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「厳罰より治療を」

2019年03月16日 | 事件

ピエール瀧逮捕報道で炎上した深澤真紀は間違ってない! 違法薬物問題に「厳罰より治療を」は世界の潮流だ

   リテラ 2019.03.15

 ピエール瀧の逮捕報道が過熱の一途をたどっている。

 ワイドショーはいまだにピエール瀧のニュース一色となっているが、そんななか、なんとも「ヘル日本」「中世ジャップランド」を象徴するような出来事が起きた。番組のなかで、「厳罰よりも治療を」といった趣旨の発言をしたコラムニスト・編集者の深澤真紀氏が炎上しているのだ。

 3月13日放送の『とくダネ!』(フジテレビ)にコメンテーターとして出演した深澤氏は、まず、とかくスキャンダラスに扱われがちで、なおかつ「厳罰主義」な過剰バッシングに傾く傾向のある、芸能人の薬物報道のあり方に対して疑問を投げかけた。

「今回の逮捕も本人の治療につながると思うので、ただただ『仕事全部NG』とか、そういうのは変えていってもいいのかなと思うんですね。特にこういう報道があると、いままで止めていた人も絶望してまた再開してしまったり、あるいは、『どうしよう……』と思っている人がこんなに厳罰になってしまうのなら隠そうと思ってますます隠してしまったり(する)。むしろ明らかにしたほうが治療につながるんだよってことを、今日の報道では是非その流れで話せればいいなと思うんですけどね」

 その後、深澤氏は、清原和博がそうであるように、ピエール瀧にも復帰のロールモデルとなってほしいと期待を寄せるコメントをしつつ、もうひとつ大事な点を指摘した。

 世界的には薬物問題は厳罰を脱する方向を向いており、加罰よりもむしろ「治療」の問題を論じられるようになっているのにも関わらず、日本の法整備は明らかに遅れているのではないかと語ったのだ。

「本人が売っていたら問題ですけれども、薬物の場合難しいのは、本人が患者でもあるということなので。日本はどうしても薬物依存の方が少ないので、法律が変わっていないんですけれども、法律も50年以上変わっていないので、治療の現場がまったく変わっているなかで、この法律でいいのかというのは、世界的には論議されているところなんですね」

 現在、電気グルーヴの作品の出荷停止と回収が決まったり、ピエール瀧が出演した映画・ドラマの出演部分差し替えなどが頻発する事態にもなっている。

 これも厳罰主義ゆえに起きていることだが、そういった状況に対しても深澤氏は「ここで彼の仕事をすべて私たちが奪っていくと、ますます病気から立ち直ることはできませんから。他の国で、ここまで薬物をやった人の仕事をすべて消すという流れは減っていますからね」としつつ、このように語った。

「薬物はバレたら人生は終わりだというイメージをつけてしまうことが本当に良くないと思うんですね」

 深澤氏がここで語っていることは非常に真っ当なことだと思うが、しかし、そういった深澤氏の提言に対し、ツイッターでは炎上が起こったのだ。

〈薬物使用者がむしろ被害者。ってどういうこと? この深澤真紀って人は頭おかしいのか?〉

〈深澤真紀っていうの? この人。薬物使用した人は被害者、被害者連呼でめちゃくちゃ違和感〉

〈フジの「とくダネ!」コメンテーター、深澤真紀さんは違法薬物犯罪を病気みたいに言ってた。びっくりだよ。被害者? へぇー。それなら、私も一回くらいやってみてもいいかな、なんて思ったわ。ああいう博愛主義みたいなのが国を、人を滅ぼすんだと思う〉

〈#深澤真紀 さんが「薬物バレたら人生終わりというイメージつけるの良くない」と発言してたが其れは違う! 人生終わりなのだ! 賭博行為や若気の至りの種類とは訳が違う〉

〈何言ってんだ? 違法薬物使用者は終身刑、売人は死刑、製造や密輸関係した者は殺処分ぐらい言えよ、何が被害者だ〉

 こういった「違法薬物をやったらその時点で人生は終わり」という偏見を補強するような眼差しは『とくダネ!』のスタジオ内にもあった。

 

荻上チキらが提起した「薬物報道ガイドライン」

 先に引いた、「日本の法整備は遅れている」との深澤氏の言葉を受けたコーナー進行担当の伊藤利尋アナウンサーは凍り付いた表情で、このように切り捨てたのだ。

「とても大切な視点だとは思いますが、しかしまあ、現状法律で定められた社会のルールを犯してしまった、本人はその容疑を認めている」

伊藤アナにせよ、深澤氏に噛み付いたネットユーザーにせよ、彼らの主張は「我が村のルールを破った者は厳罰に処されなくてはならない。海外でどんな法律の運用がなされているかなど知ったことではないし、治療の現場にも興味はない。とにかく、ピエール瀧は恐ろしい犯罪者である。彼の行いの何が“罪”なのかはわからないし、考える気もない。とにかく、罰せられるべき犯罪者だ。理由はひとつ。“我が村のルールを破った”からだ!」ということに他ならない。

 一度、コミュニティの掟を破ったものは、彼らの言う道義的な「正義」の名のもとにどこまでも断罪され、その後、再び仲間に引き入れられることはない。

 彼らの言葉からは、現在日本にまん延する潔癖で閉塞した空気感が集約されている。

 おかしいのは、深澤氏ではなく、彼らのほうだ。

 2017年に、荻上チキ氏(評論家)、松本俊彦氏(国立精神・神経医療研究センター)、上岡陽江氏(ダルク女性ハウス代表)、田中紀子氏(ギャンブル依存症問題を考える会代表)といった専門家によって、「薬物報道ガイドライン」というものが発表されている。

 このガイドラインでは、薬物に関する報道を行ううえでメディアが「避けるべきこと」と「望ましいこと」が具体的に言及されている。

そこでは、「避けるべきこと」のなかに〈「人間やめますか」のように、依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと〉〈薬物依存症であることが発覚したからと言って、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと〉〈「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと〉といったものがあり、逆に、「望ましいこと」のなかに〈依存症については、逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること〉〈「犯罪からの更生」という文脈だけでなく、「病気からの回復」という文脈で取り扱うこと〉〈依存症の背景には、貧困や虐待など、社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること〉といった指摘がある。

 伊藤アナやネットユーザーが強化した「ルールを破った者は永遠に村八分」は「避けるべきこと」であり、深澤氏の意見の切り口は「望ましいこと」であった。

 欧米諸国において違法薬物の問題が「厳罰主義から治療へ」といった方向に変わっているのは、医療の進歩や様々なデータの研究の結果、厳罰主義が薬物事犯の抑制に効果がないということが明らかになったからだ。

違法薬物問題に「厳罰主義から治療へ」は世界の潮流

 そういった知見を受けて、単なる所持や使用の場合はむしろ、「治療」に舵を切るようになった。薬物を使用した者を過度に断罪することを避けるようにしているのも、依存からの回復と速やかな社会復帰を促すためである。

 薬物を使用したことで社会から追放されれば、精神的にも経済的にも以前の生活を取り戻すことは難しくなるし、今回ピエール瀧が見せしめとされているように、薬物使用ですべての仕事を奪われ人生が崩壊するさまを見れば、依存を脱するために医療機関のサポートを求めたいと思っている人も二の足を踏んで、さらに状況を悪化させてしまうだろう。

 深澤氏の指摘はそういった状況を説明するコメントであったわけだが、今回のピエール瀧の報道において、大半のワイドショーでこんな真っ当な意見は聞かれなかった。

 むしろ、「違法薬物をやったらその時点で人生は終わり」といったイメージを補強する役割を進んで受け入れたといえる。

「そんな人だとは思わなかった」という街の人の声をVTRで届け、スタジオではコカインに手を出せばどんな人生の末路が待っているかをおどろおどろしく解説し、注射器や白い粉が入った小分けのパケの画像を映し出すのはもちろんインターネットでの購入方法を説明する番組まであり、さらには今回の逮捕で飛んだ仕事の違約金がどれほどの高額に及ぶのかを面白おかしく煽り立てた。

 その一方で、薬物を使用した人の回復に関する取り組みや、違法薬物がまん延する社会状況そのものに対する批判的な眼差しはほとんど見られることはなかった。そんななか、深澤氏のコメントは貴重なものであったといえるのだが、それが逆に非難を浴びるという暗澹たる事態となってしまったわけだ。

 先に引いた通り、ネットユーザーのなかには〈違法薬物使用者は終身刑〉とまで強く怒りを表明する人がいた。

 しかし、もしもそこまで強く違法薬物の問題に怒りを示すのだとしたら、その憤りの矛先は違法薬物を使用した者に対してではなく、違法な薬物に逃げなくてはならないほど過酷な貧困や虐待などの社会状況がまん延していることに対してであり、そういった状況をつくりだしている政府のほうであるはずだ。

 ただ、伊藤アナや深澤氏を攻撃したようなネットユーザーがそういった方向に怒りを向けることはないだろう。

 彼らは「一度お上が決めたことは絶対に守らなければならない」「“なぜ守らなければならないのか”なんて考える必要はない。ただ命令されたから守らねばならないのだ」という考えが固着した奴隷だからだ。

 今回のピエール瀧報道は、メディアに違法薬物に関する建設的な議論が進むための基本的な知識すらないということを改めて示したと同時に、閉塞した現在の社会状況ではそもそも他国のケースと引き比べて現行の法整備に疑問をもつということすらないという絶望的な結果を浮き彫りにした。

 言うまでもなく、こういった状況は違法薬物に関する議論だけではなく、他の社会事象を議論する際にも共通する由々しき問題である。

(編集部)

 


 

 

「 厳罰主義」の一方で甘い「性犯罪」

今月12日、絶句するしかない判決が言い渡された。酒に酔って抵抗できない状態にあった女性を性的暴行した会社役員の男性に、福岡地裁久留米支部はなんと無罪判決を出したのだ。

 事件が起こったのは2017年2月。判決で西崎健児裁判長は「女性はテキーラなどを数回一気飲みさせられ、嘔吐して眠り込んでおり、抵抗できない状態だった」と認定しながらも、〈女性が目を開けたり、何度か声を出したりしたことなどから、「女性が許容していると被告が誤信してしまうような状況にあった」と判断〉(毎日新聞3月12日付)。西崎裁判長はこう述べたというのだ。

「女性が拒否できない状態にあったことは認められるが、被告がそのことを認識していたと認められない」

 え、どういうこと?と突っ込むしかない。テキーラを一気飲みさせられて嘔吐し眠り込んでいるというのは完全に抗拒不能状態で、それで性行為をおこなえば準強制性交等罪が成立する。そして、裁判長も「抵抗できない状態」だったことは認めている。にもかかわらず、目を開けたり声を出したことを理由に「女性が許容していると被告が誤信してしまうような状況」と認定するとは……。

リテラ

酩酊状態にさせ暴行して無罪! 甘い性犯罪判決の背景に司法界の男目線、刑法注釈書に「たやすく屈する貞操は保護に値しない」

2019.03.15冒頭部分より

 ****

 退職の意向が明らかになったNHKの青山祐子アナウンサー(46)がネット上で猛批判にさらされているのだ。彼女は12年3月の第1子を皮切りに、17年2月までに4人の子(2男2女)を出産。およそ6年間にわたり産前産後休暇と育児休業を取得し、現在も育休中。批判の多くは「育休中にもらった給与を返還しろ」「公務員ならまだしも民間ではありえない」といった内容。出産自体には賛同を示しつつ、育休制度を悪用しているという見方だ。

ここで多くの人が誤解しているが、NHKはもちろん、国家公務員や学校の先生に至るまで「育休中に給与は支給されていない」。

〈略)

 「育児休業は子が3歳に達するまで取得可能ですが、その間の俸給は支給されません。退職手当(退職金)も休業期間に応じて減算されます。ちなみに、介護休暇期間中も減額されます」(内閣府官房)

〈略〉
  日刊ゲンダイ



 おかしな国「ニッポン」
NHKは「公共放送」ではありません。
裁判官の「憲法」と「良心
はどこへ投げ捨てたのでしょう!
これでは到底「死刑制度」なんて恐ろしい「殺人機構」に過ぎない。

優しい「寛容」な国民は

「厳罰主義から治療へ」
親による子供への「虐待」についても、「DV・「いじめ」・「暴力」「ヘイト」加害者への更生教育プログラムが注目され始めれいる。彼らにはには「治療」が必要なのだ。心を病んでしまった病人だ。現代の「社会構造」の犠牲者たち。


定時制高校

2019年03月15日 | 教育・学校

定時制のリアル(1)

困難を抱える子どもたちの学び直しの場として

埼玉県立川越工業高校定時制(前編)

imidas時事オピニオン 2019/03/15

https://imidas.jp/jijikaitai/f-40-176-19-03-g533

 

      黒川祥子 (ノンフィクションライター)

   「定時制高校」と聞いて、何を連想するでしょう。もともと1948年、勤労青少年のために発足した定時制、職業と学業を両立させるために、夜間やその他の特別な時間に授業を行う高校でした。しかし発足から70年以上が経ち、勤労青少年どころか子どもの数が激減し、高校も減少する中、皆さんは定時制についてどんなことを知り、どんなイメージを抱いているでしょうか。
 いま、定時制高校に通っているのはどんな生徒たちなのか。定時制の教室で、どんなことが起こっているのか。ノンフィクションライターの黒川祥子さんが取材しました。

「給食」から一日が始まる

 17時、生徒たちが三々五々、「食堂」に集まってくる。授業開始の17時40分までが、給食タイムだ。埼玉県立川越工業高校定時制では、給食から一日がスタートする。厨房の前に並び、トレーに主菜、副菜、デザートが盛られた皿とごはんと汁物を載せ、思い思いにテーブルに着く。生徒たちはラフな私服で、髪を染めている子も多い。
「夕食には少し早い時間なのですが、実習の集中を切らさないために、授業の前に給食を食べるようにしています」
 金子典之副校長が、こう説明する。川越工業定時制には「普通科」以外に、機械類型または電気類型を学ぶ「工業技術科」があり、実習は2~3時限通しで組まれている。その時間帯は、実習に集中させたいという思いが学校にはある。さらに給食にも格別の思いのあることが、金子副校長の話からうかがえる。
「わが校では、全日制の給食は業者に委託していますが、定時制の分は、学校の職員として雇用している栄養士や調理師によって調理されます。1食800キロカロリーを目安に、栄養満点の献立が組まれています。昼間、仕事やアルバイトをしてから来る生徒も多いので、少しでも栄養のある食事を提供したい」
 この日のメインは、「五目たまご焼き」。鶏肉、ひじき、人参、枝豆、しいたけ、玉ネギ入りの分厚い卵焼きは、生徒への愛がたっぷり詰まった一品だ。副菜は「春雨のそぼろ炒め」、汁は「サンラータン」、オレンジのデザートと牛乳が付く。

 

  この日の給食は784キロカロリー。1日分の野菜の約3分の1が摂れる。

 プロの目で吟味された献立は栄養のバランスを考え、埼玉県の食材を豊富に使い、細やかな工夫が凝らされたものばかり。「さわらの幽庵焼き」「タンドリーチキン」「さばのカレー揚げ」「回鍋肉」など、メインはどれもごちそう感満載だ。毎月19日は食育の日として、「世界の料理」が提供される。10月はブラジル、11月はスペインだった。このような給食を、生徒は月5000円(1食あたり250円)で食べられるのだ。

 普通科2年の担任、社会科の新井晋太郎教諭(37歳)はクラスの生徒を見つけ、その横に座る。こうして生徒や教員が一緒に給食を食べるのも、川越工業定時制の日常風景だ。教員が生徒と一緒に給食を食べながらコミュニケーションするのも、食育の一環となっている。
 汁物もおかずも作り立てで、ほっとできるやさしい味わい。おいしい給食だ。冷え切った仕出し弁当とは真逆の、手の込んだ温かな料理。新井教諭はこう語る。

「この一食が、生徒にはとても重要なんです。生徒によっては唯一の、食事らしい食事だったりします」
 給食が唯一の食事らしい食事? 食べられればまだいい……、どういうことなのだろう。生徒たちは黙々と食べる。がやがやとした喧騒よりむしろ、ひっそりとした雰囲気が漂う。初めて足を踏み入れた定時制高校だった。定時制には、もっと荒っぽい要素があると思っていたのに……。

定時制の「現在」は?

