拙著『虫目で歩けば』掲載のクモの名前について、「日本ハエトリグモ研究センター」の池田博明さんから、グループ名だけを記したものに関する詳しい種名、あるいは名前や行動の意味のとり方の間違いについて、教えていただくことができました。
『虫目で歩けば』を読んでいただいた方には申し訳ないのですが、下記ご参照いただき、
間違いなど訂正してください。
31ページハエのいる花に近づく「カニグモ」
このカニグモは、正しくはアズチグモのオスです。
アズチグモのオスはハエを食べに来たのではありません。
メスを探しに来たのです。オスは成熟すると自分自身で虫を食べません。
体も小さくてハエを取れないと思います。
アズチグモのオスはメスの腹部背面に乗って移動します。
そして隙を見て交尾します。
35ページ 「スミレの花のなかのクモ」
ドヨウオニグモ♀です。このクモは水田付近に多く見られ垂直円網や傾いた円網を張ります。
42ページ 「ネコハエトリのオス」
ネコハエトリは斑紋変異が多くこれをネコハエトリと見た眼力は正しいと思います。間違っていません。
ただし、オスの成体は4月下旬からせいぜい5月中旬までしか見られませんので、オス成体かどうかは気になります。
43ページ 「チャイロアサヒハエトリのメス」
正しくはメスジロハエトリのメスです。メスジロのオスは確かに別種に見えるほど違います。
オスも成熟する前はメス型です。正しいチャイロアサヒハエトリもごくごく普通種ですので
きっといると思います。
81ページ「アサヒハエトリの子供」
写真では断定が難しいのですが、チャイロアサヒハエトリの子供のように見えます。
43ページ 「ヤバネハエトリのメス」
ネコハエトリの幼体です。色がオレンジ色の個体変異なのでだまされます。
たぶん63ページの小さなクモもネコハエトリの幼体です。
本当のヤバネハエトリは平地には住んでいません。
77ページ 葉の上のクモ
スジアカハシリグモ幼体です。
78ページ 「アズチグモ」
正しくはハナグモのメスです。48ページのハナグモの斑紋変異です。
78ページ 「悪魔が笑っているような顔 オニグモの一種」
ヤマシロオニグモのメスです。
このような変異をあとぐろ型と仮称しています。
79ページ 「ちっちゃなちっちゃな銀色のクモ」
シロカネイソウロウグモ メスです。ジョロウグモなどの網によく居候しています。
102ページ 「徘徊性のクモ」
これはヤミイロカニグモの一種ですが
何ヤミイロカニグモかは専門的になるため写真では不明です。チェコですしね。
(以上、池田博明さんから)
たくさん間違いやあいまいな表現があったこと、深くお詫びいたします。
虫についてブログに載せたり、本に書いたり、というときの虫の名前調べについては、いつも四苦八苦しています。特にいったん印刷してしまうと訂正ができない書籍については、毎回胃が痛くなるような思い。
私は虫の専門家ではないので、いわゆる「同定」はできません。
「同定」というのは、「それぞれの種(たとえば、チョウとかハムシとかカメムシとか)の専門家が、実際の標本をもとに、 分類上の所属や種名を見極めること」なので、基本、写真から判断することは無理といえます。
観た虫を採集し、標本にして専門家に見てもらい種名を見極めてもらう、ということができる機会は少ないので、私は図鑑とネットで調べられた範囲で名前を書いています。
写真を撮るときも、種名の判断ができやすいような特徴を記録するように、いろいろなアングルから撮ることを心がけていますが、すぐ飛ばれてしまって十分な写真が撮れなかったりします。
今後も名前調べは慎重にやっていきたいと思いますが、間違いなどある場合は教えていただけたらありがたいです。
池田さんによると、クモの名前は一般のウェブやサイトでは身近なものでも間違いが多いので
目下、東京蜘蛛談話会では『クモ基本60』を製作中です、とのこと。
池田さん、ほんとうにありがとうございました!