毎日新聞 土曜夕刊 定年日和
スーパーの卵売り場。
1パックをカゴにいれ、移動しようとした時、見知らぬおじさんに声をかけられた。
「奥さん、一人2パックまでいいんだよ」
「ええ、知ってますよ」
「特価だから2パック買えばいいのに」
67,8歳か。おせっかいだな、と思いながらも、笑顔で答えた。
「家族が少ないから、1パックでいいんです」
「うちも家内と二人だよ。わたしが毎日二個食べるから」
なんだか話をしたそうである。
暇だったので聞いてやる。
「コレステロールは心配ないですか」
「心配なし。体脂肪17.毎日約10km走っているよ」
「それはすごいですね」
と言わざるを得ない。彼はうれしそうに言葉を継いだ。
「△大学卒業。元は某会社社長だった」
笑いをこらえた。スーパーでたった今知り合ったおばさんに
「私は、元一流大学卒のエリートなんです」
と自慢するなんて。彼が期待しているであろう反応をサービスした。
「まあ、そうですか。どこか地的な雰囲気を持った方だなと思いましたよ」
彼は気持ちよさそうに「ハッハッハッ」と笑い、「いや、失礼しました。ご主人をお大事に」と言って、足取り軽くはなれていった。
話し方もなめらか。
感じもいい。
過去の肩書きを言わなければいいオジサンなのに。
あれじゃ、どこでも敬遠されるだろうね。
でも、言わずにおられない。
ただのおじさんと、見られたくないのだから。
リタイアしたら「ただのおじさん」で生きる。
それが地域やおばさんたちにモテるコツなのだ。
スーパーの卵売り場。
1パックをカゴにいれ、移動しようとした時、見知らぬおじさんに声をかけられた。
「奥さん、一人2パックまでいいんだよ」
「ええ、知ってますよ」
「特価だから2パック買えばいいのに」
67,8歳か。おせっかいだな、と思いながらも、笑顔で答えた。
「家族が少ないから、1パックでいいんです」
「うちも家内と二人だよ。わたしが毎日二個食べるから」
なんだか話をしたそうである。
暇だったので聞いてやる。
「コレステロールは心配ないですか」
「心配なし。体脂肪17.毎日約10km走っているよ」
「それはすごいですね」
と言わざるを得ない。彼はうれしそうに言葉を継いだ。
「△大学卒業。元は某会社社長だった」
笑いをこらえた。スーパーでたった今知り合ったおばさんに
「私は、元一流大学卒のエリートなんです」
と自慢するなんて。彼が期待しているであろう反応をサービスした。
「まあ、そうですか。どこか地的な雰囲気を持った方だなと思いましたよ」
彼は気持ちよさそうに「ハッハッハッ」と笑い、「いや、失礼しました。ご主人をお大事に」と言って、足取り軽くはなれていった。
話し方もなめらか。
感じもいい。
過去の肩書きを言わなければいいオジサンなのに。
あれじゃ、どこでも敬遠されるだろうね。
でも、言わずにおられない。
ただのおじさんと、見られたくないのだから。
リタイアしたら「ただのおじさん」で生きる。
それが地域やおばさんたちにモテるコツなのだ。