『世界』11月号の特集である反ヘイトスピーチの座談会、
あらためて読んだが、やはり自己満足の域を出ていないと強く感じた。
特に李信恵氏の在特会・保守速報への起訴を過大評価しているのは「どうもな」と思う。
確かに保守速報への提訴は意味があることだと思う。
この結果、李氏が勝訴すれば、今後の保守メディアへのけん制になるかもしれない。
だが、筆者はこれについては効果はさほど期待できないと思う。
なぜならば、既に大江健三郎氏や本多勝一氏に対して右翼が裁判を持ちかけ、
敗訴したにも関わらず、集団自決や南京事件の事実を認める動きが一向に見られないからだ。
こういった裁判に左派が勝つこと自体には意味があり、
また勝たなければならないことではあるが、右傾化の防止になるかといえば、甚だ疑問である。
また、次のような記事が提訴以降も保守速報でアップされている。
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【吉報】『大嫌韓時代』の第七刷が決定!!!発売3週目で七刷という大反響
『大嫌韓時代』購読を報告される方々に著者として心から御礼申し上げます。
先ほど出版社より第7刷の決定が発表されました。
発売3週目で7刷という大反響に驚かされますが、
それもこれも運動に携わってきた皆さまの献身的な努力あったれば
こその大嫌韓時代の到来だと確信します。
http://hosyusokuhou.jp/archives/40756764.html
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コメント欄は右翼の発言で埋まっており、とてもじゃないが
ネット上での差別発言を防止しているとは思えない。
何度も話しているが、ネット上での差別発言もヘイトスピーチに含まれる。
街頭演説だけ防止しても意味がない。
ネットでの歴史歪曲、異民族差別運動が日本の右傾化の要因の一つでもある。
にも関わらず、李氏の提訴を画期的と持ち上げる座談会をみると、
現実には保守速報はその後も極右活動を展開しているという事実を無視している。
この座談会のおかしさは、しばき隊や男組といった暴力的な
反ヘイトスピーチ運動に対して何ら反省がみられない点にもある。
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「レイシストしばき隊」と称しているこの集団は、
社会運動を装った詐欺師や、在特会とは別系統の右翼、親日派在日朝鮮・韓国人、
さらにはヤクザそのものにしか見えないような連中が取り仕切っている。
中でもここの代表者である野間易通という男は自身のツイッター上で
頻繁に民族差別発言や日帝の朝鮮植民地支配正当化発言を繰り返し
ており、他ならぬ在特会に所属していても何ら違和感がないほどだ。
http://kotokotonittei.hatenadiary.jp/entry/2013/08/01/181751
http://kotokotonittei.hatenadiary.jp/entry/2013/08/01/180804
(http://roodevil.blog.shinobi.jp/韓国進歩言論/
ハンギョレのこの日本特派員はどうにかならないのか)
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詳しい説明は上記サイトを参照してほしいが、
右翼たちが盛んに攻撃している代表的な反ヘイトスピーチ団体は、
その歴史観や思想を見る限りでは、従来の左翼とは異なる立場にいる連中だ。
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「俺達は安倍や自民党よりももっと右だ!」
そう考えると納得が行く。仮に本人達が否定したとしても、
傍から見ればどうみてもこいつら安倍と同等かそれ以上の極右だよ。
この手の系列の集団が、
これまでの沖縄の反基地闘争や成田闘争などをブルドーザーで轢き潰すなどと宣言したり、
気に入らない人間を平気で公安にチクッてそれを誇らしげに自慢したり、
「ヘイトを街から葬り去る」とか言いながらなぜか総連や民団を攻撃するなど、
どう見ても市民運動としては完全に狂った言動を振りまいているのもそういう事だろう。
言わば北一輝にイカれて2.26事件を起こした皇道派軍人気取りという事だ。
連中に狂的な天皇崇拝者どもが多いのも共通項であろう。
(http://roodevil.blog.shinobi.jp/社会/旧しばき隊(現CRAC)だの
東京デモクラシーだのがなぜか安倍晋三を攻撃する)
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上記サイトの執筆者の意見に付け加えるならば、
有田氏に至っては平時から北朝鮮バッシングに関与しているということ、
慰安婦問題において日本のアジア女性基金に好意的な態度を取っていること、
右翼とはつるむくせに共産党は執拗にバッシングするということが挙げられる。
