確かに離脱は合意した。ただ別の合意には至らなかっただけだ。そう嘯き兼ねないのが英国人であると、差別的私見を述べておく。EUと通商協定が結べないのなら合意無き離脱と何が違うのかと思ってしまうが、法の精神に則れば「それはそれ、これはこれ」なのだろう。どのみち混乱は避けられないとの見通しから各方面で対策は講じられているが、どうなるのかは来月になってみなければ誰にも分からない。どうせ今からじゃ間に合わないから、じっくり交渉しようじゃないかと云うのが双方の本音にも思えてくる。国の威信を懸けた外交は、これぐらい往生際が悪い方が良いのかも知れないが、冷静に見れば駄々っ子同士の口喧嘩である。ただ歴史を振り返れば大抵の紛争は駄々と理屈の捏ね合いであり、大義名分の博覧会である。殴り合いにならないだけ上手くやっている方なのかも知れない。しかし国の面子と経済的利益の両立は至難と云うのも、歴史的教訓に思えるのである。
絶対にやらない事を切に望む。ワクチン接種が始まった英国で、接種証明書の発行の是非が議論されている。それが無ければ社会生活が著しく制限されるであろう事は誰にでも想像出来るらしく、ワクチン懐疑派からは猛反発を受けている様である。肯定する立場からも、接種機会の不平等による差別を懸念する声が上がっている様だが、全体的な空気としては「やっぱり有った方が良いよね」の方に傾く気がする。少なくとも出入国の際には必須だろう。英国を先例として、我が国ではどう動くか。「ワクチン接種のお知らせ」を郵送するとして、怒涛の予約をどう捌くのか。受付が電話かファクスのみだったら証明書の発行は諦めたと見るべきである。ただ「接種の記録はマイナンバーカードで参照可能です」と云うシステムを現段階で構築するよりは遥かにマシだろう。弱みに付け込んで普及率を上げようとしても、マイナスイメージを増幅させるだけで実効性はほぼ無いのである。
陰謀論がちょっと元気になったので嬉しい。新しめの所だと、新型コロナのワクチンを接種するとマイクロチップを埋め込まれる説であろうか。どうしてそんな事をするかと云えば、行動を監視する為らしい。どうやって監視するかと云えば、ケータイの電波とGPSを使うらしい。そんな現代科学を超越した貴重なチップを何故あなたに埋め込むのかに就いて、問うのは野暮である。実際問題として、私達の世代に訪れた変化は、人類史上稀なものである。多少胡散臭いものも混じっているし、全てのスマホは当局の監視下にあると云うのも、あながち陰謀でもない。費用対効果が見合わないからやらないだけである。目の前で起きている理解不能な出来事に分かり易い因果関係を求めてしまうのは人間の性だし、それ故に自然科学は発展してきたと云う側面も有る。陰謀論はこれからも無くならないし、「もっと効率の良いやり方があるだろうに」と傍観する趣味も止められないのである。
QoLは財力と能力と体力と心の余裕の総和で決定する。最後の一つにピッタリ当て嵌まる「○○力」が見つからなかったのが、とても悔しい。暮らしがカツカツな人ほどコンビニ弁当に頼りがちとはよく言われるが、仕事が忙しく精神的にも肉体的にも疲れ果てた上にご飯の炊き方が分からない、と云う可能性が高い。そんな所に「ポテサラぐらい自分で作れ」とか言われる環境では、QoLを向上させるのも大変である。4つの力で最強なのは財力ではあるが、増える程に効果は薄れるし、失う心配と云う形で心の余裕を削ってくるので、万能ではない。心身共に健康で、倹約術に長けていれば程々増やせるものでもあるから、優先順位的には体力にも思えるのだが、それはこの歳になったから感じる事かも知れない。どちらにしてもご飯は炊けるに越した事はないし、それを美味しく食べたら大抵の事は「まあいいか」で済ませられるのであれば、QoLとしてはギリギリ及第に思えるのである。
カーボンニュートラルは喫緊の課題である。特に化石燃料を用いた火力発電には、厳しい目が向けられている。その為「石油がダメならアンモニアを燃やせばいいじゃない」と、電力会社は方針転換を図っている様である。アンモニアならCO2は出ないからエコらしい。それはそうなのだろうが、酸性雨の原因である窒素酸化物(NOx)を増やしてどうすると云う気持ちにもなる。しかも当面は天然ガスからアンモニアを生成するのが主流となる様で、CO2を出してNOxも出しちゃう大盤振る舞いが地球環境に優しいと云う意見は、過渡期である事を大目に見ても、割り引いて考えた方が良さそうである。ロカボダイエットもそうであるが、「これだけやれば万事解決」と云う奇跡の対処法なんぞ存在しないと考えた方が精神衛生上宜しかろう。カーボンニュートラルと云う分かり易いスローガンが自己目的化して、本来の目標を見失った儘にゴリゴリ前進する例は、案外身近にもありそうなのである。