池上彰氏がまた嘘をついた。
今度は「中国人は選挙をしたことがない」んだそうだ。
----------------------------------------------------
日本でも指折りのジャーナリストである池上氏が、
「ニッポンの底力」に迫る特番の第2弾が発表された。
4月に放送した第1弾は視聴率10%近くを記録した注目番組だ。
~中略~
最近、海外では日本独自の文化として、
アイドルなどの「Kawaii(かわいい)文化」が注目を集めている。
本紙が池上氏に「気になるアイドルや知っているアイドルはいるか」と質問すると
「ええ、それは…。たくさんいますけど、名前を挙げるといろいろ問題が…」
と一瞬焦りの色を見せた。
だが、さすがの池上氏だ。
すぐに気を取り直し
「AKB48の上海版、SNH48ですか。
最近、総選挙をやったそうですが、あの国(中国)では
自分たちで選挙して何かを決めたことがない。
初めて選挙で決めた。
もしかしたら、こういうところから
民主化が起きるのかもしれません」とユニークな指摘。
さらには「いい提案があった。第3弾はカルチャーでやりましょう!」とも宣言
池上氏とアイドルの共演もある?
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/326913/
----------------------------------------------------------
池上氏が中国について無知であることを自白したような記事である。
実際には、中国にも選挙制度はある。
北京週報の記事を紹介しよう。
------------------------------------------------
全国人民代表大会と地方の各クラス人民代表大会は
いずれも民主的選挙によって選出され、人民に対し責任を負い、人民の監督を受ける
中国憲法の規定によると、満18歳になった公民は、
民族、種族、性別、職業、出身家庭、宗教信仰、教育程度、財産状況、居住期限を問わず、
法によって政治的権利を剥奪された人を除き、みな選挙権と被選挙権がある。
中国の県、郷2クラスの人民代表大会の代表は有権者によって直接選出され、
長年来、選挙権と被選挙権を享有する人数は満18歳以上の公民数の99%以上を占め、
選挙参加率は90%前後である。
中国の実情に基づいて、
現在県以上の各クラス人民代表大会代表は間接選挙によって選出されている、
つまり一級下の人民代表大会が一級上の人民代表大会代表を選出するわけである。
直接選挙と間接選挙を問わず、法によって差額選挙を実行する。
有権者と選挙部門は法的手続きに従って
その選出した代表を罷免するか更迭する権限がある。
現在、全国の各クラス人民代表大会代表は280余万人おり
、彼らは各民族、各業種、各階層、各党派から来た人たちで、広い代表性を持っている。
各クラス人民代表大会代表の中に労働者、農民の代表がかなりいる。
第10期全国人民代表大会代表の中に、労働者、農民の代表が総数の18.4%を占めている。
国家の権力が真に全人民の手に握られるのを保証するため、
代表は職責を履行する時、必ず人民の利益と意思を反映、代表しなければならない。
代表は法によって議案を提出し、各項の議案と報告を審議し、
各項の議案に対し表決することができ、人民代表大会の各種の会議での
発言と表決は法によって保護されている。
http://japanese.beijingreview.com.cn/wxzl/txt/2007-02/06/content_56352_3.htm
-----------------------------------------------------
このように、普通選挙と参政権、任免権を有しているのだ。
投票率が90%以上というのは、強制的に参加させられていることを
示唆しているように思われるが、今日の日本のそれと比べると、
どちらが民主的に議員を選んでいるのかがさっぱりわからなくなる。
日本では何かと騒がれるチベットにおいても、自治権が認められている。
---------------------------------------------------
