鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

秋のカメムシ日和その2 ウッ、ウッ、ウシカメムシー!

2011-10-15 14:52:59 | 日記

 おとといのつづきを、きのう更新しようと思っていたのですが、
昨夜は『むしむし探し隊』主催の池田清彦先生の講演会で遅くなったので
更新がきょうになってしまいました。
昨日きてくださった方、ごめんなさい。
池田トークが炸裂した講演のようすは、
またお伝えします。
すごく面白かったですよ!


 今年6月ごろから何度か歩いた高尾の林道。
第一のお目当てであるオオトラフハナムグリはとうとう見つけられなかったけれど
これは来年のお楽しみにしよう。
夏の間快適だった高尾の林道も、
そろそろ気温が下がってきて、見られる虫の姿も少なくなりました。


 ミゾソバやツリフネソウ、オオハナウドの花が満開の林道で見た虫は・・・・・


オオハナウドのもわっとした匂いにひきつけられたのか、
アサギマダラが夢中で吸蜜。
オオハナウドは大人気でハチ、アブ、ガなどが盛んにおとずれている。

これはホシベッコウカギバかな。きれいなガです。

オオハナウドは北方の植物らしく、
去年の秋に行った北海道大学植物園ではたくさん見た。
高尾のよりも丈高く、1メートルを超えるものもたくさんあった。
高尾のは多少小ぶり。


 オレンジ色の目玉と、スプレーを吹き付けたようなきれいな模様の翅をもつヒラヤマシマバエ。


 稲を吸汁して斑点米にしてしまうきらわれものハリカメムシの仲間。



 ホバリングしながらツリフネソウで吸蜜するホシホウジャク。



 名前のとおりツヤツヤの緑色をしたツヤアオカメムシ。



 同じ緑色のカメムシですが、こちらは光沢のないアオクサカメムシ。



 元気に跳びはねていたミスジハエトリのオス。

黒曜石のようなきれいな目。


 たれ瞼のちょっと陰険な目つきのこの5ミリほどの虫は
アワフキの仲間。

ときどき、不満げに目を伏せる『相棒』の右京さんをみると、
あ、アワフキ目だ~、と思うのは私だけでしょうか。

 カメムシの幼虫ですが、どうしても名前がわからないので
採集した2種。
飼育して成虫になるのが楽しみ。



 今年はこのくっきりハートマークのエサキモンキツノカメムシを今までよりもたくさん見ることが多いような
気がします。
かなり繁殖しているのかな。


 群生していたミゾソバの花。8月ごろから山地の水辺で見かける。


 丸い頭部が特徴のカラスハエトリのオス。

それにしても、ぶっとい腕だね。

 ちなみにメスはこんな色。夫婦ともに太目。

ひさしのようになった頭部先端のかげから、きらりと目をのぞかせています。



 これはクチナガカメムシの幼虫かな?


カメムシばっかりで、そろそろウンザリしてきましたか?
じゃあ、ちょっと目覚ましにこんなの。



キモオチャメなこの幼虫はアケビコノハ。
おなかのところに、ついている白いつぶつぶは何かが寄生しているらしい。


 でもでも、次の日、東高根で、ついに念願のカメムシに会うことができたので、カメムシ、まだつづきま~す。
念願のカメムシとは、ウシカメムシ!!! 4齢幼虫です。

ああー・・・・・・・・やっと会えた。

 酔狂にも、カメムシ好きが集まって自己紹介をする場面を想像してみると、
それはたぶんこんなふうになるのじゃないか。
「○○(名前)です。えーと一番好きなのは、沖縄でみたミカンキンカメの成虫と3齢です。」
「○○です。ぼくはミナミアオカメムシの3齢と桃色帯型の成虫が好きです」
「○○といいます。好きなのはアカカメムシの色彩変異型かな。あのアッカンベー顔がたまりません」
「○○です。わたしは華麗なツノアオカメムシかな。あ、あとアカホシカメムシの5齢なんかも好きです」
・・・・・・・・。

 カメムシは幼虫時代から成虫への多彩な形態、色彩変異が魅力なので、
成虫だけでなく、こんなふうに幼虫の各ステージごとにファンがいるに違いない。
1個の飴で、5回も違う味が楽しめるようなもの。
で、
私の自己紹介は、
「好きなカメムシはウシカメムシの5齢幼虫です!」


 ウシカメムシ。
成虫でも7,8ミリと、比較的小型のカメムシで
今回見つけた4齢幼虫は3,5ミリ。
しかも、とくに幼虫時代は肢をチョコチョコチョコチョコチョコチョコと非常に素早く動かして
動き回るので、その動きがまたかわいいんですが、見つけにくいカメムシのようです。


 思えば『日本原色カメムシ図鑑』の写真で見てひとめぼれ。
7年位前、実家の庭の松の木の幹に5,6匹の成虫、幼虫を見つけ
とても急いでいたため、手元のフィルムケース(空気穴をあけていなかった)にあわてて採集し、
あとでみたら、自分たちの臭気で全員、コロっと死んでしまっていた、
という悔恨の経験以来、針葉樹の幹をなめまわすように見て回るという怪しい行動をしながら、
ずっと探していたのが、
やっと会えたのですから感激もひとしおです。
図鑑などには、植樹を針葉樹と書いてあるものが多いけれど、
アセビ、シキミ、サクラ、ヒノキなども食べるようです。
今回見つけたのは、林道沿いの草の上でした。

アップしてみましょう。

ウシカメムシの名はウシの角のように見える前胸背側に張り出した部分からきているらしい。
そして背部に見える人面だか鬼面のようなもようがなんといってもチャームポイント。
この4齢幼虫時代の顔は太めの白いまゆ毛、小さな黄色い目におちょぼ口。
腹部背面のエンジ、シロ、黒のシックな色具合いがまた味わいふかい。

どうしてもお別れしがたくて、
この後さらにいちばん好きな5齢幼虫に変態してくれるのを期待して採集。

そして2日後、脱皮してついに!


待望のウシカメムシ5齢幼虫になりました。
童顔風だったのが、口をへの字に曲げて目をつりあげた鬼顔に変ったー。
体長も5ミリと大きくなりました。


このあと羽化して成虫になるまでの、たぶん1週間弱くらいしか見られない形態なので
ひまさえあれば、見つめています。