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古賀茂明 政官財の罪と罰 抜け穴だらけの政治資金規正法改正の“闇” 改悪の根源は「政治部記者」と「立憲国対」の怠慢さ 

2024年07月02日 | 社会・経済

AERAdot 2024/07/02

 政治資金規正法の改正法が6月19日に成立した。東京都知事選挙の告示直前のタイミングだった。

 この改正法の内容については、散々報道されているのでここではあえて触れないが、本来なら、政治資金のあり方を抜本的に見直し、公明正大なものに変革する絶好のチャンスだったのに、それとは真逆で最悪の結末になったと言って良いだろう。

 それにしても、「民主主義国家」の日本で、ここまであからさまに国民の声を無視した法案が通るのは、どうしてだろうかという疑問が湧く。

 そこで、今回は、政治資金規正法改正の裏で恐ろしい役割を果たした二つの反民主的勢力の話をしてみたい。

 まず、マスコミは、今回の規正法「改悪」の主役の一人である。

 とりわけ、政治部記者たちの罪は重い。

 その原因は、5月14日配信の本コラム日本が今でも報道の自由度70位に低迷する理由 安倍政治で“変えられてしまった”記者たちの末路でも指摘した、彼らの「会社員体質」「記者クラブの談合体質」「取材先の広報マン体質」などに起因する。政治家に擦り寄りネタを仕入れる彼らの取材行動は、自らの価値観が政治家と同質化するという極めて深刻な問題を引き起こす。

 今回の改正案についても、「政治は金がかかるが、どうしたらそれを最小限にするかというアプローチと、金がかかることを前提としてどうやって透明化を図るかという二つの道がある」とか、「企業・団体献金の禁止は自民党には受け入れ難いので実現は困難だ」とか、「どこまで与野党が歩み寄れるかが鍵だ」などという報道を繰り返し、理想的な規正法については、最後まで論じようとしなかった。

 立憲民主党が、捨て身の覚悟で出してきたほぼ完璧な提案(企業・団体献金禁止、政治資金パーティー禁止、政策活動費禁止)を全面的に支持する論説が皆無だったことがそれを物語る。

「妥協」を許したマスコミの罪

 「とにかく妥協して改正案をまとめることが大事」という相場観を作り、その結果、規正法改正法成立が一つの成果であるかのような錯覚を国民に生じさせたのだ。全く不完全な法律がこの先何年も放置されることを政治部が積極的に後押ししたと言って良いだろう。彼らは民主主義がどうなるかには関心がない。日々の政治家の動きを追い回し、誰と誰が会食して、こんな話をしたらしいというくだらない記事を書いて満足しているだけで、本質的な政策議論を書くことなどないのである。

 かくして、規正法改正というテーマは、「一段落した」ことになり、彼らは、次のテーマである、東京都知事選と自民党次期総裁争いの宣伝記事に集中している。

 与野党伯仲で「政権交代の可能性も」などと書くのに、自民総裁選関連記事は紙面に溢れるのに、政権交代で次の首相候補となる立憲民主党の代表選についての記事はほぼゼロに近い。恥を知れと言いたくなる。

 マスコミの罪についてはこの辺にして、もう一方の主役の話をしよう。それは、野党の国対(国会対策委員会)である。

 国対は国会の常任委員会のような組織とは異なり、各党に個別に置かれる組織だ。政権の意向を体する与党国対と野党国対は、国会運営について協議する。中でも、自民と立憲の国対委員長は、緊密に協議しながらスケジュール管理を行っていく。

 スケジュール管理と言うと重要性が低いように感じてしまうが、実はそうではない。

 一番わかりやすいのが、予算案審議の日程管理だ。今年度予算は、昨年度末の今年3月28日に成立した。予算審議では、予算案がいつ成立するかが重要な与野党攻防のテーマとなる。予算案が3月末までに成立しないと暫定予算が必要になる場合があり、政権の責任問題となる。

予算案成立に「加担」した立憲

 また、予算案が通るまでは、予算関連法案以外は審議に入らない慣行があるため、予算審議の遅れは、残りの会期内での重要法案の可決、成立を阻害する可能性があり、これも政権の責任問題となる。

 また、予算審議では、テレビ中継が入ったり、首相の出席回数が他の委員会審議よりも多かったりするので、これが長引くと野党による政権攻撃に注目が集まり、政権の支持率低下につながるのが普通だ。

 こうした理由から、予算案をとにかく早く成立させることが重要だ。さらに、予算については、憲法が衆議院の優越を認めていて、参議院が衆議院で可決した予算を受け取った後30日以内に議決しないと、そのまま国会の議決となる。つまり、3月初めまでに衆議院を通過すれば事実上年度内成立が保証される。

 だからこそ、衆議院の予算の採決の日程をいつにするかが、与野党攻防のポイントになるのだ。

 さらに細かく見ていくと、最も重要な日程は、衆議院での中央公聴会をいつにするかである。

 公聴会を開催しないで予算案の採決をすることはできない。逆に、公聴会を終わらせてしまえば、仮に野党が採決に反対しても、強行採決ができる。したがって、公聴会の日程を2月末までに設定すれば、事実上衆議院での3月初めの採決が保証され、予算の年度内成立が保証される。

 実は、立憲の国対は、公聴会を2月29日に開催することに全く抵抗しなかった。つまり、予算の年度内成立のために立憲の安住淳国対委員長(元財務相)が自民党側に協力したことがわかる。

