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拝啓 野田佳彦様。消費税を「逆用」して日本経済を復活させる方法をご説明申し上げます(元国税調査官・大村大次郎)

2024年10月19日 | 生活

MAG2ニュース 2024.10.18

   by 大村大次郎『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

 

「食料品の消費税率をゼロにすると、富裕層が得をしてしまう」――立憲民主党・野田代表のそんなトンデモ理論が世間に波紋を広げている。元国税調査官で作家の大村大次郎氏も、「どなたか立憲民主党の野田氏に『エンゲル係数』や『世界の間接税の常識』を教えてあげてください」と呆れ顔だ。政権交代の期待をになう今こそ、野田代表は「消費税と財務省の大ウソ」から脱却すべきではないか。それができないようでは、しょせん自民と同じ穴の“ドジョウ”と言われてもしかたない。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:まず生活必需品の消費税率をゼロに!

 

野田代表はご存じない?「生活必需品の消費税率をゼロにする」ことのメリット

衆議院選挙が始まりましたね。裏金問題でボロボロの自民党にとって代わる最右翼は今のところ立憲民主党ということになっています。が、筆者は、立憲民主党の消費税に関する考え方には反対せざるを得ません。

立憲民主党の野田党首は消費税について次のようなことを述べています。

「食料品の税率をゼロにしても富裕層の方が恩恵が大きい」

「だから食料品の税率を下げるよりも、低所得者層に給付金を出すべき」

これを聞いて、筆者は非常に落胆しました。「野田さん、あんたはやっぱり経済オンチ、政治オンチなんだなあ」と。

そもそも野田氏は民主党政権時代は首相をつとめ、消費税率を10%に引き上げた張本人なのです。民主党は、政権を取る前まではどちらかというと消費税に反対する立場だったのですが、政権と取った途端に財務省に篭絡され、消費税の増税に舵を切ってしまったのです。

その結果、日本の景気はさらに悪くなり、坂を転がり落ちるように衰退してしまったのです。以前、旧社会党も同様のことを行い、国民の信頼を失って、現在は党がほぼ消滅してしまいました。

野田党首としては、今さら消費税の税率を下げれば、首相だった時に消費税を増税したことを否定する形になります。だから、自分のメンツのためにも消費税を減税するわけにはいかないのでしょう。

筆者としては「あんたのメンツと日本の将来とどっちが大事なんだ?」と言いたいところです。

野田代表はご存じない?日本の消費税は「バカな官僚の勘違い」から始まった

なぜ立憲民主党の消費税政策が、政治オンチなのか、ご説明しますね。もともと日本の消費税というのは、重大な欠陥を抱えているのです。

というのも、日本の消費税は、旧大蔵省(現財務省)の内海孚というキャリア官僚の思いつきでつくられたものなのです。

内海氏はフランスの留学中に買い物をしたときに、フランスではVATという税が課せられていることに気づいたそうです。買い物をするたびに一定の税金が引かれており、レシートにも税金の金額は記されていないので、一般のフランス人は、税の負担をほとんど感じていないようでした。

これを見て「こんないい税金はない!日本にも導入しよう」と思いついたそうです。

フランスのVATは当時、最先端の税制だとも言われており、ヨーロッパ中の国々がこの税金を導入しようとしていました。このVATにも、非常に配慮の行き届いた仕組みがありました。

VATは、あらゆる商品、サービスに包括的に課せられる税金でありながら、生活必需品などの税率は非常に低く、贅沢品には非常に高く設定されていたのです。そういうきめ細かい設定が、VATの新しい部分であり、もっとも重要な部分だったのです。

が、大蔵キャリア官僚の内海氏は、VATの重要な部分は見ずに「あらゆる品目に包括的に課税している」という点だけを抜き取って日本に持ってきたのです。

そのため、日本の消費税は、ダイヤモンドにもトイレットペーパーにも同じ税率という、世界に例を見ない雑な税金になってしまったのです。

世界の多くの国で、消費税のような間接税が導入されており、日本よりも税率が高い国はたくさんあります。が、日本の消費税のように、低所得者や零細事業者にまったく配慮のない間接税というのは、世界的に稀なのです。

