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国際女性デー。仁藤夢乃 バカなフリして生きるのやめた。

2022年03月08日 | 生活

きょう8日は国際女性デーです。

バカなフリして生きるのやめた

日本に「女性支援」の根拠法ができる!

“ここがおかしい”

仁藤夢乃(社会活動家)

Imidas連載コラム2022/03/08

これまでなかった女性支援の砦

 2022年2月16日、困難な問題を抱える女性を支援する新法制定のための超党派勉強会が参議院で開かれた。私もこの法律の制定に向けて、19年に厚生労働省の検討会の構成員として活動し、「売春防止法に代わる新たな枠組みが必要」とする中間まとめを公表した。その後、民間支援団体などの有識者で集った「女性支援新法制定を促進する会」のメンバーとして、新法制定に向けて要望書を作成し議員らに伝えるなどの活動をしていて、16日の勉強会にも参加した。

 この日は法の骨子案が示された。朝日新聞の記事には〈目的や基本理念に女性の福祉の増進や人権の尊重、男女平等の実現を掲げ、これまで支援の根拠法とされた売春防止法(売防法)からの脱却を図る。(略)骨子案によると、女性の福祉の増進のために、人権が尊重され、安心して自立して暮らせる社会を実現することを目的としている。必要な施策の実施を国と地方自治体の責務とし、国に基本方針を、都道府県には基本計画を定めることを義務づけた。〉とある(「問題抱える女性支援目指し 新法骨子案判明 『売防法から脱却を』」22年2月16日、朝日新聞デジタル)。

 東京新聞にも〈女性の保護事業は現在も都道府県が実施しているが、根拠法の売春防止法は、女性の「更生」や「収容」を明記する一方、福祉の視点が欠けているとして一部を廃止し、新法に置き換える狙いだ。法案の骨子では、性的被害や家庭状況の事情で、日常生活や社会生活が困難になった女性を支援対象として定義。本人の意思を尊重し、回復や自立に必要な包括的支援を行うことを明記した。〉と紹介されている(「貧困やDV被害 居場所がない女性の包括支援 超党派議員が新法案を提出へ 売春防止法から脱却目指す」22年2月16日、東京新聞Tokyo web)。

売春防止法とはどんなもの?

 さらに先の東京新聞の記事は、〈1956年制定の売防法は、売春を助長する行為の処罰と、売春する恐れのある女性の補導・保護更生が目的。都道府県は今も同法に基づき、相談や一時保護を担う「婦人相談所」、中長期的に保護する「婦人保護施設」を運営している。保護対象はDVやストーカー被害者にも広がったが、少ない人員配置や専門職員の不足、民間団体との連携不足が課題。支援関係者は長年、「困難の責任を女性に負わせ、蔑視的な表現が残る売防法こそ問題だ」と、新たな根拠法を求めていた。〉と締めくくられている。

 売春防止法は「売春」に「転落」する女性や「売春を行うおそれのある女子」を社会を乱すものとして扱い、「補導」「保護」「更生」の対象に位置づけている。こんなに差別的な法律が制定から66年間、一度も根本的に改正されていないのだ。そして、そうした女性たちが「収容」される「婦人保護施設」は、その名前すらほとんどの人には知られていない。「婦人保護」という名称自体にも深い女性差別を感じざるを得ないが、女性を公的に支援する唯一の施設である。その「婦人保護施設」は「売春のおそれのある女子」を指導の対象としてみる差別的な売春防止法を根拠としていたのだ。

 私たちColabo(コラボ)の活動は、既存の「支援」が機能していないために、「ないのなら自分たちで作ろう」と始めたものだったが、法律や制度のことを知れば知るほど、これまで日本社会には「女性福祉」はなかったのだとわかっていった。

 01年にDV防止法ができてからは、国はお金をかけず女性たちを「保護」する場所として、入所者が少なくなっていた婦人保護施設に着目し、そこからDV被害女性やストーカー被害女性も同施設で保護されることとなった。すると、緊急的に女性を保護する一時保護所だけでなく、それまで地域に開かれていた婦人保護施設も、DVやストーカーの加害者から入所者を守るため看板を下ろして所在地を隠し、通信機器の利用などにも厳しいルールが課せられるようになった。

 また、「措置」の仕組みの問題などで入所のハードルが高く、婦人保護施設は困っている女性たちから「利用したい」と思われる場所ではなくなった。利用率はものすごく低く定員の2~3割という施設もある。Colaboでは18年度から、本来は性売買・性搾取の被害にあった女性の生活を保障する場であるはずの婦人保護施設について、女性たちが「利用したいと思って利用できる場」になるよう働きかけ、少しずつ道が開けてきている。施設自体も、少女や成人女性の人権を保障するために変化しようとしているところだ。そうした現場の活動を通して、今回の新法の必要性も議員らに理解してもらえるようになってきた。

