「東京新聞」社説 2023年12月21日
沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設を巡り、福岡高裁那覇支部は国が県に代わって埋め立ての設計変更を承認する「代執行」を認める判断をした。だが、深刻な環境破壊を伴う難工事で県民の反発も強い。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設が「唯一」なのか、国は問い直すべきだ。
建設を予定する辺野古沖の海域で「マヨネーズ並み」とされる軟弱地盤が見つかったが、県が国の設計変更を認めなかったため、「代執行」訴訟が起こされた。
代執行は国が県の権限を取り上げることを意味する。今回の判決は玉城デニー知事に設計変更を承認するよう命じたが、知事が従わない場合、国が県に代わって承認し、工事に着手できる。県側は最高裁に上告できるものの、逆転勝訴しない限り、工事を止めることはできない。知事の法廷闘争に事実上、区切りを付ける内容だ。
しかし、日米合意を盾に「辺野古が唯一の解決策」と繰り返す政府側に非はないのだろうか。
「マヨネーズ並み」の軟弱地盤は深さ最大90メートルにも達する。国は海底に7万本もの砂杭(くい)を打ち込むというが、実際に可能なのか。
政府の地震調査委員会は昨年、沖縄でマグニチュード(M)8の巨大地震が起きる可能性を公表した。工事の難度が高い上に、さらなる地震対策も迫られる。そのような海域に基地を建設する発想自体が危ういのではないか。
費用も膨大だ。当初見積もりで3500億円以上だった総工費は再試算で約2・7倍に膨らんだ。資材や人件費などはさらに高騰しており、工費がどの程度まで膨れ上がるのか、予測は困難だ。
そもそも建設予定地の大浦湾は約260種の絶滅危惧種を含めて多様な生物が生きる自然の宝庫であり、厳格な環境保全が求められる。貴重な海は破壊ではなく、保護の網をかけるべきだ。
沖縄県民の「辺野古ノー」の声は選挙で明白だ。在日米軍専用施設の7割が沖縄県に集中する。米軍基地の県内移設で、長期にわたる忍従を強いていいのだろうか。
辺野古新基地は滑走路の短さなど、米国側からも軍事的見地からの疑義が出ているという。
普天間返還は当然だとしても、辺野古への移設は到底、合理的とは言えない。国には移設先の見直しを含めて、米国側と再協議するよう求めたい。
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辺野古「代執行」不当判決 地方自治の侵害
玉城デニー知事の談話(要旨)
到底容認できない
「しんぶん赤旗」2023年12月21日
福岡高裁那覇支部の判決を受けた玉城デニー知事のコメント(要旨)は次の通り。
▽多くの沖縄県民の民意に即した判断を期待していただけに、極めて残念。憲法が定める地方自治の本旨や民主主義の理念、沖縄県民の苦難の歴史とその民意を踏まえれば、沖縄県の処分権限を奪い、自主性・自立性を侵害して新たな軍事基地を建設する国の代執行は、多くの県民の負託を受けた知事として到底容認できない。
▽10月30日には、私自ら法廷に立ち、国が県との必要な対話に応じていないこと、「辺野古が唯一」との考えは必要性・合理性を欠くこと、新基地建設に反対する県民の民意こそが公益として考慮されなければならないこと等を強く訴え、国の代執行はその要件を欠くことを主張した。
▽判決は付言において、沖縄の「歴史的経緯等を背景」とした「沖縄県民の心情もまた十分に理解できる」とし、「国と沖縄県とが相互理解に向けて対話を重ねることを通じて抜本的解決の図られることが強く望まれている」としている。そうであるならば、代執行の要件の判断において、この点を反映すべきではなかったか。
やはり自公政権を倒すしか解決策はないのだろう。
散歩道からの風景。