年末バタバタゴチャゴチャとして、
結局会話らしい会話も出来ないまま、実家を後にした。
だから今日は事前に実家の「混み具合(笑)」を確認した上で、訪問した。
年始のご挨拶の為に。
普段は雪国に居を構えている兄貴は、
明日から仕事の奥さんをわざわざ雪国に送り、またとんぼ返りで実家に来ていた。
この季節は大変だね、しかしそれでも実家に一人ででも戻ってくる辺り、
大好きなんだろうな、両親が、実家が。嬉しくなった。
何もお構いのないように、と事前に申し伝えておいたのに
それはやっぱりというか、予想通りというか、そういう訳にはいかなかった。
お茶の準備をして、玄関を清め、待っていて下さった。
毎度の事ながら頭が下がる。
結婚して5年が過ぎた今、漸く僕の実家のメンバーとも
緊張なく話せるようになった嫁さんは、楽しそうに喋ってた。
年末、あれだけの忙しさだったにも関わらず、父も母も壮健で
改めて子を、そして孫を慈しむ二人の魂に自分の浅はかさを知った。暗黙の裡に。
兄貴の結婚式の写真が出来上がっており、
じっくり見せてもらった。
5年前のあの日、兄貴は幼い日から僕に見せていた笑顔を失った。
だけどその写真には、あの日以前の、愛すべき笑顔を取り戻した兄貴の姿があった。
そしてその隣には、兄貴を救った素敵な女性の、優しさに溢れた笑顔が寄り添っていた。
その写真を見ながら、嬉しさを誤魔化すように僕は茶化した。
「ほろ酔いで写ってるな兄貴、飲まされてたもんな~」と。
兄貴は写真の自分に負けないくらいに笑ってた。屈託なく、そして穏やかに。
そんなアンタの顔をずっと見たかった、それでこそアンタだから。
でも、そんな僕の心情になんて気付いて欲しくない。ありがとうなんか要らない。
僕は弟だから。口下手でバカな弟だから。
今までのように、ずっと兄貴のツラをしててくれたらそれで良い。
僕の幸せってヤツが何処にあるのか分からないけど、
でも家族が幸せなら、ホントにそれで良いと思った。
それが僕の幸せなのかも知れないと思った。
勿論、自分の嫁さんを幸せにしてやりたいとは思う。
只でさえ、二人には災いが多かったから
それを払拭して余りある「幸せ」ってヤツを
こんな時代にでも、追い求めていたい。
いや、追い求めなきゃならない。
僕の心の隅に居付いた「澱み」や「凝り」は消えないけれど
過ぎてしまったものは、取り戻せない。
況してや、襲い来る悪意に対して頭を下げるつもりも毛頭ない。
悪意を擦り付けてきた人間たち、
そいつらがぐうの音も出ない絶対的な何かを、僕は掴まなきゃならない。
見返す、という陳腐なモノじゃなくて
これ以上、僕の守ろうとするエリアへの介入を許さない為に。
両親と兄貴に言われた。
「奥さんを大事にしろよ」と。
大事にしてるよ、と言ったけどそれ以上は野暮だと思ったから二の句が出なかった。
すると母が、嫁さんに直接聞き始めた。
大事にしてもらってるのか?と。
まるで実の母のようだった。
嫁さんは、僕の口真似を良くする。
悪く言えば「自分の考えがない」とも言える。
僕のセリフ、僕の考え、僕の口癖、僕の価値観を
漏らさず踏襲しようとする。
一方では助かるのだけれど、一方ではしっかり自分の考えを持ってくれ、と
ともすれば不満に似た感情を抱いてきた。
だけど今日は、母の問いに予想外の返答をしていた。
「上っ面だけの優しさは貰ってません」
「でも、お母さん、貴方が○○さん(僕)にそうしたような」
「本当の愛情を、私は貰ってます」
そうかな?とも少し思ったけど、
嫁さんがそう思ってくれるなら…良かった。
「ちょっと厳しい時もそりゃありますけどね」
って、ちゃんとオチも付けてた(笑)
嫁さんの身内は残念な人ばかりで正直物凄い落ち込んでいたけど、
一方でまぁ嫁さんが僕の実家とこれほど仲良くなってくれたのなら
トントンかな、とも思う。そう思いたい。
しかし今日は、取り留めもない会話、昔話に華が咲き、
時間を忘れてしまいそうになった。
実家にある、祖父の形見の鏡台はホントに上質で、
いつも立ち寄らせて貰った際には鍛え上げた身体を確認させて貰ってる(笑)
何か月か前までは両親は呆れてばかりだったけど、
今日久々に見せると、兄貴も含めて驚いてた。
「これなら、期待出来るんじゃねぇか?」と昔からの僕を知ってる兄貴は言う。
来シーズン、タイトルの一つや二つは取っちまえ、
との言葉に見送られ、実家を後にした。
なんだか上手く表現出来ないけど
やってやる、と決意を改めた一日だった。
昔は自分の事ばかりで、我欲先行に生きていましたが、
大人になり、窮地に立って初めてホントの生きる意味を知った気がします。
大切な人の為に、そして同時に自分が自分である為に、
思う存分やりつくしてみようと思います!