上積み3年連続増 この流れさらに
「しんぶん赤旗」2024年8月30日
今年の地域別最低賃金改定は、人口を加味した全国加重平均で51円増の1055円となる地方最賃審議会(地賃)の答申となりました。目安に上積みをはかる地域が3年連続で増加し、全国過半数の27県で1~34円を上積みしました。(田代正則)
中央最賃審議会(中賃審)の目安は全地域50円増で、地域間格差は220円のまま据え置き。中賃審は岸田政権がすでに打ち出している中小企業施策を列挙するだけで、地賃や自治体からの要望には言及しませんでした。
地方の声を受け止めず格差を容認する目安に反撃が起こりました。全労連の地方組織は、街頭宣伝や地賃の意見陳述、署名提出などで大幅上積みを求めました。
徳島は、全国で最後に答申を出し、34円上積みの84円増という結論を出しました。背景には、ストライキの盛り上がりがありました。
「偽装請負」を告発し正社員化を先駆的に実現したJMITU(日本金属製造情報通信労働組合)ジェイテクトシーリングテクノ支部が春闘スト、首都圏青年ユニオンも回転ずし最大手スシローの県内店舗に組織を広げてスト、全徳島新聞労組は新入社員の賃金水準を現行の75%に引き下げる分社化に反対して全面ストを決行しました。
闘いに押され
労働者の闘いに押され、後藤田正純知事が地賃で「賃金が安いイメージが固定化すると、若者が県外に出てしまう」と異例の意見陳述を行いました。
愛媛は、厚労省が審議の参考に提出した資料で、4人世帯の「標準生計費」が月額13万8810円と全国最低額で“最賃以下の1人分の賃金でも家族4人で生活できる”とされました。
地賃の意見陳述でコープえひめ労組の今井清志委員長は、奨学金の返済で苦しむ若者、ダブルワークをしているパート職員などの実態を訴えました。連合出身の労働者委員も目安の3倍の153円の引き上げを主張。最終的に9円の上積みで全会一致となりました。
地賃の労働者委員が100円以上の引き上げを主張した地域は、愛媛以外にも、岐阜の177円をはじめ、青森、福島、熊本などに広がりました。
岩手では昨年、上積みゼロで単独最下位となった直後、国政野党が力を合わせた「オール岩手」で達増拓也知事が再選し、岩手労働局に最賃引き上げを申し入れました。
いわて労連など北海道・東北の地方労連は、最低生計費の再計算を実施。物価高騰のため、生活に必要な時給は1500円から1700円に増加していると明らかにして最賃キャラバンに取り組みました。岩手の地賃は9円上積みして、最下位を脱しました。
法改正が必要
一方で、秋田が4円上積みしたものの、951円で単独最下位になりました。地域間格差は212円へ8円縮小しますが、格差解消を地方の努力に丸投げする現在の地域別最賃制度は限界に達しています。全国一律制度への法改正が必要です。
地賃の答申には、中小企業支援策として社会保険料の事業主負担減免など経営への直接支援を求める要望が相次ぎました。山形では使用者委員が「賃金への直接支援が欠かせない」と発言。京都の答申は、消費税の減免措置も求めています。
岸田自公政権の姿勢は、こうした地方からの声に正面からこたえず、地域間格差を維持したまま平均1500円を2030年代半ばに先送りしています。
最賃を全国一律制にあらため、中小企業支援とセットで1500円以上を実現する政治転換が求められます。
闘う労働組合が最近目につきます。
闘ってこそです。
内部留保を吐き出させましょう。
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