先日の金環日食見物旅行で苫小牧から仙台まで乗船した太平洋フェリー「きそ」。日本で1、2を争う豪華フェリーの同船について、今回は紹介します。
苫小牧フェリーターミナル
太平洋フェリーは、苫小牧から仙台を経由して名古屋までの1330kmを、約40時間かけて結んでいます。今回は苫小牧から仙台までの560km、15時間の区間乗船でした。苫小牧港は太平洋フェリー以外に商船三井フェリー(~茨城・大洗)やシルバーフェリー(~青森・八戸)も発着しており、さらに少し離れた苫小牧東港から新日本海フェリーの敦賀、新潟方面の船も発着する、北海道の海の玄関と言える一大フェリーターミナルです。
苫小牧フェリーターミナル停泊中の「きそ」
太平洋フェリーはターミナルビル正面の一等地に停泊していました。
ライバル?新日本海フェリーのフリートとの比較
太平洋フェリー「きそ」(2005年就航)と「いしかり」(2011年就航)はほぼ同型で、全長199.9m、全幅27m、1万5800総トンのサイズがあり、太平洋側を航行する各社のフェリーの中では最大級です。客室3層+乗員区画1層の計4層に及ぶ大きなハウスが特徴的です。この大きなハウスの中に、後述の数々の豪華設備が配されています。
一方、新日本海フェリーのフリートは冬の日本海を安全に航行するため、他社よりも大きく速い船を就航させています。苫小牧東~敦賀航路に就く「すずらん」(1996年就航)は、全長199.9m、全幅25m、1万7345総トンとほぼ「きそ」と同サイズですが、エンジンの最大出力は倍の6万4000馬力もあり、約30ノットの高速航行で僅か20時間程で敦賀まで着いてしまいます。他のフェリー会社と比べると、こちらも豪華な船内設備を誇りますが、太平洋フェリーと比べると目的地までの乗船時間が短いからか、「きそ」や「いしかり」よりもコンパクトに纏まっています。
ちなみに間もなく、今年6月にはさらに一回り大きな新造船「すずらん」が同航路に就航します。
エントランスロビー
左舷の乗船口から「きそ」の船内に入ると、そこは5階(客室フロア1層目)のエントランスロビーです。今回私が利用したB寝台部屋はこの階の最後尾にありました。また、この階には大浴場、ショップ、ゲームコーナー、キッズルーム、カラオケルームなどの施設があります。
案内所に隣接して、かなりの広さのショップが設けられています。食料品や日用品、北海道、東北、東海の各就航地土産が揃っており、さすがに日本一の豪華フェリーといえる品揃えでした。
案内所の右舷側にはキッズルーム。客層はご高齢のツアー客の方が大半だったので、お孫さん向けなのかな・・?
今回私が利用したB寝台部屋。一般的な2段ベッドと異なり、1段目と2段目が互い違いに並んでいて、気兼ねなく寝台に入れます。今回は早めに乗船したからか、窓際の寝台を指定されたので個室感覚で気楽に過ごせました。
ちなみに、新日本海フェリーの新造船でも同じ形式の寝台部屋が設置されます。
再びエントランスロビーに戻り、階段の吹き抜けを見上げてみました。3層吹き抜けで、何やら光るオブジェが正面に設置されています。
1階上に上った6階から吹き抜けを望むと、フェリーの船内とは思えない贅沢な空間配置に驚きます。ちょっとした商業施設並みの広さですよ・・
6階ロビーです。向かって左が右舷側、右が左舷側です(ややこしい・・)。正面がシアターラウンジで、右奥に進むと展望通路を経由してレストランに辿り着きます。
右舷側後方にあるOAコーナー。コンセント完備で、電気泥棒と言われる心配なく、堂々とパソコン作業が出来ます。
左舷には喫茶コーナーのマーメイドクラブがあります。航海中にはピアノ演奏も行われ、ここでティータイムを優雅に過ごせます。
マーメイドクラブ・カウンター席。マーメイドクラブではアルコールや軽食も取り扱っており、レストランのバイキング以外のものを食べたいときに重宝します。
展望通路「プロムナード」。マーメイドクラブからレストランまでの通路なのですが、窓に沿って立派な椅子とテーブルが置かれていて、居心地の良い雰囲気でした。新日本海フェリーにも展望通路は設置されていますが、こちらの方が内装は凝っていますね・・。
レストラン「タヒチ」。苫小牧出航は19時でしたが、レストランは18時からオープンしており、私も乗船後すぐにディナーを食べに入りました。これまた某瀬戸内海のフェリーのレストランとは世界観の異なる、とてもお洒落な雰囲気の内装で、美味しくご飯を食べられました。
この船では、レストランは朝昼晩全てバイキング形式となっています。好きなものを好きなだけ食べられる反面、意外におかずのバリエーションが少なかったりするので、これは一長一短ですね。日本一豪華なフェリーではありますが、食事については船室の等級差はなく、コースディナーなどの設定はありません。
6階の中央に位置するシアターラウンジ「サザンクロス」。他のフェリーでは考えられない、非常に豪華な施設です。新日本海フェリーなどでも、バブル期に就航した船では舞台完備のラウンジが設けられていましたが、今の船ではシアタールームとして簡素化されています。
舞台側から見た様子。客席数も多く、雰囲気はまさに豪華客船のそれです。
ラウンジショー
今回は20時からショーが行われました。中国の伝統楽器、"揚琴"とピアノのセッションで、島唄や蘇州夜曲、朧月夜などの名曲をたっぷり1時間にわたって楽しめました。
ショー終了後に撮影した揚琴のアップ。計165本もの弦が張られていて、とても演奏が難しそうです。演奏者は、中国・上海出身の金亜軍氏でした。軽妙なトークと美しい演奏で素晴らしい夕べを過ごしました。
金亜軍 揚琴 鏡音リン「炉心融解」
ちなみに、この演奏者の金亜軍氏、こんな演奏もこなしてしまうそうで、凄いですね。
民族楽器でボーカロイド曲を弾くとは・・。
22時からは同じ場所で映画上映。新日本海フェリーだと、昼間の上映で少々勿体無い(せっかくの景色が見られないので)気もしますが、こちらではレイトショーの気分で映画を観られます。この日のタイトルは「マイティ・ソー」でした。北欧神話の神(別次元に住む宇宙人?)が現代アメリカにやってきて、なんだか分からないけど大活躍する、いかにもアメリカンテイストな内容で面白かったです。
船内にはスタッフ紹介の掲示もありました。客船では見かけますが、フェリーではかなり珍しい取り組みですね。この辺にも、日本一豪華なフェリーの心意気が感じられます。
太平洋フェリー「きそ」と「いしかり」では、トリスのキャラクターなどを手がけた柳原良平氏が名誉船長を務めており、柳原氏の絵画が船内各所に飾られています。こちらは七福神の宝船を模した絵ですね。
太平洋フェリーも、昨年の震災で仙台港施設に大きな被害を受けましたが、早くから復興のための足として運航を再開し、貢献してきました。
船内の所々に、東北を支援する掲示がなされており、エントランスロビーの椅子にもさりげなく"がんばっぺ東北"というメッセージボードを持ったプーさんが置かれていました。
私は大の新日本海フェリー好きであり、今回初めて太平洋フェリーを利用しましたが、さすがは日本一豪華なフェリーといわれるだけはあるなと感動しました。様々な施設のおかげで、船内で暇を持て余すことがまったくありませんでした。今回は苫小牧から仙台までの区間乗船でしたが、いずれは名古屋までフルで乗船してみたいと思います。
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