●曽野綾子さんの著書『「いい人」をやめると楽になる』(祥伝社黄金文庫)はすでに35刷。背負っているものを降ろして、自然体で生きたいと願う人が多い。
●曽野さん自身が「いい人」をやめて楽になったのか、非常に痛快なホンネ文章が次々に飛び出てくる。そんな箇所を2~3紹介してみたい。
・・・私も昔不眠症をやった。私の場合は、よく寝て、頭をクリヤーにしておかなければ、いい作品が書けない、という一種の幼稚な責任感からであった。
しかし今はまったくそう思わない。寝不足で朦朧とした頭で書いたものでも、小説は小説だ。そんなものを編集部に手渡すことはもちろんいいことではないのだが、人間はいいことだけをして生きているわけではない。
それどころか、いい加減にその場その場でお茶を濁してこそ、生きていけるのだ。それがわかれば、時には知らん顔して駄作を編集部に渡すくらいの小さなサギは、して当然というものだろう。
むしろこうした自分の姿が明瞭に見えるくらいのほうが、重厚な小説が書けるというものである。・・・
「知らん顔して駄作を編集部に渡すくらいの小さなサギはして当然」
というくだり、なかなか言えるものではない。
●「いい人」をやめたければ、自分の世界をひとつ持つことが良いようで、こんなことも書いている。
・・・
大人になると自分にない才能を持つ人がこんなにもいるということに驚いたものである。
私が楽だったのは、たった一つ小説という分野を自分の専門として守っただけで、後は持ち前の依頼心の強さに戻り、人はすべて先生と思い、その人の得意なことはできるだけなすりつけて、「してもらった」ことである。
・・・
●余分な荷物を降ろすことが大切だ。同時に、ビジネスする上では、使命感や目標をもつことが欠かせないが、それは余分な荷物とはいわない。
それらは外側に背負い込む荷物なのではなく、内側に必要な燃料の役目をするのである。
それが燃料なのか荷物なのかを見極めることができるのはあなただけだ。
★『「いい人」をやめると楽になる』(曽野綾子著、祥伝社黄金文庫)
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