面白く、そして下らない

私は批判をして何かを為した気になっている大衆の一人に過ぎないが、何か少しでも波紋を起こす小石になれればと書いている。

「愛国心はならず者の最後の拠り所」という箴言の真実

2019-04-24 22:55:52 | 日本人への呼びかけ
「愛国心はならず者の最後の拠り所」という箴言は左翼が愛国心を貶めるために使う古人の箴言だと思っていた。実際左翼はそのような用法でこの箴言を使う。

しかし「愛国心はならず者の最後の拠り所」と言った英国人文学者サミュエル・ジョンソンはそのような意味で述べたわけではなかった。

ウィキペディアからの引用になるが、

~~引用ここから~~
サミュエル・ジョンソン

(略)

語録

「愛国主義は不埒なやつらの最後の隠れ家だ。」

この言葉は1775年4月7日の夕方にジョンソンが述べたものである。

広く信じられているのとは異なり、この言葉は愛国主義一般に関するものではなく、スコットランド出身の愛国的な政治家第3代ビュート伯爵ジョン・ステュアートとその支持者、さらにはビュートのイングランド系ではない出自につけこもうとする政敵たちが「愛国主義」という言葉を乱用していたことが背景にあり、とくにジョンソンはビュート伯爵に敵対して愛国をかかげていたジョン・ウィルクスに対して非常に批判的であった。

ジョンソンは「自称愛国者」一般に対して批判的だったが、「真の」愛国主義と自らが考えるものについては評価していた。

愛国主義に真贋を定める発想は前年1774年から既に見られ、この時ジョンソンは

「アメリカに対する権利侵害などという馬鹿げた主張を正当化する者は愛国者ではない。(中略)植民地は英国の保護のもとで安定し、英国の憲章によって統治され、そして英国の武力によって防衛されてきたのだ。」

と語り、ジョージ・ワシントン率いる独立運動家を似非愛国者として痛烈に批判している。

(略)
~~引用ここまで~~


サミュエル・ジョンソンは「自称愛国者」や「口先だけの愛国心」といったものは批判すべきだが、真の愛国心(サミュエル・ジョンソンがそう考えたものとあるが)は評価すべきだと考えていた。

そうだとすると「愛国心はならず者の最後の拠り所」という箴言は意味合いが違ってくる。戦後日本で「愛国心」などというと右翼や軍国主義者扱いされたものだが、「愛国心」そのものは評価されるべきものだからだ。

明治以降この「愛国心の暴走」といったものしばしば起きるもので、ロシア帝国の皇太子で後の皇帝ニコライ二世を襲った護衛の警察巡査だった津田三蔵。津田三蔵の動機は諸説あるが。

日清戦争の講和交渉中に現時点で講和することは日本にとって不利益になると考え、清国全権大使李鴻章を狙撃した「右翼」の小山豊太郎。これは大津事件同様近代国家としてはあってはならない出来事で、明治天皇が見舞いの使者を送り講和の条件をいくらか譲歩することになった。

そして二二六事件。農村の窮状を憂いた青年将校らが天皇親政の新しい國を造ろうとして、起こしたクーデター未遂事件。重臣を殺害された昭和天皇は激怒し「朕自ら近衛師団を率いて反乱軍を討つ」とまで述べられた。

作家で戦中は海軍に入隊していた阿川弘之の言葉を引用する。原典がないので孫引きだが。

~~引用ここから~~
 陸軍にいたことがないから分からないけど、陸軍には海軍のような空気はなかったんじゃないですか。何が何でも天皇絶対、そう言って天皇さんの御意志を徹頭徹尾踏みにじったのが陸軍なんだ。

 この間、二・二六事件の生き残りの人達の座談会が「文藝春秋」にのっていたのを読んで、非常に不愉快だった。吐き気を催しましたね。当時反乱軍の将校だった生き残りの一人が、

「つまり陛下が二・二六事件を失敗に追い込んだということですね。私は、今でも天皇が大相撲にお見えになると、ああ、この方がわれわれの事件を潰したんだなあ、と思いますよ(笑)。パチパチと手を叩いておられるけれども」

