ポッカリ

長い間自分を縛りつけていた、あるつまらないものを手放した。
そうすれば楽になれる事は分かっていたけど、中々出来なかった。
手放した今、別にどうという事もない。


ゴチャゴチャ言う奴は相変わらず陰でコソコソなんか言ってるみたいだが
そういうのが一番面倒くさく、煩わしいから手放したのだ。
言いたい奴は勝手に言えば良いし、こっちはもうそれどころではない日常。


1週間続いた39度の熱が治まっても、長患いは続き、休まる時がない。
背中の爆弾はいよいよ導火線がチリついてる。

いつだってそうだった。
昔からそうだった。
何かに打ち込み、目指す度に邪魔ばかりが入る。
物理的に、肉体的に、経済的に、そして人的に。
今回もそうだ、またか、と。

何もかもが嫌になって、全てを放り出したくなる。
僕からドラコンを奪い、トレーニングを奪い、夢さえも阻害する。
何者かがそうしている訳でもなかろうが。

この絶望感と怒りを何処にぶつければいいか分からず、
ただ痩せ細りゆく精神と心を、いつ尽きるかも危うい電池を長持ちさせるかの如く、
綱渡りのように今を繋ぎ止めるのが精一杯の毎日。


ポッカリ空いてしまった穴が、ずっと塞がっていない。
それにはずっと前から気付いてた。でも知らないフリをしてた。
振り返ったってどうしようもないからだ。

失くしたものは、探せば出てくる事もある。

だけど、失くした目標や夢や人は、もう二度とこの手に戻る事はない。

安直に代替品に縋る気にもなれない。

掛替えのないものばかりだった。

それは揺るぎない事実。


それを失ったからと言ってどうなる訳でもない。
ただ、何もなかった頃に、空虚な自分に戻ってしまった。
そんな気がして、ポッカリ心に隙間風が吹いてるのだろう。

しばらく、旅にでも出ようかなぁ…。
二度とここには戻らない旅に。