チベット各地は1961年からチベットの歴史上かつてなかった
普通選挙を実行し始め、解放された農奴と奴隷は
初めて主人公となる民主的権利を獲得し、
憲法と法律から与えられた選挙権と被選挙権を積極的に行使し、
全国と自治区の各クラス人民代表大会代表の選挙に参加し、
人民代表を通じて国と地方の事務管理に参与している。
2002年、チベットの自治区・地区(市)・県・郷(鎮)の4クラスの任期満了に伴う交代選挙で、
全自治区の93.09%の有権者が県クラスの直接選挙に参加し、
有権者の選挙参加率が100%に達したところもあった。
選出された人民代表のうち、チベット族とその他の少数民族の代表の占める比率は、
自治区と地区(市)の2クラスは80%以上、県、郷(鎮)の2クラスは90%以上に達した。
広範なチベット人民は国と地方の事務管理に参加する権利を享有するようになった。
「中国人民政治協商会議チベット委員会」が1959年に発足してから、
5期の自治区政治協商会議主席はチベット族の公民が担任した。
現在、チベット族とその他の少数民族は自治区人民代表大会常務委主任と副主任の87.5%、
自治区人民代表大会常務委委員の69.23%、自治区主席、副主席の57%、
自治区政治協商会議常務委の90.42%と委員の89.4%を占めている。
チベット族とその他の少数民族の公民は自治区・地区(市)・県の
国家機関公務員の77.97%を占め、自治区・地区(市)・県の人民法院と
人民検察院の幹部総数の69.82%と82.25%を占めている。
http://japanese.beijingreview.com.cn/zt/txt/2008-04/09/content_109269.htm
----------------------------------------------------
とはいえ、問題も当然のことながら存在する。
2011年の北京週報の記事(一部抜粋)を読んでもらいたい。
-------------------------------------------------
今回の県郷人民代表大会代表改選選挙は
昨年改正された新しい『選挙法』公布施行後に初めて行われる選挙である。
これまでとは異なり、「都市・農村同一人口比例選挙」が開始され、
これが今回の選挙最大の注目点とされている。
11月1日、北京市朝陽区呼家楼の住宅の入口に、
この選挙区の正式な候補者4人の氏名、年齢、党派、学歴、勤務先などの
基本情報が書かれたピンクの紙が張り出された。
中国『選挙法』の規定では、人民代表大会代表の正式候補者名簿と基本状況は、
選挙日の7日前に公示されることになっている。
呼家楼のこの名簿には、予想通りこの地域の住民におなじみの殷金鳳さんの名前があった。
北京の居民委員会主任で唯一2005年の「全国労働模範」に選ばれた殷さんは、
2000年から、その担当部門は10年連続で「北京市先進社区居民委員会」に選ばれた。
「もちろん、みんな殷金鳳を選ぶよ!」、
「殷さんは一番信頼できる『身内』だからね!」
8日の早朝、投票所に集まった有権者の多くがまったく包み隠すこともなくこう言った。
ある80歳を超えたお年寄り(男性)は、
「殷主任が公開している携帯電話と家の電話は『空き巣老人』(独居老人)
にとって困った時のホットラインになっていて、電話をかければ24時間いつでも来てくれる」
と言う。「それに殷さんは学校と連絡を取って、特にお金に困っている
住民約80人のために再就職のための職業訓練の機会を作り、1人1人仕事を世話してくれた」。
こう当時を回想するのは、殷さんに仕事を世話してもらったうちの1人だ。
多くの有権者にとって、殷さんは居民委員会主任としても代表としても、
いつでも「民衆の意見」に耳を傾け、「民衆を代弁」し、住民の望みを把握して、
積極的に住民の難題を解決してくれる存在だ。
多くの有権者が、殷さんを通じて人民代表大会代表の忍耐強さと能力を目の当たりにし、
代表は確かに力を発揮できるということを信じられるようになった。
長くここに住む過逸さんは言う。
