- 味覚がなくなった人
<内経>に「舌は心の外候」「心が和して五味を知る」とあるのを思い出し、
遂にその病は心経にあると弁証しました。
舌に味が分からなければ食欲が無くなる。
食欲が無くなれば必ず脾胃をやぶる。
故に心脾同治するに宜しく、
私は心竅を開き脾胃をも考慮する方法をとりました。
服薬すること数十剤で味覚は正常に戻り、病人も私も大変喜びました。
病名は付けられなくとも弁証に基づけば手はあるもので、
これが弁証のいいところです。
- 頷下腺結石
湿痰があるからには利湿化痰によって治すべきですが、
痛みがひどいのは恐らく湿痰が結滞して経絡を塞いでいるのであるから、
行気通絡しなければならない。 病が上にあるから引薬で上行させよう。
利湿化痰の薬に行気通絡の品を加え、桔梗を引薬として上行させ、
金銭草で化石の効果をとろう。
患者は十数剤を連服した所でコツンと何かが患部の歯茎の所に詰まるのを感じました。
食べ物の粕かと思って手でつまみ出すと、何と大豆大の結石でした。
石が出た後は症状がとれ、石を持って喜んで報告に来ました。
後でもう一度X線検査をしましたら結石が無くなっていました。
これも病名は付けられず、例の少ない所謂奇症の一つです。
医者はその奇に驚いて手をこまねいていてはなりません。
詳しく病情を調べ、子細に弁証し、弁証さへ正確で方法が適切なら
難症といえども解決出来ないことはない。
「燕山医話」 王鴻士