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「対応できず閉院決めた」例も…医療機関を追い込む「マイナ保険証」 システム整備義務化、できなければ制裁

2023年04月02日 | 生活

こちら特報部

「東京新聞」2023年4月2日

 2024年秋に健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと一体化されるのを前に、医療機関による「マイナ保険証」への対応が1日、義務化された。医療機関には、カードの保険証情報を読み取るオンライン資格確認のシステム整備が求められるが、作業の遅れや機器のトラブルが起き、不満の声が広がる。導入への負担から閉院を決意したケースも出ている。(山田祐一郎)

◆顔の認証がうまくいかないトラブルも…今後大丈夫?

 「マスクを取って顔認証を試してみますね」。3月下旬、東京都江戸川区の「松江歯科医院」の受付に設置したカードリーダーに、扇山隆院長(57)が自身のマイナカードを差し込んだ。ところが、顔を近づけるとエラーを意味する赤色のライトが点灯。「角度が悪いのかな」。何度かカメラに向かう位置をずらした末、本人だと認識された。

 同院では、昨年12月に設備を導入。設置には国から補助金が出るが、光回線を新たに整備したため自己負担分が出た。「患者が新型コロナ前の8割ほどしか戻っておらず、経営は厳しい」と扇山さん。受け付けも1人でこなすため「患者が受け付けするたびにエラーが出て対応するのでは診察にならない」と懸念する。

 「マイナ保険証の運用が本格化した時、トラブルに対応できるか不安だ。環境が整っていないのに、国はなぜ、システム義務化や保険証廃止を急ぐのか」

 厚生労働省によると、3月19日現在、システムを運用している医療機関は57.6%にとどまる。カードリーダーの申込率は92.3%だが、回線整備の遅れなどが発生している。政府は機器の契約後も整備が未完了の場合、9月末まで猶予を設けるなど、医療機関向けの経過措置を示している。

 システムを導入しない場合、保険医療機関の指定が取り消される可能性がある。厚労省の担当者は「丁寧に説明し、指導していく」と話す。

◆「義務化は憲法違反」医師ら274人が国を提訴

 全国保険医団体連合会(保団連)のアンケートには、オンライン資格確認の義務化を機に、高齢の医師・歯科医師らを中心に閉院や廃院を検討しているとの声が寄せられている。

 京都市の医院と診療所で診察する男性医師(70)もその1人。回線が整備できず、診療所は経過措置後の9月末で閉院することを決めた。「高齢のため、システムやプライバシー保護への対応に自信がない。診療所の患者には紹介状を作成した」と明かす。医院のほうは回線工事を依頼しているが、「設置はいつになるか分からない。経過措置期間内にできればいいが」と不安を口にする。

 保険証廃止は、政府が3月に国会提出したマイナンバー法など関連法改正案に盛り込まれた。これに対し、保団連は厚労省に法案撤回を要請。国会内での集会では、保団連の住江憲勇会長が「オンライン資格確認はメリットが少ない上、顔認証自体がプライバシーの侵害。国家による個人の統制・監視につながる」と訴えた。

 一方、オンライン資格確認の義務化自体は厚労省の省令改正でなされた。これに対し、医師と歯科医師計274人が2月、義務がないことの確認などを国に求める訴訟を東京地裁に起こした。国会での立法措置に基づかず、省令改正で義務化したのは憲法違反だと主張している

 医療法務に詳しい井上清成弁護士も「省令改正だけで拘束力を持たせるのは行き過ぎだ。十分な協議や手続きを経ておらず、無理がある」と問題視する。「法的根拠が弱い中、義務化に従わなかった医療機関に制裁を加えるのはバランスを欠いている。保険証廃止の結論ありきで、政策の進め方として課題を残す」と苦言を呈した。


 どうせ「取得」しなければならないものなら今のうちに「2万円」もらっておこう。こうして「申請」はピークを迎え対処できないほどになっているようだ。わたしは、何が何でも「反対」という立場ではない。「一人も取り残さない」という「原理」を貫いてほしい。あまりにも拙速な感じが否めない。