24/11/3 似ていた 第2話
優子は何も言わなかった。
ただ似ているだけで、あんなにも尊敬して信頼して、しかも恋をしたのは
優子からだった。
優子はその男とどこかのテレビ局の前であった。
もう数年前の話だ。
優子は大学卒業目前で就職も内定して順調な滑り出しの人生だった。
と思っていた。
結婚なんか考えていなかった。
優子は国際外国語大学でヨーロッパ言語科に入った。
ヨーロッパの言語は英語を始めフランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語と
一応やった。
職業は通訳とか翻訳は嫌だった。
それでは学んで伝えるだけだ。
もっとクリエイティブなことをしたかった。
それでその日、某テレビ局の見学に数人と教授と行った。
局について中に入ったところで一人がトイレに行っておくと離れた。
待っている間、優子はキョロキョロ周辺を見ていた。
そこに声をかけてきた男がいた。
なにかお探しですか?
手短に優子は彼らがその局にいる理由を離した。
優子は独特の顔立ちをしていた。
ハーフではないのに、大き目の目が光りにあたると茶で
それは誰がみても茶だった。
その時はちょうどライトが優子の顔に当たり、
男は思わず、きれいな目ですねと言ってしまった。
優子はちょっと慌てた。
そこにトイレから戻ってきた同級生がいたのを幸いとし、
じゃ皆が集まりましたのでと彼を去った。
男は坂本京太郎と言った。
坂本は今日の見学グループをすぐチェックし、訪問者の詳細を手に入れた。
それは写真付きですぐさっきの学生が誰かわかった。
京太郎は優子に惹かれた。
どういうアプローチが自然で彼女の抵抗を少なく接触できるか
真剣に考えていた。
京太郎はそのテレビ局の職員ではなかった。
局に出入りする仕事はあった。
CMを提案する企業だった。
CMをしたい企業とテレビ局のコーディネートをする
簡単に言うとそんなところだった。
京太郎は優子の大学に就職先を提案するための飼料を送った。
京太郎は自分の会社の役員でも経営陣の一人でもまだなかった。
ただの課長。
野心の少ない男だった。
声には出さないけど定年まで問題なく過ごせればいい、
そうすれば家庭も平穏にやっていけると信じていた。
後の優子はそういうのんびり?の京太郎に不満がないわけではなかった。
でも口に出してとやかく言ったことは一度もなかった。
京太郎の家庭もそういう平穏な家庭で
京太郎の言うように 平和が一番、なのかもしれない。
まるで京太郎のシナリオに従って動いたように
優子は京太郎と同じ会社に入社し、
公然と婚約者みたいな関係になっていった。
そういう関係は誰からも何も言われなかった。
不思議な男、京太郎。
まるで彼の頭からテレパシーで操作するように
京太郎の望むように事は運んだ。
でも自分を出世コースに乗せようとはしなかった。
京太郎は表だって自慢するようなことは一切しなかった。
京太郎は容姿的にも目立たない男だった。
中肉中背。
童顔でもなければ、老けても見えなかった。
30前後、でも何年経っても30前後に見えた。
優子は特に理由もなく京太郎に惹かれた。
だから京太郎に昼食に誘われ、ホイホイ疑問もなく
一緒に行った。
そして入社してまもなくの日曜日に映画に行って
当然のように夕食をともにした。
でもそれ以上何もなかった。
入社して5か月か経ったころのお盆休みに
彼の友人の別荘に泊まりがけで誘われた。
行ってみると他に何人も知らない人たちが来ていた。
年齢は20-30-40代とさまざまで
京太郎は会社では見たことないほどあれこれ仕切っていた。
楽しいBBQだった。
優子にとって初めてのBBQだったけど、何も違和感はなかった。
その晩、一具は帰宅し、一部は別荘に泊まった。
優子と京太郎は3階の部屋に泊まることになった。
ツインベッドの爽やかな部屋だった。
優子は部屋についているシャワーを浴びると、バタンキューで寝入った。
翌朝、ドアの閉じる音で目を覚ました優子が周りと見てみると
もうひとつのベッドはシーツがシワクチャで誰もいなかった。
枕もとのスマホを見ると6時半近くだった。
第3話