「この地域は、弱者に手が差し伸べられ、矛盾や問題を解決するために
連携するコミュニティーになった。殷代表がそれに果たした功績は大きい」。
~(中略)~
会場には他地域から参加した住民もいた。そのうちのある元教員は、
「これまでは対面する機会がなく、
有権者と候補者は誰が誰かも分からず、
誰を選び誰を選ばないかを決めるのは『当てずっぽう』だった。
単に名前や勤務先、職務、同僚の短い紹介(これすらないことが多かった)を頼りに
適当に名前を書いて終わりで、本来なら真剣であるべきの選挙が賑やかな
『うわべだけのイベント』になってしまっていた」と言う。
今年66歳になるこの元教員は何度も末端レベル人民代表大会代表選挙に
参加したことがあるが、候補者が学校関係者だった2回を除いて、
他の候補者は一度も会ったことがない人ばかりだったという。
「今回はいいよ。去年選挙法を改正した際に法が整備され、
有権者が候補者をあまり知らないという問題について法的に明確になった。
有権者が候補者との対面を要求した場合、選挙委員会は関連活動を開催して、
代表候補者が自分の状況を説明し、有権者の質問に答えなければならなくなった」。
9時30分、八角第三選挙区の候補者4人が登場し、
有権者に対し自分の仕事状況と当選後の抱負を1人ずつ述べた。
その後は「面接」段階へと進んだ。
隣近所どうしでいつも顔を合わせている間柄ではあるが、
有権者たちはまったく遠慮なく質問し、質問内容は多岐にわたり、
納得できない回答に対してはとことんまで問い出した。
北京などの選挙委員会では具体的な規定を作り、
代表候補者と有権者との対面会を行っている。
広州では、全部で4569名の区・県級市人民代表大会代表候補者と
4376名の鎮人民代表大会代表候補者が対面会に臨んだ。
「山西省や江西省など選挙がほぼ終了した省や自治区の状況からすると、
選挙委員会が法に基づいて企画した候補者と有権者との交流会が
全国範囲で広く行なわれ、改正後の新選挙法の関連規定が着実に
実行されるようになった」と何曄暉全人代常務委員会副秘書長は語る。
http://japanese.beijingreview.com.cn/yzds/txt/2011-11/28/content_408399.htm
---------------------------------------------------
つまり、立候補者の情報が少なすぎたため、
適当に名前を書くだけのショーだったこれまでの選挙を、
直接、有権者との対面会を実施することで改善しようとする動きが今あるのだ。
日本でこういう動きは果たしてあるかな?
と思わず問いかけたくなる。
ご存じのとおり、中国では共産党が強力な支配権を握っているので、
この選挙法の改正も党の指導によるものだと思われる。
裏を返せば、一連の改善の動きは組織レベル・全国レベルで展開中ということだ。
冗談めいて書いてしまったが、本当に今の私たちは、
中国と同じで選挙の際、ただ何となく一番当てになりそうな政党の
候補者に投票してはいないだろうか?一番有名な人物に投票してはいないだろうか?
「誰も信用おけない」「一番、自民がまともそう」「与党の経験があるから」
こういった適当な理由で、適当に名前を書いてはいないだろうか?
そういう意味では地元の行政は直接選挙、より大きな行政区では
間接選挙を敷いている中国が極端に選挙制度で日本より劣っているとは思えない。
また、ある部分では日本よりも画期的なシステムも取られているように感じる。
ただし、中国全域が記事のような民主的で画期的な選挙が行われているとは
思えない。地方の有力者が自動的に議事堂の椅子に座るようになっているのかもしれない。
そういう負の面は確実にあると思う。
けれども、それは日本やアメリカの腐敗した選挙制度と大差ない。
結論付ければ、池上氏の中国論は
極論を通り抜けて妄想の域に達している。
あまりにも現行制度について無知だし、近年の改革の機運を完全に無視している。
だいたい、AKBの総選挙は投票するための応募券を購入するシステムになっており、
それはすなわち、金権政治そのものではないか。
民主化の例にするにはお粗末すぎやしないか?