まさに反共左翼というもので、間接的に右傾化に手を貸しているわけである。
特に北朝鮮に対する発言はすさまじいものがある。以下の議事録を見てみよう。
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御承知のように、北朝鮮の核、ミサイルの開発というのは
特に一九九〇年代後半に向けて行われていき、そして、
その一方で約二千四百万人いる北朝鮮の国民の三百万人が餓死した
というふうに推定されております。
つまり、国民が大変な生活状況、食料事情があるにもかかわらず、
北朝鮮政府は核、ミサイルというものを開発する中で国民が飢えて亡くなっていくという
とんでもないそういう人権状況。
しかも、北朝鮮国内においてはそういうことに対して批判の声を上げることができず、
もしそういう兆しを察知されてしまえば、全国六か所にある政治犯収容所に
今でも二十万人の人たちが捕らわれて、命さえもが危ないような状況で必死で生きている。
そういう北朝鮮の人権感覚、基本的人権の欠如、民主主義の欠如というものが、
やはりこれまで、一九七〇年代以降、日本人に対する拉致問題に対する
人権感覚の全くの無視というところにつながっているというふうに私は考えております。
(中略)
松原大臣が今お話しになったように、
アメリカが非常に厳しいならず者国家という態度を堅持する状況の下で、
当時、拉致被害者の一人である蓮池薫さんも、
どんどんどんどん経済状況が厳しくなっていって、
そしてアメリカとの関係が本当に社会レベルでも、
指導員レベルではなくて一般のレベルでも不安になっていったときに
物事が動いたんではないかというふうに拉致被害者のお一人として評価をされていますから、
そういう意味では、
今後の米韓日が連携した強力な体制の下で
北朝鮮と対していかなければいけない
というのは
前提だというふうに思っております。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/180/0081/18004160081003a.html
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「国民が大変な生活状況、食料事情があるにもかかわらず、核、
ミサイルというものを開発する中で国民が飢えて亡くなっていくという
とんでもないそういう人権状況」とまで断言するが、実のところ、
北朝鮮の食糧事情はもう少々複雑であり、有田氏のように断言できるものではない。
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「北朝鮮は食糧難」というのが日本では常識のように語られることが多い。
だが、北朝鮮の穀物生産は回復傾向にあり、食糧自給率も100%に近いレベルにあるようだ。
その根拠の一つが、国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)が
毎年発表している「北朝鮮の作況および食糧安保評価特別報告書」
(Special Report: Crop and Food Security Assessment Mission to the DPRK)だ。
これは、両機関の担当者が北朝鮮を訪問して多くの農場に足を運び、
北朝鮮の農業省の資料などを照会して作成するもので、2013年11月に、
2012年の収穫分と2013年春の収穫分(2012年11月~2013年10月まで)
を予想してデータを発表している。
最新の「2013・14年度の報告書」で見てみよう。
2013年度の北朝鮮の食糧生産量は503万トン。
一方、食糧需要量は537万トンで、不足分は34万トンとなっている。
食糧生産量には、家庭菜園などでの栽培や傾斜地での栽培分も含んでいる。
不足分で見ていくと、2010・11年度(11~10月)は86.7万トン、
2011・12年度は73.9万トン、2012・13年度は50.7万トンとなっており、
不足分が徐々に減少していることがわかる。
生産量も、10・11年度は425万トン、11・12年度は445万トン、
12・13年度は484万トンと増加。FAOとWFPは今年の生産量を526万トンと推定している。
一方、一橋大学の文浩一(ムン・ホイル)氏は、
『朝鮮農業の今』(社協ブックレット、2014年6月)の中で、
朝鮮社会科学院経済研究所の李基成(リ・ギソン)教授から聞いた話として、
2013年(1~12月)の穀物生産高は562万4000トン、
前年比32万6000トン増加したと記している。
なお、2013年9月には前出の李教授が東洋経済のインタビューで、
2012年度の穀物生産量を529万8000トンと答えている。
ほかにも米国農務省が発表する統計などを見ると、
統計を発表する主体によって差はあるものの、おおよそ9万~39万トンが
不足しているというのが、北朝鮮の食糧生産の実態のようだ。
足りない分は輸入や人道目的の援助物質で補充しているという。