 私を含め、ある一定年代の人が描く、定時制のイメージがある。それが「ワルの巣窟」「ヤンキー・不良の集まり」といったステレオタイプのものだ。だが、実はそうした定時制高校の従来のイメージが今、一変している。
 1980年代に定時制高校から教員生活をスタートした、英語科の長澤和美教諭(60歳)は、教員生活の最後を定時制で締めくくろうと、4年前に川越工業に赴任した。30年ぶりに見た定時制は、驚くほど様変わりしていた。
「昔と同じで、荒っぽい生徒が多いだろうと来てみたら、暴力的な雰囲気は全然なかった。いや、むしろ、元気がない。昔はほぼ全員がパンチパーマにしていたくらいですから、あまりのギャップに衝撃を受けました」
 今、定時制の入学生の中で比較的多いのは、中学まで不登校だった生徒だ。なかには、小学校から学校に通えなかった生徒もいる。いじめや厳しい管理教育などに傷ついて家にひきこもっていた子どもたちにとって、社会や学校は恐怖に満ちている。それでも意を決して、学校に戻ることにしたのだ。そのような生徒たちが戻れる重要な学び直しの場のひとつとして、定時制が機能している。
 ほかにも、生活保護世帯やひとり親家庭など、経済的に苦しい家庭の生徒もいれば、外国籍や外国にルーツを持つ生徒も多い。給食が唯一の食事らしい食事だという生徒がいるのは、家庭の中にさまざまな困難を抱えている所以だろう。
 あるいは地域にある全日制に合格したものの、勉強に付いていけずに中退し、定時制に入り直す生徒も一定数いる。あるクラスには取材時、19人が在籍していたが、このうち、全日制を辞めて入ってきた生徒は7人いた。
 一昔前のように、中卒で働かざるを得なかった子どもたちが大人になって、高卒資格を取得するために入学するというのは今やレアケースだ。また、地域の中学を卒業した、いわゆる“不良”たちは、学力面で問題があったとしても、ほぼ、全日制の中でも偏差値の低い「課題集中校」に進学するという。不良も、おじさん・おばさんも消えた定時制で学んでいるのは、さまざまな事情によって全日制から弾かれてしまった生徒たちなのだ。

少人数で丁寧に、定時制のメリット

 そもそも定時制高校は1948年の学校教育法施行で全日制高校と同時に発足した、中卒で働く勤労青少年のための「学びの場」だった。生徒たちの労働時間や生活サイクルに合わせて夜間制、昼間制、昼夜間制があるが、夜間制が大多数を占める。修学年限は全日制より1年多い4年以上とされていた(1988年に単位制高校が制度化され、必要な単位を取得すれば3年でも卒業できることになった)。給食を実施している高校も多く、生徒会や部活動などの活動もある。

 学校基本調査(文部科学省)によれば、1950年代には50万人の生徒が在籍していたが、高校進学者の急増で60年代後半から生徒数は減り始め、96年には10万6000人、近年は10万人を切っている。生徒も勤労青少年から、不登校や中退経験者へとスライドしている。
 定時制高校の特徴は、1クラス20人前後という少人数のクラス編成にある。だから、教員が一人一人の生徒に丁寧に関わることができるというメリットがある。
 川越工業定時制では1学年に普通科1クラス、工業技術科2クラス(機械類型、電気類型各1クラス)があり、1年から4年まで合計で12クラス。全校生徒は約140名だ。
 授業は45分単位で、週に20時間。17時40分から20時55分まで4時限授業を行い、ホームルームの後、21時5分からは部活動の時間となる。部活が終わり、校門が閉じられるのは22時30分。こうして4年間で、74単位以上を取得すれば卒業できる。

困難を抱える生徒たち

 教諭たちの話をうかがったところ、生徒たちの多くは、いわゆる「普通」と括られる家庭で育っていないということが衝撃だった。
 ここで言う「普通」とは、世の多くが思い描く高校生像のことだ。

たとえば朝は親が学校に間に合うように起こし、朝食があり、弁当も用意され、洗濯されたシャツや靴下に身を通し、学校から帰ればお風呂が沸いていて、夕食があり、学習する机があるという生活だ。家庭の事情で生活実態は縷々、異なるにせよ、親に世話されながら高校に通うのが、「普通」の高校生であると多くの大人たちは思っている。私もそうあってほしいと思ってきた。
 では、定時制に通う生徒たちはどのような環境を生きているのだろう。教諭たちによれば、ほとんどの生徒が、さまざまな事情を抱えていた。
 例えば、何かしらの虐待を受けた経験があるのではないか、と思われる生徒がいる。
 家族で囲むような食卓が存在しない家庭もあるという。
 経済的に困窮する世帯では1日3食どころか、1食すらままならない場合もある。
 親の働く姿を見ずに育ってきた生活保護世帯の場合、働くと言うことの意味を子どもが理解できていないこともあるそうだ。
 もはや学力云々の問題ではない。それ以前だ。
 なぜ、このような生徒が定時制に集まってくるのだろうか。
 日本が「格差社会」と言われて久しい。親の経済力と子どもの学力、進学率が相関関係にあることも「教育格差」として指摘されている。高校とは「入試」という公平な選抜制度を通して、「格差」が最初に顕在化する場所だ。格差の上層=学力エリートが通う「進学校」と、その対極に位置する全日制「課題集中校」という学力ヒエラルキーが明確になる。このヒエラルキーからはずれた子どもたちの受け皿となりうる定時制には、この社会の困難の縮図がある。

定時制の授業を参観

 定時制の授業はどのように行われるのか、興味があった。全日制との違いはあるのだろうか。大きな違いは、生徒が少なく教室ががらんとしていることだ。この日、普通科1年「数学Ⅰ」の授業の出席者は女子4人、男子2人。6人がそれぞれ教室の前方に座って、不等式についての説明を聞く。非常にわかりやすい説明で、基礎から熱心に指導していく姿勢が伝わってくる。プリントの問題に取り組む生徒たちの間を回って教員が机を覗き、一人一人の習熟度を確認する。全日制より生徒数が少ない分、細やかな配慮と指導が行われているようだ。
 電気類型1年「現代社会」は、男子生徒のみ9名の出席。工業科は女子生徒の比率が低い。新井教諭の授業だった。テーマは日本国憲法。プロジェクターで黒板にパワーポイントの画像を映し出し、ひとつひとつ丁寧に説明する。教科書も使い、ワークシートの穴埋めを指示する。熱意を帯びた、わかりやすい授業だ。
「自分でも、それから、みんなでも考えて。誰かに教えてもらってもいいから」
 その呼びかけで、4~5人が何やら相談を始める。和気藹々とした穏やかな雰囲気だ。
 普通科1年「国語総合」は漢字検定に備え、11名全員が漢字の問題に熱心に取り組んでいた。美しい文字を書く子がいて、思わず見とれてしまう。
 電気類型2年「家庭基礎」では、男子生徒でも器用に運針しているさまが驚きだった。実技科目でも静寂が保たれ、生徒は集中している。
 現代文に英語、保健体育など、見せていただいたどの授業からも、教員の並々ならぬ熱意が伝わってきた。聞き取りやすい、あたたかみを帯びた声で、熱心に生徒に語りかける教員たち。生徒はだらっとしていたり、かったるそうだったり、逆に真剣だったりと姿勢はさまざまだが、授業に集中している。中学まで授業がわからなくて放っておかれた子どもたちが、学び直しの時を生きていた。
 ほとんどの授業においてプリントを使うのは、黒板の文字を時間内に写しきれない生徒がいることと、ノートを買えない家庭もあることに配慮してだという。

生き生きと体を動かす生徒たち

 工業技術科の実習も見せていただいた。機械類型1年の「製図」。ドラフターという製図台を使っての作業だが、1年生なのでまだ基礎中の基礎だという。平面で立体を表現するため、空間認識能力も必要だし、覚えなければならない決まりがたくさんある。
「手仕上げ」は、ヤスリで金属を削る作業だ。丸棒から文鎮を作るのだが、硬い金属を削るのでなかなかつらい作業だという。作業着を着た生徒が、教員のつきっきりの指導のもと真面目に取り組んでいる。

 

   黙々と金属にやすりをかける「手仕上げ」。

「旋盤」は危険な工作機械を扱うために、徹底した安全教育を行い、複数の教員がそばに付く。
 電気類型の1年生9名は、交流の電圧測定に取り組んでいた。理論は後からでいいので、まず動かしてみようという指導だ。座学の教室にいるより、生徒たちはずっと生き生きとしている。

 

   電圧の測定器を使った実習。

 校庭では、1~3年の男子合同の体育の授業が行われていた。1年生は基礎練習で、2年と3年は試合形式で野球をしている。教員が打ちやすいようにボールを投げ、それを打って走って守るのだが、動きがぎこちなく、野球やキャッチボールをしたことがないような生徒が目立つ。

 

   夜のグラウンドで、野球を楽しむ。

 女子は、やはり合同で、体育館でのバドミントン。こちらはラリーが続くなど、慣れている様子で笑い声も聞かれ、和やかな雰囲気だ。
 部活も見せていただいた。体育館では男子バスケ、バドミントンに卓球、校庭では陸上、サッカー、野球部が活動しており、それぞれが自分のペースで楽しんでいる。
 文芸創作部や写真部などの文化部は、翌週の文化祭を目前に控え、作品作りに余念がない。描いている漫画を見せてもらったら、「すごいね」と思わず声が出た。才能を感じずにいられない。描くのが好きでたまらないといった笑顔がまぶしかった。
 窓の外が暗闇でさえなければ、ここが全日制の高校だと言われてもうなずくだろう。目の前にいる生徒たちは、髪の毛を染めていたり、自由な服装ではあるけれど、街を歩いている高校生たちとなんら変わりはない。

文化祭に参加しよう!

 川越工業定時制を訪ねたのは、もうすぐ文化祭という時期だった。新井教諭がこう話す。
「これまで定時制は文化祭に参加してこなかったのですが、去年から自分たちで作った物を売ろうと模擬店を出すことにしました。教員は結構大変ですが、すべては生徒のためですから」
 これまで家庭でも学校でも疎外されてきた子どもたちだからこそ、晴れの舞台に立たせたい。達成感を知ってほしい。そんな 定時制教員たちの願いのもと、川越工業高校文化祭「工業祭」の幕は開いた。

(定時制のリアル2 生徒を社会に送り出すために~埼玉県立川越工業高校定時制〈後編〉へ続く。後編は3月18日公開予定です)

 

 

 


マガ9対談 雨宮処凛さん×岸本聡子さん(その2)

2019年03月14日 | 社会・経済

地方にこそ「私たちのための政治」をつくる希望がある

  By マガジン9編集部 2019313

        https://maga9.jp/190313-1/

 

 

 

   今年は日本もEUも選挙の年。ヨーロッパの政治状況や市民運動に詳しい岸本聡子さん、日本のさまざまな現場で活動している雨宮処凛さんと、ヨーロッパと日本の共通点や差異から見えてくるものについて考えていきたいと思います。(その1)では、水道民営化からグローバル企業にお金が流れていく仕組み、税金の再分配などが話題にあがりました。(その2)では、フランスのイエローベスト運動から、日本の「反緊縮」を掲げる薔薇マークキャンペーン、国を越えた自治体のネットワークについて話し合います。

なぜ「経営者マインド」で考えてしまうのか?

雨宮 日本の場合、最低賃金とか労働問題の話をすると、みんなが経営者マインドで語りだすんですよね。たとえば、時給を1500円にあげようと言ったら、そんなに時給を出したら企業がつぶれてしまうよとか、それだけの価値のある働き手がどれくらいいるのかとか、なぜか労働者側の立場にある人が言う。これが、すごく不思議なんです。

岸本 同じような話を私も聞いたことがあります。#MeToo運動が広がって、女性がやっと声をあげられるようになってきましたよね。でも、知り合いの日本人女性は「そうやって若い女性がセクハラやパワハラという言葉を乱用するせいでマネージメントの男性が何も言えなくなっている」と言うんです。

 #MeTooでやっとの思いで声を上げることができた女性たちへの想像力をもつことなく、男性とか経営者の立場で考えてしまうことがとっても不思議でした。

雨宮 日本で草の根運動が盛り上がらないのは、やっぱりそこじゃないんですかね。働き方改革関連法案のときに、小田嶋隆さんが「司令官たちの戦争、僕らの働き方改革」というコラムで、戦争の話をするときに、なぜかほとんどの人が司令官の目線で語ると書いていました。同じように国策や経済を語るときも、自分は労働者なのに、なぜか経営者目線になってしまう。その点、フランスの人は自分たちの階級制を理解したうえで立ち上がっている気がします。イエローベスト運動(※)などそうじゃないですか。

※イエローベスト運動:フランスのマクロン大統領による燃料税の値上げをきっかけに、2018年11月に始まった政府への抗議デモ。参加者は、自動車内に必ず置くことが義務づけられている黄色いベストを労働者のシンボルとして身に着けており「イエローベスト運動」と呼ばれる

岸本 そうですね。フランスでイエローベスト運動が始まったのは燃料税の値上げがきっかけでしたが、その前段としてマクロン大統領が富裕税をどんどん少なくしていったことがあるんです。そして地方に住む人や輸送に携わる人に負担がかかる燃料税を引き上げました。

 これは日本の消費税とまったく同じ構図。日本の場合は法人税を減らして、所得の低い人も全員が払わなくちゃいけない消費税を上げようとしている。そして、その増えた消費税は私たちに還元されるんじゃなくて、減らした法人税分を補填するのです。フランスでは、こうした富裕層優遇の動きに対しての怒りが地方から広がっていきました。

 ただ、このイエローベスト運動が複雑なのは、こういう状況を利用しようとする極右の人たちも運動に参加していったことなんです。それで一部が暴徒化もしました。新自由主義によって格差が広がると、その不満が女性、移民、難民、障がい者といった、社会のいちばん弱い存在に向きやすくなる。イエローベスト運動の中心にいる労働者のなかには極右の排外主義に取り込まれやすい人たちも一部いて、排外主義が支配層への反発とつながってしまっています。

雨宮 トランプ支持層を思い出す構図ですね。

岸本 だから、左派のなかにもイエローベスト運動に参加する労働者に共感をもっている人は多いのですが、なかなか動けずにいるんです。政治による社会の分断が生まれてしまっています。

改正入管法で「対立」を生まないために

雨宮 日本でも、4月以降に改正入管法が施行されると、どの方向にいくのか分からない。どうやって外国人の権利を守りながら、自分たちの権利も守るのか。いかに対立せずにやっていくのかは、すごく反貧困運動とか労働者側に問われてくると思っているんです。

編集部 そもそも改正入管法自体、人手不足の産業界の意向を組んで選挙までにあわてて成立させたという経緯ですから、そこに人権意識はありません。丁寧な議論を重ねることなく成立させてしまったことが、のちのち日本社会に大きな影響をもたらすのではと危惧します。