 と言っているんです。要するに今の陛下(昭和天皇)のお考えが自分らの国家革新理念とちがっていた、それで自分らひどい目にあわされた。つまらん人だねぇ、今どき相撲見てパチパチ手なんか叩いて、いい気なもんだねえということでしょ。

こんな無茶な話がありますか。天皇絶対と言いつのっていた彼らが一番陛下をないがしろにしてるんだが、「絶対」なのは、実のところ自分らの信念で、欲しかったのは自分たちの言う通りになってくれるロボットの天子だった。ひどい話ですよ。

七十、八十になっても、それが昔のままとは驚くべきことで、この情念は、何かきっかけがあればすぐ極左の理念に結びつくと思う。

(『国を思うて何が悪い』光文社)
~~引用ここまで~~


二二六事件に関しては青年将校らに多少同情するべき点があったと考えていたが、

「欲しかったのは自分たちの言う通りになってくれるロボットの天子だった」

という阿川弘之の分析を読むとその通りだと同意せざるを得ない。

この二二六事件で政党政治は崩壊したからだ。五一五事件でもう終わっていたが。

そして議会が完全に死んだのは、斎藤隆夫衆議院議員が「反軍演説」(反戦演説と称すべきだと考えるが)をした際に、衆議院自体が軍に媚びて斎藤隆夫衆議院議員を除名処分にした時点だと考えている(受け売りだが)。

信念や愛国心に基づいたものならどんな手段も正当化されると考えてはならない。真の国益を考えなければならない。戦前でさえ口先だけの愛国心で実際は自分の面子や出世が大事な軍人や官僚が多かった。今の政治家や官僚にも愛国心があるのか疑わしいが。

左翼の世迷い言に騙されてはならない。「真の愛国心」は評価されるべきものだ。

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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2020-11-17 09:59:02
だからそういう客観性のない自己正当化や
反対意見を言うものへの偏見をもつものが
お話にしてる「偽物の愛国者」ってことでは?
返信する
Unknownさんへ (ぬくぬく)
2020-11-17 23:31:31
コメントありがとうございます。

左翼はそのような意味で「愛国心」を否定していますかね?「愛国心」に言及する人間は全て「右翼」で「軍国主義者」で「人間の屑」扱いしているように思えますが。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-11-18 10:00:28
こちらこそご丁寧なレスありがとうございます

ネットには様々な人がいますので、どんな思想を
ひけらかすひとのなかにも不埒者は存在しますよ
そしてそういう人間のほうが記憶に残りますから
不特定多数を眺めていれば
まるっきりの事実無根とは言えないですよね?

それはともかく、愛国心というのは
別に言ったもの勝ち宣言者総取りのシステムで
有無が決まるものではないですからね
右翼思想者の専売特許でもないし、誇示したり
相手の主張を遮るために使うものでも
他人に何か強いるために使うものでも
体制を批判すると消失するものでもないです

美しい響きの言葉で、突きつけられると
言われたほうがつい鼻白む性質を持っていますが、
それだけに昨今都合よく世間では濫用されてる
ように思います

まあ、自分が絶対的に正しく、それに反対するものは
絶対に間違ってる、悪いヤツだと頑なに決めつけるのは
危険な兆候なのでそこは常に自己を戒めるのが
正気を保つ秘訣だと思いますよ
べつに左翼は左翼の愛国心もあるでしょうし
人間て生き物は自分が絶対正しいと確信したときに
一番残忍になる存在でもあるので
返信する
Unknownさんへ (ぬくぬく)
2020-11-25 22:28:48
返事が遅れてすみません。調子を崩していたもので。

朝日新聞などの日本を代表するような左翼は愛国心もナショナリズムにも否定的ですよね。「偏狭なナショナリズム」などとさも悪いもののように決めつけます。

愛国心を持つ左翼もいると思うのですが、朝日新聞などの反日左翼が目立ちすぎるので影に隠れて見えないですね。

もちろん愛国心、ナショナリズムには負の側面がありますから扱いが難しいものではあるのですが。
返信する
Unknown (Unknown)
2021-03-14 22:50:21
右翼は真の愛国心を持っていますか?
返信する
Unknownさんへ (ぬくぬく)
2021-03-14 23:47:56
コメントありがとうございます。

どうでしょう。持っている人もいるでしょうし、口先だけの愛国心でしかない人もいるでしょう。
返信する

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