河田部長は自分のピンチをどう凌ごうか考えていました。納期遅れは工場の責任だがそれを面と向かって発言すると同席している工場長の顔をつぶすことになるなぁ…工場長は河田部長の大の協力者つまり派閥の長なのでした。『え~い、なるようになりやがれ…!』A型人間の開き直りでしょうか(笑)河田部長は自棄っぱちになりながら喫煙室に向かいました…普段はタバコを吸わないのですが気分転換でたまに吸ったりする河田部長でした。一方加藤課長は準備に掛かり付けです。『課長…お忙しいですか』後ろから声を掛けてきたのは総務の岸川さんでした。…忙しいに決まってるだろう!つい怒鳴りたくなるくらい岸川さんはのんびりムードです。『なに!』加藤課長の剣幕に押されて岸川さんは一瞬たじろぎました(笑)しかたないなぁ『何ですか?』思い直して尋ねると『あのぅ専務が休憩に入られますが…』『えー!どうして早く言わないの…』『はぁ…』加藤課長は怒鳴ると同時にすっ飛んでいました。専務の打ち合わせはまだまだ終わらないだろうと高を括っていました…それが急に休憩だなんて…舌打ちしながら階段を二つ飛ばしに上がりました。7階に
は専務がいるはずでした。上に上るや中川さんが待ち構えています。『専務は休憩だって?』『はい!只今喫煙室にいらっしいます』そうか!反応も聞かずに内線電話に飛び付きました『もしもし!』『はい』のんびりした口調…6階の内線電話に出たのは岸川さんでした。(また岸川かよ(怒))舌打ちを押さえて『沢田さんいる?』同じ総務のスタッフでしたが、岸川さんと違い万事テキパキとこなす女子社員でした。特に今日みたいな気遣う日には頼りになる存在です。ここの総務課長として赴任した時前任者から引き継ぎで教わった事項の一つで代々の総務課長からの引き継ぎに必ずありました。余談ですが、総務課長は普通3~4年で転勤になります。一方配下の主として女子社員は地元採用です。永年勤めている中で頼りにされる人そうでない人…やはり個人差はあるものですね(笑) 『沢田さんですか…』『そう、そこにいない?』『ええ…見ないですが…』あ~肝心な時に…『探してきてよ』『はぁ…あ!ちょっと待ってください』何やら受話器の向こうでごちゃごちゃしています(笑)『もしもし』あ~どうなっているんだ(嘆く)
加藤課長は泣きたくなりました。
コーヒー好きの専務のことだから、喫煙室で必ずタバコと一緒に飲むのが常でした。
コーヒーを炒れる担当は一番のしっかり者の沢田さんに任せておいたのに… どこへいったんだろう?
受話器の向こう側でガチャガチャと耳障りな音がした後にいきなり『誰?』しわがれた声が聞こえてきました。
『………』
『俺だよ』
『!せ、専務』 加藤課長は絶句しました。