もちろん、いつものリップサービスと言えばそれまでだが、
どうも最近の池上氏の中国嫌いは以前に輪をかけてきており、
こういう人物が日本を代表する名物ジャーナリストとして、
テレビから聴衆を扇動しているかと思うと、あまりにもゾッとする世の中である。
今度は「中国人は選挙をしたことがない」んだそうだ。
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日本でも指折りのジャーナリストである池上氏が、
「ニッポンの底力」に迫る特番の第2弾が発表された。
4月に放送した第1弾は視聴率10%近くを記録した注目番組だ。
~中略~
最近、海外では日本独自の文化として、
アイドルなどの「Kawaii(かわいい)文化」が注目を集めている。
本紙が池上氏に「気になるアイドルや知っているアイドルはいるか」と質問すると
「ええ、それは…。たくさんいますけど、名前を挙げるといろいろ問題が…」
と一瞬焦りの色を見せた。
だが、さすがの池上氏だ。
すぐに気を取り直し
「AKB48の上海版、SNH48ですか。
最近、総選挙をやったそうですが、あの国(中国)では
自分たちで選挙して何かを決めたことがない。
初めて選挙で決めた。
もしかしたら、こういうところから
民主化が起きるのかもしれません」とユニークな指摘。
さらには「いい提案があった。第3弾はカルチャーでやりましょう!」とも宣言
池上氏とアイドルの共演もある?
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/326913/
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池上氏が中国について無知であることを自白したような記事である。
実際には、中国にも選挙制度はある。
北京週報の記事を紹介しよう。
------------------------------------------------
全国人民代表大会と地方の各クラス人民代表大会は
いずれも民主的選挙によって選出され、人民に対し責任を負い、人民の監督を受ける
中国憲法の規定によると、満18歳になった公民は、
民族、種族、性別、職業、出身家庭、宗教信仰、教育程度、財産状況、居住期限を問わず、
法によって政治的権利を剥奪された人を除き、みな選挙権と被選挙権がある。
中国の県、郷2クラスの人民代表大会の代表は有権者によって直接選出され、
長年来、選挙権と被選挙権を享有する人数は満18歳以上の公民数の99%以上を占め、
選挙参加率は90%前後である。
中国の実情に基づいて、
現在県以上の各クラス人民代表大会代表は間接選挙によって選出されている、
つまり一級下の人民代表大会が一級上の人民代表大会代表を選出するわけである。
直接選挙と間接選挙を問わず、法によって差額選挙を実行する。
有権者と選挙部門は法的手続きに従って
その選出した代表を罷免するか更迭する権限がある。
現在、全国の各クラス人民代表大会代表は280余万人おり
、彼らは各民族、各業種、各階層、各党派から来た人たちで、広い代表性を持っている。
各クラス人民代表大会代表の中に労働者、農民の代表がかなりいる。
第10期全国人民代表大会代表の中に、労働者、農民の代表が総数の18.4%を占めている。
国家の権力が真に全人民の手に握られるのを保証するため、
代表は職責を履行する時、必ず人民の利益と意思を反映、代表しなければならない。
代表は法によって議案を提出し、各項の議案と報告を審議し、
各項の議案に対し表決することができ、人民代表大会の各種の会議での
発言と表決は法によって保護されている。
http://japanese.beijingreview.com.cn/wxzl/txt/2007-02/06/content_56352_3.htm
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このように、普通選挙と参政権、任免権を有しているのだ。
投票率が90%以上というのは、強制的に参加させられていることを
示唆しているように思われるが、今日の日本のそれと比べると、
どちらが民主的に議員を選んでいるのかがさっぱりわからなくなる。
日本では何かと騒がれるチベットにおいても、自治権が認められている。