岸本 外国人を人とも思わないような、ただの安い労働力としてみる姿勢は、日本の労働者にも広まっていくかもしれないですよね。

雨宮 賃金にしても地盤沈下していくのは、容易に想像できることです。この20年間、非正規労働が増えたことで、正社員の労働環境も悪化した。同じようなことが起こると思います。でも、あまりこのことを言いすぎると、「最初から外国人を敵視するみたいでよくない」と言われることもあり、その懸念もわかります。

岸本 私は18年くらい海外に住んでいて、強制的な移民ではないですが、自分では「移民一世」だと認識しています。そういう意味では、多文化社会を作っていく難しさを実感じています。

たとえば私が以前住んでいたオランダでは、かつては多文化国家は豊かなものだと考える社会的コンセンサスがあったのですが、それはどんどん崩れてきています。いまは、むしろ「外国人は入れたくない」となって難民危機にまで発展している。この18年間での大きな変化に驚いています。

 私が最初オランダに来たときは、その国の言葉を学ぶのは私たち移民の権利だという考え方で、学校に通うときも教科書代以外は無償でした。それはオランダだけでなく、ヨーロッパのほとんどの国でそうです。

雨宮 韓国とかでもそうですよね。

岸本 国は外国人を迎えているわけなので、社会に適応・統合するために当然支援しないといけません。私が最初オランダに来たときには、1~2年のプログラムを経て最低限でも仕事ができるレベルの言語を習得することができましたが、それは権利として受けたい人が受けられるものでした。

 しかし、この10年で右派政党が「オランダはもういっぱいだ」というスローガンを定着させて、移民政策が大きく変わりました。移民のオランダ語習得は「権利」ではなく「義務」になりました。現在では、まず自国でオランダ語を学習して試験に合格しないと居住許可を申請する権利が与えられません。2007年までに入国した人も同じく、プログラムを受けて試験に合格することが義務づけられました。

 アムステルダムでは50%強の住民が外国籍です。外国人を社会に統合していくというのは、文化、言語、労働といろいろな側面から考えないといけない非常に難しいチャレンジ。だから、今回の日本みたいに地盤沈下を起こすやり方で下級労働者をつくるだけで、社会適合についての政策が不十分なのは本当におそろしいことです。

編集部 今のところ社会適合の部分は、地方自治体に丸投げですよね。外国人の方たちが地域社会に入ってきたときに、いかにうまく共生していくことができるのか。日々の生活に始まり、教育や医療など細やかな支援が必要です。住民の理解や協力も求められるわけですし、財源の問題もあります。

雨宮 人手不足っていうなら、まず賃金を上げればいい。介護職だってそう。マトモに生活できる賃金水準になれば、働きたい人はいると思います。そうすれば人手不足も解消して、消費も増えるし、少子化だって解決の方向にいく。それなのに賃金を上げないで外国人労働者を入れるというのは安易な解決策ですよね。長期的にみたときにどうなのかと思う。

岸本 介護やソーシャルワーカー、教師、看護師、保育士といった「ケアの仕事」は、コミュニティには欠かせない仕事。その賃金が上がって人が増えれば、社会に良い循環が生まれる。でも、そうした仕事は逆にどんどん縮小傾向にあります。

反緊縮の候補を応援する「薔薇マーク」

雨宮 日本では、今年の統一地方選と衆院選に向けて、経済学者の松尾匡さんらによる「薔薇マークキャンペーン」というのが始まっています。これは「反緊縮の経済政策」を掲げる候補者であれば、政党を問わずに薔薇マークを認定して応援しましょうという運動です。

「消費税の10%増税凍結」、「社会保障、医療、介護、保育、教育、防災への財政出動を行って、経済の底上げを行い、質の良い雇用を創出する」「最低賃金を引き上げ、労働基準を強化する」といった6項目に賛同する候補者を認定していく。薔薇マークは豊かな生活と尊厳を求める象徴で、お金を必要なところに「ばらまく」という意味もかかっているそうです。

岸本 面白い。働く人に訴えかけるような内容がいいですね。イエローベスト運動が求めている内容にも近いものがあります。

雨宮 これまで野党は増税を掲げて選挙に負ける、というのを繰り返してきた。でも、財源を立て直すために増税すべきだと言わないと「無責任なお花畑野郎」扱いされてしまうという現実もある。

岸本 そうなの? でも、公的債務で誰も困らないじゃないですか、EUの場合はそれぞれの国ではお金を刷れないから緊縮財政が厳しいけど、アメリカも日本も自国でお金を刷れますよね。すごくうらやましいと思っているんですよ。

 私たちの団体では「99%のための公的資金」というプロジェクトがあるのですが、特定の目的のために使う「人々のための量的金融緩和」を提案しています。たとえば、「エネルギー転換のための量的金融緩和」とか「大学無償化のための量的金融緩和」とか、目的を明確にしてお金を刷ることで社会の循環をつくる政策です。いまの量的金融緩和は単に日銀が刷ったお金を市場にただ流すだけなので、それだと効果がない。

雨宮 ただお金を刷るんじゃなくて、使い道を事前に決めておくんですか。

岸本 それから、ベーシックインカムの議論においては、富裕層も同じように受け取れることに対しての賛否がありますよね。その対抗策で「ユニバーサル・ベーシック・サービス」という考え方があるんですが、これは個人がお金を得てサービスを買うんじゃなくて、みんなに無償での公共サービスを保証するものです。教育、水、電気だけでなく、通信と交通の権利も保障するという考え方です。

 これらが保証されたら、低所得者の生活はかなり改善されます。あとは住宅の問題ですよね。私はベーシックインカムより、このユニバーサル・ベーシック・サービスのほうが経済的に弱い世帯を効果的に支援できるんじゃないかと思っています。

雨宮 こういう議論が日本でももっと盛り上がるといいですね。薔薇マークもそういうきっかけになればいい。ただ、「反緊縮」という言葉って、一般の人にはわかりにくいと思うんですよね。「ばらまく」というのも無責任みたいに思われて抵抗を持つ人がいる。もっとしっくりくる言葉があるような気がしています。

編集部 つまりは、普通の働いている人たちのための経済政策ですよね。岸本さんが紹介してくれた「ミュニシパリズム」(※)にも日本語がほしいなと思います。舌を噛んでしまってうまく言えない(笑)

※ミュニシパリズム:選挙による間接民主主義に限定せず、地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成による政治参加を重視する考え方。EU内で広がりつつある

岸本 私の感覚ではミュニシパリズムの日本語訳は「地域主権主義」や「地域自治主義」なのですが、学者の先生にきちんとした日本語訳をつけてほしいなと思っているんです。

自治体から「99%のための政治経済」をつくる

編集部 日本は地方自治を保障している憲法をもっているのに、どんどん中央集権型になっていますよね。それを取り戻すことは日本でもやるべき。いま種子法廃止(※)に抵抗する条例が全国の地方で制定されてきているのは、憲法の理念に則ったものだと思う。でも、地方交付金をはじめ補助金の執行権を国が握っているという問題もあります。

※種子法廃止:戦後に、稲や麦、大豆などの優良な種子の開発・安定供給を都道府県に義務付けるため1952年に制定された「主要農作物種子法」が、民間の種子開発意欲を妨げるとして2018年4月に廃止された

岸本 ヨーロッパで「ミュニシパリズム」が出てきたことにも、自治体への交付金が50%もカットされるというような背景があったんです。ヨーロッパの緊縮財政は本当に過酷。だからこそ、強権的な中央政権に対抗していく運動が起きた。

 自治体は「99%のための政治経済」をつくりやすい場所です。議会政治内だけではなく、地域のなかで話し合ったものがどんどん議会にあがっていくような、より直接民主的なシステムが求められています。バルセロナでは、市議会議員が毎週金曜日に担当地区に行って話し合って、地域それぞれの課題を議会にもっていくんですよ。

 政策の優先順位をどう決めるかというときに、人の命、水や環境の公共財、社会的な権利を真ん中において政策を決めれば、政策がぶれることはないし、無駄遣いもでてこない。グローバル資本にお金を出すような民営化とかをしている場合じゃないんです。だから、地方選挙は本当に重要です。

編集部 日本には町内会や自治会が古くからありますが、地域のお祭りや防犯をやるところといったイメージ。しかも、昔から住んでいる重鎮たちが中心メンバーで、若い人や外から引っ越してきた人が入りづらい印象があります。もっとオープンにしていろいろな人がかかわることができる形で、地域で公共財や福祉、再開発を含む街づくりのことも考えていく仕組みができたらいいと思います。

岸本 そうですよね。たとえばミュニシパリズムの緊急課題は住宅です。東京も同じような状況だと思いますが、非正規雇用で月収14万円くらいの人が月6、7万の家賃を払い、さらにインターネット代とか携帯代を払えば、それ以外のことは何もできない。

 EUでは経済危機の影響でローンが払えなくなった住民の強制退去が起こり、それで住宅が緊急課題になりました。それから民泊として貸したほうが儲かるからというので、家主が普通に住んでいる人を追い出すようなことも起きています。住宅をリノベーションして家賃をあげて、払えなくなった人を追い出して民泊用にしているんです。

 住宅はとくに若い人にとっては共通の課題。家賃のために働いて人間的な生活ができない人がいます。いまのスペイン・バルセロナ市長は反貧困の活動家なので、この強制退去を止めるような政策をしています。

雨宮 そういう活動をしてきた人が市長になると変わりますよね。

 日本でも地方自治の話でいうと、水道民営化とか種子法廃止についても、ちゃんと意見を言う自治体がある。こういう動きは頼もしいです。

 市場より市民を優先する政治って本当に当たり前で普通のことだけど、日本では出来ていない。それがいまヨーロッパで行われ始めているというのは、やっぱりすごい。

岸本 本当にそうですよね。いまの政治は優先順位がめちゃくちゃです。政治にビジョンがない一方で、グローバル資本や新自由主義には、税金を払わないで労働者の賃金を安くして、自分たちの資本にお金を集中させるという明確なビジョンがある。そして、それをきちんと実現してきています。私たちもビジョンを描いてそこに意識的に対抗していかないといけない。

雨宮 世界で連帯しようという動きもありますよね。たとえば、ファストフードの低賃金労働者が時給15ドルへの賃上げを求めた「Fight for $15(15ドルのために戦おう)」という市民運動は世界中に広がっています。これはグローバル企業に対する、トップと末端労働者の格差アピールでもあるし、アメリカでは州によっては時給15ドルを達成しているところも出ています。

岸本 ネットワークをつくっていくことは本当に重要です。2016年にスペイン・バルセロナ市が提起して国際的に発展している自治体ネットワークに「フィアレスシティ(恐れない自治体)」(※)がありますが、私はぜひ沖縄の人たちにも参加してほしい。国境を超えてつながることで、パワーをもらえることもあると思います。

 辺野古新基地の工事延期を求めて国内外から20万筆以上を集めたホワイトハウスへの嘆願署名もありましたが、そうやって世界に向けて声を届けていくのはありだと思う。貧困の問題もそうです。

※フィアレスシティ:抑圧的なEU、国家、多国籍企業などを恐れず、地域経済と地域の民主主義を積極的に発展させることで制裁を受けることを恐れないと謳う住民と自治体の国際的なネットワーク

雨宮 世界中で共通の問題を抱えている人たちと意見交換をしてみたいです。

岸本 国際的なネットワークをつくるのが強いNPONGOに比べて、これまで自治体はあまり横のつながりがありませんでした。でも、いま国が私たち市民の利益を代弁しなくなってきているので、自治体は「最後の砦」になっています。自治体が望むことと国益やEUの利益が対立するようなことも起きてきています。

 そんななかで、自治体同士がつながり始めたのが「ミュニシパリズム」の大きな特徴。ミュニシパリズムの集会には、自治体の代表だけでなく、NGOも市民も参加する。いまヨーロッパではこうしたつながりが増えていますが、日本の自治体も含めてもっと国際的に広げていきたいと思っています。

編集部 今日は長時間ありがとうございました。

(聞き手/塚田ひさこ、構成/中村 写真/マガジン9編集部)


風邪薬、胃腸薬、便秘薬・・・・・薬

2019年03月13日 | 健康・病気

注意すべき風邪薬、胃腸薬は? 医者がのまない市販薬リスト

 

 

© SHOGAKUKAN Inc. 提供 医師がのまない処方薬一覧

 病気やつらい症状を治してくれる「薬」でも、効き目が強いがゆえに、服用の量や仕方を間違えたり、個人の体質と合わなかったりすることで、逆に体調を悪化させる「毒」になることもある。そして、中には医師が「のまないほうがいい」と助言する薬もあるのだ。そこで、医師が「のまない」と言う市販薬を紹介しよう。

◆医者がのまない市販薬

※商品名は2018年度の市販薬売り上げランキング(True Dataが作成)より上位2つを抽出。

【風邪】

・製品名など(商品の一例)

→総合感冒薬(パブロンゴールドA、新小児ジキニンシロップ

・効能

→風邪の主な症状である熱や鼻水、咳などにまんべんなく作用する。

・のまない、使わない理由

→「複数の成分を配合しているため副作用が気になる」(新潟大学名誉教授の岡田正彦医師)

「いろいろな成分が入っているため他の薬との併用も難しい」(『KISHI CLINICA FEMINA』院長の岸郁子さん)

「特に『PL配合顆粒』はわずかだが視力低下などの重篤な副作用がある」(都内の内科医)

【胃痛】

・製品名など(商品の一例)

→H2ブロッカー胃腸薬(ガスター10、ガスター10〈散〉

・効能

→胃もたれや胃痛など不快感の緩和。

・のまない、使わない理由

→「含まれるH2ブロッカーによって消化力が落ちたり、胃の殺菌力が弱まったりするため」(『クリニック徳』院長の高橋徳さん)

【便秘】

・製品名など(商品の一例)

→刺激性便秘薬(コーラックII、ビューラックA

・効能

→大腸を刺激して腸のぜん動運動を活性化させ、排便を促す。

・のまない、使わない理由

→「即効性があるがゆえ、依存性も強い。使い続けると薬に頼らなければ排便できなくなる」(東邦大学病院婦人科の高橋怜奈医師)

【頭痛・生理痛】

・製品名など(商品の一例)

→ロキソプロフェンナトリウム錠(ロキソニンS、ロキソニンSプラス

・効能

→頭痛や生理痛、筋肉痛などあらゆる痛みを鎮静する。

・のまない、使わない理由

→「胃を荒らさない工夫がされているというが、心配は残る」(岡田さん)

「胃腸への負担が大きい」(健康増進クリニック院長の水上治さん)

【発熱】

・製品名など(商品の一例)

冷却ジェルシート

・効能

→ジェルに含まれた水分の蒸発により、体温を下げる。

・のまない、使わない理由

→「貼ると気持ちがいいが、解熱効果は氷と変わらない」(高橋怜奈さん)

【のどの炎症】

・製品名など(商品の一例)

ポビドンヨード配合のうがい薬

・効能

→口内の消毒・殺菌・抗菌効果。

・のまない、使わない理由

→「すでにのどの痛みがある時に使うと、炎症が悪化する可能性がある」(高橋怜奈さん)

※女性セブン2019年3月21日号


いじめと教職員

2019年03月12日 | 教育・学校

いじめ放置した教職員の懲戒案は「現場を混乱、萎縮させる」、本当に必要な対策は?

