「東京新聞」社説 2023年5月16日
マイナンバーカードを巡る事故が相次いでいる。証明書発行サービスで他人の文書が交付されたり、マイナ保険証では別人の医療情報が閲覧された。普及を優先し、個人情報保護を軽んじてきた政策のつけではないか。
マイナカードを使ったコンビニでの証明書発行サービスでは、他人の証明書が交付された事故が東京都足立区、横浜市、川崎市、徳島市で十四件確認された。富士通の子会社が開発したシステムの不具合が原因とされる。
マイナ保険証で別人の医療情報が閲覧された事故も五件起きた。投薬ミスが起きれば、生死に関わる事故につながりかねない。健康保険組合などによる登録ミスが原因とされるが、同様のミスは全国で約七千三百件あったという。
住民票や戸籍謄本などは個人情報の根幹であり、窓口で交付する際は本人確認が徹底されている。医療情報は他人の目にさらされてはならない秘匿情報だ。
新しいシステムの導入に伴う不具合は珍しくないとしても、不具合やヒューマンエラーの発生を前提に二重、三重の情報漏れ対策が講じられなければならない。
一連の事故はずさんな導入実態を浮き彫りにし、「十分なセキュリティー対策」という政府の説明が看板倒れだったことを示す。
デジタル庁の対応の鈍さも指摘せざるを得ない。誤交付は三月からあったにもかかわらず、業者への指示は大型連休明け。証明書発行サービスは自治体の業務だが、カード普及の旗を振ってきたのはデジタル庁だ。制度運営の監督を担う自覚に欠けてはいまいか。
マイナカードの申請率は、マイナポイント付与などにより三月末時点で76%を超えたが、相次ぐ事故は情報漏えいなど国民が抱いてきた制度への不安が解消していないことを浮き彫りにした。
健康保険証の廃止とマイナ保険証への一本化、マイナカードのより広い行政分野での活用などを定めたマイナンバー法改正案は衆院を通過し、参院で審議中だ。
用途が増えれば、事故の恐れも高まる。健康保険証の廃止で無保険者が生まれることへの懸念も解消されていない。欧州諸国などでは個人情報保護の観点から類似制度の断念や見直しが進む。
参院では事故の検証に加え、制度の是非を含めて徹底的に審議するよう求めたい。
人権感覚0な政権でこれはすこぶる危ない。
菜の花情報
今日は持参した600mⅬのお茶1本で間に合わず、ただの水600mⅬもカラになった。
疲れた感あり。
明朝の予想最低気温は9℃。
少しハウスを開けて帰ってきた。