消費税には、「貧富の差を拡大する」という性質があります。最大の欠陥はこれです。消費税は、そのシステム上、低所得者ほど「税負担率」が高くなる「逆進税」となっています。

たとえば、年収1億円の人は、1億円を全部消費に回すわけではないので、年収に対する消費税負担割合は低くなります。年収1億円の人が3千万円程度を消費に回した場合、年収に対する消費税の負担割合は3%程度で済むことになります。

が、年収200万円の人は、必然的に年収のほとんどが消費に回ってしまいます。ということは、年収200万円の人は、年収に対する消費税の負担割合は、10%に近くなってしまうのです。

「年収1億円の人の税負担は3%で済むけれど、年収200万円の人には10%に近くなる」それが消費税の実態なのです。

なぜ日本だけこうなのか?消費税が「世界最悪の税金」である理由

大型間接税を導入している世界中の国々は、この逆進性について、ごく当たり前のように適切に対応しています。間接税を導入しているほとんどの国は、低所得者や零細事業者に様々な配慮をしているのです。

イギリスでは間接税の標準税率は20%ですが、燃料や電気などは5%、食料品、飲料水などは0%となっています。

日本の消費税のお手本となったフランスでは標準税率は20%ですが、食料品などは5.5%、医療品などは0%となっています。ドイツでは標準税率は17%ですが、食料品などは7%になっています。

食料品、生活必需品の税率を下げることは、低所得者の負担を減らすだけではなく、「格差の是正」にもなるのです。というのも、収入が低い人ほど、収入に対する生活必需品の割合は大きくなるからです。

収入が低い人は、必然的に収入の多くを食料や生活必需品に回さざるを得ません。一方、収入が高くなればなるほど、収入に対する生活必需品の割合は減っていきます。そして生活必需品以外の消費が増えていきます。

だから、生活必需品の税率を下げれば、低所得者の税負担割合を減らし、高所得者の税負担割合を増やす効果があるのです。

このように、間接税が高い国は、低所得者に手厚い配慮をしているのです。しかも、こういう配慮をしているのは、先進国だけではありません。間接税を導入している国のほとんどで、同様の配慮がされているのです。

財政事情が非常に悪い国々でも、ある程度の配慮はされています。たとえば、世界でもっとも財政状況の悪いとされるアルゼンチンの消費税(付加価値税)でもそうです。アルゼンチンは、慢性的に財政が悪化しており、2020年にも政府が債務不履行に陥っています。アルゼンチン政府が政務不履行に陥ったのは、実に9度目であり、現在IMFの支援を受けて財政再建を行っています。財政は世界で最悪レベルと言っていいでしょう。

このアルゼンチンの付加価値税の基本税率は21%です。が、生鮮食料品はその半分の10.5%です。そして飲料水、書籍などは0%なのです。日本の消費税のように、どんな商品にもほぼ一律の税率をかけ、どんな零細事業者にも納税義務を負わせるという乱暴で雑な税金は、世界のどこにもないのです。

そして現在の「日本の衰退」「格差の拡大」は、消費税の導入とその増税に完全にリンクしています。日本が格差社会と言われるようになり、国民生活の貧困化が問題とされるようになったのは、消費税導入以降のことなのです。

つまり消費税は理論的にも世界最悪であり、その理論通りの現実をもたらしているのです。

消費税を「格差拡大税」から「格差縮小税」にリニューアルする方法

立憲民主党の話に戻りましょう。

立憲民主党は、衆議院選挙に先立ち消費税に対して「食料品の税率をゼロにしても富裕層の方が恩恵が大きい」「だから食料品の税率を下げるよりも、低所得者層に給付金を出すべき」という姿勢を打ち出しました。

この考え方のどこがダメなのか、順に説明しましょう。

まず「食料品の税率をゼロにしても富裕層の方が恩恵が大きい」ということについて。この考え方は、自民党の河野太郎氏も同じようなことを言っておりましたが、野田氏も河野氏も「エンゲル係数」という言葉を知らないようなのです。