   弁護士ドットコム

     Yahoo!ニュース 3/2(土)

 

   大津市のいじめ自殺を受けて2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」の改正作業がすすんでいる。昨年12月に超党派がまとめた改正案の「たたき台」では、いじめを放置した教職員を「懲戒処分の対象とする」と明記する内容が盛り込まれた。ところが、読売新聞が1月下旬、この案を報じたところ、一部ネット上がざわついた。

    いじめ問題にくわしい鬼澤秀昌弁護士はツイッター上で、「現場の混乱を、さらに助長させかねない」「個人的にはとても残念な方向性だ」と批判的に投稿している。はたして、その真意はどこにあるのだろうか。改正案「たたき台」の問題点を鬼澤弁護士に聞いた。

 ●現行法でも「処分」を受ける可能性あり

 ――「いじめ防止対策推進法」のたたき台では、いじめ放置した教職員(先生)は「懲戒」とすることを明記する案が盛り込まれています。そもそも、現行法はどのように定められているのでしょうか?

    現行法上、「懲戒できる」とは、明記されていません。だから、先生がこの法律に違反したからといって、ただちに懲戒処分をされるわけではありません。ただし、現行法でも懲戒処分される可能性はあります。たとえば、いじめ防止対策推進法に違反すれば地方公務員法32条に違反することにもなりますし、また東京都では、先生がいじめに加担したり、助長したり、隠ぺいしたりした場合、その悪質性等に応じて、懲戒処分されるという規定もあります。実際に処分を受けた事例もあります。つまり、いじめ防止対策推進法に懲戒処分に関する規定がなくても、まったくの野放しになっているわけではないのです。

 ――ツイッター上で「現場の混乱をさらに助長させかねない」と投稿していましたが、どうしてそう考えたのでしょうか?

    まず、議論の前提として、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」の定義が、すごく広いことがあります。この法律は「いじめ」を次のように定義しています。

    「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」(いじめ防止対策推進法2条)

   ざっくり言うと、前後の文脈も関係なく、行為をおこなった児童等の主観も関係なく、心理的または物理的な影響を与える行為を受けた児童等が苦痛を感じたならば、「いじめ」とされているのです。これは、一般的にイメージされているいじめよりもかなり広いです。

   たとえば、よく言われるのは、ある生徒が好意を寄せる他の生徒に交際を求めたのに、断られたとします。この場合でも、断られた生徒が精神的苦痛を感じていれば(通常強い精神的苦痛を感じると思いますが)、その交際を断る行為も法律上は「いじめ」に該当します。また、教室でけんかをして叩かれた児童が、叩いた児童に対して「お前やめろよ」と強く言った場合であっても、それにより叩いた児童が苦痛を感じれば、「お前やめろよ」という発言もやはり「いじめ」に該当します。

   先生や学校は、「いじめ」の通報を受けたり、児童等が「いじめ」を受けていると疑われる場合、事実を調査した上で、加害児童等を指導し、被害児童等を支援するということになっています。しかし、このように「いじめ」の定義が広いので、どうしたら適切な指導・支援になるのか、判断が難しいことも少なくありません。そのような中で、とにかく法律に違反したら「懲戒」ということにしてしまうと、現場の先生たちが萎縮してしまいます。

 ――「萎縮する」とはどういうことなのでしょうか?

    どんなにささいな苦痛でも、それを見逃さずに「いじめ」として捉えて対応することで、よりひどいいじめの被害を防ぐことが目的の現行法のもとで、「いじめ」の認知件数が急激に増えてきています。しかし、「たたき台」の考え方のように、「いじめ」に適切に対応しないと懲戒を受ける点を強調すると、むしろ、「いじめ」を発見しない方向に向かうおそれがあります。

 ●いじめの定義が「世間のイメージ」と異なっている

 ――世間では、いじめは、殴る・蹴る・無視する、というように、ひどい内容をともなうと考えられています。

   繰り返しになりますが、一般的なイメージのいじめよりも、法律上の「いじめ」の定義のほうがはるかに広いです。法律上の「いじめ」の定義からすれば、「いじめ」はいくらでも起きます。だから、先生が「いじめ」を認知することで、その評価がマイナスになるということは不適切です。

   しかし、まだまだ、一般的な「いじめ」のイメージを持つ先生も少なくなく、評価がマイナスになると考えて「いじめ」の報告をしたくないと思う先生もいるでしょう。児童等が苦痛を感じたら「いじめ」という定義が浸透していないからです。

 ――では、この定義が広くないでしょうか?

   国際的に見ても広いです。メディアでも「いじめ」というと、弱い者に対して、一方的・継続的に攻撃している状況をイメージするでしょう。この法律上の定義と一般的なイメージの違いが、いじめについての議論を混乱させている原因でもあります。日弁連も昨年「いじめの定義を限定するべきだ」という意見書を発表しました。

    一方で、児童等が少しでも苦痛を感じたら、先生や学校が、何が起きたのかを調査して、寄り添って適切に対応する、という発想自体は、おそらく多くの方々から賛同が得られることだと思います。私は、これを徹底していくことのほうが大事だと思います。逆に、「いじめ」の定義を狭くすると混乱のもとになるでしょう。

   行為を受けた児童等が苦痛を感じれば「いじめ」である以上、「いじめ」であると訴えられている行為が「いじめ」でないことの方が珍しいと思います。そのため、「いじめ」かどうかの議論をするのではなく、「いじめ」であることを認めたうえで、「そのあとどうするか」ということを話していくべきです。どういう経緯であれ、その児童等がつらい思いをしているのなら、きちんと対応を考えないといけないからです。

   先生や保護者向けの講演でも、当該行為を受けた児童等が苦痛を感じれば法律上の「いじめ」に該当するので、「いじめ」か否かを議論するのではなく、どうやったらその「いじめ」を受けた児童等がもっと安心して楽しく学校で生活できるようになるかをしっかり議論するようにしてください、と伝えています。

 ――ほかにも、今回のたたき台の問題点はありますか?

   今回のたたき台の背景には、先生がきちんと児童等の指導をして児童等を抑えればいじめがなくなる、という考えがあるようです。しかし、いじめの原因は、加害児童等のストレスだったり、それに対する対応がきちんとできてないことだったりします。

   単に「いじめはダメだ」という指導だけでは、いじめを行った児童等の課題は解決できません。むしろ、その指導によりいじめがもっと陰湿化したり、いじめが止まったとしても、ほかの問題が生じたりする可能性があります。そのため、いじめが起きた場合、いじめ行為の背景にある課題を検討し、その課題の解決のためにどのようなアプローチが有効なのかしっかりと考えて対応していくことが必要です。

 ●ソーシャルスキルを学ぶ機会、学校以外の居場所をつくることが必要だ

 ――逆に、たたき台の中で、評価すべきところはありますか?

   たとえば、きちんと専任でつけるのであれば、「いじめ対策主任の設置」は素晴らしいと思っています。そうすれば、いじめに関する業務を受け持って、計画を立てて、チェックも実効的にできます。そして、いじめの重大事態に関する報告書を学校いじめ対策委員会(いじめ防止対策推進法22条に基づき設置される組織)で学ぶという点もすごく賛成です。

   現在は、児童等の生命や心身、財産に大きな被害が出るような「重大事態」が起きたとしても、学校現場では「こんな悲しい事件がありましたが、二度と同じことを起こさないようにがんばりましょう」という抽象的な話しかしないことが多いと思います。しかし、どういう事実経過でそういうことになったのか、きちんと共有することが重要です。

   ひどい事例では、どこかのタイミングで、担任以外が介入できていれば、違う結果になっていたのではないか、ということが少なくありません。私の先生向けの研修では、実際の裁判例をつかって、どうやって情報共有し、対応していけばいいのか、議論しながら考えてもらっていますが、そのとき、「重大事態」の報告書を使うことが、とても役立つでしょう。最悪の事態を防ぐことだけでなく、本来の教育にとっても、かなり良い影響が出ると思います。

 ――ほかにどういうものがあれば、いじめを防ぐことができるでしょうか?

   核家族化やゲームが発達する中で、子どもたちは、他者と接する機会が減っていると思います。いろいろな国でいじめが起きていて、「いじめ防止プログラム」が展開されている中で、ソーシャルスキル(社会の中で他人と交わり、生活していくために必要な技能)の重要性が指摘されています。

   自分の感情をどう把握し表現するか、ストレスを感じたときにどう対応するか、どうその課題を解決するか、という方法を学ぶ機会をつくる必要があるでしょう。これは、援助希求力(SOSを出す力)にも繋がるため、いじめと同じく大きな問題となっている子どもの自殺の予防の文脈でも有効だと言われています。

   また、教室や部活にしか居場所がない、ということも、児童等のストレスの原因になります。学校以外で居場所がないと、学校でいじめを受けた場合、全世界から否定されているように感じてしまいます。家庭の経済的状況等に関わらず、どの児童等も利用できる第三者による居場所、学校以外の大人とつながれる居場所、そのような社会的資源を学校が把握して、児童等に情報提供することを義務付けることも、いじめの原因となるストレスを軽減するとともに、いじめによる被害を最小限に抑えるために有効だと思います。

.    弁護士ドットコムニュース編集部

 


本当に必要な対策とは?

「先生や学校が、何が起きたのかを調査して、寄り添って適切に対応する」
これが基本ですが、現在の教職員の「働き方」では、あまりに忙しく、児童・生徒と十分な関わりが持てないのが実情です。仕事の内容を精査し直し、教員・事務職の増員を図ることこそ急務だと思われます。

 今朝の我が家の前。

下は昨日の江部乙の融け始めた沼の様子。



8年の3・11

2019年03月11日 | 社会・経済

東京新聞【コラム】筆洗

  2019年3月11日

  <身の毛まで津波の記憶冬深し>は宮城県多賀城市在住の俳人高野ムツオさん。東日本大震災が起きた日はビルの地下で食事中だったそうだ。ビルから逃れ、津波の被害を目の当たりにした。横倒しになった数限りない車。震災忌が今年もめぐってきた▼<身の毛>にまで刻まれた震災の記憶。冒頭の句は震災一年後の二〇一二年の句だが、それは一九年の今でもまざまざとよみがえってくる恐怖の記憶だろう▼あの日の記憶はもちろん被災地と、他の場所では大きく異なる。被災者には<身の毛まで>の恐怖が忘れようとしても忘れられない。あの日以降、「時間が止まったまま」という声を被災地では今なお聞く。喪失感。悲しみ。前に進みたくとも進めないいらだちもあるだろう▼「時というのは、人によってそれぞれの速さで進むのだよ」。シェークスピア「お気に召すまま」のせりふが浮かんでくる。復興は進んだかもしれぬ。が、被災地の心の時間はなかなか進んでいないのだろう▼被災地以外での時間はどうか。残念ながら、忘却に向かって足早に過ぎている気がする。平成に起きた悲劇は平成が終わることで区切りをつけてしまい、もっと早く進むかもしれぬ▼被災地より早く進む時間は震災の記憶を弱め、被災者の現在の痛みへの感覚を鈍らせることになっていないか。八年がたった。被災地と同じ時計を使いたい。

 ******

 東京新聞【社説】2019年3月11日

3・11から8年 「次」はいつ、どこででも

 東日本大震災以上の規模とされる南海トラフ巨大地震。ほかにも大地震予測がいくつも。いつ起きるかは分からない。自分にできる備えは十分にしたい。

 「ここの地面は、海抜七・四メートル。避難場所まで七百メートル」-。こんな看板が、人影まばらな通りのあちこちに掛かる。太平洋を望む三重県南部の尾鷲市。外海に接していることもあって、有史以来、大地震に伴う大津波にたびたび襲われた。近いうちに起きるとされる「南海トラフ巨大地震」でも被害が予想される。

◆津波は、逃げるが勝ち

 同市の自宅で、地元の自主防災会会長、山西敏徳さん(86)がしみじみ話す。「『津波は、逃げるが勝ち』です」と。七十五年前、愛知、三重、静岡県などの沿岸部を襲ったマグニチュード(M)7・9の「昭和東南海地震」(震源・熊野灘沖、千二百二十三人犠牲)で発生した津波に巻き込まれた。

 発生は、一九四四(昭和十九)年十二月七日午後一時三十六分。この日時は、被災した市内のお年寄りの大半がスラスラと口にする。当時十一歳、国民学校六年生の山西さんは「体操で騎馬戦の最中だった。縦に横に激しく揺れて、どこからかブルドーザーみたいなごう音が聞こえた」と言う。

 「先生が『裏山に逃げろ!』と叫ぶのを聞き、蛇行する山道ではなくシダをかき分けて真っすぐに登った」。十分後、津波が沿岸部を襲った。政府などの資料には「夕方までに六回。最高十メートル」とある。

 自分は難を逃れた。しかし-。岸壁に近い自宅は流され、両親が犠牲になった。「山の上から自宅は遠かった。逃げなかったのは悲しい」と今も嘆く。東日本大震災の津波映像を見るたび、往時を思い出して胸がつぶれる。

 被災して二十年ほど後、テレビ局のインタビューに「津波は、逃げるが勝ち」と答えた。それが、標語になったという。今も市役所庁舎に横断幕で掲げられ、「揺れてから五分で逃げれば被災者ゼロ」とも書いてある。

 六十五歳以上の人口が四割を超えた尾鷲市。山西さん自身も高齢だが、心身とも丈夫。「私らの記憶を語り継ぐ後継者をつくっていきたい」と地元の小学校などで精力的に地震と津波の講演をする。

◆理科から社会へ

 山西さんらが被災した昭和東南海地震の二年後、終戦翌年の四六年十二月に、震源がやや西の紀伊半島沖で、M8・0の昭和南海地震(千三百三十人犠牲)が起きた。西日本の高知、和歌山、徳島の各県などで大きな被害が出た。江戸時代末期の一八五四年には、やはり震源が隣り合う「安政東海地震」など二つの大地震が三十二時間間隔で発生している。

 こうした分析などから、東海-九州で死者三十万人以上と予測される「南海トラフ」は、一度にではなく、東西別々に続けて起きる可能性がある-。これが、政府の中央防災会議の有識者会合が昨年想定した「半割れ」だ。最初に被災しなかった側の住民の一部にも一週間程度の避難を呼び掛ける。

 「南海トラフ」は、三十年以内に70~80%の確率で起きると予測される。もう、「発生する」が前提だ。でも「確度の高い地震予知」ではない。

 「半分ずつ二回」の場合、東西どっちが先か。間隔は二年か、三十二時間か。そもそも、最初の地震はいつ起きるのか-。政府はこうした「予知」を横に置き、「救済」に軸足を移した。有識者会合の主査を務めた名古屋大減災連携研究センターの福和伸夫教授は「理科から社会」の段階に入ったと話す。

 例えば「半割れ」で先に半分が被災したら、反対側の住民は(自分のリスクはあっても)救いに行くのか。福和教授は「正解のない難題」と指摘。国が枠組みやガイドラインを整備しているという。

 「南海トラフ」ほど巨大な想定ではないが、政府はM7程度の「首都直下地震」が今後三十年以内に70%の確率で起きるとしている。首都圏では、東日本大震災でも最大震度6強を観測し、死者・行方不明者六十一人を出した。直下地震での被害想定は「冬の夕方、風速八メートル」だと死者約二万三千人、建物全壊・焼失約六十一万棟-などとなっている。

◆首都直下なども

 このほか、政府の地震調査委員会は二月、東北地方の太平洋側でM7クラスの地震の今後三十年の発生確率が上昇したと発表。「東日本大震災後の東北は、依然として注意が必要だ」としている。

 地震学者今村明恒(一八七〇~一九四八)は、「災害予防のこと一日も猶予すべきにあらず」という言葉を残した。「日本では、地震はいつ、どこで起きてもおかしくない」と肝に銘じ、「防災、減災」の意識を高めたいと思う。


 強く冷たい風が吹きつけている。あの日も雪の舞う寒い日だった。2時46分、作業の手を止め黙とう。

 箱ものライフラインは順調に復興しているのかもしれない。しかし、心のライフラインはどうなのだろう?

