ハイカーズ・ブログ(徘徊者備録)

「あなたの趣味はなんですか?」
「はい、散歩です」

「こうなる前からですか?」
「いいえ」

ただのおじん

2008-07-26 16:58:43 | 晩年学
毎日新聞 土曜夕刊 定年日和

スーパーの卵売り場。
1パックをカゴにいれ、移動しようとした時、見知らぬおじさんに声をかけられた。

「奥さん、一人2パックまでいいんだよ」
「ええ、知ってますよ」
「特価だから2パック買えばいいのに」

67,8歳か。おせっかいだな、と思いながらも、笑顔で答えた。

「家族が少ないから、1パックでいいんです」
「うちも家内と二人だよ。わたしが毎日二個食べるから」

なんだか話をしたそうである。
暇だったので聞いてやる。

「コレステロールは心配ないですか」
「心配なし。体脂肪17.毎日約10km走っているよ」
「それはすごいですね」

と言わざるを得ない。彼はうれしそうに言葉を継いだ。

「△大学卒業。元は某会社社長だった」

笑いをこらえた。スーパーでたった今知り合ったおばさんに

「私は、元一流大学卒のエリートなんです」

と自慢するなんて。彼が期待しているであろう反応をサービスした。

「まあ、そうですか。どこか地的な雰囲気を持った方だなと思いましたよ」

彼は気持ちよさそうに「ハッハッハッ」と笑い、「いや、失礼しました。ご主人をお大事に」と言って、足取り軽くはなれていった。

話し方もなめらか。
感じもいい。
過去の肩書きを言わなければいいオジサンなのに。
あれじゃ、どこでも敬遠されるだろうね。

でも、言わずにおられない。
ただのおじさんと、見られたくないのだから。

リタイアしたら「ただのおじさん」で生きる。
それが地域やおばさんたちにモテるコツなのだ。