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チベット各地は1961年からチベットの歴史上かつてなかった
普通選挙を実行し始め、解放された農奴と奴隷は
初めて主人公となる民主的権利を獲得し、
憲法と法律から与えられた選挙権と被選挙権を積極的に行使し、
全国と自治区の各クラス人民代表大会代表の選挙に参加し、
人民代表を通じて国と地方の事務管理に参与している。
2002年、チベットの自治区・地区(市)・県・郷(鎮)の4クラスの任期満了に伴う交代選挙で、
全自治区の93.09%の有権者が県クラスの直接選挙に参加し、
有権者の選挙参加率が100%に達したところもあった。
選出された人民代表のうち、チベット族とその他の少数民族の代表の占める比率は、
自治区と地区(市)の2クラスは80%以上、県、郷(鎮)の2クラスは90%以上に達した。
広範なチベット人民は国と地方の事務管理に参加する権利を享有するようになった。
「中国人民政治協商会議チベット委員会」が1959年に発足してから、
5期の自治区政治協商会議主席はチベット族の公民が担任した。
現在、チベット族とその他の少数民族は自治区人民代表大会常務委主任と副主任の87.5%、
自治区人民代表大会常務委委員の69.23%、自治区主席、副主席の57%、
自治区政治協商会議常務委の90.42%と委員の89.4%を占めている。
チベット族とその他の少数民族の公民は自治区・地区(市)・県の
国家機関公務員の77.97%を占め、自治区・地区(市)・県の人民法院と
人民検察院の幹部総数の69.82%と82.25%を占めている。
http://japanese.beijingreview.com.cn/zt/txt/2008-04/09/content_109269.htm
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とはいえ、問題も当然のことながら存在する。
2011年の北京週報の記事(一部抜粋)を読んでもらいたい。
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今回の県郷人民代表大会代表改選選挙は
昨年改正された新しい『選挙法』公布施行後に初めて行われる選挙である。
これまでとは異なり、「都市・農村同一人口比例選挙」が開始され、
これが今回の選挙最大の注目点とされている。
11月1日、北京市朝陽区呼家楼の住宅の入口に、
この選挙区の正式な候補者4人の氏名、年齢、党派、学歴、勤務先などの
基本情報が書かれたピンクの紙が張り出された。
中国『選挙法』の規定では、人民代表大会代表の正式候補者名簿と基本状況は、
選挙日の7日前に公示されることになっている。
呼家楼のこの名簿には、予想通りこの地域の住民におなじみの殷金鳳さんの名前があった。
北京の居民委員会主任で唯一2005年の「全国労働模範」に選ばれた殷さんは、
2000年から、その担当部門は10年連続で「北京市先進社区居民委員会」に選ばれた。
「もちろん、みんな殷金鳳を選ぶよ!」、
「殷さんは一番信頼できる『身内』だからね!」
8日の早朝、投票所に集まった有権者の多くがまったく包み隠すこともなくこう言った。
ある80歳を超えたお年寄り(男性)は、
「殷主任が公開している携帯電話と家の電話は『空き巣老人』(独居老人)
にとって困った時のホットラインになっていて、電話をかければ24時間いつでも来てくれる」
と言う。「それに殷さんは学校と連絡を取って、特にお金に困っている
住民約80人のために再就職のための職業訓練の機会を作り、1人1人仕事を世話してくれた」。
こう当時を回想するのは、殷さんに仕事を世話してもらったうちの1人だ。
多くの有権者にとって、殷さんは居民委員会主任としても代表としても、
いつでも「民衆の意見」に耳を傾け、「民衆を代弁」し、住民の望みを把握して、
積極的に住民の難題を解決してくれる存在だ。
多くの有権者が、殷さんを通じて人民代表大会代表の忍耐強さと能力を目の当たりにし、
代表は確かに力を発揮できるということを信じられるようになった。
長くここに住む過逸さんは言う。
「この地域は、弱者に手が差し伸べられ、矛盾や問題を解決するために
連携するコミュニティーになった。殷代表がそれに果たした功績は大きい」。