 8年という歳月は、人それぞれであろう。それぞれの心に寄り添うきめ細かな施策が必要だ。戦闘機の「爆買い」に使う金があるのなら・・・。トランプにではなく、被災者に気持ちを!

 アンダーコントロール
いまだ回収されない放射能デブリ。
増え続ける放射能汚染水タンク。
行き場のない放射能汚染物質。

今度大地震が来たら?


「幸せの国」ブータン

2019年03月10日 | 社会・経済

ここがおかしい 小林節が斬る!

「幸せの国」ブータンで発見した「不幸せの国」日本との差

  日刊ゲンダイ 2019/03/05 06:00  

 若い頃からの勉強仲間であるペマ・ギャルポ拓大教授のご案内で、ヒマラヤの裾野にあるブータン王国を訪ねる機会を得た。

 かの国は、経済的にはまるで昭和30(1955)年の日本に戻ったような状況であったが、それでいて、現地の人々は今の生活に満足しているようであったし、第三者機関が行った調査でもそのような結果が出ている。

  まさに「足るを知る」人々である。

 そこで、少し調べてみたら、納得できる理由がいくつか見つかった。

 第一に、国策として、貧富の差をつくらないように努力している。確かに貧富の差が広がりすぎると、そこには、競争心、嫉妬、差別などの感情が生まれ、人心は荒むものであろう。

 第二に、国策として「良き統治」を掲げている。これは政治に徳を求めることで、力ずくの自由と民主主義の国から来た私には正直驚きであったが、仏教国ブータンでは本気で政治に徳を追求している。人口70万人の国で、国王自身が3500人の孤児の里親になり養っている。

   第三に、政治家が権力的な存在になっておらず、総選挙のたびに政権交代が起きている。

 だからだろうが、大臣や高級官僚に会ってみても、ひとりも「権力者面」をした者がいない。長時間、同席していても、皆、聡明な好人物であった。

 その点でわが国はどうであろうか。

 第一に、新自由主義という弱肉強食政策の結果、経済的格差が広がり、明らかに人心は荒んでいる。

 第二に、明らかに、権力者と親しいか否かで権力の対応が異なる政治・行政執行が行われているようにみえる。モリ・カケ問題でもそれがばれてしまった。しかも、政府の統計が粉飾されている国で政治が信用されるはずもない。

 第三に、選挙制度と自公の団結により、国民の25%の固定票が国家権力を独占している。しかも議席の世襲が常態化して、能力のない議員たちのスキャンダルが日常茶飯事である。

  もはや豊かでもない「不幸せの国」である。


またもやいじめ「自殺」


いじめ自殺か、女子高校生の父「学校の対応不十分」

TBS NEWS 3/9(土) 

前橋市内の踏切で電車にはねられ亡くなった女子高校生の父親が、JNNの取材に応じ、「娘はいじめを苦に自殺した。学校側の対応が不十分だった」と訴えました。

 「娘が書いたんですけど」(女子生徒の父親)

 これは、亡くなった女子生徒が残したメモです。「先生は私の言葉を信じてくれなかった」「ネットで悪口を言われた」などと書かれています。

 群馬県の県立高校2年の女子生徒は先月1日、踏切で電車にはねられ死亡し、警察は、自殺とみています。父親は、いじめを訴えたにもかかわらず、学校側の対応が不十分だったと話します。

 「1年前、1年生の時、(夫婦で)学校の方に行って抗議をしたんですけど、担任と校長は『ええ、しっかりと(対処します)』そんな言葉はうそでしたね。だまされました、私は」(女子生徒の父親)



いじめ倒す「国家」と社会

2019年03月09日 | 社会・経済

 

東京新聞の望月衣塑子記者を支援する署名をネットで集めた中2、誹謗中傷に「子どもが何か意見しちゃいけないんだと感じた」

  母親とともに改めてハフポストの取材に応じた

 

ハフポスト NEWS 20190306 

   関根和弘

  官房長官会見での質問をめぐり、首相官邸側から問題視されている東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者を支援しようとインターネット上で署名活動をした東京都の中学2年の女子生徒(14)が、Twitterなどで誹謗中傷される事態になっている。

「生徒は実在するのか」という意見までみられた。

中学生は34日、母親とともに改めてハフポストの直接取材に応じ、「(私は)ちゃんといます。信じてくれない人がたくさんいて悲しいです。子どもが何か意見しちゃいけないんだという偏見が(日本には)すごくあると感じました」と語った。

一方で、こうした状況を見かねた弁護士らから支援の動きも広がっている。

  女子生徒は、菅義偉官房長官の記者会見で望月記者が質問中、首相官邸報道室長が数秒おきに「簡潔にお願いします」と言うなど、妨害とも受け取れる行為を繰り返す様子をテレビやネットで見て心を痛めた。

女子生徒は望月記者に対する官邸側の行為が「いじめ」と感じ、署名集めを決意。ネット上の署名活動サイト「Change.org」で、「特定の記者の質問を制限する言論統制をしないで下さい」などとするキャンペーンを25日、仮名で始めた。

活動を終えた2月末までに、17000人超の賛同者を集めた。

 一方、女子生徒の活動をハフポストが報じたところ、その直後から、生徒のTwitterアカウントなどに対し、女子生徒の存在や母親によるなりすましを疑ったり、誹謗中傷したりするような発言が殺到、「炎上」状態となっている。

 こうした状況について、ハフポストは生徒と母親に心境を聞いた。2人とのやり取りは以下の通り。

──署名活動をめぐり、Twitterなどでは批判的なコメントが相次いでいます。

生徒 ネットでひどいことを言われて悔しいです。根拠がないネットの言葉を信じ込んでしまう人が多いんだな、と思いました。

母親 驚いています。何も悪いことをしてないないのに。ネットでの攻撃はまるで「黙れ」と言われているようです。

──あなたが実は存在しないとか、お母さんがなりすましているなど、疑う人も多いです。

生徒 ちゃんといます。信じてくれない人がたくさんいて悲しいです。子どもが何か意見しちゃいけないんだという偏見が(日本には)すごくあると感じました。

母親 私が娘になりすましているとか、娘にやらせているとかの見方もありますが、まったく違います。いったいなんの根拠があるんでしょうか。あくまで娘が自主的にやったことを影ながら応援した、というだけです。

──署名を集めたサイトChange.orgの規約には「利用年齢は16歳以上」と書かれており、これに違反しているとの声も上がっています。

母親 規約には同時に、16歳未満の子どもはアカウントの作成を親に頼むことを薦めます、と書いてあります。

だから私が手伝いましたし、Change.org側にはアカウント設定時、年齢が「14歳」であることを申告しています。

その後、Change.org側からは規約違反だと警告は頂いていませんし、成功という形で署名集めを終えることもできました。

──お母さんが娘さんを「操って署名集めをやらせた」と疑う人もいます。

母親 実は娘は今回、誹謗中傷が寄せられたことであまり話したくないようです。これ以上は無理をさせたくないので私が話します。

繰り返しになりますが、私がやらせたわけではなく、あくまで娘が自分でやろうと決めました。

確かにアカウント作成やページの構築は手伝いました。それは娘が未成年であり、ネット上で攻撃されないよう、こうした形で関与するのは親として当たり前です。

子どもが政治的なことに関心を持つわけがない、と疑う人もいますよね。それは違います。

あの官房長官会見を子どもはネットやテレビのニュースで見て、自ら「おかしい」と感じたんです。

うちの娘だけではありません。学校の子ども同士でも「なんか変だよね」「怖いね」「大人って平気でいじめるんだ」と話題になっているようです。

──望月記者の質問の仕方にそもそも問題がある、という声もあります。

母親 確かに望月さんにも未熟な面があったかもしれないけど、それでも国政の代表者である官房長官は一般人とは違います。丁寧に説明すべきではないでしょうか。

まして排除したり、自分の都合のいい質問にしか答えないというスタンスは違うと思います。

それに、権力という大きな存在が一記者である望月さんに対してあたかも圧力をかけているような状態なのに、「望月さんの方が悪いんだ」というのは、娘が感じてる通り、いじめの論理に似ている気がします。

いじめられている方に原因があって悪いんだ、と。娘は小学校のころ、いじめられている子をかばっていじめられた経験があります。

いじめはよくないと言ったらいじめられる。娘が望月さんと自分を重ねたのはよくわかります。「いじめはよくない」と言えない社会は怖いです。

─「不勉強な子どもが主張するな」などと批判する投稿もありました。

母親 子どもと言えども、社会に対して意見を表明する自由はあります。日本も批准している「子どもの権利条約」でも認められています。

子どもが世の中の出来事について「おかしい」と思い、今回のように何らかの行動に移すことに問題はなく、批判は的外れです。

──集めた署名は内閣記者会にも提出するとのことですが、報道機関に対して思うところはありますか。

母親 頑張って欲しいです。官邸の行為はある意味、記者間の対立をあおっているような気もします。

それに負けて受け入れてしまっては、ジャーナリズムの自由がせばめられます。

ジャーナリストが自由な質問を制限されるようでは、やがて一般の人に対しても言論統制される世の中になっていくのではないでしょうか。

──お母様にうかがいます。娘さんの今回の行動についてどう思いますか。

母親 中学生としてできることは最大限、頑張ったと思います。

署名集めが終わったので、中学生として勉強したりする日常に戻ります。そして、私は母親として子どもを守っていきます。

子どもが頑張る段階は終わり、今度は大人たちが頑張る番です。

確かにネットでの攻撃が凄まじいですが、一方で支援の声もいただいています。

攻撃的なアカウントは「相手にしない方がいい」とか、「子どもの目に触れさせない方がいい」などの一般的なアドバイスだけでなく、弁護士さんたちからも法的な助言をもらっています。心強いです。

子どもも相当参っていて、Twitterのアカウント消そうか、鍵をかけようか迷っているようです。

でも、そんなことしたらいわれなき攻撃に屈したことになるんじゃないかとも思います。この後、子どもと相談したいと思います。

「法的措置を検討」

中学生は取材後の34日深夜、Twitterのダイレクトメッセージで筆者に対し、こう述べた。

「なんだか上手いこと言えなかったんですが、今の気持ちをツイしました。アカウントも消さず、発信していきます。イジメはアカン。イジメはアカンという人をいじめるのは、もっとアカンと思います」

 

@Asuka08131

 こんばんは。
いじめをやめて、いじめはいけない!
と、声をあげた人をつまらまい難癖つけていじめる社会

いじめられる方が悪いと言う人たちがいじめをやめてと言う人をいじめ倒す社会は、美しくないよね?

人間としての生き方が問われているんです。

いじめをやめよう。

午後11:45 · 201934日 · Twitter for iPad


選挙の年ですー正しい選択を!

2019年03月08日 | 社会・経済

マガ9対談

雨宮処凛さん×岸本聡子さん(その1)日本もヨーロッパも、まっとうに生きられる99%の政治を求めている

 

By マガジン9編集部 201936

https://maga9.jp/190306-4/

 

   オランダ・アムステルダムに拠点をもつNGO「トランスナショナル研究所(TNI)」に所属し、ヨーロッパの政治状況や市民運動に詳しい岸本聡子さんと、日本のさまざまな現場に足を運び活動している雨宮処凛さんに、貧富の格差や地方自治、新自由主義の問題などをテーマに対談していただきました。今年は日本もEUも選挙の年。ヨーロッパと日本の共通点や差異から見えてくるものをヒントに、これからの社会を考えたいと思います。

議論のないまま成立した改正水道法

雨宮 岸本さんは世界の公共サービスの在り方について研究調査されていて、日本の水道法改正のときもメディアで発言していましたよね。水道民営化ってすごく重要な問題なのに、日本ではほとんど議論もないまま、昨年12月に改正法が可決してしまいました。

 特定秘密保護法、安保関連法、共謀罪法、入管法改正、水道法改正……反対の声があがっても結局全部通ってしまうので、みんな無力感をもつようになっている。私は、そのことがいちばん危ないと思っているんです。だから、岸本さんがコラムで挙げていたように、スペイン・バルセロナ市やイタリア・ナポリ市などが「ミュニシパリズム」(※)を掲げて、地方自治によって変わっていこうとしている動きが本当にうらやましい。日本では、まだこういう可能性はなかなか見えてこない気がします。

※ミュニシパリズム:選挙による間接民主主義に限定せず、地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成による政治参加を重視する考え方。地方自治体の意である「 municipality 」から来ている。

岸本 実際には、EUも日本と同じようにひどい状況なんですよ。政府が強権的であったり非民主的であったり、全体で見るとどうしようもない状況は変わらないと思います。とくにEUでの極右の台頭は深刻なレベルです。だからこそ、こうしたヨーロッパで起こっている新しい地域の動きを伝えて、希望をつないでいきたいと思っているんです。

雨宮 たしかにブラジルとか香港とかを見ても大変そうで、世界的な傾向を感じます。ただ、日本の場合は、みんなが忖度しあって声をあげる人を追い詰めていくような感じがある。

 タレントのローラさんが辺野古新基地建設について意見を言ったとき、テレビなんかでは基地の是非について議論するんじゃなくて、タレントが政治的意見を言うのはどうなのかという議論になりました。ジャーナリストの安田純平さんが解放されて帰国したときも、それが自己責任かどうかについて1時間かけて議論するのに、世界最悪の人道危機と言われるシリアの状況については全然取り上げない。こういう根本的なことが議論されないのが、日本独特。

 水道法改正も可決されましたけど、「PPP」とか一般の人にとってはすごくわかりにくい言葉だし、ちゃんと中身まで理解している人がどれほどいるのかと思います。

岸本 PPPは「パブリック・プライベート・パートナーシップ(Public Private Partnership)」の略で、つまり「官民連携」のこと。でも、国によって定義が違っていて、いろいろな使われ方をしている言葉です。こういう分かりにくい言葉が出てきたら、何かを誤魔化そうとしているのではないか、と疑ったほうがいいと思います。

 「官民連携」というと、官と民の良いところを合わせるポジティブな感じがありますけど、「プライべタイゼーション(私営化・民営化)」という言葉があまりにも不人気だったために、この言葉が使われるようになったんです。基本的に、公共サービスの分野ではアウトソーシングも行われているし、官民はすでに連携しているんですよ。ただ、大事なのはどこに決定権があるのかということ。

雨宮 PPPの形態として「コンセッション方式」というのが出てきましたよね。

岸本 水道に関して言えば、コンセッション方式とは水道を運営する権利を自治体が企業に売り、買った企業が運営から料金徴収まですべてを担う仕組みです。お金・モノ・人が民間へと移動するので、決定力も自治体から民間に移動することになります。

 資産は残るしモニタリングもできるから問題ないと説明されますが、この方式は極めて完全民営化に近いもの。安倍さんは「民営化、民営化っていいますが、民営化じゃないんですよ」って言っていましたけど、私は民営化だと思います。

編集部 東京の水道事業は、都が経営する東京都水道局が行っていますよね。いわゆる地方公営企業です。

岸本 東京都の水道は純利益が年約三百億円ほどもあるので、民営化のターゲットにされていると思いますよ。これだけ人口が多いと、税金と同じで収益が絶対あがりますから。

 いまは東京都が水道をもっているので、集めた水道料金は最終的に都のために使われます。でも、もし民間企業が運営するようになったら、水道料金が都のために再投資されることはありません。こんなに重要な公共財を企業に売るなんて、まっとうに考えたらありえません。