女性差別的な法律が66年間続いている

 売春防止法は戦後、女性の福祉や人権保障のために活動してきた多くの女性たちの運動によってできた法律だが、その時代の人権意識を反映しているともいえる。それが66年間も変わらずにきたことは、日本社会の女性に対する意識が戦後から進歩していないことを示す残念なことだ。

 売春防止法では、女性が「補導」の対象にされる一方で、買春を持ちかける男性側は受動的な存在として位置づけられ、第5条の「勧誘等」の罪は女性にしか適用されない。そもそも「売春」という言葉自体が買春男性側からの視点でつくられた女性差別的なものであり、性売買・性搾取の実態を覆い隠している。

 16年9月22日の本連載「私たちは『買われた』展を終えて想うこと」でも書いたが、15年にはSNSを通して買春相手を探して生活していた少女が勧誘罪で逮捕される事件もあった。「少女は遊ぶ金ほしさに売春し、映画を観たり洋服を買ったと証言した」「少女は高校を中退して半年間家に帰らず、居所不明になっていたため任意の事情聴取ができず、逮捕に踏み切ったと警察は説明している」などと、さまざまなメディアが報じたが、半年間も家に帰らずに生活しなければならなかったのにはきっと理由があるはずだ。そして、彼女はきっと「売春」で得たお金で宿に泊まったり、ネットカフェでシャワーを浴びたり、食費や生活費にしていたのではないかと、私が出会ってきた少女たちの現状から想像した。

この年から、Colaboでは児童買春をテーマにした「私たちは『買われた』展」を企画し、活動を通して性搾取の実態を伝え、理解者が増えたことが新法制定に向けた力にもなっている。

数年前までは現状調査さえもなかった

 私たちは活動を始めた時から、行政に支援を求めても「自殺対策なら枠があるが、女性や若い少女たちを支援する枠組みはない」とはっきり言われてきた。「そういう子はどこにいるのか? 何人いるのか? こちらでは把握していない」と言われ、現状を知ろうとしない、調査をしようとしない行政の態度に憤りを感じながら、実際の活動を通して困難を抱えた少女や女性がたくさんいることを伝え続けてきた。こうした活動を10年続けることができたのは、周囲の方々からの寄付など具体的な応援や支えがあってのことだった。

 既存の「支援窓口」には足を向けない、こちらから出向かなければ会えない少女や女性たちがいることから、そうした人たちがいる場所へ出向き、つながるために働きかけを行うこと(アウトリーチ)の必要性を訴え、そのことを国も認識して18年に「東京都若年被害女性等支援モデル事業」が始まりColaboも受託した。アウトリーチの強化は必要だが、支援を必要とする人に出会ったところで公的な受け皿がないため、Colaboでは自主事業としてシェルターやシェアハウスなどで住まいの提供をしている。

 しかし民間団体の資金では限界があり、圧倒的に不足していることを繰り返し指摘し、「出会ったあとの責任が取れない、受け皿の拡充を!」と要請したら「まずは自助努力でお願いします。制度は後からついてくるものです」と東京都に言われた。そのため、Colaboは市民から寄付を募り、シェアハウスを5物件15部屋に拡大し、22年3月にはアパートタイプの住まいも8部屋開設するが、年間1500人以上の少女たちから相談がある中ではまったく足りていない。

公的支援の道をようやくこじ開けた

 モデル事業が始まり、女の子たちが婦人保護施設を利用できるようになるかと期待したのだが、「措置」の仕組みの問題により施設に入れた女の子は一人もいなかった。女性に選択権はなく、見学やお試し入所もさせてもらえないまま「措置」されるという仕組みそのものが、本人主体の支援のあり方ではなく、管理・指導的な目線によるものだが、今もこうした支援が続いている。

 この問題をさまざまな政党の都議会議員に伝えたところ、東京都は20年度末に2人の女の子を初めて婦人保護施設に繋いでくれた。東京都と連携して若年者支援のモデル事業を行った3年間(Colaboが活動を始めてからだと9年間)で、たった2人だけである。

 しかし、そこから婦人保護施設利用の道が切り開けた。これまで婦人保護施設は、若年女性を受け入れてきていなかったので、改善してもらわなければならないところもまだまだある。それでもまずは、若年女性が公的な支援を使えるということが、ようやく始まった(というかこじ開けた)ところだ。

 未だに入所のハードルが高かったり、女性たちの生活やニーズに合った対応ができていないため、抱えている困難が大きかったり、見守りが必要な人ほど、公的支援を利用できず、アパートで一人暮らしせざるを得なくなることが続いている。

女性支援を加速させる新法への期待

 公的機関で唯一、積極的なアウトリーチを行っている(補導という形になるのでケアではない)警察からは「売春防止法で女性を補導することしかできない」と言われ続けてきた。ここまでも大変だったし、これからも大変なことばかりなのだろうとは思うが、この新法が今国会で成立したら、日本社会にようやく女性支援の根拠法ができる! これまでなかったという事実も、多くの人に知ってほしい。

