面白く、そして下らない

私は批判をして何かを為した気になっている大衆の一人に過ぎないが、何か少しでも波紋を起こす小石になれればと書いている。

厚生労働技官は森鴎外か?

2020-05-02 23:59:13 | 政治
~~引用これから~~

<新型コロナ>「入院不要」83歳死亡 当初検査断られ→陽性後も待機→自宅で急変

 救急搬送先の検査で新型コロナウイルス感染が判明したのに、保健所から自宅療養を求められた埼玉県内の八十三歳の男性が急速に重症化し、四月二十七...

東京新聞 TOKYO Web

 


 救急搬送先の検査で新型コロナウイルス感染が判明したのに、保健所から自宅療養を求められた埼玉県内の八十三歳の男性が急速に重症化し、四月二十七日に死亡していたことが、遺族らへの取材で分かった。医療関係者からは「重症化リスクの高い高齢者に対する対応としては不適切だった」との声も上がっている。 (佐藤直子)

 男性の長男(55)によると、男性は四月初旬から発熱やせき、味覚障害など新型コロナウイルスの特徴的症状が続いたために地元の病院を受診。しかし、解熱薬を処方されただけで自宅に帰された。心配になった男性は、数日後に地元の狭山保健所に「PCR検査をしてほしい」と訴えたが、自宅療養を指示された。

 男性はその後一~二日で症状が悪化。救急搬送された国立病院機構西埼玉中央病院(同県所沢市)で検査を受けた。入院はできず、検査結果は翌日、保健所を通じ陽性と伝えられたが、保健所は再び自宅療養するよう指示。男性は「陽性だから入院させてほしい」と頼んだが、断られた。

 その一~二日後に男性の容体は急変し、別の病院に搬送された。この時点で人工呼吸器が必要なほど重症化しており、四月二十七日に死亡した。

 男性の入院後、妻(80)も検査で陽性と判定され、現在は入院、治療を受けている。

 長男は「父が検査を受けられたのは発症の約十日後。もっと早く検査してほしかった。陽性でも入院を断られ自宅待機では、放置と同じだ」と訴える。

 これに対し、狭山保健所の保健予防推進担当は「検査は医師らの所見に応じ行う。入院も医師らの判断に任されている」と説明。西埼玉中央病院の山崎悦伸管理課長は「男性は即入院が必要な症状ではないという医師の判断は適切だった」と話した。

 埼玉県では四月、東松山市の七十代男性や白岡市の五十代男性が、陽性判定されたものの軽症と診断され、自宅待機中に容体が悪化して亡くなっている。

 蔵前協立診療所(東京都)の原田文植(ふみうえ)所長は「今回の場合、重症化リスクが高い高齢男性ということを考え、西埼玉中央病院はほかの病院を紹介してでも入院させるべきだった」と指摘。検査が遅れたことについては、「陽性判定されればできる治療もある。ずっと検査が抑制されており感染を確定できない状況が続く。放置され重症化するケースはもっと増える」とPCR検査の拡充を訴えた。
~~引用ここまで~~


この埼玉県の男性の例だけで決めつけるのは早計かもしれない。今回の記事に私の結論は書くが、有力な反対意見もあっていつものように断定口調では言えない。感染症については専門外なんてレベルではないし、私は医師ではないからだ。

だがこの悲劇は政府の新型コロナウイルス対策会議の専門家会議、あるいは厚生労働省の医系技官がPCR検査の数を抑えるよう通達したことから起きた悲劇ではないか。

明らかに具合が悪いのにPCR検査を受けられず、解熱剤の処方のみで時を浪費する。症状は悪化する一方で保健所に検査を申し出ても断られ急激に悪化し、何とか検査は受けられたが、自宅療養を指示され入院はできなかった。違う病院に搬送されたが、もう重症化しており、この時点では治療しようがなかったのではないか。

初期の内ならアビガンを投与すれば助かったかもしれない。アビガンの承認は済んでいないが、病院の責任でアビガンを使うことができるのだ。これも厚生労働省の責任逃れに思えるが、日本は無駄な規則が多すぎるのだ。だからアビガンの承認に時間が掛かるのではないか。

PCR検査を抑制するよう新型コロナウイルス対策会議の専門家会議か厚生労働省による通達があったのでこのように見捨てられる人が出てくるのだ。決して少ない数ではない。

政治家は専門家ではない。医師でもない(医師免許を持つ国会議員もいるはずだが)。専門家の意見を受け入れるしかない。

しかしそれは日露戦争の森鴎外ではないか。脚気には麦飯が効くという海軍の判断を受け入れられず握り潰し、脚気で27000人もの戦病死者を出した。脚気で死期を悟った兵士がせめて銃弾に撃たれて名誉の戦死をしようと無謀な突撃をして戦死したという話は少なくないから脚気による死者はさらに多い。