雨宮 もし民営化されたら、収益をあげるためにまず削られるのは人件費ですよね。

岸本 水道の修繕など、いままでは公務員が水の安定供給をミッションとして技術をもってやってきたことも非正規職員の人たちがやるようになると思います。民営化すれば水道のコストや老朽化などの問題を全部解決してくれるみたいに言っているけど、利益を求める企業に任せても何も解決しません。

 人口がすくない、収益もすくないというのなら、地域住民も参加して水道料金の設定やダウンサイジング(※)なども含めて、地方自治の場で解決策を話し合っていくべきです。

※ダウンサイジング:効率化やコスト削減のために規模縮小や小型化すること

岸本 水道法改正によってこれからコンセッション方式を取り入れない自治体は、その理由を示さなくてはいけないと言われています。それを逆手にとって、水道の問題をそれぞれの自治体で積極的に議論してほしい。

 それも職員とか政策担当者だけじゃなくて、現場をよく知る技術者や労働者、直接影響を受ける地域住民も一緒に話すべきです。水道の質を保っていくためにどんな住民負担が必要なのか、なぜ水道料金がかかるのかという議論をして、そのなかでみんなが納得して水道料金を払うという風になれば、むしろいい結果になるかもしれません。

グローバル企業に流れていく私たちのお金

編集部 先日、実際に使われている中学校の公民教科書を見る機会があったのですが、そこに「規制緩和と民営化」というコラムで「国の仕事のうちで、民間企業にできることは、できるだけ民間に任せようとしています」と書かれてありました。また「社会保障にかかわる支出が増加したことが、日本の国債発行の増加の大きな原因となっている」とあって、別のページにですが「国債は国の借金ですから、将来、最終的に国民の税金でまかなわれます。つまり未来の世代に支払いや返済を先送りしているのと同じこと」との記述もありました。公民の教科書なのに、こういう流れで教えていていいのか? と違和感をもちましたね。

雨宮 それって、いつ頃から教科書に書かれているんでしょうか。いまの若い世代がごく自然に財源論を盾に自己責任を追及したり、社会保障を利用する人をバッシングしがちだったりするのは、そういう教育の影響もあるのかもしれないですね。

岸本 本来、私たちは税金を払うかわりに、学校とか医療とか社会保障などの公的サービスを受けますよね。だけど、いまの暮らしでは、自分たちの税金が生活に還元されている実感がもてない。そういうなかで生活保護を利用する人を非難する風潮が生まれている気がします。

 そもそも日本は生活保護の捕捉率がものすごく低い。誰だってそういう大変な状況に陥る可能性があることに対して想像力をもてないのは心配です。

雨宮 相模原事件(※)を起こした被告も、日本は社会保障にお金がかかって借金だらけだから障がい者を殺した、というような極論を言っていますよね。少し前には、人工透析患者は自業自得だからいますぐ殺せとブログに書いたアナウンサーもいました。日本は少子高齢化で大変で、国の借金のためには命をも選別しなくちゃいけないという考え方が、ここ数年ナチュラルに浸透してきている気がする。

※相模原事件:2016年7月、神奈川県相模原市にある障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が刺殺されるなどした殺傷事件。被告は元施設職員で「障害者は生きている意味がない」と主張した

岸本 最近だと、古市憲寿さんと落合陽一さんが、終末期医療の最後1カ月分を打ち切ることで医療費が削減できるという議論をして問題になりました。でも、実際に医療費負担を増やしているのは、高額な新薬だという話なんですよね。いま、政治的・財務的に力をもっている多国籍企業をあげていったら、その中に製薬会社は絶対入ります。あとはアグロビジネス企業、金融とIT企業です。

 製薬会社は自分たちが利益を上げるために、国内外で強烈なロビー活動を展開しています。莫大な公的資金をつかって開発した薬で特許を取得して、非常な高額で医療機関に売る。その医療機関を支えているのは税金です。つまり、私たちの税金の多くが企業に流れる仕組みになっている。そこを見ないで終末期医療を打ち切るというのはおかしな話

雨宮 本当にそう思います。

岸本 さらに問題なのは、そういうグローバル企業が税金をきちんと払っていないことです。グローバル企業はオフショア法人に利益を移す(※)ので、吸い取られた税金は、国に還元されることなく、私たちの生活とはまったく関係のない金融市場に流れています。

 日本とEUの経済連携協定(EPA)が結ばれてチーズやワインが安くなると言われていますが、そんなことよりもEUは、医療保険、上下水道、ごみ処理、セキュリティーといったサービス分野にものすごく強いので、それが日本に参入してくることのほうが重要です。

 いま行われているのは、投資家や株主といった1%の富裕層のための政治。普通の人たちがまっとうに働けて、まっとうに子育てできて、地域で生きていけるようにする99%のための政治ではありません。

※オフショア法人に利益を移す:租税環境が優遇されている地域に法人を作り、他の場所で作られた利益をそこに移す方法。海外収益は非課税なので、そのお金を使って再投資する。投資で発生した利益分についても税金はかからない

雨宮 貧困問題に取り組んでいると、つねに「財源がないからできない」という財源論の壁にぶつかります。じゃあ再分配を考えていこうと、4年前に「公正な税制を求める市民連絡会」を立ち上げたんです。

 ちょうどその頃、パナマ文書(※)の問題が出て、タックス・ヘイブン(※)の話が報道されました。これだけ生活保護を叩く空気があるんだから、巨大な税逃れという不公平に対して、きっとみんな怒るだろうと思っていたら「あれ、怒っている人なんて誰もいなくない?」というくらい静か。

 巨大企業が税金を払っていないという報道があっても怒らないのに、月に13万円くらいの生活保護をもらっている人にはめちゃくちゃ怒る。新自由主義に対しては、「どうしようもない」というあきらめや思考停止があるのかなと思います。

※パナマ文書:世界各国の富裕層や多国籍企業らがタックス・ヘイブンを利用して節税している実態を明らかにした内部文書

※タックス・ヘイブン:租税回避地。法人税などが軽減、もしくは完全に免除される国や地域のこと。多国籍企業が名目だけの会社を設立して税金逃れをしたり、資金操作をしたりする例が多い

岸本 貿易協定を結んで、国境を開放して人を動かし資本を動かすのなら、まず最初に国際的な税制のルールをつくっておくべきですよね。でも、そのルールづくりは進まない。そこには政府の背後でグローバル企業が自分たちに都合のいいルールをつくっているという状況があります。

 巨大資本をもつグローバル企業が税金をちゃんと払えば、福祉国家をつくることも不可能ではありません。本当は政治がそういうビジョンを描かないといけない。「どうにもできない」という無力感があるけど、どうにかしないといけない問題です。

「税金泥棒」感覚と政治の透明性

雨宮 税金についての認識も、日本とヨーロッパでは違う気がします。周りにいる人に「なぜパナマ文書に怒らないのか」って聞いたことがあるんですけど、「自分もそれだけ稼いだら、こんな国に一円も払いたくない」って言うんです。なんだろうな、納税イコール災害みたいな感じで、払った税金で自分たちの社会をつくっていくという教育を受けていないから、税金を払うことがまるで泥棒に盗られるみたいな感じになっている。

岸本 それは信頼の問題ではないでしょうか。ヨーロッパの中でも私が住んでいるベルギーはいちばん税金が高いんです。普通の労働者が所得の40%くらい払います。でも、基本的に医療費の自己負担はありません。それから、小中高校までの教育が無償です。公立も私立も、モンテッソーリのようなオルタナティブ教育が受けられる学校もすべてです。残念ながら大学は無償ではないですが、年10万円くらい。少なくともそれだけで税金の意味は日々感じられます。

 だからといって十分だとは思っていません。大学も無償にすべきだし、北欧ではほぼ同じくらいの税負担がありますが、ベルギーより高齢者の福祉が充実しています。どんな介護を受けるかというときに、北欧では個人の資産を問わない。そのために税金を払っているからです。ベルギーはそこまではできていません。

雨宮 教育無償だけでも十分うらやましいですが、誰でも同じように介護が受けられるのはいいですよね。今はみんな、老後の不安でいっぱいです。

岸本 「民主主義の質」に関する世界ランキングがありますが、ノルウェーとかデンマークとかスウェーデンとか北欧では「透明性」が非常に高い。それは、汚職が少なく、税金がきちんと効果的に使われているということです。盗人感覚をなくすには、自分たちの税金がどう使われているのかの透明性を高めていくしかないんですよね。

 でも、いまベルギーでは税金の使い道をめぐって問題も起きています。ベルギーはオランダ語圏のフランダース地方、フランス語圏のバロン地方があって、その真ん中にブリュッセルという特別区があります。いま経済がうまくいっているフランダース地方で独立運動が起きていて、独立を掲げる党がどんどん勢力をのばしているんです。つまり、フランダース地方の人たちが自分たちの税金を貧しい地方のために使いたくない、自分たちのために使いたいから独立したいということです。

 アメリカでも富裕層のコミュニティが住民投票で自分たちだけの自治体をつくろうとする動きがあると聞いてびっくりしたのですが、これも貧困層に自分の税金を使われたくないという理由です。本当はみんな助け合って生きているはずなのに、そういう風には考えないで、ただ自分のお金が誰かに盗られているみたいな感覚ですよね。

編集部 公共サービスによる再分配ができなくなれば、切り捨てられた貧困層の状況はますますひどくなります。

岸本 しかし、この状況の背景には、左派が社会民主的な政治とか、福祉国家のビジョンをきちんと示してこられなかったこともあるわけです。左派が新自由主義にすり寄りすぎているところがあって、富の再分配をしてみんなが暮らしていける社会をつくるという新しいビジョンを示せていない。だから、自分たちのところだけ独立しようという動きが起きる。

 今年はヨーロッパも日本と同じで選挙の年です。EU議会選挙があるし、地方選挙がスペインである。ちゃんとビジョンを掲げていかなければ、日本もEUもどんどん安易な簡単な想像力のない方向に行ってしまうのではないでしょうか。

→(その2)へ続く

(聞き手/塚田ひさこ、構成/中村 写真/マガジン9編集部)


   これから札幌へ行ってきます。また夜遅くなりますので今のうちに更新しておきます。先月はひどい吹雪に見舞われてしまいましたが、今は晴れています。でも、予報では日中は雪です。今朝の最低気温ー14℃、明日の予報最高気温10℃。3月中に土が見えてくるのではないか?例年の積雪0は4月20日ころです。

 昨日、ようやく「確定申告」提出してきました。壊れかけた戦闘機の爆買いに使うのはやめてください!


「私が国家です」

2019年03月07日 | 社会・経済

「私が国家です」の安倍首相、あなたに命と尊厳がわかるか

  日刊ゲンダイ 2019/03/06

斎藤貴男ジャーナリスト

   1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。

 

拝啓 アベシンゾー殿

 あなたは一体、どれだけの人を傷つけ、不幸に陥れれば気が済むのか。私たちの国を、社会を、どうするつもりなのか。

 私が代弁してあげよう。あなたは自分以外の人間に命や尊厳があるなどとは思ったこともないのではないか。犠牲に何の痛痒も感じないし、ひょっとしたら、残忍さと指導力を混同して、他人の断末魔を見ると興奮するタチの方なのではないか。米国の戦争に自国民を差し出しては、虎の威を借りるキツネのごとく大国然と振る舞う“新・大日本帝国”を理想とし、属州の酋長として君臨する己にエクスタシーを感じちゃいたいのではないか。図星でしょ?

 すでにあなたの政権は、私たちの食と水を外国資本に売り飛ばし、労働者の人権や賃金の水準を引き下げる法律をことごとく強行採決した(種子法の廃止、改正水道法、改正入国管理法)。自画自賛を重ねた“アベノミクス”とやらの正体は、統計データのでっち上げでしかなかった。国民生活を左右する消費税を弄んでは、選挙に利用し、議員たちは薄汚い利権を貪ってきた。

そして、沖縄だ。県民投票で「反対」が72%以上を占めた辺野古の米軍新基地建設に対する民意を、あなたはまたしても踏みにじろうとしている。埋め立て予定海域の軟弱な地盤改良だけでも途方もない歳月と予算が必要で、しかも建設の口実にしている普天間基地返還の可能性など、ゼロに等しいにもかかわらず、そうまでして米国のご主人様にへつらいたいか。

 「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある」と差別むき出しなのは茶坊主のボーエイダイジン。あなた自身はといえば、「私が国家です」だと。これは統計データ偽造を巡る衆院予算委員会での発言だったが、あなたはいつもこうだ。ルイ14世の「朕は国家なり」ばりの絶対主義王政宣言とは、異常にも程がある。

 ちなみに、このウルトラ妄言にも大手マスコミは沈黙を決め込んだ。県民投票の結果を徹底的に矮小化したNHKや読売新聞といい、もはやこの国のジャーナリズムは完全に死に絶えたらしい。

アベさん、あなたは日本を、最低の列島にしてくれた。まっとうな社会に回復させるには、現時点からでも数十年は要しよう。このまま東京五輪だの憲法改正だのに持ち込まれれば、永久に立ち直れなくなる。

 保守や右翼を気取りたがる人々にも言っておく。アベさんのやっていることは、正真正銘の売国だ。放置しておけば、私たちは米国の傭兵か奴隷にされる。

 アベさんよ、国を滅ぼし、世界中の憎悪と軽蔑を一身に浴びて死ぬのが本意でもなかろうに。

 


 

 

   安倍首相「いま、長妻委員は国家の危機かどうか聞いたが、わたしが国家ですよ。私が総理大臣ですよ。」

 森羅万象を担当する、立法府の長にして国家そのものである。

もはや天皇陛下以上のアベ皇帝殿下だ。

 

 

http://www.asyura2.com/19/senkyo257/msg/987.html#c11より

 国権の最高機関は国会と憲法に規定されているように、国家を表すのは国会に於ける立法作業の結果であり、法治主義国で有る以上立法府で決議された法律と憲法が、国家そのものを表しているのである。

 総理大臣は、国権の最高機関で決議された基本法と憲法に基づいた行政実務や歳出事務を事務方が忠実に行っているか、自分の行政実務の管理監督任務を専門性のある所轄大臣に一回限りに於いて委任するとともに、所轄大臣から逐一報告を受け、公務員の作為不作為により主権者である国民納税者の利益を損なっていないか常に把握し、国権の最高機関である国会にて、議員による行政実務上の瑕疵誤謬の疑いを指摘されたら、即座に所轄大臣と共に各省の業務の実態を検証し議会に報告するのが総理大臣の任務であり、それ以上でも以下でもないのが議院内閣制に於ける首相の立場である。

 従って、首相に自分の思想信条や方針があろうとも、あくまでも国会で定めた基本法と憲法の理念や原則を国の方針とし国際会議等で報告するのが限界であり、首相自身の思想信条や独自の構想を日本国の方針とすることは許されない。

 現最高法規を遵守する意志を持っていないと公言しているような代議士が首相を務めるとこうなる、の典型であり、首相自らの意向や意思が自国の国民の従うべき原則である旨の思考回路は、冗談で無ければまさに独裁である。

 世界の多くが大統領制であることから、大統領独断で国の方針を決める権限を持っていると伺える部分だけを、安倍首相は都合良く解釈しているのだろうが、大統領制とて非常事態宣言以外には予算審議では議会の承認無しに予算は降りないのは周知の事実であり、国民納税者から徴税する租税主義国である限り、大統領制とて、大統領の意向の実現には議会承認が不可欠である。

 見たいものしか見ない、見たく無いものは見ない、の悪癖が染みついているのか嘯いているのか不明だがご都合主義である。

 私が国家と定義し権限を独占するには、結果責任を全身で負う義務が付いて来るのだが、肝心の時には「私は関係ありませんよ、私が何をしたと言うんですか」旨叫ぶのは始末に負えず、国会での首相とのやり取りは、野党議員を介して主権者である筈の納税者がからかわれているが如き全くの無駄な時間となっている。