 全国各地にColaboのような活動のできる人を増やしたい、そのためにも国に予算をつけさせたいと思い、18年にColaboは東京都のモデル事業を受託して活動することを決めた。モデル事業の内容は、アウトリーチ、一時保護、自立支援と、Colaboがつくってきた活動そのものだったので、実績を作り必要性を訴えることで予算化され、全国に広がるようにと願って取り組んだ。

 今年度からこれが本事業化され、来年度はさらに予算も増え(それでも必要な活動を補うには足りないが、支援の根拠法もない中で予算がついたことは画期的)、これから全国に広がっていく段階だ。全国でColaboのような活動が必要だと考え、繋がってきたみなさんと、それぞれの場所で一緒に取り組む時がいよいよ来る。そのためにできることは何でもしたいし、力を合わせて、これからの女性支援をつくっていきたいと思っている。

 今はとにかくこの法案を、議員の方に超党派で力を合わせて国会で通していただくべく、市民の声を高めていく必要がある。

「自立」ではなく「人権と生活」を目的に

 しかし、16日に提示された骨子案をみて、次のことを懸念している。これまで私は「自立を目的とせず、人権保障・生活保障を目的とすること」を要望してきたが、「自立」を目的にするかのような書かれ方をしていること。また、婦人保護施設が「女性自立支援施設」という名称になる案が出されていることはとても残念だ。

 自立とは、職業的・経済的な自立を意味して使われ、生活保護の利用者に対して厳しい「自立指導」を行う自治体もある。また児童自立支援施設など、子どもたちにとって「入所させられる」「更生指導される」施設でも使われている言葉である。「自立させる」という考え方自体が当事者に対する上から目線であり、それでは「売春に転落した女性を更生指導する」というこれまでの婦人保護の考えから脱却できないと考える。

 そうした少女や女性たちが進学するためには大きな壁があり、生活保護を受給しながらでは大学や専門学校への進学は認められていないため、この新法を根拠に資格取得や、専門学校や大学進学のための学費や生活費などの力強い経済的な支援までするつもりで、そのために「自立」と書いているということではないだろう。

 また、女性の人権・生活保障を本当に考えるなら、婦人保護施設は「女性自立支援施設」ではなく「女性生活支援施設」などとするべきだ。骨子案では、「当事者を尊重」と繰り返されているが、この名称を当事者が聞いたら、どう思うか少しは考えてほしい。行きたいと思わないのではないか。「婦人保護」もひどいと思ってきたが、意味がわからない「婦人保護」より「自立支援施設」の方はさらに嫌かもしれない。これは当事者抜きで決められた言葉だろう。このような上から目線の名称では施設のスタッフの利用者への目線もそういうものになってしまうのではないか。

あくまで責任逃れをしたがる大人たち

 私は女性支援や児童福祉の現場で、「当事者の意思を尊重する」と言いながら、それを盾に「本人が支援を拒んだ」などと決めつけて、必要な選択肢も提示することのないまま厳しい管理者都合での条件やルールを押し付けるような支援を毎日のように見てきた。「本人の意思」を支援者側の都合の良い言い訳に利用して、責任逃れをするということを繰り返すのだ。そのため、骨子案にあるような理念が「支援をしない言い訳」に利用されないようにしていかなければならない。

 法律の名前も「女性包括支援法」などになることを願っているが、「女性自立支援法」などとなりそうな流れなのではと心配している。また、売春防止法では「売春のおそれのある女子」を対象とされていたところに、新法では「性売買・性搾取の被害にあった女性に対する支援を行うこと」と明記してほしいとも要望していたが、骨子案には「性的な被害」と一言だけしか書かれていないのも気になっている。

それでも、新法に人権を尊重し、福祉の増進を行うなどと書かれていることは、この日本では画期的だ。また、シェルターなどの活動のほとんどを支えてきた民間団体も、女性支援の担い手として法律に明記されることになり、それも画期的だ。しかし、民間団体を行政の請負のような扱いで安く使うのではなく、対等な協働先として、しっかりとした財政支援がつくものにしないといけないが、そこがまだ不十分だ。

 このように、細かいけれど大切なこと、指摘しておかなければならないことはたくさんあるが、それでもまず今国会でこの法が成立することが大切であり、それは大きな一歩である。

 長引くコロナの影響もあり、女性たちはこれまでにないほど困窮し、性搾取の被害にもあいやすくなっている。そうした女性たちの人権と生活を保障し、支援を届けるために今国会での女性新法の成立を願っている。そのためにも、多くの市民にこの新法に関心を寄せていただき、制定を願う声を共に上げ、大きくしていただきたい。そして、現場の活動に生かされる、実効性のある法律になるように働きかけていきたい。

Colaboでは一緒に支援活動をしてくださるスタッフを募集しています。

詳しくはホームページをご覧ください。


 すっきりと晴れる予報だったのだが、早朝だけ。雪は降るわ、風も出るわと不安定極まりない。
今日の散歩道。日没前、ようやく青空が見えた。



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