 もちろん、そんなことが広く知れ渡れば、安住氏の地位が危うくなる。そこで、公聴会の日程を決めておきながら、予算案の採決はまだ決まっていないかのような芝居、「国対歌舞伎」を演じるわけだ。非常に厳しい言葉で政権批判を展開し、戦う姿勢を見せるのだが、それは自民党の国対も了承済みで阿吽の呼吸で見せ場を作る。それによって政権支持率の低下があっても、予算が年度内に成立することのメリットの方が大きいということなのである。かくして、予算案は3月2日に衆議院で可決され、年度内成立が決まってしまった。

自民のシナリオ通り

 政治資金規正法の改正案の審議でも、これと全く同じことが起きた。

 岸田文雄首相から見ると、とにかく早く規正法審議を終わらせたい。特に、4月の衆議院3補選全敗や主要な地方選でも負けが続き、政権は死に体という声も聞かれる中で、なんとか、その雰囲気を変える必要に迫られた。その最大のチャンスが、東京都知事選で小池百合子知事を支援して勝利し、連敗からの脱出劇を演出することだ。

 そのためには、6月20日の都知事選告示までに規正法改正案の審議を終えることが極めて重要だった。万一審議が遅れて、会期(6月23日会期末)延長に追い込まれれば、都知事選期間中に国会での裏金問題批判が続き、自民党支援を受けた小池知事が敗れたり、あるいは、それを恐れる小池知事側が、自民の支持をあからさまに拒否したりするという事態になりかねない。「連敗脱出」というシナリオが根底から崩れ去るわけだ。

 したがって、6月19日までの規正法改正法の成立が至上命令となった。そこから逆算し、衆議院では、参考人質疑が5月27日に設定された。参考人質疑を終え、首相出席の委員会審議を行えば、強行採決への道が開ける。それにより、参議院での必要な審議日数を確保できるという計算だ。立憲の安住国対委員長は強く反対せずに参考人質疑の日程設定に応じている。

 もちろん、その後も、厳しく自民案を批判する「国対歌舞伎」を演じながら。

 この時、立憲内部からは、どうして世論の支持があるのに、簡単に採決を許すような国会運営をするのかという疑問の声が上がった。特に、完璧な改正案と言われる立憲案をまとめる上で大きな役割を果たした若手議員たちから見れば、ほぼ「完敗」と言って良い屈辱的内容のまま採決を許したことへの失望、いや、絶望と言って良い声が上がっていた。あと数日から1週間でも採決を遅らせるのは簡単だったはずだが、立憲国対は、声高に法案への反対は叫びながら、採決を簡単に許した。完全な八百長である。

抜け穴だらけの規正法「改悪」法

 そして、参議院も全く同じだった。

 6月10日の委員会での実質的な審議開始の前日、9日には、

 「古賀さん。何だか来週の19日にも参議院で採決して成立しそうだという話がもう出てるんですよ。総理出席の委員会審議と党首討論をやることで、採決を認めるらしいんです。まだ審議は始まってないのに酷いと思いません?」という声が立憲議員から寄せられた。

 果たして12日になると、19日に3年ぶりの党首討論を開催するというニュースが流れた。合意したのは自民と立憲の国対委員長同士だ。またもや国対談合。

 首相出席の法案審議と党首討論で立憲に政権批判の見せ場を作る。自民にとっては、政権批判のチャンスを与える嫌な話だが、都知事選への影響を最小限に食い止められるし、何よりも、この内容なら、今まで通りの金権政治を続けられるというのが自民側の考えだった。

 結局、立憲は最後まで規正法改正案に反対したという形を残しただけで、抜け穴だらけの規正法「改悪」法が成立してしまった。しかも、都知事選前に。

 この結果、自民は小池氏の要請がないまま、裏で小池氏を支持する体制を作り、小池勝利の暁には、「自民勝利! 連敗脱出!」とはしゃぎ、小池知事も終わってしまえば怖いものなしで、「応援してくれた全ての方々に感謝」の意を表明して万事めでたしとなる可能性が出てきた。

 それにしても、立憲国対委員長がここまで自民に擦り寄るのはなぜか? 

通商産業相が選挙資金を手渡し

 普通に考えれば、何か見返りがあるはずだ。

 私が官僚の時、時の通商産業相が国会運営に協力してもらうために、選挙期間中に、選挙応援の資金を数十万円単位で候補者に代理人を通じて手渡すのを目撃したことがある。当時の野党議員に渡したのだが、断るどころか「大臣にくれぐれもよろしくお伝えください」と頭を下げたので驚いた記憶がある。

 そんな慣習が今も続いているのかは不明だが、巨額の裏金や政策活動費、さらには、官房機密費などは“領収書なし”で使える。過去の政府要人からも官房機密費の国会対策としての支出の証言なども出ている。

 今回の規正法改正は、こうした国対政治の闇を継続させるためのものではないかとさえ思えてくる。

 今回の「改正」は改正ではない。次の臨時国会では、ゼロから議論をし直して、立憲が提出した理想的な改正案を自民が丸呑みにする「真の改正」を成し遂げてほしい。そうすれば、国対歌舞伎政治も「金の切れ目が縁の切れ目」ということで浄化されるのではないか?

 そのために一番の近道は、政権交代であることは論を俟たない。

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など


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