 その間にも、私が国家そのものだと国会でライバルたる野党に知らしめたいと躍起なだけの首相率いる内閣の黙認で、着々と事務方主導で予算が流出しているだろう、これこそが国民納税者にとって、まさに悪夢である。

  ****** 

 日刊ゲンダイより

 6日の参院予算委員会。立憲会派の小西洋之参院議員から、「“法の支配”の対義語は何か」と問われ、まったく答えられなかったのだ。

「“法の支配”の対義語は、憲法を習う大学1年生が初日に習うことですよ。法の支配の対義語は“人の支配”です」

九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法)がこう言う。

 「法の支配の対義語を知らないということは、“法の支配”の正しい意味も知らないのでしょう。これは恐ろしいことですよ。英語でも“ルール・オブ・ロー”と“ルール・オブ・マン”という対義語があります。恐らく、安倍首相は立憲主義の意味も理解していないのでしょう。法は国民を支配する道具だと考えているのではないか」

 この男にだけは、改憲をさせてはいけない。

*******

まさにアベ皇帝独裁者の姿である。


雨宮処凛がゆく!第476回:渋谷の児童養護施設・施設長刺殺事件。の巻

2019年03月06日 | 事件
 
 

 千葉県野田市で虐待を受けていた栗原心愛ちゃんが亡くなった事件を受け、このところ、児童相談所が注目を浴びている。

 そんな児童相談所と同じ児童福祉法に基づく施設・児童養護施設で2月25日、施設長が刺殺されるという事件が起きた。

 一報を耳にした時は、「子どもを施設に入れられた親が逆恨みして施設長を刺したのか?」という予想が頭をよぎった。心愛ちゃんの事件から、そんな連想をしたのだ。しかし、違った。容疑者として逮捕されたのがその児童養護施設で3年間を過ごした22歳の若者であること、施設に「恨みがあった」と語っていること、施設関係者なら「誰でもよかった」と話していることを聞いて、目の前がどんどん暗くなっていった。しかも容疑者はネットカフェを点々とする生活で、所持金はわずか数百円だったという。

 この連載でも何度も書いているが、ホームレス状態の若い世代を取材していて、もっともよく耳にするのが「児童養護施設にいた」ということだ。

 現在、非正規雇用率は4割に迫り、その平均年収は172万円。特に若年層ほど非正規雇用率が高いわけだが、その多くがホームレス化していないのは、大なり小なり「家族福祉」の恩恵にあずかっているからだ。例えば、家賃滞納をしてアパートを追い出された時に帰る実家がある、困った時に親に泣きついてお金を貸してもらえる、もともと実家に住んでいるなど。ちなみに、私と同世代の35〜44歳で親と同居している未婚者は約300万人。ひと昔前は、35〜44歳で未婚、実家暮らしという層はほとんどいなかったわけだが、今は低賃金ゆえ実家を出られない人が多くいる。が、裏を返せばその層は、「実家」というセーフティネットがまだ機能している人々という言い方もできる。

 しかし、児童養護施設出身者の多くは、親には頼れない。虐待を受けていたり、貧困だったりという理由から施設に入ったのだ。そんな若者が施設を出る時にどのような困難が待っているかはあまり知られていない。私がこれまでの取材で聞いたのは、「未成年で親がいないと携帯の契約ができない」「仕事に就く際に保証人が必要でも頼める人がいない」「不動産屋でアパートを借りたくても保証人がいない」など、自立に向けた第一歩目でつまずいてしまうという現状だ。

 もう10年以上前に取材した、当時19歳のA君もそんな一人だった。携帯を買うにも、不動産屋に行っても、「身寄りが一人もいない」事実を伝えると店の人は戸惑い、「異例の事態なんでわかりません」と言われてしまう。どこに行っても「異例」「特例」で、何をするにも「親がいる人」がおそらく生涯気づかない高い壁に何度も未来を阻まれる。

 彼の場合は、児童養護施設出身ではなく、里親家庭で育っていた。本人はそのことをまったく知らなかったのだが、18歳のある日突然「実は養子だった」と告げられ、「すぐに施設に入れ」と言われて本当に4日後には「自立援助ホーム」に入れられてしまう。実の親だと思っていた相手が里親と知るだけでもショックなのに、突然追い出されて施設に入れられてしまうなんて、世界が反転するような衝撃だったろう。

 ちなみに自立援助ホームとは、児童養護施設を退所した若者の受け皿として設置された施設。働きながら、自立を目指す。そこは20歳までいられると聞いていたが、なぜか彼は半年で出されてしまい、しかし、バイトをしてお金を貯めていたのでアパート暮らしを始めることができた。が、一人暮らしを始めると地元の「危ない奴」に「目をつけられて」しまい、執拗に絡まれ、バイト先やアパートに押しかけられるなどが重なる。警察に相談するもどうにもならず、アパートを出るしかなくなる。

 そこで、それまでいた施設に助けを求めるが、「管轄が違う」のでもう受け入れることはできない、「住み込み就職しかない」と言われる。「危ない奴」から被害を受けた時に連絡した警察に相談しても「住み込み就職しかない」と言われる。路上で倒れ、運び込まれた病院の人に「行くところがない」と訴えても、「うちはそういうことでは入院させられないから住み込み就職しかない」と言われてしまう。

 しかし、家がなく、住民票も身分証明も何も持たない少年を、いきなり住み込みで雇ってくれるところなどあるだろうか。結局、彼は長い期間をホームレスとして過ごし、その間、教会で寝かせてもらったり、山奥の牧場でなんとか住み込み就職をしたりと各地を転々とした。「普通の仕事」を求めていたが、警備員なども身分証明が必要なのでできなかったという。

 その後、彼は支援団体に出会い、生活保護を受けるのだが、10代にして「家族福祉」を突然失い、その後、施設や警察や病院などに助けを求めても「誰も助けてくれなかった」という事実、そして路上で寝ている自分を気にかけてくれる人は誰ひとりいなかったという現実は、大きな大きな傷となって残っているようだった。突然自分を放り出した里親への複雑な思いも大きいようだった。

 社会に対する、怒りと不安。どうせ自分はどこに行っても「異例」「特例」扱いという思い。そして実際、「親がいない」ことから降りかかる数々の困難。生活保護を受けたものの、しばらくすると、彼は再び路上に戻っていた。それから何度も顔を合わせているが、どこに住んでいるのか、今は路上なのか生活保護なのか、なかなか聞くことができないままだ。ただ、少年期のあまりにも過酷な経験が、彼を今も苛んでいることは伝わってくる。

 今回、逮捕された容疑者がどんな人生を歩んできたのか、それはわからない。しかし、報道から断片的に伝わってくる様子からは、彼の苦悩が垣間見える。家賃を滞納して大家さんとトラブルになった際には、錯乱状態で壁にハンマーのようなもので穴を開けていたという。もうどうしていいのか、わからなかったのかもしれない。18歳で施設を出て自立を目指すしかなかった彼には、私たちには見えない壁がどれほどあったのだろう。

 なんで自分だけ。そんな思いがあったのかもしれない。

 もちろん、どんな背景があるにしても、彼のしたことは決して許されることではない。

 しかし、自らの18歳から22歳を振り返ると、そんな時期に「自立しろ」とせかされたら、生きられなかったかもしれないとも思う。いろんなことに躓いて、時に世間知らずゆえ騙されて、自分に何ができるかなんてまったくわからなくて、時に勝手に社会を恨んだ。だけど私の場合は、家賃を滞納すれば親に泣きついたし、最悪、実家に帰ればいいという逃げ場があった。だからこそ、いろんなことに挑戦できた。そして、それがどれほど恵まれていることかも知っていった。周りの友人の中には、実家や親には頼れないという人が多かったからだ。その理由は「実家が貧しい」ということで、そんな友人たちが風俗で働いたり援助交際したりすることを、私は何も言えずにただ傍観していた。傍観することしかできなかった。

 この国に、もう少し、「自立」に向けての躓きを見守る余裕があったら。

 「若い頃ってそうだよね、特に児童擁護施設にいたら、いろいろ特別なフォローが必要だよね」と、躓きや寄り道や小さな間違いが許される社会だったら。社会として、そんな制度や受け皿があったら。そうしたら、こんな事件は起きなかったかもしれないと思うのだ。実際、ヨーロッパでは、施設出身者はホームレス化しやすいということが広く認知されているので、そのための支援がちゃんとある。しかし、日本はあまりにも手薄い。

 「昔の施設出身者は、住み込み就職でもなんでもして頑張ったんだ」と言う人もいるかもしれない。実際、私のかなり年上の知人にもそんな経歴を持つ人はいる。しかし話を聞くと「昔の日本には、施設出身の若者を一人前に育てようという気概のある中小企業の社長がいたんだ」と驚くばかりで、参考にはならない。なぜなら、「若者を育てよう」などというような機運は今、社会からとっくに失われ、とにかく1円でも時給が安く、いつでも切れる労働者ばかりが求められているからだ。使い捨て労働が蔓延するということは、労働によって社会に包摂されてきた弱い立場の人々も見捨てられるということだ。社会がそうやって劣化することに、誰も歯止めをかけてこなかった。それよりも国際競争の方が大切だという社会が、何十年もかけて作られてきた。

 亡くなった施設長の大森信也さんは、報道を見ると、児童擁護の問題に熱心に取り組み、同僚や入所者からも信頼されていたという。熱意を持って現場で奮闘する人の命がよりによってこのような形で奪われたことに、改めて戦慄する。

 しかも、退所した容疑者に対する「支援」が事件の引き金になったのでは、とも報じられている。容疑者がアパートを出たあとも、施設職員は住まいや仕事の紹介をするなどの相談に乗っていたという。しかし、容疑者は「施設からの連絡が嫌になった」と供述している。また、アパートを出る前、容疑者が家賃滞納で大家さんとトラブルを起こした際にも職員は駆けつけている。大家さんの連絡を受けてということだから、おそらくアパートの保証人に施設がなっていたのではないか。その上、施設はアパートの修繕費など130万円も立て替えている。

 児童相談所も児童養護施設も、圧倒的に人手不足だ。そんな中、退所後もトラブルに駆けつけるなど「手厚い支援」を続けていたことが、逆に事件の引き金になっていたとしたら。

 一体、現場で動く人たちはどうしたらいいのか。どう対応すればいいのか。

 そう思うと、呆然と立ち尽くすことしかできないでいる。


雨宮処凛「生きづらい女子たちへ」79 日本と韓国の女地獄

2019年03月06日 | 社会・経済

雨宮処凛「生きづらい女子たちへ」79

日本と韓国の女地獄

  Imidas連載コラム2019/03/06

    20179月、韓国に行ったら、会った人全員が名前の後に「私はフェミニストです」と自己紹介した。女性はもちろん、男性も。2030代の数十人全員がだ。仕事ではなく、韓国で様々な活動をしている人やアーティストと交流するために行ったのだが、それでもフェミ率100%には驚いた。

 あまりにもみんなが「フェミニスト」を自称するので、思わず「流行ってんですか?」と韓国在住の日本人に聞くと、「今、無風なのは日本だけですよ」とちょっと呆れた顔をされた。アメリカの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏のセクハラをめぐり、世界中を「#MeToo」ムーブメントが席巻する1カ月前のことである。

 そんな韓国で16年に出版され、100万部を超えるベストセラーとなったのが『82年生まれ、キム・ジヨン』だ。著者はチョ・ナムジュさん、1978年生まれ。201812月、日本でも筑摩書房から翻訳出版(斎藤真理子 訳)され、すでに8万部を突破。この本を「読んでいる」とK-POPアイドルが言っただけで「炎上」したという「フェミニズム小説」は、30代で子育て中の主人公、キム・ジヨンの半生を淡々と綴ったものだ。しかし、淡々とした記述の中に、女性であれば誰しもが身に覚えのあるだろう「あるある!!」が、23ページに一度くらいの頻度で仕込まれている。

 大小さまざまな理不尽、そして不条理。女だけにかけられた呪いだ。

呪い」はすでに、生まれる前から始まっている。

 例えばキム・ジヨンの母は、最初の子として娘を生んだ時、姑に「お義母さん、申し訳ありません」と謝罪している。そんな嫁に姑は優しく言うのだ。

「大丈夫。二人めは息子を産めばいい」

 しかし、そうして生まれた二人目も娘。それが主人公のキム・ジヨンなのだが、その後に母のお腹に宿った命は「女だから」という理由で堕胎されている。次に生まれた弟は「男だから」という理由で、あらゆる面で姉たちより優遇される。

 炊きたてのご飯が先に配膳され、傘が2本あれば姉妹が相合傘をして弟が1本を使い、布団もお菓子も2つしかない場合、常に弟が1つを独占する。学校に入れば、優遇されるのは弟だけではないこと、自分の意志とは関係なく性別で決められることの多さを突き付けられる。

 学級委員選挙では必ず男子が選ばれる。美化委員は女子で、体育委員は男子。中学に入れば、男子はスニーカーを履いていいのに女子には革靴しか許されない。登校途中に女子生徒たちが露出狂を取り押さえれば、「女の子が恥ずかしげもなく。学校の恥だぞ、恥」と謹慎処分を食らう。予備校の帰りに男子生徒につきまとわれ、恐怖のあまり父に迎えを頼むと、あとで父に叱られる。スカートが短い、服装をきちんとしろ、危ない人につきまとわれるのは「本人が悪い」のだと。

 

 就職を前に、呪いはさらに強烈になっていく。いい会社に行った先輩は全員男という現実。「同じ条件なら男性の志願者を選ぶ」と答えた大企業の人事担当者が44%いたというアンケート結果。「女があんまり賢いと会社でも持て余すんだよ」と言う学科長。1999年には「男女差別禁止及び救済に関する法律」が制定されているのに、「決定的な瞬間になると『女』というレッテルがさっと飛び出して」くる。

「どうしろって言うの? 能力が劣っていてもだめ、優れていてもだめと言われる。その中間だったら中途半端でだめって言うんでしょ?」(前掲書)。

 なんだか、既視感でクラクラしてこないだろうか? 小説はその後も「結婚、親戚付き合い、出産、退職、育児」と「女地獄」をバージョンアップさせていくのだが、それは読んでのお楽しみ。

 最近、女友達と会うたびに、「キム・ジヨン、読んだ?」が挨拶代わりになっている。読んだ同士は「すっごいわかるよね!」とその瞬間から「女の呪い」について語り合う。冒頭でも触れた通り、現在、韓国ではフェミニズムが盛り上がっており、その下地があったからこそこの小説も社会現象となったわけだが、そもそもなぜ、盛り上がっているのか。

2017年の韓国行きで知ったのは、二つの事件だ。

 一つ目は、15年に広まったネットのデマ。当時、韓国で流行していたMERS(中東呼吸器症候群)をめぐるものだった。デマの内容は、MERSを韓国に持ち込んだのは「無節操な女たち」である、感染しているのに隔離を拒否した、などなど。これに女性たちが対抗し、ネット上で女性ヘイトに対する戦いを始めたのだ。その手法は「ミラーリング」。鏡に映すように、女性へのヘイト発言をそのまま男性に置き換えて返したのだ。

 その翌年5月には、決定的な事件が起きる。「ミソジニー殺人事件」と呼ばれる事件だ。ソウル市江南駅近くのカラオケ店が入った建物のトイレで、20代の女性が30代の男性に殺されたのだ。被害者と加害者はまったく面識がなく、犯人は「女性たちから無視されるから犯行に及んだ」と供述した。