「エンゲル係数」という言葉は、だいたい中学生くらいで習うと思うのですが、収入に対する食糧費の割合を示すものです。そして、収入が低い人ほどエンゲル係数高くなることが、知られています。

つまり、低所得者は、収入の多くを食べ物に充てることになるので、必然的にエンゲル係数が高くなるということです。だから、食料品の税率を安くし、ほかの品目の税率を高くすれば、低所得者の負担は減り、高額所得者の負担が増える、というのが正しいのです。

そして、それは日本の消費税の根本の欠陥である「逆進性」を解消することにも繋がり、世界最悪の欠陥税金を、世界標準レベルの間接税にすることができるのです。まずは「消費税の欠陥を直せや」という話なのです。

野田氏や河野太郎氏は「富裕層の方が食べ物に高いお金を使うので、食べ物の税率を下げれば富裕層の方が恩恵がある。それよりも低所得者層に給付金を出した方がいい」と言っています。

が、これは非常に政治オンチな考え方です。確かに低所得者に、食料品の税負担分以上の給付金を支給すれば、算数的には低所得者にとってはプラスになります。しかし、低所得者に給付金を支給するというのは大変な事業となります。

新型コロナ禍での事業者に対する給付金では、委託業者が莫大なお金を中抜きしたり、不正受給が横行するなどのトラブルが多数発生しました。その割には、困っている事業者に必要な金額が行きわたらずに倒産、廃業する事業者が激増しました。

低所得者への給付を行うとなると、新型コロナ禍の事業者給付金の何倍、何十倍の規模になります。当然のことながら、委託業者に莫大な税金が垂れ流しされ、不正受給が横行し、本当に困窮している人たちにはあまり届かない、というような事態になることは目に見えています。

しかも、給付金は税と違って簡単に改廃できるので、政府の都合でいつでも廃止されてしまいます。だから低所得者のガス抜きで最初だけ給付金をつくっておいて、数年たてば廃止となる可能性が高いのです。

新型コロナ禍以降、低所得者向けの給付金は何度かつくられましたが、ほぼ全部が短期間で終了しています。

そして何よりも、消費税の食料品税率をそのままにするならば、消費税の欠陥が是正されずにそのまま残ることになるのです。世界で最悪の税金、日本に格差と衰退をもたらした税金の欠陥が、直されないままになってしまうのです。

消費税の食料品をゼロにすれば、低所得者への恩恵はずっと残ることになるのです。そして、軽減税率の範囲を食料品から生活必需品に拡大し、贅沢品などの税率をアップすれば、消費税は「格差拡大税」から「格差縮小税」に変身できるのです。

「財源はどうするんだ!」に対するシンプルな答え

生鮮食料品の税率をゼロにすると、消費税の税収は5兆円ほど減ります。しかし、その分、贅沢品の消費税率を上げればいいのです。

たとえば、ブランド品や貴金属、大型自動車、高級料亭やクラブなど高額の飲食費など消費税の税率を高くするなどすればいいのです。これらの贅沢品に対する課税は、消費税導入前には、日本で普通に行われていたのです。

当時は物品税、特別地方消費税と言われていました。そして、こういう「格差縮小税制」は、世界中で普通に取り入れられているのです。

しかし、消費税の導入時になぜか物品税や特別地方消費税などの贅沢税が廃止されたのです。その結果、日本の消費税だけが、世界の常識に反した「格差拡大税」になっているのです。

低所得者の給付金を出したいなら出してもいいと思いますが、それはまず消費税の欠陥を是正してからの話なのです。

日本の格差を拡大し、衰退させてきた病理を一刻も早く治療するべきですし、それは給付金を支給するよりも何十倍も簡単に迅速にできることなのです。

ということで、どなたか立憲民主党の野田氏に「エンゲル係数」や「世界の間接税の常識」について、教えてあげてください。


また長い記事になってしまいましたが面白い記事でした。
これから札幌へ行ってきますので、いつもより早い投稿です。