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死にたくなると彼女は、夜中でも両親に頼み込み、病院に向かう。しかし一番困ったことは、「死にたい」つらはではなく、病院に向かう途中で「死にたい」という気持ちがだんだんおさまってくることだった。
病院に着く前に落ち着いてしまっては、夜中にもかかわらず自分のために待機してくれている先生に申し訳ない。そこで「死にたい」というモチベーションを維持する手立てが必要になる。…中略…「自分を一生懸命に責め立て気持ちをつらい状態に追い込む」…中略…めでたく入院…手厚い看護…退院後ふたたび同じ訴えを繰り返し…「このパターンから抜け出せない自分に対する苛立ち」…
死にたい願望の背後には、医師や看護師の尊い仕事の"やりがい"に奉仕するために患者は常に「病気という手土産」を持参し、その結果もたらされる聴くことや投薬や処置を含むケアを通じて「人とつながる」という水脈を確保してきたというパターンがある。彼女の研究の面白さは、そのメカニズムを明らかにしたところにある。