時の首相桂太郎も時の陸軍大臣寺内正毅麦飯を推奨していたというが、「ドイツ帰りの森鴎外」の「専門家」としての意見が採用された。驚くべきことに明治天皇その人が麦飯の効能を認めた海軍の医務局長であった高木兼寛を3度も陪食に招いたそうだ。森鴎外のみならずドイツ帰りの医師がこぞって批判したそうで、明治天皇は医師を信用しなくなったとされる。

新型コロナウイルス対策会議の専門家会議の専門家ないし、厚生労働省の医系技官が専門家であることに驕り誤った判断を下しているように思えてならない。

だが、次の引用記事は検査を増やすべきと意見への有力な反論だ。検査数を抑制したことが國の方針として必ずしも間違いとは言い切れない。PCR検査を闇雲に増やすことは院内感染やその人が所属するコミュニティ内での感染に繋がるというのだ。

~~引用ここから~~

新型コロナウイルス「最前線の医師」が語った本音 | デイリー新潮

新型コロナウイルス関連の報道では、数多くの医師がメディアに登場して、自身の知見を述べている。…

デイリー新潮

 


(略)

――テレビに出ている「専門家」の強い主張の一つが、「とにかくPCR検査を増やすべき」というものでした。これはどうなのでしょう? 

 これは絶対に間違いです。少しでも専門知識がある人は、全くこれを望んでいません。

 他国と日本が違うのはこの点で,本当に医師が疑った例にのみ検査をやっている点で感染の広がりをコントロールできていることは確実です。

 とはいえ確かに検査のスピードは遅かったから、そこは今改善を進めています。

 ただし、誰彼構わず検査をオーダーできるような状況を作らなかったことは100%正しかったと考えています。

 日本のように国民皆保険の国で、なおかつ感染症に詳しくない町のクリニックのようなところまでもが、自由にPCR検査をできるような環境を作っていたら、間違いなく院内感染が多発していたでしょう。おそらくニューヨークやイタリアの比でない状況になったと思います。

「かかりつけ医」に相談することは否定しません。しかし、そこに多くの人が押し寄せたら結局クラスターを発生させかねません。そういう状況を作らなかった点では、当初、検査を絞ったことは決して批判されるようなことではないのです。

 現在報告されている院内感染にしても、慣れてない人が普段使わないような感染防御具を適切でない使用をしたがために他の人や患者に感染させる例があとを絶ちません。

 ドライブスルーでのPCR検査を増やせ、という意見についても、乱暴に思います。病院外での検査体制は進めたほうがいいでしょうが、やり方を間違えるとかえって感染者を増やすことにもなりかねません。

 別の観点から補足させてください。

 毎年のインフルエンザの流行の仕組みをご存じでしょうか。

 PCR検査が注目されることで「偽陽性」「偽陰性」といった言葉もよく目にされるようになったと思います。前者は「本当は陰性なのに陽性と出ること」で後者は「本当は陽性なのに陰性と出ること」ですね。

 実はインフルエンザの検査でも「偽陽性」「偽陰性」は一定の確率で発生します。日本では「インフルエンザかな?」となったらまず病院に行って、検査をしてもらって、タミフルを飲んで、ということが当たり前に思われている方が多いかと思います。

 でも実は、こんなことをしている国はそんなに多くありません。一つには先ほどから言っているように、医療費が高い国では、そのたびに大変な料金が発生するので、いちいち検査しない、という人が多いのです。また、タミフルは病気を治す薬というよりは、よくなるまでの期間を短くする(7日が5日半になる)という性質のものです。

 アメリカならば、この検査とタミフルだけで下手をすると500ドルはかかるでしょう。だから多くの人は「家で寝て回復を待つ」のです。私もそうしています。

 ところが日本は医療費が安いことに加えて、「休むなら証明書を出せ」という習わしが学校や企業にあるので、こぞって病院に来て検査を求めるわけです。

 問題は、インフルエンザの簡易キットの感度は7割から8割なので、2~3割の人は本当は陽性なのに「陰性」という結果になります。

 その人たちは、病院のお墨付きをもらったということで、自由に動き回りますから、コミュニティの中で感染を広げます。実は、これが毎年のインフルエンザの流行の大きな原因なのです。今回のことを教訓に、「インフルの証明書がないと休めない」といったおかしな慣習はなくしてほしいものです。何にせよ具合の悪い人は休むべきです。結果としてそのほうが学校や職場のためにもなります。

 そして、今年、インフルエンザがあまり流行していないのは、多くの人が手洗い、うがいをして、なおかつちょっとでも具合が悪ければ、自ら行動を抑えるようにしたからです。その結果、「実はインフル」の人が感染を広めなかったわけです。

