誰が悪いと責めても始まるまい。クルーズ船の乗員乗客を元気付けようと差し入れられたお弁当であるが、配布されなかった様である。恐らく廃棄処分であろうが、もしかするとスタッフが鬼の形相で美味しく頂いている最中かも知れない。どちらにしても心よりお見舞いを申し上げたい。本件の様な純粋な善意が相手を困らせる結果になる事は、残念ながら往々にしてある。とても納期に間に合わない開発プロジェクトに、善意で要員を大量追加する様なものである。指揮命令系統は混乱し新入人員へのOJTで作業時間は削られ、状況が加速度的に悪化するのが通例である。まず為すべきは問題の整理と優先順位付け、及び計画の立て直しである。不足するリソースが一連の過程で明確になるから、その時点で必要なモノを投入すれば良い。とは言えそれは状況を制御出来る場合の話である。今回の様な「善意のオーバーフロー」は不可抗力なのであり、決して誰のせいでもないのである。
知恵の回る奴は何処にでも居るものである。地味に始まった郵便局のキャッシュレス対応であるが、お察しの通り大したメリットは無い。しかし企業が独自に上乗せしているポイントを目当てに、切手等を買い漁る人が続出した様である。尤もその手の目利きは金券ショップの方が一枚上手で、買取金額を大幅に下げていた様なので大笑いである。各都道府県の主な郵便局がキャッシュレス対応になるのは5月との事なので、それまでには転売ヤーの動きも終息するであろう。ゆうちょPayが郵便局で使える様になるのは喜ばしいのだが、本来の目的は外国人旅行客の利便性向上である。観光地では大いに重宝されるのだろうが、私が使う機会が有る様には思えない。折角導入するのである。キャッシュレスを切り口とした、新たな商売の認可を与えても良いのではなかろうか。かんぽ不正疑惑でそれどころじゃないと云う事情は察するが、地元民の利便性向上も検討して頂きたいのである。
まだまだ勉強不足である。月一回程度の間隔で、地元警察の管内で発生した新聞に載らない犯罪の一覧が、新聞と一緒に配達される。治安の良い地域だと思っているが、それでも空き巣、車上狙い、自転車盗、特殊詐欺は頻々と発生している。金回りが悪そうな顔をして歩いているから襲われる心配は多分無いとは思うが、犯罪者に人を見る目が有るとは限らない。防犯意識を高めるに越した事は無いだろう。そんなニュースになり難い一覧の中に、初めて見る単語が有った。「色情狙い」。所謂下着ドロは、正式にはそう呼ばれるらしい。ただ言葉の使い方として、これは正しいのだろうか。車上狙いも正確には「車に置きっぱなしの金目の物を盗む」行為なので、直接的な表現ではない。一応「色情を催して下着を盗む」で意味は通るが、連結に少々無理がある様な気がする。もしかすると「色情」としか表現出来ない、人間の業を煮詰めた様な盗難品が有るのかも知れないのである。
人間同士、話せば分かり合える。そうあれかしとは思うが、難しいだろう。少なくとも私は、スワヒリ語しか喋れない人と意思疎通が出来ない。語学の勉強を頑張れば何とかなるのかも知れないが、それでも生活の根幹を成す習慣とか食べ物とかの違い、そしてそこから派生する価値観の相違は簡単に乗り越えられるものではない。また極端に異なれば、それを前提として双方が歩み寄りを模索するものであるが、日本国内は同質だと思い込んでいたらとんでもない地雷を踏む事もある。福岡に「東京土産です」と銘菓ひよこを持ち込んだら戦争が勃発する、と云うのが分かり易い例であろう。国内でもそうなのだから国家や民族が異なれば、踏み込むべからざる領域を土足で闊歩していても気付かないリスクは、一気に跳ね上がる。それへの対策は謝罪の言葉ではなく、自身の常識の相対化しかない。ただそれを相手に強要出来るものでもなく、相互理解の壁は絶望的に分厚いのである。
製造業の日本回帰が進んでいるらしい。技術立国・ものづくり大国の復権かと思ったら、単なるコストの問題の様である。賃金はまだ開きがあるものの、工場の運用費とかインフレとかカントリーリスクとかを考慮した場合、日本で作った方が安い計算になる事もあるそうである。欧米を旅行するとランチが割高に感じられると云う話と相俟って、我が国の国際競争力の低下を如実に物語っているのであるが、そんな事よりも私の大好きな百円ショップの将来を心配している。製造コストの安い国で大量生産すると云う、内外価格差を利用したビジネスモデルである。それが成り立たなくなる恐れは十分有り得る。製品に対する正当な対価を支払ってこなかったツケだと言われればそれまでであるが、百円ショップに日用雑貨を頼り切っているので、無くなられるととても困る。国産品を主体とした二百円ショップになっても構わないから、存続の道を探って欲しいと願っているのである。