いつも使っている銀座のお店で永田専務はほろ酔い加減でおっしゃいました。
『藤岡、おまえ幾つになる?』
『私は今年五十三です』
『そうか!やんちゃ坊主がええおっちゃんになったなぁ…』そう冷やかすと声を出して笑いました。
ちょっとむっとした藤岡工場長は
『専務はお幾つになられるんですか』つい永い付き合いから藤岡工場長も負けずに言い返したのでした。
『ハハハ俺は四だよ』
そうです。永田専務と藤岡工場長は一回り違ったのでした。
『あのなぁ藤岡よ俺の話をよく聞けよ』
永田専務は水割りをグビリと飲むと側の女の子に席を外す様合図しました。
『俺は来年役停だよ』
*会社には役停(役職停年)があります。一度は五十七才で本部長以下はこの年令が来たら肩書きはなくなります。もう一度は六十三才です。これは役員の停年ですが平取締役が対象です。常務や専務は六十五才が停年です。
『えっ専務にも停年があるんですか』藤岡工場長には永田専務は永遠の太陽みたいに思っていたのでした。 『ははは♪お前は気楽でいいなぁ』
さすがの藤岡工場長も永田専務に掛かると子供あつかいでした。
『専務が停年って…』いきなり停年の話で面食らいました。永田専務に停年が迫っている… 『専務が会社にいらっしゃらないなんて…』
『俺は辞めないよ相談役で残るんだよ』
永田専務は明るい声で宣言しました。 『あっ!そうか会社に残られるのですよね』
藤岡工場長は胸を撫で下ろしました。永田派と呼べばいいのでしょうか。永田専務から見出だされたのは藤岡工場長だけではありません。各部署、各役職に相当な人が抜擢されていました。
その中でも藤岡工場長は異色中の異色でした。あとの人材はさすがに一流大学を出ていましたから、永田専務が抜擢するまでもなく出世するだけの力量を持ち合わせていました。 無論永田専務も一流大学を卒業していましたが、永田専務はちょいと趣味が変わっていたのでした。
大卒者にはないエネルギッシュな人材を抜粋してエリート集団に活を入れたのでした。
この狙いは成功したかどうか判断は難しいのですが、 永田専務が馴れ合いになっている現状を活性化しようとした手段に藤岡工場長は使われたのでした。
一時は高校卒の部長、工場長として話題にもなり地方工場の星!と呼ばれた時がありました。その点では永田専務の狙いは当たりました。
当時話題になったハイセイコ―と言う地方競馬出身の馬が並み居るサラブレッド(中央)を押さえて重賞レースを征した時期と重なっていました。
…これからどうなるのかな…
藤岡工場長は水割りのグラスに映る自分の顔に問い掛けていました。
『藤岡、おまえ幾つになる?』
『私は今年五十三です』
『そうか!やんちゃ坊主がええおっちゃんになったなぁ…』そう冷やかすと声を出して笑いました。
ちょっとむっとした藤岡工場長は
『専務はお幾つになられるんですか』つい永い付き合いから藤岡工場長も負けずに言い返したのでした。
『ハハハ俺は四だよ』
そうです。永田専務と藤岡工場長は一回り違ったのでした。
『あのなぁ藤岡よ俺の話をよく聞けよ』
永田専務は水割りをグビリと飲むと側の女の子に席を外す様合図しました。
『俺は来年役停だよ』
*会社には役停(役職停年)があります。一度は五十七才で本部長以下はこの年令が来たら肩書きはなくなります。もう一度は六十三才です。これは役員の停年ですが平取締役が対象です。常務や専務は六十五才が停年です。
『えっ専務にも停年があるんですか』藤岡工場長には永田専務は永遠の太陽みたいに思っていたのでした。 『ははは♪お前は気楽でいいなぁ』
さすがの藤岡工場長も永田専務に掛かると子供あつかいでした。
『専務が停年って…』いきなり停年の話で面食らいました。永田専務に停年が迫っている… 『専務が会社にいらっしゃらないなんて…』
『俺は辞めないよ相談役で残るんだよ』
永田専務は明るい声で宣言しました。 『あっ!そうか会社に残られるのですよね』
藤岡工場長は胸を撫で下ろしました。永田派と呼べばいいのでしょうか。永田専務から見出だされたのは藤岡工場長だけではありません。各部署、各役職に相当な人が抜擢されていました。
その中でも藤岡工場長は異色中の異色でした。あとの人材はさすがに一流大学を出ていましたから、永田専務が抜擢するまでもなく出世するだけの力量を持ち合わせていました。 無論永田専務も一流大学を卒業していましたが、永田専務はちょいと趣味が変わっていたのでした。
大卒者にはないエネルギッシュな人材を抜粋してエリート集団に活を入れたのでした。
この狙いは成功したかどうか判断は難しいのですが、 永田専務が馴れ合いになっている現状を活性化しようとした手段に藤岡工場長は使われたのでした。
一時は高校卒の部長、工場長として話題にもなり地方工場の星!と呼ばれた時がありました。その点では永田専務の狙いは当たりました。
当時話題になったハイセイコ―と言う地方競馬出身の馬が並み居るサラブレッド(中央)を押さえて重賞レースを征した時期と重なっていました。
…これからどうなるのかな…
藤岡工場長は水割りのグラスに映る自分の顔に問い掛けていました。