 話をPCR検査に戻せば、検査の無闇な拡充に反対している人たちが怖れているのは、インフル同様に、「お墨付きを得た、でも本当は陽性です」という人が感染を広めることにつながりかねないからです。

 よく韓国やイタリアのほうが日本よりも検査数が多い、といって日本を批判する人がいるのですが、これは話がまったく逆です。韓国やイタリアは最初に検査数を増やし過ぎたために、感染を広めてしまったのです。

「医療資源が無限にあり」「偽陽性の人でも全員どこかにちゃんと収容できて」「(偽)陰性の人が行動を慎んで他人にうつさないようにする」という前提がすべてそろっていれば、検査数をどんどん増やすのもいいでしょう。

 しかし、そもそも検査はそんなに簡単なものではありません。検査というのは少なくとも検体を取る人と、検体を検査する人の両者がいてはじめて検査ができるのです。仮に医師会の先生たちが頑張って検体をたくさん出しても、検査する人が増えなければ結果が出るのがより遅くなってしまいます。本当に必要な検査が滞るのです。

 もしも「やる気になればできる」と言い張る方がいるのなら、ぜひそういう人材がどこにまだ眠っているのかを教えていただきたいものです。

 検査の技術の習得は一朝一夕にはできません。だから長期的な観点では、もっと日本はこういう検査もスピーディにできるようになればいい、と言われれば「その通りです」と答えます。

 しかし、今まさに感染爆発を防ごうとしている時期に実現不可能なことを言っても仕方がありません。

 テレビに出ている中でも、自称「専門家」ではなくて、本物の専門家の先生方もいらっしゃいます。そうした方に、「日本のPCR検査数は少ないのでは」とか「より検査体制を充実させられるといいのでは」と問えば、「そうですね」と答えるでしょう。それ以外の答えをしようがありません。

 しかし、それで「それみろ、やっぱりPCR検査が足りないんだ」と言い張るのはやめてください。

 繰り返しますが、現場で本当にこの病気を診ている医者で、もっと検査数を増やせ、などと言っている人はいないはずです。

(略)

 また、特にメディアの方にお願いしたいのは、善意や問題意識からなのでしょうが、常に「国(厚労省)や都のやっていることは間違いだ」といった論調の報道は考えていただきたいところです。

 先ほども申し上げたように、日本のこれまでの対応は決して間違っていません。死者数を見れば明らかです。「世界が疑問視している」といった報道ばかりが目立ちますが、海外では日本を評価する報道も出ています。単にそれがあまり紹介されていないだけです。

 死者数が少ないことをもっとポジティヴに捉える論調が増えてもいいのではないでしょうか。

 私たちは国や都の定めた方針の中で動いており、それに背くことはありません。しかし、国も都も、いろいろと考えたうえで方針を打ち出しています。その決定過程には私たちも関与しています。

 明らかに間違った方針が出れば、私たちも声をあげます。そういう判断ができないほど現場の医師たちは馬鹿ではないのです。
~~引用ここまで~~


有力な反論だ。PCR検査を増やすべきとは思うのだが。早期発見、早期隔離、早期治療しかない。


斜体文字修正。

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2 コメント

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厚生労働技官は森鴎外です(但し文才を除く) (舶匝(@online_checker))
2020-05-07 21:58:05
文献偏重の森鴎外(森 林太郎)と臨床現場重視の高木兼寛。現代にも通じる構図です。
そして、医療系では「答え」は常に、臨床に転がっています(その割に、若手中堅に文献偏重の傾向が……)。
ちなみに、愛知県は、東京都と比べると、PCR検査を多めに実施(https://blog.goo.ne.jp/hakusou_onlinechecker/e/63bf8b8045456fa8b87e3301c267bdc3)
結果、東海三県は今、随分と落ち着いています。
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舶匝さんへ (ぬくぬく)
2020-05-08 10:28:52
初めまして、舶匝さん。コメントありがとうございます。

森鴎外は現代に生まれていればノーベル文学賞を受賞したのは間違いないでしょうね。しかし文才はありましたが、理由はさておき脚気に麦飯が効果があるという事実を認められず27000人以上の兵士を脚気で戦病死させた罪は重いです。

新型コロナウイルスを沈静化させるには国境を閉鎖した上でPCR検査を増やし、陽性者を隔離し、治療をするしかないと考えています。PCR検査の精度が低いから陰性と出た隠れ陽性者がお墨付きを得て撒き散らす、だからPCR検査は増やせないというのは説得力がなくもありませんが、間違ってはいるでしょう。

厚生労働技官が専門家であることを笠に着て、森鴎外の失敗を繰り返すのは止めて欲しいものです。
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