「女だから」という理由だけで女性が殺害されたこの事件は、韓国のフェミニズムに一気に火をつけた。私が韓国に行った際、出会う人が全員「フェミニストです」と自己紹介した背景には、このような悲劇があったのだ。「殺されたのは私だったかもしれない」という感覚。特に若い世代にはその思いが強いようだった。

そんな江南のミソジニー殺人事件を受けて韓国で出版されたのが、『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』である。同書も1812月、タバブックスより翻訳出版(すんみ・小山内園子 訳)された。

 本書の「はじめに」で、著者のイ・ミンギョンさんはこの事件以降、「もうそれまでと同じようには生きることができなくなりました」と書く。そして男性たちに、事件のことやミソジニーやフェミニズムについて説明することに、ひどく疲れたことを吐露する。なぜなら、「なんでそれが女性嫌悪なわけ?」とか「いまや女が弱者でもあるまいし……」「おまえ、ひょっとしてフェミニスト?」なんて言葉で話を遮られ、傷付けられるからだ。

「男性に理解させるために、どうして私たちがこんなに大変な思いをしなきゃいけないんだろう」

 本書は、そんな彼女が編み出した想定問答集のような一冊だ。もちろん、前提として、話したくない時は話さなくていいし、苦しい思いをして答える必要はないことが強調されている。

 読みながら、「共感の極み!」と何度も叫びそうになった。

なぜなら私は日々、無理解な男性に理解してもらいたい一心で、「必殺! フェミ返し」と名付けた技を編み出し、使っているからだ。例えばそれは、東京医科大学の入試において女子が一律減点されたという問題について語っている時などに使用する。その場にいた男性が「でも、医者はやっぱり激務だし、仕方ないんじゃない?」なんて口にした瞬間、「よっしゃ! フェミ返し行きます!」と頭の中でゴングが鳴るのだ。試合開始の合図である。

「では、入試や就職試験という人生を左右する機会において、『男性だから』という理由で一律減点されたらどう思いますか? 自分がもし同じことをされたら、『しょうがないか、男だもんな』と容認できますか?」

「フェミ返し」とは、このように男女を入れ替えることである。そのことによって、非対称性を理解してもらおうという技だ。ちなみにこれは本当に偶然だが、韓国の「ミラーリング」と一緒である。

 さて、「フェミ返し」された相手は一瞬口ごもるが、大抵の場合、「でも、女の人は子ども生んだり子育てしたりもあるから……」というようなことを言ってくる。そこで今度は、OECD諸国平均では医者の女性の割合は45%で、日本は最下位の20%であること、諸外国では妊娠、出産しても女性が医者を続ける制度が整っていることなどを主張する。

 そのくらいまで言うと相手は黙るのだが、まぁ、空気は最悪だ。みんなの顔に「メンド臭ぇ女……」とはっきり書いてあるのがよく見える。

 そのたびに、思う。なんでプライベートで人と話してるだけなのに、「朝生」論客ばりに神経を尖らせなくちゃいけないのか。なんでわざわざ嫌われ、場を白けさせてまで「理解されよう」としているのか。しかもなんで少なくない男性は、この手の話題になると「お前が俺様にわかるように話すのが義務」みたいな感じで「はいはい聞いてやるよ、お手並み拝見」みたいで偉そうなのか。

そういう一つひとつにどっと疲れるのだが、この本の著者のイさんは、私とまったく同じ理由で疲れ果てている。いたよ、韓国に。私とまったく同じ徒労感を抱える女が。それを知れただけで、本書は読む価値がある。いつかマッコリ飲みながら、日韓女子会でも開催したいものである。

 しかし、徒労感を抱えながらも韓国の女性たちは元気だ。本書の冒頭「日本の読者のみなさんへ」で、イさんは以下のように書く。

「韓国では江南駅殺人事件以降『どんなことにも屈しないでいこう』と叫ぶ女性たちが集まって、自分を、そしておたがいを、蔓延する暴力から守りはじめています。数万人で街に繰り出して『MeToo』と叫ぶ、中絶の権利を要求する、違法な盗撮を糾弾するデモを行う。そうやって世の中を変えている真っ最中です」

江南駅殺人事件が起きた16年の暮れには、朴槿恵大統領の退陣を求める「ろうそく革命」のデモ参加者がのべ1000万人を突破した。翌年、韓国では政権が交代。数カ月にわたって続いたろうそく革命の現場ではフェミニズムも大きなテーマとなっていたという。

 たて続けに読んだ2冊の韓国の本に胸を熱くしていた2月、『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョさんが来日。イベントをするというので駆け付けた。

 満席の紀伊國屋ホールを埋め尽くしていたのは、多くが若い女性だった。マスコミ席には、ファッション雑誌『VOGUE JAPAN』もいれば、政治や社会問題を扱う雑誌『週刊金曜日』もいて、今にも時空に歪みが発生しそうだった。

舞台の上で、チョさんはろうそく革命や女性たちが声を上げている韓国の現実に触れ、「自分たちは、声を上げれば世の中が変わると体感している世代」と口にした。そうしていくつかの事例を紹介した。性差別発言をした有名人に女性たちが抗議し、発言を撤回させた例。盗撮反対デモが開催されたこと。「#MeToo」加害者が実刑判決を受けたこと。みんなそれを見ているから、声を上げれば世の中が変わると体感していること。

 1978年生まれのチョさんは、私より3歳下だ。そんな彼女がろうそく革命やフェミニズムのムーブメントを語り、「被害者への連帯」が大切だと口にし、「私たちは社会を変えられると共有している世代」とまっすぐ言う。活動家ではなくて、ベストセラー作家がそう口にする。そんな姿が、ただただ眩しかったのだった。

これからも、韓国のフェミニズムからは目が離せない。そしてそこには、私たちが今日から使えるヒントが詰まっているのだ。

 ※そんな韓国の動きに刺激され、私も女子にまつわる呪いについて『「女子」という呪い』という本で書きました。本書では、韓国のフェミニストグループ”ロリータ・パンチ”にも取材しています。ぜひ!


最後の悲鳴に心を・・・

2019年03月05日 | 教育・学校

きょうの潮流

「しんぶん赤旗」201935

 「身を切る」という政策のもと、教員、公務職員は減らしに減らし続けられてきた。公務の本質である「奉仕者」という役割が果たしきれなくなっている…。▼千葉県野田市で起きた虐待死。みんなで解決の糸口を見つけようと、日本共産党のおだ真理市議はブログにつづり続けます。もうこれ以上、子どもが苦しめられないように。そんな願いから、この間の“公務員バッシング”の罪を問うています▼人減らしと同時に目を向けるべきは「専門性を奪われてきた歴史」だと、ブログを読んだ小学校教員は言います。「削られたのは人の数だけでなく専門性、専門的力量、専門職としての誇りや、やりがい。数え切れないほどの大切なことが奪われてきたのだ」と▼「スタンダードでそろえよ」「例外を許さないゼロトレランス(寛容度ゼロ)を」と画一的な対応を教師に迫り、「評価」で脅す。専門職が専門職として存在すること自体を許さない構図です。学校を、命をはぐくむ場ではなく、命を削る場におとしめようとしています▼「先生、助けて!」。最後の悲鳴に心を寄せられない「専門職」にしてしまったのは、いったい誰なのか。その反省もなく、「しっかり対応を」と現場を締め付けても、目の前の子どもは苦しむばかりです▼形ばかりの「再発防止策」を急ぐ。そんな繰り返しはもうやめたい。思いを集め、知恵を寄せ合い、子どもに幸せをもたらす道を模索したい。かけがえのない命を守るたたかいが今、おとなたちに求められています。


再びの「アイ アム ノット 安倍」!

2019年03月04日 | 社会・経済

「トランプ大統領にノーベル平和賞を!」アメリカべったりな首相を持つ日本人が世界に発信すべき言葉は......やっぱりコレだ!

    週プレNEWS

「安倍首相からノーベル平和賞に推薦された」

   2月15日の会見で、トランプ大統領が発したひと言が波紋を呼んでいる。

   トランプ大統領によれば、推薦理由は「北朝鮮からミサイルは飛んでいない。私が北朝鮮と話をつけたためだ。それを日本が感謝してのこと」だという。

   安倍首相のトランプ大統領へのすり寄りぶりは目に余る。大統領当選直後、首相がゴルフクラブを手土産に各国に先駆けてお祝いに駆けつけたシーンはなんともみっともなかった。

   トランプ大統領に「米国製武器を買え」と要求され、即決でイージスアショアやF35などの「爆買い」も約束した。そして、今回のノーベル平和賞推薦だ。野党から「恥ずかしい」と批判の声が上がるのはもっともだろう。

   ただ、今回の一件はトランプ大統領に対する安倍首相の「ポチぶり」を批判すれば、それで済むという問題ではない。日本にとって、もっと深刻な問題を孕(はら)んでいる。なぜか?

    つい最近、トランプ大統領はアメリカと旧ソ連が中距離核ミサイルの全廃に合意したINF条約から一方的に離脱した。これは、ロシア、中国との新たな中距離核ミサイル配備競争に入るという事実上の宣戦布告だ。

    そのほかにもトランプ大統領はイラン核合意離脱で中東安定化に向けたEUなどの努力に水を差し、エルサレムへの米大使館移転でイスラム社会の強い反発を呼ぶなど、和平どころか中東の不安定化を増幅している。

  TPP脱退、地球温暖化対策の「パリ協定」離脱などの問題外交もあり、トランプ大統領には、多くの国々が「世界平和を乱す問題児」と警戒を強めている。

   そのトランプ大統領の言葉によれば、安倍首相は「日本を代表して」ノーベル平和賞に推したそうだ。これには、世界中のメディアも驚いた。米NBCニュースでは、「目が飛び出る瞬間」と揶揄(やゆ)された。

このままでは、世界の人々は北のミサイルを封印して自国の安全さえ確保できれば、日本は世界平和には無関心なのだと誤解するだろう。その悪イメージは平和憲法を持つ本来の日本の姿とは正反対だ。

    今必要なことは、日本国民が積極的に「アイ アム ノット 安倍」と発信することだ。

   トランプ推薦は日本人の総意ではない。トランプ大統領の外交は世界平和にとって危険で、とてもではないがノーベル平和賞には値しない。私たち日本人は、トランプ大統領に追従し続ける安倍首相とは違う!――そんな断固たるメッセージを世界に向けて今こそ送らないといけない。

  2015年1月、私はフリージャーナリストの後藤健二さんがイスラム国の人質になっているにもかかわらず、中東を外遊した首相が「イスラム国と戦う周辺国に2億ドルの支援を行なう」とぶち上げたことに抗議し、「アイ アム ノット 安倍」と発信しようと、『報道ステーション』(テレビ朝日)で呼びかけた。

    首相の言動は後藤さんの生命を危うくすると憂えたからだ。そのせいで官邸から圧力を受け、私は『報道ステーション』を降板する羽目になった。そこで、最後の出演の際に掲げたのが、あの英語で書かれた「アイ アム ノット 安倍」のフリップだった。

    恐れていては平和はやってこない。私は今こそ「アイ アム ノット 安倍」を再び掲げたい。

 

古賀茂明(こが・しげあき)1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

 


今日も+気温となり、早くも雪解けモード。
沼の氷もすっかり緩んできた。


高温に関する異常天候早期警戒情報」なるものも発表された。

北海道・東北・北陸地方に向けて

 ▼平均気温の平年との差

北海道 +2.3℃以上 (3/9頃からの一週間)

 東北   2.4℃以上 (3/9頃からの一週間)

 北陸  2.5℃以上 (3/9頃からの一週間)

 ということで、今でも十分暖かいのに週末からはさらに暖かいようで、融雪がどこまで進むか気になるところです。

 農作業も種まき作業が始まっています。


「糸ようじ」のお話です。

2019年03月03日 | 健康・病気

都内ドラックストアやヨーカドーでも販売中・テフロン樹脂のデンタルフロスで血中の有害フッ素化合物が上昇――子どもの脳発達障害も

My News Japan  02/28 2019

植田武智

  都内のドラッグストアで見つかったテフロン系樹脂を使ったデンタルフロス。使い続けると有害な有機フッソ化合物の血中濃度が上がるリスクがある。

 米国で今年1月、一部のデンタルフロスを使うと有害化学物質が体内に吸収され蓄積していく、という研究結果が発表された。有害化学物質とは、有機フッ素化合物の一種で、国際的にも使用禁止措置が検討されているもので、腎臓や精巣のガンを増やす、甲状腺ホルモンをかく乱し子どもの脳の発達にも影響する――など人体への有害性が指摘されている。アメリカにおける汚染地域の子どもたちの調査では、物質の血中濃度が高いほど発達障害を発症するリスクが上がることも分かっている。その物質が溶け出すデンタルフロスは、糸の素材にテフロン樹脂(PTFE)を使ったもので、アメリカではメジャーなもの。日本ではナイロンやポリエステルを使ったフロスが主流だが、都内スーパーやドラッグストアを調べたところ、種類は少ないものの、イトーヨーカドーやウエルシアなどで、テフロン樹脂を使ったフロスが販売されていた。フロスの材質表示を見て「PTFE」とあるものは避けた方がよい。

 

【Digest】

◇一部デンタルフロスの使用で血中濃度が25%アップ

◇有害なデンタルフロスの見分け方

◇国際的に禁止措置を検討中の有機フッ素化合物

◇発達障害のリスクを上げるPFHxS

 

◇一部デンタルフロスの使用で血中濃度が25%アップ

 歯と歯の間の歯垢を掃除するために使うデンタルフロス。一部の商品を日常的に使っていると、有害化学物質が体内に蓄積するというショッキングなニュースが、医師向けニュースサイトメディカルトリビューンに1月29日に掲載され話題になっている。

アメリカの報道では、P&Gの「Oral B Glide floss」という商品が、名指して報道されている。

 元になった論文は今年1月8日に発表されたもので、有害とされる化学物質は、後で詳しく述べるが、「有機フッ素化合物(PFAS)」というもの。

 撥水・撥油性が高く、テフロン加工のフライパンや、防水スプレー、家具やカーペットなどの防汚処理、フライドポテトやハンバーガーの包装用紙、消火器などに広く使われている。

 アメリカ人の98%の体内から検出されるという報告もあり、健康影響が懸念されている。

 ただ過去の調査では、《こびりつかないテフロン加工のフライパン》のような調理器具は、主要な暴露源ではなく、フッ素コーティングされた包装用紙の方が、ばく露量が多いことが分かっている。

 今回の論文は、178人の女性を対象に、11種類の有機フッ素化合物の血中濃度を計り、また様々な消費行動についてのアンケートも実施し、特定の消費行動と有機フッ素化合物のばく露に関連が無いか調べたものだ。

 防汚処理をした家具・カーペットの使用や、フライドポテトなどの包装用紙などの利用でも一部の有機フッ素化合物の血中濃度が増えていた。

 特にP&G社の「Oral B Glide」というデンタルフロスをはじめとする、PTFEというテフロン系の樹脂で作られたフロスを使っている女性たちでは、不使用の女性たちと比べて、有機フッソ化合物の一種である「パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)」の血中濃度が、25%高かった。

 研究を行ったサイレントスプリング研究所のキャサリン・ボロノウ博士は、「今回、PTFEをつかったデンタルフロスの使用により、有機フッ素化合物の体内蓄積リスクが高まることが初めて示唆された。われわれの調査結果に基づき、消費者は有害な有機フッ素化合物を含まないデンタルフロスを選ぶ必要がある」と勧告している。

◇有害なデンタルフロスの見分け方

 日本では、P&Gの.....
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