だろう。
そうすれば調達コストも抑えることができるというものだ。
そこで俄然注目されるのがどこの技術をベースとするかということ。その最有力は「NTT(NTTデータ)」だろう。
NTTデータは、これまでも各行を結んだ「全銀システム」や「統合ATM」を構築した実績がある。銀行の勘定系システムは各行が選定したホストコンピュータによって運用されているが、それら異なるメーカーのコンピューターを結びつけるのに、特定のメーカーが実施するのは利害関係上難しい。そこで、ある種中立な「NTTデータ」がそれらを結びつけるシステムの開発・調整役を行っている。
今回のようなICカードについても、特定のメーカーがその技術を提供した場合、ATM端末のICカード対応化という巨大市場を独占する可能性がある。となると、当初は安いコストで導入できたとしても結果的に高くつくということもあるだろう。共通の仕様のもと、様々なメーカーがこの市場に参入できてこそ、全体のコストは効率化できるのだ。
意外なことに、ICカードの分野へのNTTの取り組みは古い。日銀金融研究所と共同で、電子マネーの研究や開発を行なっており、99年には第一勧銀(当時)ら国内25行と新宿で10万人規模の「スーバーキャッシュ実証実験」を行っている。またFeliCaなどが「共通鍵方式」による暗号化を採用しているのに対して、「公開鍵暗号方式」を採用し高いセキュリティを確保している。最近ではFeliCaも認められたようだが、NTTの方式は当時から国際標準規格に準拠したものとなっており、実力はある。
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では、何故、FeliCaがこれほど普及したのか。
これはもちろんJR東日本の非接触型ICカード「Suica」の方式として「FeliCa」が採用されたことが大きい。改札で、ピッ!と触れて通り抜ける快感は、地下鉄など磁気カードでは味わえない快感だ。
しかしこれだけ「Suica」が普及したにも関わらず、乗り越し清算以外で「電子マネー」はどれほど使われているだろう。「おサイフ携帯」でもFelica方式が採用され、電子マネー「Edy」を利用することができるがこれも実際に利用してる人間はとんと見ない。(おサイフ携帯を含め)Felica技術を採用したICカードは広まったものの、実際にそこで流通している電子マネーはそれほど大きくないのではないか。「Suica」の場合も、もともと現金で払っていた乗り越し料金が電子マネー化されただけで、実際に増えた流通量としては、不正な乗り越しを防いだ部分というのが実情で、ショッピングなどでは殆ど利用されていないのではないか。
これは定期券や携帯電話を「お財布」と感覚的に結びつけることができいからだろう。
財布は何も現金だけを入れておくものではない。例え「おサイフ携帯」を持っていようと、免許書やクレジットカード、キャッシュカードが入っている以上、財布は普段から持ち歩かねばならない。とすると、買い物をしレジで支払う場合に「携帯電話」ではなく「財布」に手がいくのは当たり前だ。
これが銀行のキャッシュカードに電子マネーをチャージできるとしたらどうだろう。
店内で支払う場合には、財布をそのままレジに当てるか、キュッシュカードを取り出してレジに当てればいい。大きい買い物は現金かクレジットカードで、でも小さい買い物には電子マネーを利用すれば、小銭で財布がパンパンに膨れ上がるなんてことを避けられる。。
チャージをする場合には、ATMでの現金の出し入れと同時に、全額を現金で受け取るか一部を電子マネーで受け取るかを選択できれば抵抗も少ないし、できれば現金で支払った場合に、お釣りをレジでチャージできるようになるといい。
またレシートを紙でもらうというのもいいだろうが、現金決済/電子マネー決済に関わらず、そのカードにレシートを記憶させることができれば、それをそのまま銀行入出金の記録とあわせて「家計簿」がわりに利用できるし、銀行側の顧客囲い込みのためのサービスとしてネット上で提供してみるのも面白いだろう。
円→電子マネーの片方向だけではなく、できれば円→電子マネー、電子マネー→円の両方向の交換が可能であれば本来は理想的だ。
キャッシュカードのIC化は電子マネーを一気に広げる可能性を秘めている。それだけに「電子マネー」の持つプラットフォーム的な意味合いを再考してもいいのかもしれない。「「円」は電子マネーになるか-情報としての貨幣流通がもたらすもの」で書いたが、民間企業が電子マネー事業を行っている限り、ICカードのプラットフォームにどこの「電子マネー」を使うのか、1つなのか複数なのか、レジにはどの電子マネーに対応させるのか、異なる電子マネー間の交換を行うのか、といった問題が横たわる。そして自然淘汰か、人為的な統一を行わない限り、電子マネー普及に弾みはつかず、また社会システムとして必要となるコストは不必要に大きくなるだろう。
願わくば、複数のICカードと電子マネーを持ち歩かねばならないといったことは避けたいところだ。もともとICカードは1枚のカードに複数のAPを搭載し、現状バラバラなカードを物理的に統合しようというものだったのだから。
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