~(中略)~
会場には他地域から参加した住民もいた。そのうちのある元教員は、
「これまでは対面する機会がなく、
有権者と候補者は誰が誰かも分からず、
誰を選び誰を選ばないかを決めるのは『当てずっぽう』だった。
単に名前や勤務先、職務、同僚の短い紹介(これすらないことが多かった)を頼りに
適当に名前を書いて終わりで、本来なら真剣であるべきの選挙が賑やかな
『うわべだけのイベント』になってしまっていた」と言う。
今年66歳になるこの元教員は何度も末端レベル人民代表大会代表選挙に
参加したことがあるが、候補者が学校関係者だった2回を除いて、
他の候補者は一度も会ったことがない人ばかりだったという。
「今回はいいよ。去年選挙法を改正した際に法が整備され、
有権者が候補者をあまり知らないという問題について法的に明確になった。
有権者が候補者との対面を要求した場合、選挙委員会は関連活動を開催して、
代表候補者が自分の状況を説明し、有権者の質問に答えなければならなくなった」。
9時30分、八角第三選挙区の候補者4人が登場し、
有権者に対し自分の仕事状況と当選後の抱負を1人ずつ述べた。
その後は「面接」段階へと進んだ。
隣近所どうしでいつも顔を合わせている間柄ではあるが、
有権者たちはまったく遠慮なく質問し、質問内容は多岐にわたり、
納得できない回答に対してはとことんまで問い出した。
北京などの選挙委員会では具体的な規定を作り、
代表候補者と有権者との対面会を行っている。
広州では、全部で4569名の区・県級市人民代表大会代表候補者と
4376名の鎮人民代表大会代表候補者が対面会に臨んだ。
「山西省や江西省など選挙がほぼ終了した省や自治区の状況からすると、
選挙委員会が法に基づいて企画した候補者と有権者との交流会が
全国範囲で広く行なわれ、改正後の新選挙法の関連規定が着実に
実行されるようになった」と何曄暉全人代常務委員会副秘書長は語る。
http://japanese.beijingreview.com.cn/yzds/txt/2011-11/28/content_408399.htm
---------------------------------------------------
つまり、立候補者の情報が少なすぎたため、
適当に名前を書くだけのショーだったこれまでの選挙を、
直接、有権者との対面会を実施することで改善しようとする動きが今あるのだ。
日本でこういう動きは果たしてあるかな?
と思わず問いかけたくなる。
ご存じのとおり、中国では共産党が強力な支配権を握っているので、
この選挙法の改正も党の指導によるものだと思われる。
裏を返せば、一連の改善の動きは組織レベル・全国レベルで展開中ということだ。
冗談めいて書いてしまったが、本当に今の私たちは、
中国と同じで選挙の際、ただ何となく一番当てになりそうな政党の
候補者に投票してはいないだろうか?一番有名な人物に投票してはいないだろうか?
「誰も信用おけない」「一番、自民がまともそう」「与党の経験があるから」
こういった適当な理由で、適当に名前を書いてはいないだろうか?
そういう意味では地元の行政は直接選挙、より大きな行政区では
間接選挙を敷いている中国が極端に選挙制度で日本より劣っているとは思えない。
また、ある部分では日本よりも画期的なシステムも取られているように感じる。
ただし、中国全域が記事のような民主的で画期的な選挙が行われているとは
思えない。地方の有力者が自動的に議事堂の椅子に座るようになっているのかもしれない。
そういう負の面は確実にあると思う。
けれども、それは日本やアメリカの腐敗した選挙制度と大差ない。
結論付ければ、池上氏の中国論は
極論を通り抜けて妄想の域に達している。
あまりにも現行制度について無知だし、近年の改革の機運を完全に無視している。
だいたい、AKBの総選挙は投票するための応募券を購入するシステムになっており、
それはすなわち、金権政治そのものではないか。
民主化の例にするにはお粗末すぎやしないか?
もちろん、いつものリップサービスと言えばそれまでだが、
どうも最近の池上氏の中国嫌いは以前に輪をかけてきており、
こういう人物が日本を代表する名物ジャーナリストとして、
テレビから聴衆を扇動しているかと思うと、あまりにもゾッとする世の中である。