http://news.infoseek.co.jp/article/toyokeizai_20140731_44155
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他にも、批判すれば即収容所行きという発言もあるが、
これも専門家の意見と異なる。
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北朝鮮において党、政、軍の高官が解任される場合、
韓国のメディアはおおよそ「粛清」と報道するが、
粛清の性格によって大きく三つのパターンに分類できる。
まず死亡、あるいは病気などの非政治的理由で
これ以上公職を行えない場合だ。脳出血で倒れた
ウ・ドンチュク国家安全保衛部第1副部長が代表例だ。
「名誉退職」の場合も、このパターンに当てはまる。
次に、政治的理由で解任された後に再起できないケースだ
2005年に公金横領容疑で解任されたチョン・ハチョル
宣伝担当秘書、11年にスパイ容疑で銃殺されたとされる
リュ・ギョン国家安全保衛部副部長などがそれに当たる。
三つ目に、政策執行の過程で、あるいは事業遂行の過程での
失敗で一次的に解任され、再教養(革命化)を経て
再び現職に復帰するケースだ。崔竜海総政治局長、
朴奉珠総理、李光根朝鮮合営投資委員会委員長など、
多くの労働党と内閣の幹部は一度は再教養課程を
経験したケースが多い。11年に解任されたチュ・サンソン
人民保安部長も2年ぶりに復帰し、今年7月の
戦勝節記念行事にその姿を表している。
http://plaza.rakuten.co.jp/tsuruwonya/diary/201312100000/
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有田氏の言い分に沿えば、崔竜海、朴奉珠、李光根などは
収容所に送られたはずなのだが……現実はご覧の通りだ。
極めつけに、アメリカの強硬姿勢に屈したという意見を取り上げて、
米韓日の協力体制を取れと無責任に話しているが、
その帰結が最近、問題視されている集団的自衛権の容認である。
協力体制というのは、つまるところ軍事同盟の強化だ。
それを知ってか知らずか、有田氏は推奨するのである。
ちなみに、彼と同じく北朝鮮バッシングの先鋒であり、
北朝鮮の「人権問題」の専門家(笑)である小川和久氏は、
集団的自衛権の容認について、以下のようなコメントを残している。
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今回の集団的自衛権の行使容認については、
安倍内閣、特に安倍(晋三)首相がリーダーシップを発揮したということを高く評価します。
戦略の要諦を踏まえて動いたということも、過去のリーダーにはない動きでした。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41265
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イラクやアフガン、リビア、シリアなど
アメリカが空爆やテロ支援をする国に限って、
なぜか都合よく人権問題が浮上するという意味を知っていてほしい。
サウジアラビアやウクライナ(キエフ)の人権蹂躙は
まったく無視されているにも関わらず・・・・・・だ。
要するに、侵略の口実として人権問題が作られるのである。
小川氏は確信犯であるだろうが、有田氏は何を考え走狗となっているのだろうか。
北朝鮮が強力な集権体制を敷き、その結果、人権が侵されている。
それは確かだと思う。むしろ侵されていない国は地球上に存在しないはずだ。
だが、その攻撃の仕方が不正確な情報に基づき、
侵略国を正当化させるものであるならば、それは大いに問題だ。
実際、日本の北朝鮮報道は、報道というよりプロパガンダであり、
結果的に軍国化と民族差別を助長させている。
有田氏はその急先鋒であるにも関わらず、
自らの行為を全く反省していないばかりか、
自分が代表的な反レイシストであるかのように演技をしている。
その結果、彼の男組やしばき隊擁護・賛美発言がネトウヨに注目され、
左翼とは,しょせんこの程度よと人種差別に抗う人間すべてのイメージを
悪くさせている。この責任を取る気配は一向に感じられない。
このように、ヘイトスピーチに反対する人間で雑誌に登場しているのには
ろくでもない(あえてこう断言させてもらおう)奴らばかりなのに、
岩波も金曜日も特にその問題点について指摘しない。
こういう点が近年の左の右傾化に寄与しているような気がする。
いずれにしても、このようなカスみたいな軟弱な反対論では、
強固なナショナリズムに対して立ちうちできないだろう。
繰り返し説くが、中途半端なNoは最も強いYesなのだ。
こういう右翼が勝てる反対者ほど心強い応援者はいない。
なぜならば、雑魚レベルの反対者のおかげで、
形式的には民主的に反民主的な独裁が実行されるからである。
こういう点について考えれば、今月の世界の座談会は、
ある意味、非常に悪質な内容だったとも言えるだろう。